【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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54_ナンニモワカンナイネー

 

「カガミン君、こんにちは」

 

 扉から姿を現したのは日向と早苗ちゃんのお母さんである日奈子さんだった。

 

「ヒ、ヒナコさん!? ──あっづぁあ!」

 

 病院にいるはずの彼女が何故ここに!? 身体は大丈夫なのか!? おい日向! なんだこれは! (2回目)

 立ち上がった衝撃で踵がめっちゃ痛むし何なんだ! 

 

「あら、この子から聞いてないの?」

 

「いでで…………いや、そうだよ! 何も聞いてないんですけど!? い、一体何がどうなって……!」

 

「もう……年頃なのね」

 

「年頃はそうだけど今はあんまり関係ないというか! いやいや、ちょっと……混乱がすごいぞ! とにかく座ってください! まだ病み上がりでしょう!?」

 

 顔色はそこまで悪くないが、寝たきりだったせいで線の細さがモロに出ている。親友達の母御を立たせて良い理由は無い。ついでに俺も座る。

 全身が砕けそうだ。

 日向はヒナコさんの後ろでニヤニヤ笑って嫌がるし、完全にわざとだ。ドッキリかなんかのつもりだろ。

 そうだよ! 驚くよ! あんなに体調悪そうだったのに、何でいきなり家に戻って来てるんだよ! 

 

「病み上がりっていうなら、カガミン君だってそうでしょ? あんなに大怪我してたんだから」

 

「俺のことはいいんですよ! 何でいきなり退院してるんですか!?」

 

「うふふ、こんなに焦ってるの初めて見た」

 

「何でこんな楽しそうなんだ……」

 

 とにかく混乱がすごかった。次から次へと情報が流れてくるせいで、ありのままを受け入れるために整理する時間が無い。なんでこの人は元気そうなんだ。元気になって欲しくなかったわけじゃないけど、そこは隠さずに教えて欲しい。

 

「何で退院してるかって、治ったからに決まってるじゃん?」

 

「じゃん? とか言われても……つまり、病気の原因を断ち切ったってことですか?」

 

「ううん、分からない」

 

「ええ……」

 

「だけど、もう罹る事はないらしいから」

 

「医者に言われたんですか」

 

「違うよ?」

 

「え? じゃあ誰が……」

 

「それはね──」

 

「「母ちゃん!! /お母さん!!」」

 

「ふふ」

 

 姉妹からの怒りのこもった呼びかけで、また嬉しそうに微笑む。というか早苗ちゃんもいつもの間に起きてたんだよ。詰め寄る二人を華麗に交わすヒナコさんは、久しぶりの娘達との親子団欒を心底から楽しんでいるようだった。何だかよく分からないけど、俺の預かり知らぬところで良いことが起きていたのは間違いない。

 …………良かったなあ。

 

「あれ? カガミン君……泣いてるの?」

 

「おっと失礼」

 

 正気を失っているヒナコさんは正直見ていられなかった。見苦しいとかそういうことでは無く──日向や早苗ちゃんがとても悲しそうにしていたから。それに、旦那さんのことに引っ張られて彼女自身もとても苦しんでいた。

 それが、俺にはよく分からないこととは言え解決に近付いたのならば。あまつさえ、娘達と幸せな時間を過ごせているのならば──目頭だって熱くなるってものだ。

 

「あー! アキヒロくん本当に泣いてる!」

 

「おいアキヒロ! ちゃんと顔見せろ! ──うわっ!」

 

「……良かったな」

 

 親と子が理不尽に引き離されるなんて、あっちゃいけないんだから。

 

 

 ──────

 

 

 家の中にいても身体が鈍る一方なので、せめてもと散歩に繰り出したらあちこちに巨大な石柱が突き出ていた。

 なんで?

 

「な、なぜ街中に石柱が……まさか町おこしか何かしてる?」

 

「そんな感じらしいねー」

 

「いくらかかるんだよこれの工事費用……あの木もそうなのか? ──まさか、クリスマスツリー的な!? 滅んだのに!?」

 

「アキヒロくん、何言ってるの?」

 

「ああいや……あの木はなに?」

 

「あれは知らない」

 

「えっ」

 

「うん、なんか生えてた」

 

「カビじゃ無いんだからそんなわけねえだろ!?」

 

 いくら俺が長く寝てたっつっても、せいぜい数日とかのはずだ。よしんば数年寝てたとしても、その間にあんな巨大樹が生えるわけない。

 

「誤魔化してるな早苗ちゃん!」

 

「あはははは! ご、ごまかしてなはははは!」

 

「流石に知らないは通用しねえからな!」

 

「いひひひ! や、やめっ……」

 

「わんっ!」

 

「──んなっ!?」

 

「わんっ! わうっ!」

 

「くっ……!」

 

 誰がセクハラクソ外道だ、うんこ犬って呼ばれたの根に持ちやがって……しかし、道ゆく人の視線が少し暖かいのも気になるところ、ここは大人しく引き下がってやる。

 

「ひぃ……ひぃ……」

 

「ほら、早苗ちゃん立って。いつまでも寝転がってたら汚れるから」

 

「…………ヘンタイ」

 

「ヘッ…………!?」

 

 俺が変態…………だと……? 

 そんなバカな──こんなに早苗ちゃんのことが大好きなのに!? 

 

「じゃあ変態じゃねえか」

 

「子供が好きなだけで変態呼ばわりは、むしろそっちの方が変態というか……」

 

「子供が好きな奴は世間一般的に変態なんだよ!」

 

「……変な意味じゃ無いぞ?」

 

「知るか! バカが!」

 

 最後の一言要らなかっただろ。

 お母さん聞きました? 

 この子、友達に向かって馬鹿って言いましたよ。

 

「うふふ」

 

 うふふ、じゃないが。

 全てを受け入れる菩薩かよ、何なら菩薩も全ては受け入れないし。

 娘さんの言葉遣い悪いですよー。

 

「カガミン君が悪いから良いのよ」

 

「すごい親子だあ…………ふむ」

 

 真面目に。

 何故か商工会の職員が大勢来ている。それもあのバッジ、本部直轄のやつだ。石柱の根元で何かの計測をしているようで──あれは魔素の計測器具だ。大抵は見たし使ったこともあるけど……あの石柱がなんかあるのか?

 永井先生なら何か知っているかもしれない。念のために写真を撮ろう。

 

 ……画質が荒いな。この時代のカメラ機能ってのは画素がどうにも低い。仕方ないことだけど、この程度の精度だと満足な話ができないかも知れない。もう少し近くで撮りたいところだが──不要なリスクか。

 一先ずはこの写真だけにして、他にどんなことをしているかを確認しなければ。

 

「アキヒロ、なにしてんの?」

 

「うん? いや、何でもないよ。職員がいっぱいいるなって気になってただけ」

 

「ふーん……まあ、色々あるんだろ」

 

「そりゃあな、色々無いのに来るわけねえ」

 

「行こうぜ」

 

「おう」

 

 その後も、街中に突き立った石柱には職員が必ずついていた。規制線を張っているようで、どうやら人が勝手に近付かないようにしているらしい。

 それでも住人たちは詰め寄って何かを聞いている。

 

『この街は本当に大丈夫なんですか?』

 

『調査中です』

 

『あの空は何だったんですか? 風も』

 

『調査中です』

 

『みんな不安なんですよ? 少しくらい教えてくれても』

 

『調査内容をお伝えする事はできません』

 

『それでも商工会なんですか!? もう少し人に寄り添った仕事を──』

 

『…………』

 

 やはり、この町では何かがあったらしい。

 何か…………俺は、それに巻き込まれた? だが、何だ? 

 一体なにに……

 

「加賀美さん、みんな行っちゃいますよ?」

 

「ん? おお……ありがとう、三船君」

 

「なにが気になってるんですか?」

 

「逆に、気にならない?」

 

「……ピュ、ピュ〜〜」

 

「なあ三船君、どうなんだい」

 

「うっ……」

 

 がっしりと肩を掴む。

 そう、三船君ならば教えてくれるはず! 何故なら俺たちは硬い絆で結ばれているのだから! 

 

「わふ……」

 

 男が子供を襲っているみたいで絵面はあんまり良く無いそうだ。

 …………普通に傷付いたぞ、何故ならちょっと納得してしまったから。俺の身長は180cm弱、対する三船君は160cmちょいで超絶顔が整っている。言われてみれば危ない場面に見えないこともない。

 なんなら言われなくても危ない場面に見える……かもしれない。

 

 ──話題を変えよう! 

 

「んんっ! ……ときに三船君」

 

「あ、はい! 何でしょう!」

 

「元気が良くていいね! …………腕の調子はどうだ?」

 

「…………」

 

 キュルキュルと、耳を凝らすとかすかに聞こえる音。果たして義手は彼の体に馴染んでいるのだろうか。多種ある中では比較的安いものだったが、戦闘に支障が出ない程度の性能があるやつを選んだつもりだ。ミツキにはこってり絞られたけど、必要経費ってやつです。お、俺が稼いだ金をどうしようが俺の勝手じゃい!

 

「……すっかり、元の左腕くらい馴染んでます」

 

「触覚とかに違和感は無いか?」

 

「はい!」

 

 クネクネと指先を動かす。滑らかすぎて、逆に生身じゃ無いことがわかってしまう。だけど使いこなせているようだ。

 

「最近は義手を付けてるってことを忘れそうになります」

 

「お風呂とか?」

 

「そう!」

 

「剣を振ってる時とか走ってる時も違和感無い?」

 

「うん!」

 

 受け答えからは、本当に変な事はないように感じられた。このまま長く使い続ければいずれは完全に肉体と馴染むだろう。

 そのことについてはすでに三船君に教えてある。ちょっと怖いけど、移植手術は高いからそっちの方が都合が良いってよ。

 

「確かに、稽古でもちゃんと振れてたもんな」

 

「…………!」

 

「頑張ってて偉い!」

 

「はい!」

 

「──おっと…………辺見さん?」

 

 割と楽しく話せていたと思うけど、シエルが割り込んできた。俺の脇をすり抜けて、三船君の両肩を掴む。何をするのかと先を待っていたらグイグイと日向たちのところへ押して行ってしまった。

 三船君も驚いている。

 

『シ、シエルちゃん!?』

 

『レイトはこっち』

 

『でも僕、加賀美さんと話を……』

 

『知らない』

 

『な、何でいきなり……あはは……』

 

 苦笑い。

 流石にシエルの手綱を完全に握れているわけではないか。なんなら、手綱を握られているのは三船君の方かもしれない。

 

「──もし」

 

「はい?」

 

「探索者の方ですね?」

 

「……ああ、商工会の方ですか」

 

「はい、アレの調査に来ているんです」

 

 唐突に肩を叩いたのは商工会の職員。職員の制服を着ているからすぐに分かった。アレ、と指差した例の石柱。調査ということで、そのうちガリガリと削って持って行くのだろうか。

 

「そうなんですね」

 

「何かアレについて情報はありませんか?」

 

「アレねえ……俺も大怪我して気絶してたっぽくて、何も知らないんですわ」

 

「そうなんですか、回復薬は?」

 

「いやそれがちょうど切らしちゃってて、しかもつい今朝がた目覚めたばかりなもんだから買いにも行けてないんです」

 

「そういうことでしたか……」

 

「じゃあ、失礼します」

 

「あ、すいませんね呼び止めてしまって」

 

「仕事ですから仕方ないですよ」

 

 事情が何か、むしろ俺が教えて欲しいくらいだ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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