【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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予約投稿を出来ていなくて、自分への怒りが凄いです。


67_修行の成果1

 

「──僕と戦ってください!」

 

「…………?」

 

「これまでの成果をお見せしたいんです!」

 

 それは、唐突な申し出だったが、ちょうど良くもあった。

 

 帰るまで残り2日。既に加賀美明宏のやり残したことはない。強いて言うならば巨大樹に行きたかったが、職員達が多くて近寄ることは出来なかった。何やら物々しい雰囲気が広がるあそこには、きっと何かがあるのだろう。

 依然として商工会による調査は町中で続いているが、少なくとも明宏が何かをできるような感じは無い。

 ダンジョンも無くなった。嘘だと思うかもしれないが、周囲のダンジョンは根こそぎ消滅している。つまり、探索者がいる意味は無いのだ。商工会支部が無くなる事はないだろうが、所属している数少ない探索者達は移籍せざるを得まい。それか別の職にでもつくか。

 

 ダンジョンに行くこともないし、ものすごく暇なタイミングだった。

 そして、この顔つき。

 どうやら、数日前に聞いた頼み事とはこれのことだったらしい。

 当然、快諾。

 お互いに木刀を持ち出して構える。

 見物人も多い。日向達が引っ越すという事で挨拶に来ていた人間達が、庭で構えている2人を目ざとく見つけて滞留していた。

 わざわざゴザを敷いて酒を呑んでいる輩も。

 

『あのいかつい兄ちゃんがカガミで、あっちの嬢ちゃんがレイトってんだよな』

 

『バカ、ありゃあ男の子だよ』

 

『えっ!?』

 

 こんな大仰なことになるとは思っていなかったレイトは、照れていた。

 

「ちょ、ちょっと恥ずかしいです……」

 

「まあそういうなって、こういうのも中々悪くない」

 

「……そう……です、ね……よし!」

 

 しかし、明宏は構えない。ダランと手を垂らし、握った木刀の先は地面についている。

 

「……構えないんですか?」

 

「俺は武道家じゃないからな。対人戦も専門じゃ無いし」

 

 明宏が戦う場に始めの合図は無い。見つけた側が攻撃を仕掛ける。背後からの急襲あり、飛び道具あり、一対複数あり。要は何でもありなのだ。

 よーいドンで構えろと言われても、何をすれば良いかわからない。剣道の真似事をしても良いけど、そういうのは求められてないだろう。

 取り敢えず待ちの姿勢を見せる。こうなると、レイト次第だ。

 

『……全く動かないぞ』

 

『バカ、もう始まってんだよ』

 

『──まさか!?』

 

『ココ(脳みそ)でやってんだよ』

 

「…………っ!」

 

 レイトは攻めあぐねていた。目の前の男と戦うのは初めてだが、その戦い方はある程度わかっている。基本的には魔剣の切れ味に任せた突撃戦法。

 だが、無鉄砲では無い。

 何せ、彼は1人で探索者稼業をやっている。

 突撃するという事はつまり、恐怖が少ないということだ。後は流れでができるタイプだからこその雑な戦術。

 単純にレベル差がある相手だから勝てないというのもある。

 

「それでも……!」

 

 握りしめた木刀を右に流しながら駆け出した。

 

「──」

 

 履いた草鞋が地面に触れるたび、彼との距離が近くなる。微動だにせずレイトをいつもよりもヌボーッとした目付きで見返す男は、その右手に携えた木刀をどう振る気か。

 このまま動かなければ左腕に一発喰らわせる。相手はレベル30の探索者、その程度では怪我もしないだろう。

 それでも一本は一本だ。

 

 やがて間合いへ。

 ──間合いという概念すら、ここにやって来る前のレイトは知らなかった。漠然と、武器の長さという認識しかしていなかった。しかし、武器の長さと間合いは全く違うものだ。

 同じ武器でも、違う人間が持てば間合いは微妙に変わる。たとえ同じ腕の長さをしていてもだ。

 明宏の身長はレイトよりもかなり高い。

 つまり、レイトの間合いに入ったという事は明宏にとっても間合いの圏内だという事。

 しかし動かない。

 何故を考えられるほど、レイトの思考速度は速くない。

 ただ、好機と考えた。

 

「はぁっ!」

 

 踏み込んだ軸足に体重をかけ、これまでの勢いを円運動に転換させる。流れていた剣と腕を一気に左へ回し抜いた。

 

「…………」

 

「…………え?」

 

 直撃。

 明宏は結局最後まで動かず、木剣を左腕に受けた。

 

「いってえ…………」

 

「か、かがみさん!?」

 

 素っ頓狂な声を上げるレイト。

 慌てて木剣を放り出すと、明宏の腕を撫で始めた。

 当然、周りの観衆もザワザワとし始める。

 当然だろう。

 血湧き肉躍るようなひりついた剣劇を期待していたのに、普通に傷害致傷事件が起こったのだから。

 

『……何だ今の』

 

『マジで何も動かなかったぞ』

 

『何してんのこれ』

 

『バカだなお前ら……ココ(心臓)でやってんだよ』

 

『いや、腕に喰らってたけど』

 

『痛えって言ってたな』

 

「かがみさん! 何で何もしなかったんですか!?」

 

 もはや抱きつく勢いで腕を撫でているレイトは、心臓がドキドキと鳴って止まなかった。恩人の腕を思いっきり──メキャッて音がするくらいの全力で打ち付けてしまった。

 罪悪感がすごい。

 成果を見せようと思っただけ。

 褒めてもらおうと頑張ったのに、すっごい悪い事をした気分だった。

 

「実は…………」

 

「ゴクリ……」

 

「ごめん……どうすれば殺さないようにやれるか考えてたら全然動けなかった……」

 

「うぇええっ!?」

 

『おい、殺さないようにとか言ってたぞ』

 

『気のせいだろ』

 

『まさか殺し屋なの?』

 

『確かに探索者の殺し屋とかもいるらしいけど……こわっ!』

 

『嘘だろ、山田さん殺し屋を泊めてたのかよ』

 

「あ、あわわわわ……」

 

 このままでは明宏が殺し屋だという勘違いがすごい勢いで拡散されてしまう。早く弁明してくれと腕を揺さぶった。

 

「加賀美さん!」

 

「ああ……いやほら、俺が人間と戦うのってダンジョンで襲われた時くらいでさ……」

 

「お、おそわっ!?」

 

「ん? うん、そうだけど」

 

「襲われるって…………あっ──」

 

 そういえば、講習で聞いたことがあった。ダンジョン内で人間同士が争うのは基本的に御法度だけど、犯罪者や他団体、別の地方からやってきた人間に襲われた時は躊躇するな、と。

 レイトは明宏と一緒にいるからかそういう輩に出会った事はなかったが、明宏自身はそうじゃ無かったのだ。

 

「流石に俺も聖人君子じゃ無いから、襲われたら戦うよ?」

 

「そ、そうですよね……」

 

 同意しつつもショックを受けていた。

 彼も人を殺した経験があるのだ。

 

「いや本当にごめん。こんな空気にするつもりなかったんだけど……もう一回やらせて! お願い!」

 

「わ、わかりました」

 

『おっ、なんかもう一回やるっぽいぞ』

 

『今度はちゃんとやってくれよー』

 

『今度も動かないに銀貨一枚を賭けよう!』

 

『俺は賭けない』

 

『私も』

 

『……んだよお!』

 

「こ、今度はちゃんとお願いします!」

 

「本当にごめん……じゃあ、ちゃんとやるか!」

 

「っ!」

 

 大の男がペコペコと頭を下げる姿に、戦闘の気配は散ってしまったかに思われた。しかし、快活に笑った男の瞳を見たレイトは自然と構えていた。

 

『いやいや……目ぇこわっ』

 

「いくぜっ!」

 

 どこか荒々しくなった口調で、今度は明宏の方から向かってきた。

 

『今度は兄ちゃんの方からか!』

 

『さっきと顔付きが違いすぎるような気が……?』

 

『あんな目つきで睨まれたらちびるわ』

 

 出力を調整しているのか、先ほどのレイトと同程度の速度で接近してくる明宏。鞘に納刀したのと同じように手で持ち、スプリンターのような走りを見せる彼に対して大上段に構える。

 

『おっと、天の構えだな』

 

『そうだな……ちと構え方はなってないが』

 

『1ヶ月なんだからこんなもんだろ』

 

 雲の構え、地の構え。それぞれが攻撃、防御偏重の構えだが天の構えは攻防のバランスを取った型。大上段というと隙が大きいように見えるが、振り下ろすという作業は剣を振る動きの中では最もシンプルだ。それ故に、レイトのような初心者は天の構えを用いることが多い。基本的には真正面に構え、少しずつ自分のイメージ通りの動きに近づけていく。その中で攻撃に偏ると雲の構えへシフトするし、防御に寄ると地の構えにシフトする。

 道場の一員の中ではぶっちぎりでヘボなレイトは、当たり前だが天の構えだった。

 

「──よっと!」

 

 特に躊躇いなく突っ込んできた男は右手を柄にかけ、居合を抜き放つフリをして、スライディングをしかけた。

 

「ううわっ!? ──あ」

 

 右脚を狙ったそれは、サッカーであれば間違いなく反則の一撃。脛をやられてはたまらないと飛び退いたレイトは、空中で顔を固まらせた。

 男の目が、強くこちらを見ていた。スライディングの体勢から起き上がりながらゆっくりと、再び剣に手をかけた。

 こちらに見せつけるような動き。

 やがて、左手で作った鞘から木剣が引き抜かれていく。

 

「…………っ」

 

 動け…………動け……動け、動け動け動け動け。

 

 動け! 

 

「──ああっ!」

 

 手に伝わる痺れ。

 かろうじて間に合った振り下ろしが、居合を押し留めた。地に足がついていない為、エビのように体を折り曲げる動きになってしまった。

 そのまま着地。尻を突き出した体勢のため、バランスを崩して後ろへよろめく。しかし、こんな状態では目の前の敵がどう動くか見る事はできない。

 体勢の崩れたままに顔を上げた。

 

「──えっ」

 

 既に相手は次の機動に入っていた。

 先ほどの自分と同じ、大上段の構え。

 すぐ目の前だ。

 

『おいおい、趣味悪いぜ……』

 

『ドSだな』

 

「ふっ──!」

 

 軽く漏れた息と同時に振り下ろされた一撃。もはや体勢を立て直す時間はなかった。

 

「うぐっ!」

 

 咄嗟に横向きに構えた木剣。

 今度は自分が打ち下ろされる側だ。

 そして、大上段から体重をこめられた一撃は、背後に肘なり腕なりをつかなければのけぞったまま受けられるものでも無い。

 

「う゛っ……ううう!」

 

 背中から地面に落ちたレイトはそのまま上からの圧力に耐える。しかし、ジリジリと押し込まれていく。彼は小柄なのだ。単純に膂力で戦おうとすればこうなるのは必然と言えた。そのままデコピンで終了。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 地面に寝転んだまま、肩で息をする。

 ほんの少しの攻防にも関わらず、いつもの稽古よりも消耗が激しかった。

 皆んなはスライディングなんてしてこなかったし、その体勢から更に居合をかちあげてくるなんてこともなかった。自分が使ったのと同じ構えなのに、こうも違う。

 これが実践経験の差か、と思い知ったような気分だった。

 

「驚いたよ」

 

「はぁ…………はぁ…………?」

 

「まさか、1ヶ月でここまでまともに動けるようになるなんて」

 

「…………そ、そう……ですか?」

 

 正直、早苗たちに稽古をつけられている時の方がもっと動けている気がした。そっちの方を褒めてほしいな、なんて思っていたレイトの背が抱き起こされる。

 

「実際は、ダンジョンで今みたいにお行儀よく戦ったりなんて事はないけど……戦うって事そのものにはもう、免疫がついてるみたいだな」

 

『お行儀が……』

 

『良い…………?』

 

『あの兄ちゃんは何を言ってるんだ?』

 

 ガヤガヤしているギャラリーを無視して、レイトはキラキラとした眼差しを向ける。

 今の言葉を聞いて、期待を込めていた。

 

「僕……戦えてましたか?」

 

「うん、すごくよかった」

 

「……えへへ」

 

「んがわいっ」

 

「え?」

 

「いや、なんでも。もう立てるか?」

 

「はい!」

 

「じゃあ──」

 

「あ」

 

「お?」

 

 2人は、ほぼ同時に気付いた。

 弓を持った少女。

 シエルがそこにいた。

 

「シエルちゃん?」

 

「…………」

 

 何故、彼女が弓を持っているのか分からぬ2人は顔を見合わせた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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