【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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61_まともなのは私だけか!?

「加賀美……お前、ダンジョンに行くのは禁止な?」

 

「ははっ!」

 

「………聞いてるのか?」

 

「聞いてますよ?ええ」

 

こっそりついて行った私たちが目にしたのは、先生様の話を軽く聞き流す加賀美だった。ニコニコと笑んではいるが、そこに萎縮した様子は全く無い。本当に聞いているだけだ。

 

「お前の成績ならもっと良い大学にだっていけるんだ!こんなことしてないで勉強に集中しろ!」

 

「お目当ての大学には行けるんで、これ以上の勉強量は必要無いですね」

 

「真面目に聞け!」

 

「進路は決まってるんで、失礼します――――お?何してんだお前ら」

 

まさか、優等生で生徒会長のアイツが話をぶっちぎって廊下に出てくるとは思わず。私たちは全員が全員、バレてしまった。

だけど、アイツは笑っていた。

 

「覗き見してたなあ!?結構結構!」

 

何がおかしいのか、ポケットに手を突っ込んで高笑いしながら去っていく。先生も加賀美を追って廊下に出てきたけど、どこかバツが悪そうにしていた。

 

「お、お前らいたのか……アイツの真似すんなよ!?」

 

ブンブンと首を縦に振った。

当然だ。

誰が好き好んで外れ職業になんてならなきゃいけないのか。あんなのはアウトローが行き着く先で――以前の私が辿り着くような職業のはずだった。

 

「全く……何でいきなりダンジョンなんて……誰に吹き込まれたんだ?」

 

その言葉に反応して、ガヤガヤと廊下で騒ぎ始める。

 

『絶対に四門だ……』

 

『四門さんだよね……』

 

『うん、だってお父さんがあれだもんね……』

 

『あのモヒカンのね……』

 

『一級探索者だったからな』

 

「あぁもう!やめやめ!私が悪かったからその話禁止!」

 

愚問としか言いようがなかった。

四門光輝。

自分の名を冠する異能を持つ、一般人ですらが知っているほどに高名な探索者。

その男の実子が、あの四門美月だ。

アレからコレが生まれるとは、世の中わからない。

 

「――え?」

 

「だからさ、四門さんって加賀美くんと仲いいじゃん?」

 

「………な、仲が………うか……おさな……です」

 

「明宏くんが最近ダンジョンに行ってるのって、四門さんのお父さんの影響?」

 

「…………」

 

「どうなの?」

 

「………うう」

 

先ほどの件で四門に聞きにきたクラス連中。私も、生徒会の一員としてアイツの行動には気を付けておく必要があるから一応着いてきた。

だけど案の定、しどろもどろになっていた。

まともに会話できる奴が加賀美しかいないという悲しい習性でどうやってここまで生きてきたのか。

そうなると聞いているヤツもだんだんイラつき始める。名前は知らないけど同じクラスのはずだ。結構な頻度でアイツに話しかけてるから顔だけは覚えた。

 

「あのさあ、せめて顔見て言葉話すくらい出来ない?」

 

「ご、ごめ……さい………」

 

「………明宏くん、なんでこんなのを幼馴染にしてるんだろうね」

 

「うう……あきぃ……」

 

そういえば、アイツはもしかしてコレも見ているのか……そう思って振り返ると、顔が半分だけ見えていた。

 

「…………」

 

見なかったことにした。

こんな状況でも無言で優しい目を向けている。

……四門がこうなったのってもしかして、加賀美のせいなのでは無いだろうか。

 

時は変わって放課後。集まったメンバーたちが作業をしているのに、一つだけあるソファーでふんぞりかえっていた。

こちとら必死こいて数字と睨めっこしているのに、何を呑気に……しかも、腕が溶かされたのに。

 

「――ああ、ダンジョン楽しかったなあ」

 

加賀美の一言を皮切りにロイスが騒ぎ立て始める。

 

「先輩!ダンジョンいったってマジだったんすか!?」

 

「ああ、刺激的だったぜ」

 

「ウチとどっちが刺激的っすか!?」

 

「100:0でダンジョン」

 

「ええ〜!」

 

「見ろよコレ、腕溶けたんだぜ」

 

「ちょっと!無茶しないでくださいよ!コマちゃんのお世話する人がいなくなったらどうするんですか!」

 

「俺の心配しろよ」

 

「だって心配しても無駄じゃ無いっすか!」

 

「おいソフィア、どう思うよこいつ」

 

「ふふふ」

 

「ソフィアは先輩じゃなくて俺の味方だもんなー!」

 

「ふふっ」

 

「舐めてんのかお前ら」

 

だんだんイライラしてきた。こっちは色々気を揉んでるのに、こいつらときたら能天気に話をしてやがる。

 

「も〜……会長、ヒナタ先輩が怒ってますよ?」

 

「怒ってねえよ」

 

「ほら、怒ってるじゃないですか」

 

「怒ってねえっつってんだろ」

 

どいつもこいつも、適当なことばっかり言いやがって……まともなのは私だけか?

 

「会長、ダンジョンに行くのはそれこそ自由……いや、やっぱり自由じゃ無いよ!私たちを生徒会に誘っておいて自分はやりたいことやるって許されないですから!」

 

「それがなんと……!今だけ……!許されちゃうんです……!」

 

「許されないです」

 

「学生って自由で良いよな……」

 

「会長が自由すぎるだけですから!」

 

「今回は事故ったけど、次はもうちょい何とかやるぜ」

 

あまりにも楽観的。

もう少し緻密に計画でも練っているのかと思えば……そんな程度の考えでやっていた。それがわかった途端、ブチッという音が聞こえた気がした。

 

「てめぇ……!良い加減にしろっつってんだろ……!」

 

「ちょ、ちょっと山田先輩!落ち着いてください!」

 

こいつは本当に、止めなきゃいけない。私たちをこんなところに引っ張り込んだ責任を果たす義務があるんだ。それなのに死なれたら……困る。

 

「深山!お前だってコイツの後釜なんざごめんだろうが!」

 

「………」

 

「こいつ……初めからこのつもりで……!」

 

無言だった。

それどころか冷静に、顎に手をやって何事か考えているようだった。

そして、何かを思いついたのかニヤリと笑う。

 

「山田、お前もダンジョン探索部に入るか?」

 

「………!」

 

あまりにも頭に来て、言葉が出てこなかった。

 

「っ!?――深山!離せ!」

 

「はいはーい、落ち着いてくださいね〜」

 

思ったよりも力が強くて、羽交い締めの状態から復帰できない。振り解こうにも、無理に動けばそれこそ深山が怪我をしてしまう。加賀美にボコられてから母ちゃんにシメられて、少しは私も学んだ。無闇に人を傷つけるのは良くない。

だけど、どうにかこのバカをぶっ飛ばしたかった。

 

「どうどう」

 

「馬じゃねえ!」

 

「山田先輩、良いから落ち着いてください。みんな怯えてますから」

 

「……ちっ………」

 

「おお……成長だ……」

 

「お前らは何とも思わねえのかよ!」

 

メンバーの顔を見る。

どいつもコイツも気まずそうにしやがって。思うところがあるくせに事勿れで済ませようとする。肝っ玉の座ってねえ奴らだ。

 

「だって……」

 

「ねえ?」

 

「先輩の決定を曲げるとか無謀じゃん」

 

「山田先輩だってよく知ってるじゃないですか」

 

「休憩時間の度に教室まで誘いに来るような人を止められるなら、止めてみて欲しいです」

 

何とか言ってやりたかったが、何も言えなかった。

 

 

――――――

 

 

「アキィ〜!」

 

「……どうした?」

 

「みんながお父さんのことばっかり聞いてくるんだよお!絶対アキのせいじゃん!」

 

「そうだな」

 

「ドヤ顔!?せめて罪悪感を持ってよ!」

 

「うん」

 

「うんじゃなくて……もう!」

 

「……とりあえず帰ろうぜ」

 

「うん!」

 

「じゃあな、お前ら」

 

「あっ…………しまーす……」

 

明宏が帰った後。

生徒会室には暫しの沈黙が流れた。それは、彼と山田日向の間に怒った喧嘩――と言っても一方的なものだが――の気まずさが残っていたからだ。

当の本人はムカムカとした気持ちのまま、ソファーで背筋を伸ばしていた。不良になろうが、グレようが、培ってきた振る舞いは身体に染み付いている。

 

「ちっ……」

 

スン、と伸びた背筋のまま顔を歪めて舌打ちをするものだから、生徒会の面々は妙な笑いを堪えるので必死だった。あまりにもヤンキーというものが板につかないのが日向の滑稽なところであり、魅力でもあった。

明宏が彼女を路地裏で見つけた時も、ヤンキー座りをしているつもりで蹲踞をしていた。一人だけ明らかに立ち振る舞いが違うので、屯している不良共の中に紛れる事がないのだ。

 

「まあその……本当に先輩を止めたいなら、ダンジョン……っていうか焼肉よりも夢中になれるものを提示するしかないんじゃ――ぶははははは!」

 

自分で言いながら吹き出したロイス。焼肉より夢中になれるものってなんだよ、と周りのメンバーもクスッときていた。日向以外には明宏の探索者志望について積極的に反対するメンバーはいないが、ロイスは殊更に、明宏がダンジョンに行くことについて賛成寄りのメンバーだった。

というのも、助けられた実績がある。あの人ならきっとなんだってやってくれると、根拠アリな信頼があった。

黒く澱む呪いに囲まれたロイドに再び太陽の光を見せてくれた男。それはたまたま観光に来ていた、そしてコレまた偶々同じ高校の先輩だった。

ソフィアを助けるため、秘匿されたダンジョンの深奥にズンズンと進んで行った明宏の背中を今も覚えている。

 

「………」

 

結局、本当にやりたいと思ったことに取り組んでいる人間を止める事ができる人間など、いないのだ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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