【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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68_修行の成果2

 

「レイトは私のパーティーメンバー」

 

「そうだな」

 

「奪おうとしないで」

 

「してないな、全くもって」

 

「……あなたの言葉は、分からない」

 

「基本はそのまま受け入れることをお勧めするよ」

 

 弓を掲げ、少年の所有権を主張する少女。純粋な意味か、それともそれ以上の意味があるのか。測りかねつつ、男は歯茎を剥き出しにして笑う。どちらでも良い。仲間としてしっかりとした意識を持っていてくれさえすれば、なんの文句もない。

 

 しかし、聴衆はどちらかと言えば、より面白い方向へと話を捻じ曲げがちだ。

 

『私のものだってよ』

 

『あの坊ちゃんのことっぽいな』

 

『まあ、顔良いもんな』

 

『修羅場か!?』

 

『修羅場だとあの兄ちゃんがホモって事になるぞ』

 

『あんなムキムキなんだからホモだろ』

 

『そうかな……そうかも……』

 

 日向や早苗、日奈子も面白いものを見るような目を向けている。

 ここは彼女達の敷地。当然、彼女達も観戦していた。

 最初に腕をぶん殴られたところを見た時は痛々しげに見ていたが、基本的な立場としてはレイト側だった。

 頼もしいが、それはそれとしてアンポンタンだし神様の同行者としてあまりにも迂闊でぶっ壊れているこの男が、偶には叩きのめされてくれないかな。なんて思ったりしていたのだ。

 しかし、前評判を覆す事なく彼はレイトを押し潰した。

 今度こそ頑張って欲しいところだ。

 

「明宏くん……レイトくんの型を真似してたね」

 

「パクリ野郎だな」

 

「あらあら、武術っていうのはどれだけうまく完璧な動きをパクったかが勝敗を分けるのよ?」

 

 言外に、あれで良いと告げる日奈子。

 まだ復帰して間もないが、勘が戻るのは驚くほどに早かった。まるで、『何かしらの力』が働いているかのように。

 

「──ふふっ、本当に義理堅いのね」

 

「明宏くんには言っちゃダメだからね?」

 

「分かってるわよ」

 

『おおー!?』

 

 三人が視線を戻すと、場に動きがあった。シエルがレイトの首根っこを掴み、自分の元へ引き寄せる。

 

『ヒュゥ〜!』

 

『お熱いねえ!』

 

『見た目はお姫様みたいなのに、やるねえ嬢ちゃん』

 

「し、シエルちゃん!?」

 

「私たちは、二人で一つのパーティー」

 

「そうだけど……な、何もこんな場所でやらなくても……」

 

 顔を真っ赤にするレイトに比べ、シエルの何と堂々とした姿であることか。コイツは私のものだと加賀美明宏に見せ付けるように、真正面から見返す。

 しかし、その程度で怯んでやれる程やわではなかった。

 

「ははは……!」

 

 爛々と輝く瞳、やはりガヤにドン引きされている。

 

『楽しそうすぎだろ』

 

『略奪愛を略奪しようとしているのでは?』

 

『恋愛の複雑骨折やめてね』

 

「辺見さん…………いいや、シエル。何がしたいんだ?」

 

「私たちの力を見せる」

 

「ほう?」

 

「レイトは前衛、私は後衛」

 

「うん」

 

「前衛だけで戦う探索者はいない」

 

「おっと、俺の悪口はやめてもらおう」

 

「私たち二人が揃った状態で戦うのが普通」

 

「──そうだな! お前のいう通りだ!」

 

 やたらテンションが高い。

 目覚めてからここ2週間は割とテンションが高いが、今日は殊更に高かった。レイトと戦うのはそんなに楽しかったのだろうか。

 

「体が軽くてな! 実は動かしたくて仕方ないんだ! 何でだろう!」

 

 手元を見つめ、木刀を握りしめる。

 そのまま力を込めれば、間違いなく木刀は砕け散るだろう。

 

『なんかミシミシ言ってるぞ』

 

『そりゃあ、探索者らしいからな』

 

『……大学生だって聞いたぞ?』

 

『じゃあ違うのか?』

 

『分からない……そもそも、山田さん家に泊まっているというところから意味が分からないし』

 

『そんなんもうあれだろ、ヒナタちゃんだろ』

 

『やっぱそうだよなあ……デカいもんなあ』

 

『ああ、デカい』

 

『デカいなあ』

 

『『『良いなあ……』』』

 

 シエルは、稽古で使う弓ではなくコンポジットボウを手に持っている。力学的に通常の弓よりも威力が向上された弓。しかし、彼女はまだまだ駆け出し。

 明宏の空気銃やナイフのように変質してはいない。

 

「お前らは慣れてるやつでいいぞ! 全力って言うなら、それが一番だ!」

 

「じゃあ……レイト、やれる?」

 

「────うん!」

 

 立ち上がる。

 早苗が持ってきた水を飲み、目を閉じて身体を意識する。腕は何もおかしくない。他の場所もいつも通りだ。万全の体勢、と言っていい。

 それでも先ほどは全く歯が立たなかったが、二人ならばもう少し食い下がれるはず。

 そう思って彼を見た。

 

「──」

 

『おいおい、何不穏なこと始めてんだよ』

 

『すんご』

 

 木刀を上に投げ、手のひらを当ててポンポンと高速回転させていた。曲芸師さながらだ。

 

「ああなんか、まじで肩が軽い……のはいつもか」

 

『こえーよ! もうやめろよ!』

 

『笑いながらやってるから尚のことヤバさが際立ってるな』

 

「明宏くん、本当にレイトくんのこと好きだよねえ……妬けちゃうよ」

 

「けっ、昔から変わんねえだけだ」

 

「昔から妬いてたの?」

 

「それは姉ちゃんだけだろ!」

 

 ビュンビュンと音を立てながら回転する木刀。

 レイトとシエル、二人ともの準場ができたと見るや否や、柄をパシリと掴む。

 

「刃渡はいつもと大差ないし、俺はコレでいいやな」

 

「ぼ、僕はこれでいきます!」

 

 ナイフ。

 ……こう見ると、メインウェポンがナイフって控えめに言って狂ってるな。

 何が狂ってるって、短い。シエルが弓で長射程なことを鑑みても、接近戦を担う三船君がナイフなのおかしいよ。

 対人戦だと殊更に弱そうに見える。

 そして、三船君も久しぶりのナイフの感覚にビビっていた。

 

「み、みじか……」

 

「三船くん! 武器は今度買いなおそう!」

 

「──あ、はい!」

 

「今回は木剣でもナイフでも好きな方にしな!」

 

「ええと……じゃあ、木剣にしようかな」

 

『戦う前なのに仲良いなアイツら』

 

『そもそもここに連れ込んだのはあの兄ちゃんらしいぞ』

 

『ヘェ〜……学校の先輩後輩とか?』

 

 明宏から見た時、現在のレイトであればナイフなんて軽い武器である必要性はあまりなかった。相変わらず線は細いが、わざわざ間合いも威力も低いものじゃないと扱えないほどではない。

 ここにくる前よりもはるかに彼は成長している。

 

「──あっ!」

 

 一つ、かなりポジティブなことに気付いた。

 ヒナタが自分の隣に越してくるということは、その気になればヒナタの稽古を受けられるということである。

 明宏自身がそれを受けることはないであろうが、レイトにとってはまた別の話だ。人間との戦い方を学ぶという点では、商工会の講習や明宏のあやふやレッスンよりも、ヒナタ達に学ぶ方が何倍も効率的。

 彼も近くに越してくれば、色々とやりやすくなるのは間違いない。

 

「あいつ、絶対ロクでもないこと考えてるだろ」

 

「うーん……私はそうは思わないけどなあ〜」

 

「カマトトぶってんじゃねえ」

 

「なにそれ」

 

「…………なんか、明宏が言ってた」

 

「どうゆう意味?」

 

「上品ぶってるやつだってよ」

 

「日向ちゃん!」

 

 ワーキャーと追いかけっこを始めた姉妹を微笑ましげに見る訪問客達と対照的に、レイト&シエルはすでに戦闘態勢に入っていた。

 

「いつでもいい」

 

「みんなには当てないようにね?」

 

「うん」

 

 連携の練習自体は多少やっていたが、ぶっつけ本番と大差ない。何にかかっているかといえばシエルの腕だ。レイトの技量では、シエルが敵を撃ちやすいように立ち回ることはかなり難しい。もちろん、その形になることもあるだろうが大体は偶然で、しかもその位置を維持することも難しい。

 それゆえに、いかにしてシエルが冷静に、正確に敵を狙い撃つかということが試されるのだ。

 少なくとも、観客やレイトに矢が飛んでったらその時点でアウトみたいなものである。

 

「弓矢と、剣──あとは盗賊と魔法使いがいれば理想的なパーティっぽいな? …………盗賊はダメか」

 

 二対一。

 セオリーとしては、厄介な方を倒すのが先決。

 今回で言えばシエルだ。

 しかし、それをやろうと思えばできてしまう。技量やセオリー云々は、同程度の肉体を有する相手だから意味があるのだ。両者のスペックには、象と蟻ぐらいの差がある。

 だからこそ逆に、シエルは狙わないと男は決めた。その上で、うまく立ち回るのだ。

 

「よし……うまくやるぞ……」

 

『うまくやるぞて……不安だな……』

 

『またさっきみたいに一撃喰らったりしないよな……』

 

『ごめんだぞ、弓で脳天貫かれてるところ見るの』

 

「俺はいつでもいいぞ!」

 

「いきます!」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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