【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
『────』
「う……」
目が覚めたら知っている天井でした。
恐らく山田家の天井。しばらく振りに見た気がするけど、この匂いはアイツの家だろう。人の家の匂いってめっちゃ気になるよな!
…………俺、何してたんだっけ。
「──ぐっ」
上体を起こそうとしたら、うまく上がらない。
というのも……
「いてえ」
なんだこれ、めちゃくちゃ体が痛い。小学校でパパさんリレーがあるから身体作りのためにジョギングした次の日くらい痛い。
……まさか昔の肉体に戻ってしまったのか!? それは困る! 今は色々と頑張らなければならない時期なのに、あんなゴミみたいな肉体になってしまったらなーんもできない!
とにかく洗面所に行って鏡を確かめなければいけないので、床に手をつこうとして……腕を見た。
「包帯?」
グルグル巻きだ。
なぜ俺に包帯が巻かれているのか。包帯なんてしばらく見ていないぞ。異能ほどではないにせよ、身体能力由来の回復能力があるし、回復薬もある。包帯を使う暇があったらどちらかで治っているからな。
「んぎぎぎぎ!」
痛みを堪えて起き上がる。自分の体を見ると腕も胴体も包帯だ。もはやハロウィンの仮装と言っても差し支えないような格好をしている。
「ふがっ」
面白過ぎて鼻で笑ってしまった。もしかして早苗ちゃんにイタズラされたのか? 本当にそうだったらお返しに早苗ちゃんも同じ状態にしてやろう。
しかし、体の痛いこと痛いこと。一歩踏み出す毎に変な痛みが走る。一体、何があったんだ?
廊下へ出ると誰もいなかった。
みんな部屋にいるのかもしれない──というかそうだろう。
「うん、加賀美明宏で……あいつん家だ」
洗面所で鏡を見ると、目が充血していたが間違いなく俺の顔だった。
そして間違いなく山田の家。記憶の曖昧さはともかく、居場所に関してはすぐに特定できた。
少し立ち止まり、考え込む。
「あ゛〜………………」
何故、自分はこういう状況になっているのか。それを少しでも思い返そうと記憶を振り返るも、何も出てこない。強いて言うなら、河童に引き摺り込まれたことくらいだろうか。まさか溺れた?
「いやいや、溺れたくらいで記憶喪失にはならんだろ……ん?」
チュンチュンとカーテン越しに庭から鳥の声が聞こえた。どうやら今は朝のようだ。何故未だに閉め切っているんだ?
珍しく二人ともお寝坊だろうか。
「まったく……朝は太陽を浴びないとすっきりしな……い…………」
茶色。
緑色。
首が痛くなりそうなほどに見上げ──
「なんだこれ!?」
とてつもなく大きな木が街の方向から生えていた。
前から生えてたか!?
いやいや、そんなわけない。あんなでかい木が生えてたら流石に気付くって。何mあるんだよあれ。
「ええ? なにこれマジで」
俺が寝てる間に何があったの?
というかなんで俺は寝てたの?
ここ、本当に山田の家なんだよな?
「誰か説明してくんねえかな……」
「わん」
「うん? ああコマちゃん…………俺さあ、なんで包帯だらけなの?」
「わんっ」
「事故みたいなモノ? ふーむ……ドラゴンにでも襲われたか?」
「わんっ」
「うんこの塊に襲われたってなんだよ、説明する気ねえじゃん…………ん? あれ?」
コマちゃんって連れてきたっけ? 確かここに来た時は……辺見さんと三船くんだけだったような……おお、そうじゃん。カッパもあれだ、三船くん達の修行の時の話だったわ。
コマちゃんとボチボチ話していたら、日向の部屋からガタドタと激しい物音が聞こえてきた。また部屋でもぶっ壊してんのかと思ってコマちゃんと二人でそっちの方を見てたら、とんでもない勢いで扉が開いた。
壊れるぞ、真面目に。
「っ!」
飛び出してきたのは、明らかに寝巻きのズボンを反転させて履いている日向。髪もちょっと乱れ気味。
『やばい、寝過ごした!』って雰囲気をムンムンに漂わせている。…………ムンムンって、なんかエロいよな。
「明宏!」
眉根が下がって、今にも泣きそうになっていた。
「日向、おはよグギッ────どうした?」
それはともかく、朝なのは間違いないので挨拶をすると胸に飛び込んできた。正直死ぬかと思った。痛すぎて白目剥きかけたし。
だけど、日向がこんなことをするなんてよっぽどのことがあったんだろう。天地がひっくり返ったとか?
「明宏……良かった……!」
「…………」
十中八九どころか十中十、この包帯のことを言っているのは間違いない。うちの飼い犬はウンコがどうとか言うだけで、クソの役にも立たないのだ。クソだけに。
質問に全く答える気を感じられないので、信頼できる親友を頼ることにした。
……その前に泣き止ませるところからだけど。
「ふぐっ……うっ……」
しかし弱った。泣き止ませようと話しかけるも延々泣くばかりで、廊下にいても埒が開かないし体が痛いしでもう……もう、座りたい……頭も痛いし目も痛い……
そんなわけで、リビングまで移動した。ソファーで背中を摩ると、へニャッた顔が一層グズグズになる。本当は俺の方が背中をさすって欲しいくらいだけど、男は傷付いてなんぼなところがあるからやっぱいいや。よくねえよ。
「うぐっ……ずびっ……」
「ほら、鼻チーン」
「こどもあづがいずるなあ……」
反抗しながらも鼻を噛む。
目も鼻も液でべちゃべちゃだから拭いてやると、またしがみついてきた。
「頑張ったな──っ」
何か大変なことがあったのだろう。そんな時に大爆睡かまして大変申し訳ないと思っているが、いかんせん何も覚えていない。大ポカをやらかしたら言葉と態度で示すしかないので抱きして返す。
返答はまさかのビンタ。
「ヒナタ……」
「頑張ったのはお前だろ!」
「???」
やらかしたのかと思ったら、案の定のこと胸ぐらを掴まれて──泣きながら褒められた。なんだこれ、熱血教師モノドラマか? 流石に対応しきれないぞ、こんな状況。俺が頑張ったのにビンタされるの?
「あんな……血だらけで……」
「血だらけ……」
震える喉と身体。
襟を掴む手をゆっくりと外す。俺が何を頑張ったのかは分からないけど、この包帯。きっと日向が巻いてくれたのだろう。
「ありがとうヒナタ」
「…………」
「包帯、巻いてくれたんだろ?」
「…………うん」
小さく頷く日向を再び抱きしめて、何をしてしまったのかと記憶を辿る時間を稼ぐ。俺は探索者なので大怪我をするとしたらダンジョンだ。新幹線ならともかく、現代の車に轢かれたくらいじゃ……ねえ? 時速60kmぐらいしか出ないし。
こっちに来てから潜ったダンジョンは、記憶が確かならば貝殻の洞窟だ。ナメクジヌルヌルで、とてもスティンキーだった。ウォリアーらと戦って斧とか石を採取したな。
綱渡り的ではあったけど、大きな怪我などは無く無事に帰ってきていた記憶がある。
その後は休息も兼ねて三船くん達の修行の様子を覗いてたな。前提として、こっちで本格的に活動するつもりはない。ダンジョンに潜るのは、鈍るのを防ぐためとサンプル採取のためだ。庭にちょっとだけ臭い石が置いてあるのはそれ。
早苗ちゃんに家の中に置くのを禁止されていた。
それで俺は……
「ああ、そっか」
思い出した。
慣れたアンダーに潜ることに決めたんだ。山市さんだったかな、あのおじさん。色々情報を集めて丘の上に行った記憶がある。別に変なこともなく中に入って──
「っ……」
突発的な頭痛。
その先が思い出せない。
俺は中で何をしたんだ?
この大怪我を見るに、手に負えないモンスターに出会したのは間違いない。それか、地形という線もある。
「……ああ、だからコマちゃんがいるのか」
「わん」
何が『だから』か知らんけど多分違うよ、だそうだ。でも、今回は一人でダンジョンに潜ってたから助けが入るとしたらコマちゃんなんだよな。
「あれかな、ヨンビにでも出くわしたのかな」
「わふ」
擦りもしていないらしい。
なんかめんどくさくなってきた。
……いやいや、失敗したら分析しないと。次、同じことがあったら助からないかもしれないんだから。でも分析も何も、全く覚えてないんじゃ話にならないネッ!
「────!」
廊下が騒がしい。
ドタドタと余裕の無い足音が近づいてくる。床が悪くなるなどと考えない幼稚さを含んだ性質の音だ。
リビング前まで音がやってきたかと思ったら、扉があり得ないくらいの勢いで押し開けられた。だから壊れるって……
「明宏くん!」
「早苗ちゃん、おはよう」
「…………わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「うびびびび」
飛び込んできた体は俺のボデーに一直線。ぶち当たったところに電撃が走ったみたいな痛み。三途の川の向こうにオカンが見えたぜ。
「う゛く゛う゛う゛う゛!!」
早苗ちゃんはこちらを見上げて泣き崩れていた。
……いや、泣き崩れているって言うと少しマイルドだな。
ギャン泣きしてる。ボロボロと目元からこぼれ落ちる涙と鼻水が酷いことになっていた。
なんだこれは。
なんなんだこれは。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない