【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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50_同胞

 

眼前の存在に全くもって見覚えがなかった。招いた覚えも無い。

許しもなく辿り着ける筈がないのに、誰だ。

 

『…………誰?』

 

『初めまして!僕はここにいる人間のペット!勝手に家に上がり込んで悪いね!だけど許してほしい、ほら忠犬は飼い主を助けるものだから!君は――ああ、なるほど!君たちのことを真似たらしい!』

 

「「ーーーー」」

 

後ろに顔を向ける。

控えていた二人は、驚愕で一言も話すことができずにいた。いつまでも後ろにいさせるのも悪い。スッと足を退け、両者を対面させる。

 

「「アキヒロ!!/アキヒロくん!!」」

 

二人は自分の似姿には構わず、彼の元へと飛び込んだ。

なぜ自分がこんな場所に、しかも全裸。ここはどこ、今のは何。本当に神様なのか。

それは確かに、一般的には気になることだ。

だが、そんなことがどうでも良くなるような光景だった。

――コマちゃんの脚に寄りかかっていたアキヒロを抱き寄せる。あたり一面血の海。彼自身も血みどろ、一体どれほどの目に遭えばこんな惨状になるのか。

 

「アキヒロ!しっかりしろ!アキヒロ!」

 

「――――あ」

 

「アキヒロ……生きてる!ああ、生きてる!」

 

微かに瞼を開けた隙間から覗くのは、瞳ではなく血液。しかし、確かに反応があった。その事に心底から安堵して抱きしめる。

 

『あんまり僕から離れないでね、風船みたいにパンッ!てなりたくなければ。こいつやっぱりイカれてるね、こんな量を一度に使って……計画的な思考ができないDQNってやつはこれだからいけない。僕を見習ってよ、1日に使う限度量とか一応決めてるんだから。……おっと!今日だけは大盤振る舞いだよ!』

 

『誰かって、聞いてるんだぞ〜?』

 

『君みたいな格の低い奴が僕に対して対等に質問できると思っているなら、ちゃんちゃらおかしいね!』

 

『はあ?』

 

『イメージが弱いから容姿の固定も行えないような、自己定義の曖昧な未熟者。だから彼女達の姿を取ったんだろう?だけどさあ……だとしてもだよ?僕なら服くらい着るね。雄の前で全裸は、人間ならあり得ないよねえ』

 

ヤダヤダと首を振る。こいつ、なーんもわかってないなあ……という態度があからさまだった。

 

「――コマちゃん!明宏が!」

 

『うん?大丈夫だよ、もう。放置しとけばそのうち治る』

 

「だ、だけど……こんなに血ぃ出てるんだぞ!」

 

『そこら辺は回復薬にお任せというか何というか……今、こっちに集中したいんだけど……』

 

『――ねえ』

 

一つ、両手を叩く。

早苗?は早苗に笑顔で話しかけ始めた。

 

『どうして私のことを無視するのかな?ここは私の家だよ、早苗ちゃん』

 

「………っ……」

 

『久しぶりに会ったから私のこと忘れちゃった?』

 

「あ、あなたは……」

 

震える声。

信じられない。

信じたくない。

自分たちが信じてきた相手が、こんな惨状を作り出したなんて。そして、この街を滅ぼそうとしているなんて。

……実際に聞いてみるまでは、まだわからない。

 

「あの時の神様……なんですか……?」

 

『うん!早苗ちゃん達が信じてる神様だよ!そこの余所者と一緒に入ってきたみたいだけど――早苗ちゃんと日向ちゃんは無理矢理連れてこられただけで、私の味方だよね?』

 

「…………」

 

『早苗ちゃん?』

 

「き、聞きたいことがあります!」

 

『……うん!いいよ!』

 

「どうして……どうしてアキヒロくんはこんなに血だらけなんですか?」

 

『どうして?………ああ!大丈夫!そこのデカいのがいなくなればすぐに殺すから!』

 

「!………な、何でそんなことするんですか!」

 

『ええ?だって気持ち悪いじゃん』

 

「っ!」

 

即答。それは、コマちゃんが語った内容と寸分違わぬ回答だった。信じられないという表情を浮かべ、口元を手で抑える。息が詰まった音が、その場の全員にくっきりと聞こえた。

唇が震える。何故――自分たちには、こんなにも親しげに話をしてくれるのに。同じ人間なのに。

聞いてしまえば、致命的に取り返しのつかない事になるかもしれない。それでも聞かなければ、ここに来た意味が無くなってしまう。

 

「き、きもちわるいって……」

 

『うん!そいつ、殺した方が早苗ちゃん達のためにもなるでしょ?』

 

「何を言って……………ち、ちがいます!」

 

「――姉ちゃん……」

 

掠れるような声に振り返ると、日向は真っ青な顔をしていた。腕の中にいる明宏も同じような血色だ。しかし、このまま放置したら彼は死ぬ。

それは、ダメだ。

彼まで死んでしまったら――

 

「か、神様!お願いです!アキヒロくんを助けてください!」

 

ニコリと、薄く笑みを浮かべる。安堵の息。良かった、話せばわかってもらえるんだ。早苗は笑顔で明宏の手を握る。

対する早苗?は唇を舐めてから口を開いた。

 

『そのゴミは、絶対に殺す』

 

「――――」

 

時間が凍りつく。

表情が凍りつく。

思考が凍りつく。

――今、何と言った?

ゴミ。

絶対に殺す。

 

「――なんでだよ!」

 

日向が叫んだ。その腕の中には今も明宏がいる。先ほどは口元から垂れていた血が、今は収まっている。彼の肉体は確かに修復されつつあった。彼の肉体をいかにしてここまで痛め付けたのかは分からずとも……一瞬だけ彼に視線を向けた日向は、怒りに包まれる。

 

「こいつが何したってんだよ!」

 

『……』

 

「神様!教えてくれ!……いや、教えてください!アキヒロがアンタに失礼なことしたのか!?だとしたなら、私が謝るから!代わりに私が何でもするから!だから………だから、許してやってください!」

 

頭を下げる。

本当に、彼が何か悪事を働いたなどと信じられない。きっと何かの勘違いなんだ。何かがすれ違っただけで、事情を説明すればわかってもらえる。

願ってもお父さんは返してくれなかったし、お母さんの事も何も変わらなかったけど……それでも、きっと、ちゃんと話をすればなにかが変わるんじゃないかと信じていた。

 

『私の家にいるのが許せないの』

 

『私のモノにベタベタと触れるのも許せない』

 

『いつまで経っても出て行かないんだよ?』

 

『私、かわいそうじゃない?』

 

『日向ちゃんだって、いつもアキヒロくんにバカとか死ねとか悪口言ってるじゃん』

 

『ああもう……顔を見るのが嫌』

 

『本当は、同じ空間にいるのすら嫌』

 

『これまで殺さなかっただけ感謝して?』

 

『要はさ……何で私がソイツに対して何かしてやらないといけないの?』

 

「…………!」

 

反応すら待たずに次々と紡ぎ出される呪詛。どれだけ自分が嫌っているかということを懇切丁寧に、滔々と説明し続ける。それはいっその事、清々しいくらいの証明でもあった。

――絶対に、加賀美明宏だけは抹殺する。

 

『ほらね?古今東西、神様っていうのはこんなもんなんだよ。神話にもあるだろう?――ああ、今のは失言だね。とにかく、権力に溺れるっていうのは何も、君たち人間だけの専売特許じゃない。たまたま力を持って生まれたから、たまたま神としてこの世に生を受けたから……僕たちはそう在るのさ』

 

肩をすくめるように早苗達を諭す犬神。神とは無慈悲なものであるということを淡々と語る。

早苗?は、腰に手を当てた。

 

『良い加減……どっか行ってくれないかなあ』

 

『良いのかい?僕がいなくなったらこの子達は数秒と保たない。そうなれば君も寂しいと思うけどなあ……』

 

『お前がいなくなってくれれば、すぐにでもやめるんだけど?』

 

『それは出来ない相談だ!何せ僕はコイツのペットでね……飼い犬は飼い主を見捨てないし、飼い主も飼い犬を見捨てない。だからこそ人類は犬をペットとして飼い慣らしたし、犬も人間に従ってきた。まあ……こんな死にそうになってまで私を呼ばないとは思わなかったけども……」

 

血ダルマになった飼い主の顔を舐める。舌についた血の味をぺちゃぺちゃと味わい、笑った。

 

『うん!この世で1番まずいね!流石に神様から無条件で初見攻撃喰らうだけのことはある!こんな人間を好きになるやつなんて、僕以外にはまずいないだろうね!幸せに思えよ明宏!』

 

『………ソイツを……好き……?』

 

『ああ!』

 

『何言ってるの?――ああそういうこと、狂ってしまったんだ』

 

『狂ってるか狂ってないかで言えば、この世界の方がよっぽど狂ってると思うよ』

 

『………あのさ……良い加減にしろって、言ったよね?』

 

「ひっ!?」

 

日向は思わず、息を詰まらせた。

目の前の女から放たれたものが周囲へ広がる。禍々しく、理解し難く、見たことがないもの。

――先ほど、家から見上げたもの。

 

『よその子……分かるかい?これが神の正体だ』

 

静かに呟く。

しかしそれは、どこか寂しそうな口ぶりだった。

 

『人に信仰されるということは素晴らしい。祈る彼らを見ると心が洗われるし、祈りそのものもとても美しいんだ。誰かのためを思って行われる祈りというのは、僕らにとっては最上のエネルギー源だしね』

 

『そうだね!私もそれには同感だよ!なるほど、別の場所で神様をやっているんだね?』

 

『だが、それだけでは無い。祈りとは、良いものばかりでは無い。転じて呪いと為すことだって、普通にあるんだよ』

 

お互いが同じ話をしているのに、会話が成立しているわけでは無い。話したいことをただ話しているだけだった。

 

『君には分かるでしょ?ソイツがいかに穢れてるかってことが。別に私が殺すことにこだわりはないからさ!殺しちゃってよ!』

 

『よその子………いいや、こう呼ぼうか。早苗ちゃん、君はどう思う?』

 

「………わ、わたし……?」

 

同胞を無視して、震える早苗へ問いかける。信仰していた神に恐怖する少女へと、これからどうしたいかを尋ねる。

 

『そう、君はどうしたいんだ?勿論、アイツを止めるの必定だけど……何か言いたいことはあるかい?』

 

「…………ま、街は……どうなるの?」

 

『……だってよ!聞こえてるだろう?』

 

『大丈夫!人はすぐに増えるらしいから、少しくらい減ってもすぐに元に戻るでしょ?それに――早苗ちゃん達はわたしが永遠に可愛がってあげるから!何も心配いらないよ!』

 

「っ!」

 

『ああ……可愛いなあ、早苗ちゃん。ずっと……ずっと……ずっと、その姿でいられるようにした甲斐があったなあ』

 

「――――?」

 

今、よくわからないことを聞いた。自分がこの姿でいるのは、彼女がそうしたからだとか……聞き間違いだろうか。あの、白くて美しい六本足の――神様の使いとしか思えない存在に出会った時から、成長しなくなった。

それが……神様のせい?

早苗は、自分の姿をとる神を見つめた。

 

『日向ちゃんもすっごく可愛いし……今日、変えてあげるからね!』

 

「………な、何言ってるんだ?」

 

『え?何って……早苗ちゃんも日向ちゃんも、1番可愛い時の姿でいたいでしょ?それに、私もそっちのほうが興奮するからさ!』

 

得体の知れないもの。

日向は、明宏をさらに強く抱きしめる。

神を名乗った女からの目線、それはとても気持ちが悪いものだった。路地裏にいた彼女に男がむけてきたものと同じ性質の視線。

 

「っ……」

 

『私は神様だからさ――――これを使って日向ちゃん達を気持ち良くしてあげる事もできるんだ』

 

肉体は間違いなく早苗なのに、股から生やした物。二人は咄嗟に顔を逸らした。あまりにも気持ちが悪くて、気分が悪くて、恐ろしかった。

 

『ソイツらを消した後が楽しみだなあ!』

 

硬く滾らせる。

もし、この神様に捕まれば――最悪の想像を巡らせる二人をおいて、コマちゃんは顔を顰めた。

 

『ああばっちい、消せよそんなもの』

 

『……!?な、何をした!!』

 

『君と同じさ。気持ち悪い物を消しただけだよ』

 

『…………』

 

『おっ!やっとやる気になってくれたみたいだね!いやあ、ワクワクするなあ!僕、ずっとこういうのに憧れてたんだ!同じ力を持った奴らがぶつかり合うシチュエーションっていうの?ガハハッ!』

 

消した、という言葉を聞いて恐る恐ると顔を上げた早苗は驚愕した。

コマちゃんが白く燃え上がっている。

一方の神様は黒い炎に覆われ、対比的な姿になっていた。

 

「コ、コマちゃん!?」

 

『フフフ……フフフフフ!これ、かっこいいだろう!僕の本気モード!』

 

『舐めやがって!』

 

『――ビィィィィィム!!』

 

コマちゃんが口から迸らせた炎。

神様が腕から放射した黒い炎。

突き進んだ二つが、中間で衝突した。

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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