【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
加賀美明宏。
お兄ちゃん。
正直言って、私はこの人のことが苦手だった。
今でこそタダの牛肉バカだって分かってる。
でも、子供の頃の私にはお兄ちゃんが完璧超人に見えた。
勉強も運動も学校で一番。
優しくて落ち着いている。
いつも人に囲まれていた。
凄い人だって思っていても、劣等感があった。
お母さんやお父さんがお兄ちゃんに干渉しないのは、信頼の証のように見えた。
その事で反抗したりもした。
お兄ちゃんばっかりって。
2人は必死に言葉を紡いでいたけど、あの時の私にはそれがますます癪に触った。
困ったお母さんが頼ったのはお兄ちゃんだった。
部屋に閉じこもった私へ、あの人は扉越しに語りかけてきた。
『お前が話してくれるまで、俺は学校に行かない』
それで私は意地悪をした。
話をせずに無視をした。
それから1ヶ月、お兄ちゃんは本当に学校に行かなかった。
1週間を過ぎた時点で私は既に意固地になってしまった。
美月さんが家に押しかけてきたりして、大事になっているのは分かっていたのに。
でも1ヶ月と2週間が過ぎて、私も耐えきれなくなった。
所詮は小娘の精神力。
お兄ちゃんに勝てる筈が無かった。
訪れた部屋をノックして返ってきたのは、のんびりとした声。
『んはぁい、どうぞ』
扉を開けると、お兄ちゃんは驚いたように見てきた。
ベッドに寝転んで本に囲まれていた。
ちょうど「モンスター生態」という本を読んでいるところのようだった。
でも、すぐに柔らかい笑顔に変わった。
『どうした?』
『…………』
なかなか言葉が出てこない。
怖くて部屋に来ただけで、意固地な気持ちが完全に抜けたわけじゃ無かった。
『取り敢えず、お茶でも飲もうぜ』
そう言って、冷蔵庫からジュースを取り出した。
お茶とは一体なんだったのか。
そんな疑問を口に出す事もせずコップを受け取った。
『……』
ちびちびと飲んで、それでも話し出すことができない。
『まあ、無理には聞かないけどさ』
『……』
『言いたいことがあるなら何でも言っていいぞ』
何でも。
それは、本当に何でもなのだろうか。
言ったら怒ったりしないだろうか。
分からない。
私には分からない。
加賀美明宏という人間は、理解するには遠すぎた。
『じゃあ、勝手に言うぞ』
『え……?』
『俺の夢だ』
ベッドに乗っている本。
その中の一つを手に取り、私に押し付ける。
『いかにして畜産は崩壊したか……?』
そんな文句が書いてある本。
ペラペラとめくると、超高級食材である牛の絵が載っている。
『茜、お前は牛肉に興味はあるか?』
『……?』
意味がわからなかった。
『牛肉、食べたくは無いか?』
『食べる……?』
無理。
私だって、牛肉が高いことくらい知っているんだから。
それを食べるって、何の話?
何でこのタイミングでその話をするの?
『俺は探索者になる、そう決めた』
『たん、さくしゃ……』
『茜、この1ヶ月どうだった』
矢継ぎ早に繰り出される言葉を処理するには、あまりにも混乱していた。
何がどうなってこうなったのか。
私は機械のように、お兄ちゃんの言葉を聞いて頷くしかできなかった。
『──というわけで、探索者になるのが牛肉を食べるのに手っ取り早いんだよ』
『う、うん』
説明を聞き終わる頃には、日が暮れていた。
取り敢えず、私は理解した。
この人はおかしい。
多分、頭の中は牛肉で埋め尽くされている。
勉強が出来るとか、運動が出来るとか、みんなに人気だとか、そういうのは全部この人にとって些事なんだ。
そうだって分かってから、自然と接する事ができるようになった。
だから今は──
「お兄ちゃん、お小遣いちょうだい」
「えー、またぁ?」
「ちょーだい!」
「はいはい、5千円な。約束通り、ちゃんと勉強はしてるか?」
「うん、はいコレ成績!」
「おっ! ──ちゃんとやってるな! 偉いぞ!」
お兄ちゃんの家に顔を出して、お小遣いをねだっている。
ニコニコで渡してくるから、ウィンウィンだ!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない