【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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59_モヒカン光の如し

「稽古ができないなら……帰るのも手だな」

 

「え」

 

「ほら、ここに来たのって三船くん達を鍛えるためだし、それが出来ないならちょっと早いけど他のことに時間を使った方が良いかなって」

 

「…………」

 

 日向達に内心を打ち明けた。

 俺たちは、色々楽しくやってはいるけど遊びに来ているわけじゃない。あれだよ、泊まり込みの研修みたいな。

 期せずして俺も強くなったけど、記憶無いし実感無いし、貝殻の洞窟に行こうと思っても無くなってるっぽい。魔剣の調子を確かめる為にも、早く全力で戦える相手を探したい。

 昨日からさらに1夜が明けて、俺は絶好調なのだ。寝そべっているだけで飯が出来上がる環境もなかなか悪く無いが、それよりも先を目指したい気持ちが強い。

 

「も、もうちょっと待てって、商工会がいなくなればみんな落ち着くだろ」

 

 そんなこと言われても……商工会がいなくなるのって何時よ? 大丈夫? なんかそろそろ雪降りそうだけど。だいたい、自分の家にこんなに長く他人がいたら良い加減うんざりしないか? 自分の家なのに一人でのんびり出来るところが少なすぎてストレスフルな環境に変えてたら申し訳ないぞ。

 

「それ気にするならもっと早いタイミングがあるだろ!?」

 

 今気付いたしな。気付いた時点で無視したら悪いじゃん。

 

「カガミンくん……頭が……」

 

 頭がおかしいかおかしくないかで言えばこの世で1番正常な自信はある。それは置いといて、三船くんのことを見ないといけない。シエルと二人、意外ともういい感じに仲に慣れているような気がする。つまり、できることはもう無いんじゃないか──的な? 稽古も良いけど、やっぱり命の取り合いが1番成長する。左眼が潰されたり、股間撃ち抜かれたり、人は痛くなきゃ覚えないんだ。

 

「そ、そんなことねえよ……」

 

 あるだろ。

 確かに日向達と一緒に暮らすのは楽しい……それは本当だ。だけど、端末ぶっ壊れてリュックも壊れて回復薬も枯渇して、しかも気絶して数日経過していた。ミツキ達と暫く連絡が取れていないんだ。

 きっと今頃、寂しくて月に吠えているに違いない。

 

「ええ……」

 

 ミツキはそういうトンチキなところがある。幼馴染の俺が言うんだから間違いない。小学生の時も、学校の池にいる魚を見たあとに『お魚さんかわいかったね!』とか言ってた。俺はあれを聞いて、一生こいつの感性とは合わないなと確信したよ。

 

「いや、普通じゃん」

 

「普通だね」

 

「普通ねえ」

 

 脚が生えてる魚が普通なわけないだろ! 良い加減にしろ! 鳥は腹を膨らましてジェット噴射なんかしないし、ウサギは首なんか刎ねないし、ライオンは鬣をマシンガンみたいに飛ばさねえんだ! そんな事もあるよな……ねえよ! 

 

「何言ってんだこいつ」

 

「しょうがないよ、コマちゃんの飼い主だもん」

 

「元気ねえ」

 

 何が言いたいかと言うと、やっぱり一度帰るのが正しい気がするんだ。ここでいつまでもヌクモリティライフを送るのはあんまり良くない。

 

「異議あり! 一度決めたことを放り出すのは男らしくないと思います! まだ1週間以上残ってるんだよ!」

 

 そうは言うけど、暫くは商工会が厳戒態勢を敷いてるから他のダンジョンにも行けねえじゃん。こんなタイミングで支部に行こうものなら『えー、加賀美明宏。11時15分、現行犯逮捕』とかされない? 

 

「良くわかんないけど、もうちょっといて欲しいなあ……」

 

「早苗ちゃん…………」

 

「ダメ?」

 

「くっ……!」

 

 これが忍者の末裔である日本人の末裔である蒼連郷の人類! 汚い! 自分のチャーミングポイントを的確に活かして俺の弱点をついてきやがる! 

 

「ロリコンがよ」

 

 それは早苗ちゃんに刺さるのでは……

 

「ひ、日向ちゃん……私のこと、そんなふうに思ってたの……?」

 

 俺は子供が好きなだけで、それは性的嗜好とはあんまり関係無い。純粋で、無垢で、触れ合ってるだけで心が洗われるような気分になるんだ。癒しというか、目の保養というか……

 それを性癖と呼ぶならそうかもしれないけど。

 

「と! に! か! く! もうちょっと居てよー!」

 

「……とりあえず、端末貸してもらえる?」

 

「え? ……はい」

 

「ありがとう」

 

 まずは、ミツキ達に連絡をしないと。端末が壊れたのと考えることが多すぎたのとで、起きてから一度も連絡してなかったからな。普通に忘れてたとも言う。

 えーと番号──

 

「──アキヒロ!!」

 

「あ、ちょっと待──コウキさん!?」

 

 ガタガタうるさいなと思ったらモヒカンが現れた。しかも見覚えのあるモヒカンだ。

 これはもしかして夢なのかな。

 それも悪夢の方。

 

「生きてたか!」

 

「なんでいるんです!?」

 

「ここがダンジョン化に巻き込まれたって聞いたんだよ!」

 

「ダ、ダダダダンジョン化!?」

 

「そうだよ! 知ってんだろうが!」

 

「いやいや……ダンジョン化ってなんすか!?」

 

「ダンジョン化はダンジョン化だろうが! バカか!」

 

「──ああ!? バカはお前だろうが! モヒカン刈り取るぞ!」

 

「んだとコラあ!」

 

「そもそも、人様の家に勝手に上がり込んでんじゃねえ!」

 

 呆気に取られた山田一家。

 コウキさんはハッと気付いたのか、慌てて頭を下げた。

 こんな事にすら気が回らないチンピラ上がりですいません。

 

「──いきなりすみません、四門光輝(ヨツカドコウキ)です」

 

「えっと……山田日奈子(ヤマダヒナコ)です」

 

「…………」

 

「…………」

 

 早苗ちゃんと日向は反応できずに俺の後ろに隠れてしまった。うん、ヒャッハーなモヒカン野郎が家に入り込んできたらそうなるよな。俺も今すぐ部屋に引き篭もりたい気分になったよ。

 

「二人とも、このオッサンは危ないから後ろに隠れてるんだぞ」

 

「おおい! わざわざ見にきたのにそりゃねえだろ!」

 

「頼んでないんだよなあ……」

 

 幼馴染の父親がわざわざ友達の家にまで押しかけてくるの、あまりにもキツイ。コウキさんが美少年だったら良かったのに。それか、ミツキだけで来てくれれば良かった。

 冷静に考えて、知り合いのおっさんが心配で様子を見にくるというのが字面だけで怖すぎる。家庭を顧みろ、バカが。

 

「あのさあ……俺ってもう成人だからさあ……あの〜コレ真面目なアドバイスね? こういう過干渉ばっかしてるとマジでミツキがおかしくなっちゃうから、もう少しだけ子供から離れる特訓とかしてみようぜ? ミナさんだって、夫が娘の幼馴染にご執心とかドン引きしてるはずだな、うん。俺も一緒に謝るから、二度としない方がいいぞ?」

 

「ちげえよ! できるなら俺だってミナとイチャイん゛ん゛っ! …………ミツキとミナに見て来いって言われたんだよ! 誰が好き好んでこんなところまで顔見るためだけに来るんだよ!」

 

 思う存分ミナさんとムラついていれば良いのに……

 

「うるせえ!」

 

「そもそもどうやって来た?」

 

「走ってきたんだよ!」

 

「……そっか! おつかれ! バイバーイ! 帰って良いぞ! あ、端末ぶっ壊れたから俺に通話かけても意味ないって言っておいて」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

「そうだよな……もう引退しちゃったから伝言なんて難しい業務こなせるわけないよな……ごめん光輝さん。早苗ちゃんの端末借りてるからちゃんと自分の口で伝えるよ。コウキさんはやって来たけど、何もせずに帰って行ったって」

 

 とんでもない頭脳労働だもんな……元一級探索者には荷が重すぎたか。せめて現役の一級探索者じゃないと厳しいって、そんなの当たり前だよな。

 はぁーあ、コマちゃんでも出来ると思うけどなあ。

 ……元一級探索者のオツムは犬以下ってことですか!? 

 

「な、なんか明宏くんテンション高くない……? 明らかに口数が回ってるというか……」

 

「…………」

 

「……日向ちゃん?」

 

「…………ふんっ」

 

 あっ、おいコラ! 俺は一応怪我人だぞ! そんで、レベルも30いかないぐらいの三級探索者に元とは言え一級探索者が手を出すってことは商工会業務規則に抵触しますよ! 

 

「うるせえ! 髪むしってやる……ん?」

 

「なんすか」

 

「なんかお前…………いや、いいわ」

 

「いや気になるから言えよ」

 

「ああごめんねえ! 頭脳労働が苦手だから、今何を考えたのか忘れちゃったわ!」

 

「側頭ハゲが……」

 

「ハゲてねえよ! 剃ってんだよ!」

 

「今何歳だ、言ってみろ。40超えてそんな髪型にしてるやつは自分が周りからどう見られてるか客観視できてない痛いおっさんだぞ」

 

「や、やめろ…………いや、お前だって客観視できてねえじゃねえか! そもそも俺は若いから良いの!」

 

「けっ」

 

 確かに、光輝さんは若い。見た目だけなら俺より少し年上くらいだ。

 高レベル探索者の宿命として、おそらく寿命がバカ長くなっているというのがある。おそらく、というのはまだ世界が変わって100年しか経ってないので実際のところを観測できていなところに由来する。これが後100年経てば、レベルによる寿命の違いについての論文も出せるところだ。

 ……探索者の研究って、内容的にはピッチドロップ実験みたいな感じなのかもしれない。

 

「客観視は置いておくとしても、モヒカンはどうなのという話は昔からあるんですけど」

 

「良いだろうが! モヒカンかっこいいだろ!」

 

「…………もう良いから帰って?」

 

「はぁ…………まあ、無事なのがわかって安心したよ──お、コマちゃんもいた。ミツキが騒いでたぞ、コマちゃんもいないーって。相変わらず真っ黒だな」

 

「わんっ」

 

「おーヨシヨシ、うちの子になるかあ?」

 

「…………」

 

「あっ……」

 

 なんだコイツ……みたいな目でスルーされていた。モヒカンが犬にスルーされる。あまりにもシュールすぎる。

 

「じゃあな、怪我すんなよ」

 

「コウキさんもな」

 

 やってくるのが光のような速さなら、いなくなるのも光のような速さだった。滞在時間30分ぐらい。

 パワーで物理的な距離を押しつぶすのは流石の元一級探索者だな。

 …………ん? 

 なんか、大事なことを忘れているような……

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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