【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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41_越生アンダー通路?2

「ん?」

 

 細い通路を進んだ。細いといっても、先ほどの巨大トンネルに比べるとであり、こちらも直径は10mほどあるので十分な大きさを有している。

 こちらはゴツゴツとした岩肌を残す通路。先ほどの通路は突起物など全て削られていたことを考えると、天然の洞窟とはこうあるべしというような姿だ。

 明るさは先ほどと同じく。

 しかし進むごとに──アキヒロの胸を抑えつけるような感覚が強くなる。

 もしかして不整脈か、と不安に思っていたところ。

 

「っ…………」

 

『────』

 

「レイス……いや、もっと……コイツ……!?」

 

 アキヒロの前に現れたもの。

 新たなモンスター。

 強大な圧力。

 それは先ほどまでの影ではない。無論、影は今も出現を続けているが。こちらは見たことのないモンスターだった。

 

「次から次へと……」

 

 レイスと酷似ている。ボロ布のようなものを纏っているところや、フードに隠された顔が『存在しない』ということを見れば。

 しかし、レイスよりも悍ましい気配を漂わせている。見るだにわかった。きっとコイツは、レイスが変質したモンスターだ。レイスが朝付けたばかりの漬物なら、こちらは1週間くらい漬けたしおっしおのやつ。

 

「さしずめ、エルダーレイスってところか?」

 

『〜〜〜』

 

 何かを唱えると、指先にボッ、と真っ赤な火が現れる。それだけではない。水色、緑色、黄色のナニカも同じように現れる、指の上で観覧車のようにグルグルと回り始めた。

 水色のナニカが飛んできた。

 魔剣で受け止める。

 

 ──魔剣が凍りついた。

 

「ま、魔法じゃねえんだぞ!?」

 

 よく分からないという点においては、空想上の魔法と大差無い。しかし、現象には理由がある。過程はともかく──モンスターや神、異能の出現は、魔素という未知の法則が世界に引き起こした異変の結果に他ならない。

 ある程度の法則や、同じ方向を向く性質―を持っているのが異能だったりするのに。こんなトンチキなのは許されない。

 少なくともアキヒロにとっては『万国びっくりショーだ! やったー!』とはならない。

 

「ふ、ふざけんな!」

 

 脱兎の如し。

 この世界においてはウサギは背を向けて逃げなどしないが、とにかく脱兎の如く逃げた。

 もちろん、背後への警戒は怠らない。後ろから飛んできた攻撃で胴体のど真ん中に大穴をぶち開けられました──なんてなったら、笑えないからだ。

 

『────』

 

「やっぱり、追いかけてくるのかよ!」

 

 滑るように近づいて来る。

 時速60kmに容易く付いてくる速力。あまつさえ、何事か唱えながら。やはり深層のモンスターだとしか思えない。

 ──エルダーレイスは、すべての色を一気に解き放った。

 

「ぐおあああっ!?」

 

 とんでも無い質量。

 魔剣と左腕でなんとか受け止めたが、痺れたり、燃えたりと忙しい。

 緑色に関しては避けたが、地面に当たった途端にツタらしきものが巻き上がった。

 

「ちくしょう……っ!」

 

『〜〜〜』

 

 吹き飛んだアキヒロはすぐさま身体を起き上がらせる。

 右腕が折れていた。内部から骨が飛び出す開放骨折。

 顔を歪ませる。初めてじゃ無いし、なんなら取れたこともあるが。やはり、痛いものは痛い。

 全力で歯を食いしばって、気を強く持たなければ、動くなど到底不可能な程度には。

 当然、そんな衝撃を受けた肘や関節が無事なはずも無い。

 

「ぐぅぅぅっ!!」

 

 近付いてくるエルダーレイスの挙動に目を配らせて距離を取りつつ、痛みに耐えつつ、リュックの外側のポケットにしまっていた小瓶を開ける。やる事多すぎてんてこまいだが、探索者なんてそんなものだ。やらなきゃ死ぬなら、痛かろうがなんだろうがやらなければならない。

 できないやつ、できなかったやつは死んだ。

 それだけの話。

 

「ふぅぅぅ……っ!」

 

 歯を食いしばり、回復薬を振りかける。シュウウと煙が立ち上った。

 

「──あっ…………があああああああ!!!」

 

 洞窟内へこだまする絶叫。

 外に飛び出ていた骨が、ギチギチと音を当てる。無理やり肉体に収まろうとして別の骨と引っかかり、無理やりにガチっと入り込んだ。

 

「ぐぅうううう!! う゛う゛う゛う゛っっ!!」

 

 転げ回りながら、それでも本能的にエルダーレイスから遠ざかる。染み込んだ動き。痛みで意識が半分飛びかけても、視界にあるモンスターから距離を取る。

 加賀美明宏は、無茶とも言える単独討伐業務をこなす中で、そうやって生き延びてきた。腕がへし折れるのも日常茶飯事だ。

 例えコマちゃんがいようが、左肩から先が吹き飛ぶことだってある。そんな時は、まず傷口に回復薬をかけて血を止める。そして、腕を回収して引っ付けるのだ。

 当然、食われたら再生もできないので死ぬ気で腕は回収する。彼は、サイボーグになる気はなかった。

 

「あああああ!!」

 

 骨を覆う筋肉が再生していく。肉同士がお互いを結ぶ度、肉が伸びる度、靭帯が再生する度──つまり、絶え間ない激痛が彼を襲っている。目の裏を白く明滅させながら、ほぼ無意識の中で。エルダーレイスからさらに距離を取る。

 

『〜〜♪』

 

 エルダーレイスは、この状況を楽しんでいるようだ。苦痛に満ちた声。心地よいbgmとして感じ取りながら、細長い指で地面を削って近付いてくる。

 その光景を目にして、明宏は尚も逃げようとする。

 

「はぁ……はぁ……俺はまだ……死ねねえんだよ……!」

 

 走りながら、呟く。

 

「こんなところで……!」

 

 死ぬことに恐怖は無い。

 その代わり、未練だけは山ほどたくさんある。心の整理がついたら……きっと、もっとやりたいことは増える。

 焼肉を復活させる事だって、そうだ。

 すべての知識と経験、あらゆるモノを活用して世界を変える。その為に、この程度のことで死ねないのだ。

 

「がっ……!」

 

 肩を貫かれた。

 白い光線。肩を貫いた後は、その先へ。どこまでも一条の光が伸びていく。

 

「──舐めるなあっ!」

 

 絶対に勝てないモンスターに出会した程度で諦めるなら……こんな道、選ばない。探索者の道こそが、きっと──この、歪められた世界を攻略する唯一の方法。

 

『…………』

 

 しかし、エルダーレイスはお遊びに飽きたのか。瞬間移動かと思うほどの高速で彼の前に回り込んだ。

 顔の無い顔。

 ボロ布のような外套。

 しかし、そんな物にすら魔剣は通らないだろう。

 それでも、構える。できることを全てやる。死ぬのだとしてもそれからだ。

 

『〜〜〜』

 

「……」

 

 レイスが自分の顔面に手を突っ込み、何かを取り出した。それは、黒い霧を纏っているように見えた。中心から怪しい光が飛び出し、見るものの目を惹きつける。

 その瞬間──

 

「はぁっ! …………やっぱりか」

 

 すでに腕は治っていた。

 渾身の一撃。しかし、胴体を横薙ぎに切断しようと振った魔剣は、カーテンに木の棒を叩きつけたような感触しか得られなかった。

 当然、外套は切れていない。

 

「うぐっ!?」

 

 エルダーレイスは、アキヒロの顎を掴んだ。

 無理やりに口を開かせ、黒い霧の球体を口に押し付ける。

 

「おごっ……ご……が……」

 

『〜〜♪』

 

「が……ゔぁ……んぐっ……」

 

 無理やりに口に押し込み、飲み込ませた。

 途端に崩れ去る、エルダーレイスの肉体。その場には外套が残された。

 

「げぇっほ! げっほ……!」

 

 大きくむせる。

 変なものを無理やり口に突っ込まれるという。相手が女子であれば色々とアレなことをされたが、実体はあるのかないのかよく分からない。喉を通ったような通ってないような、途中で消えたような。

 

「……またこのパターンかよ」

 

 前回も同じだった。

 レイスと出会した時にほぼ同じことをされ、どうにかなるのかとビビっていたら何も起こらず。ここまで生きてきた。

 だけど今回は、明宏から見て明らかにヤバい攻撃が多すぎた。あんな飛び道具なんて、レイスは使ってこなかった。

 普通に遠距離でぶっ殺されると思って逃げたのだ。

 

「とりあえず……これはいただきます」

 

 拾った外套を纏う。

 見た目的にはボロいパーカーみたいな感じだが、すごく強くなった気分だ。

 言うなれば、適正防御力2000ぐらいのところに10ぐらいで突っ込んでいたのが一気に引き上げられた感覚。

 アキヒロは、少し気分が軽くなるのを感じた。

 帰ることができたら、アレは誰かにあげよう。

 そんなお気楽思考までしてしまうくらいだ。

 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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