【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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56_ま、まだ若いから(震え声)

 

「じゃあ、ごゆっくり〜」

 

「う、うるせえ!」

 

 ヒナコさんが戻ってきたから俺もようやく一人で寝る感じかと思っていたが、別にそんな事はなかった。ヒナタの寝室に行くと、すでに布団が敷いてある。この親子、フリーダム過ぎる……と困惑しつつも布団に潜り込んだらヒナタが切り出した。

 

「あ、そういえば私たち引っ越すから」

 

「唐突だな……えー……どこに?」

 

 めちゃくちゃ遠いところに行かれると会うのがますます厳しくなるぜ……せっかくヒナコさんも身体良くなったのに、そりゃあ寂しい。

 というか、この敷地を手放してわざわざどっか行くのかよ。仕方ないこととはいえ勿体ない気がしてならない。土地って、家よりずっと高いねん。

 

「どこだと思うよ」

 

「はあ?」

 

 ニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべる悪女。しかし、そういう変な質問をしてくるという事はトリッキーな答えなのかもしれない。この屋敷は捨てるけど、近くに家を借りるだけといったような。

 

「駅前とか」

 

「残念、ハズレだ」

 

「分かるかい!せめてヒントくれよ」

 

「……まあ、そのうち分かるから」

 

「じゃあ寝るわ……」

 

「もっと粘れよ!」

 

「蹴るな、痛いから」

 

 夜になっても全身が痛いのは変わらない。そりゃそうだ、大怪我してたらしいんだからな。一般人であれば入院必須の状態だろうよ。つまり今日に関しては、いつもみたいに数日起きてもダイジョーブ! なわけでは無い。

 さっさと布団に潜り込んだのにはそういう理由があるんですよ。お分かり? 

 

「あ、ごめん……」

 

「今の俺は小皇帝くらいの気持ちで扱ってくれ」

 

「は?」

 

「なんでもないです」

 

 三船くん達に関しては色々あったからしばらく稽古は休みだそうだ。俺も治るまでは探索者は休業だな。その代わり、治ったらすぐダンジョンに行くつもりだ。

 できるなら越生アンダーに潜りたいな、俺の最後の記憶の先を知る為にも。

 何故わざわざそんなことをするかって……だってこいつらが教えてくれないんだもん! 

 

「越生アンダーとかいうダンジョンなら消滅したぞ」

 

「は? ……なるほど?」

 

「お、おお……いやに聞き分けいいな」

 

「地殻変動でも起きたか?」

 

「……に、似たようなもんかな」

 

「…………おい、まさかダンジョンに行ってないよな?」

 

「へぇっ!? い、いやっ、行ってない! 行ってないぞ!」

 

「──行ったな!」

 

 そんなわかりやすい狼狽え方があるか! 今日日小学生でももう少しマシな演技できるわ! 

 

「ダンジョンに行くなんて……何考えてんだお前!」

 

「だ、だって…………しょうがないだろ……」

 

「しょうがないわけあるか! どこに行くとしても、お前が行ったところでなんの役にも立たない! ただ死ぬだけだ! …………待て、お前はなんで怪我も何もしてないんだ?」

 

「そ、それは──」

 

「いや……そうだな、無事なら良いんだわ」

 

 思わず興奮して、地球上の全俺が総毛立ち! 状態になっていた。布団を跳ね飛ばして起き上がったから埃が舞っている。しかし冷静になってみると、ヒナタはちゃんとここにいる──そうだ、無事なら何も問題は無い。怪我せず、病気せず、襲われず、心にも何もなければ、それで良い。俺が何を言おうが、すでに起こった事は変わらないんだから。

 クールだぞ、アキヒロ。

 

「怪我はしてないんだよな?」

 

「……ん」

 

「瞳を覗き込まれたりしたか?」

 

「してない」

 

「コマちゃんは一緒だったか?」

 

「………………」

 

「ヒナタ?」

 

「……一緒だった」

 

「じゃあやっぱり、コマちゃんが守ってくれたんだな」

 

「そう……だな……」

 

「今度何かご褒美をあげなきゃな…………なんでアンダー崩れてんの?」

 

「…………」

 

「なんで?」

 

「おやすみ」

 

「…………」

 

 これがミツキならくすぐり地獄に落としてやるところだけど……起きてからやけにムラムラするから、変な雰囲気になったら耐えられるか自信が無い。いかんいかん、そんな事になったら切腹だ。

 

「……はぁ」

 

 結局、追求はせずに寝た。

 色々と怖いから。

 

 

 ──────

 

 

「…………だいぶマシになったな」

 

 全身ひどい筋肉痛を更にひどくしたみたいな最悪の状況だったが、モンスターの肉を大量に食べて一晩寝たら結構回復した。

 ……ええっ!? この回復速度で昨日はあんな状態だったって、元はどれだけ酷かったんだい!? 

 冗談はよしてくれよ冗談はよ。

 いや、本当に。

 全身ミンチにでもなってたのか? 

 

「やっぱりあるわ……」

 

 廊下に出ると、あの樹が窓から見える。どうやら集団幻覚の類ではなかったようだ。昨日散歩に出た時は街のどこにいても見えたが、場所的には貝殻の洞窟に近い場所らしい。

 あの洞窟、樹になってしもうたん? じゃあ地下のナメクジとかどうなったの? 遺失物は? 樹にのみこまれた? 

 仮にそうだとしたらあまりにもひどい。

 ──おや。

 

「──っ! ──っ!」

 

 朝早いにもかかわらず、微かに聞こえる掛け声。三船くんが庭で素振りをしているらしき声が聞こえて来た。抑えてはいるが、息と一緒に声が漏れているようだ。

 サンダルを履いて見に行くと、冷え込んだ朝でも三船くんの体から湯気が出ていた。

 

「おはよう、三船くん」

 

「っ……!」

 

「?」

 

「お、おはようございます……」

 

 顔を少しの驚愕に染めていた。それだけにとどまらない。挨拶はぎこちないし、顔も気まずそうに逸らされてしまった。仲良しの間柄なのに妙だな……一体どういう事だい? まさか朝の特訓を見られて恥ずかしい、的な……思春期にありがちなやつか。

 

「精が出るな」

 

「!?」

 

「え? なに?」

 

「な、なななんでも、ないです……」

 

「お、おう……朝からやってるのは珍しいな」

 

「…………そ、そう! もう少し鍛えなきゃと思いまして!」

 

 非常に男の子していてとても良い。

 分かるよ、今の自分で本当にこの先やっていけるのか死ぬほど不安だよな。俺もたまには朝から……いや、流石に今やるのはきついわ。もう少し治ってからじゃ無いとあんまり意味がない気がする。

 

 ──砂利を踏む音が、一つ。

 

「あ、いた」

 

「あっ…………シ、シエルちゃん」

 

「なにしてたの」

 

「い、いや、ちょっと稽古を……」

 

 起きた時にいなかったから探しに来たのだろう。少し眠そうな瞼を持ち上げながらシエルがやって来た。

 

「…………本当?」

 

「ほ、本当だよ! ……ですよね加賀美さん!」

 

「してたな」

 

「ほら!」

 

「…………」

 

 シエルは何かが引っかかったのか、少しだけ顔を顰めて三船くんの顔を見つめている。なんだろう、今のやりとりで引っかかるところあったかな。

 

「…………あっ……」

 

「……どうしたの?」

 

 三船くんの顔を見つめたていたかと思ったら、何故か頬が紅に染まった。イケメン過ぎる事に気付いたのかもしれない。普通の少女のように照れ顔を背けている。珍しいねこういう顔を見るのは…………もしかして三船くんには割と見せてたり? 

 照れ顔と言うには少々、真っ赤が過ぎるか。

 

「えと、そ、そ、その……なんでもない、あっち行く……」

 

「え──ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 しかし、その場からの逃走を図るとまでは思わなかった。早歩きで立ち去ろうとする背中に着いていく三船くんに対して、シエルは拒絶の言葉を背中越しに放った。

 

「こ、来ないでって…………その……いいから……」

 

「どうしたのさ、いきなりそんな事言われても──」

 

「本当に……い、今、顔、見れない、から……」

 

「せめて理由を──」

 

「良いから着いてこないでっ……!」

 

「シエルちゃん……」

 

 俺は朝から濃厚な青春を摂取していた。

 ……お、俺だってまだアオハル? とかしてるわい! 

 

 しかし、シエルってここまで饒舌に話すんだな。俺の中の記憶だと『ある』『ない』『食べる』みたいな、カタコトに近い感じの喋り方してたと思うんだけど。緊張してただけだったのかな。

 

 三船くんはシエルに引っ張られる感じで朝の稽古を終えた。二人の間で更に一悶着あったようだが、三船くんが汗を流すために風呂場に向かったので一旦リセットだ。

 ヒナコさんが起きて来て朝飯を作っている間も、シエルはソファーを一つ占領してうつ伏せになっている。今日の三船くんの何かがシエルの心に刺さったのだろう。

 ……朝から頑張っている男の子にキュンときた、とか? 

 

「──おあよー」

 

 次に起きて来たのはヒナタだった。欠伸をかましながら入って来て、隣にどさっと座った。ソファーに体が沈んでいき、頭が横に倒れてくる。

 肩で支えると、そのまま目が虚ろになり始めた。

 

「せっかく起きたのにまた寝るのか?」

 

「ん…………」

 

 俺とヒナタだけならそのまま寝かせてやっても良いんだけど、この場にはシエルとヒナコさんもいる。そんなみっともないところを見せて、逆にお前は良いのかと問いたい。

 

「…………ん〜……」

 

 うるさいなあ、とでも言いたげな唸り声。赤ちゃんがぐずっているのと大差ない。どんだけ眠いんだよ、普通に布団で寝てろよ。

 

「ヒナタ、眠いなら布団で寝な」

 

「………………ん゛……」

 

「……ヒナコさん、どうします?」

 

「そういう時は大抵夜更かししてるのよね」

 

『う゛』『ん゛』『゛』『ゥン』

 ただの鳴き声を漏らす日向をツンツンしていたら早苗ちゃんも起きて来た。

 しかし、どことなく様子がおかしい。ギシギシとロボットダンスを踊っているような挙動でリビングに入って来たのだ。

 

「からだ、いたい」

 

 ロボットみたいな口調だ……

 

「骨がミシミシ言ってる……」

 

「骨が……ミシミシ……?」

 

 怖いんだが。

 寝てる間に折れた? それとも、良くないものを知らずに長年摂取し続けてて症状が出たとかじゃ無いよな? 

 

「ヒナコさん、早苗ちゃんの様子がちょっと変なんですけど」

 

「変?」

 

「骨がミシミシ言うって」

 

「骨がミシミシ…………?」

 

 ヒナコさんは心当たりが無いらしい。

 そうなるといよいよ分からんな。

 

「病院連れて行きます?」

 

「……そうね、お願いできるかしら」

 

「朝ごはんだけ食べたら」

 

「ええ、ありがとうね」

 

 怖いなあ……

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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