【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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70_してやられたよ(無傷)

 

「明宏くん! 大丈夫!?」

 

 脳天木剣直撃。

 これはもう額が割れて早く病院に行かないとダメですね……一般人なら。都合のいいことに俺は探索者なので、その程度では何も無い。やられたなあ……と目を瞑っていたら早苗ちゃんが駆け寄ってきて頭をサワサワするので、親指を立てた。

 心配をさせたいわけじゃ無い。

 

「ほっ…………なんで目瞑ってたの! 死んだかと思ったじゃん!」

 

「あれで死ぬの脆すぎでしょ」

 

「普通は死ぬの!」

 

「そんなこと言われても俺、探索者だし……」

 

「口答えしない! 早く立って! ほら!」

 

 目を開けると、上体を起こす。

 周りを観客が取り囲んでいた。

 

『マジで生きてた……』

 

『探索者って本当に人間じゃねえんだな』

 

『デコにあんな勢いで木剣ぶつかったんだぞ……死ぬだろ……木剣も折れてるし』

 

『ほらな、言っただろ』

 

『なんも言ってねえ』

 

「みんな、どいて!」

 

 早苗ちゃんが声をかけると蜘蛛の子を散らすように離れる。万国びっくりショーを観た気分なのだろう。みんなの視線が俺に集中している。

 周囲を確認すると、シエルと三船くんが話し込んでいるところだった。あの二人に関しては心配とか無いらしい。

 さっきは腕を叩いただけであんな一生懸命に撫でてくれたのに……と、ちょっと切なくなった。

 心配させたいわけじゃ無いけど、心配してもらえてないとソレはソレで寂しいのである。

 

「シエルちゃん、分かった?」

 

「うん」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

「じゃあ、僕が今言ったことを言ってみて」

 

「…………」

 

「シエルちゃん?」

 

「…………敵じゃない人に弓は向けない」

 

「そうだね」

 

「余裕」

 

 今日の反省をしていた。

 人に弓を向けない。

 当然だが、当然だと思えるのは良い環境に生きている人間だけだ。

 盗賊やら西の部族について「終わってるなあ」とは思っている。一方で、文明崩壊した後にマッドでマックスな世界観にならなかっただけマシだとも安堵している。

 幼馴染や大切な身内を誘拐されて、次に出会った時には死んでいたとか、誰とも知らぬ男の子供を孕んでいたとか、幽閉されて慰み者にされていたみたいな悲劇も無いし、セーフだ。

 

「二人とも、お疲れ」

 

「加賀美さん! ありがとうございました!」

 

「してやられたよ。まさか三船くんを狙うなんてね」

 

 俺が美少年に弱いという特性を最大限に生かした、有効な一撃。途中までは良い感じの軌道だな〜ぐらいに思っていたのに、最終的に三船くんを貫きそうになって、本当におどろいた。

 あれくらい意表をついた攻撃が来ると、俺もしてやられたなって思う。

 でもシエルは観客とか三船くんとか、環境を最大限使いすぎだと思うんだけど。

 

「…………」

 

「あー…………」

 

 褒めたのに、反応が微妙だ。

 シエルは無言で顔を逸らし、三船くんは苦笑している。

 何かマズかっただろうか。

 

「?」

 

「実は……誤射です」

 

「えっ」

 

「シエルちゃん、加賀美さんを狙ったんですけど……少しだけ狙いが逸れちゃったみたいです」

 

「…………」

 

 危ういねえ。

 一発までなら誤射だけど、脇腹貫通は致命打だからね。

 

「まあ……要練習ということかな?」

 

「それだけじゃ無いよ!」

 

 早苗ちゃんから怒気が発されていた。

 シエルに詰め寄ると、地面を指差した。

 

「正座」

 

「え」

 

「早く」

 

「…………」

 

 言われるがままに正座をしたシエルの前で、早苗ちゃんが厳しい(いかめしい)顔をしている。

 

「シエルちゃん、人に弓を向けるなんて事は絶対にしちゃダメだって最初に言ったよね?」

 

「…………」

 

「返事は?」

 

「……はい」

 

 そのくだりは先ほど、三船くんが既にしていたのでは……まあ良いか。

 

「次、あんなことしたら破門だからね!」

 

「それは……困る」

 

「だったら二度としない! 分かった!?」

 

「はい」

 

「今日は滝行1時間ね!」

 

「死ぬ」

 

「心を生まれ変わらせなさい!」

 

「レ、レイト…………」

 

「レイト君に頼らない! そもそも、レイト君もだからね!」

 

 まさかの飛び火。

 憐れだが、これも連帯責任というやつだ。理不尽に触れる機会は多ければ多いほど心が強くなる。がんばれ〜。

 

「明宏くんもだから!」

 

「!?」

 

 これも連帯責任ってやつか……

 

 

 ──────

 

 

 ……

 

「冷たっ!」

 

「……早苗、こんな温度に突っ込んだら死ぬ」

 

「つべこべ言わない! 本当に死人が出るところだったんだから! 反省! ほら! 明宏くんなんかもう瞑想に入ってるよ!」

 

 …………

 

「あの人はレベル高いから、こんなの無意味」

 

「関係ありません!」

 

 …………

 

 

「うあああ! 心臓が止まっちゃうよお!」

 

「し、死ぬ……レイト……」

 

「うわわあああ! く、くっつかないでえええ!」

 

「くっついているところだけあったかい……」

 

「し、シエルちゃん……」

 

 ………………

 

「コラそこ! 滝の中でイチャイチャしない!」

 

「慣れるまでは仕方ない」

 

「そ、そんな格好で男の子と女の子がくっついちゃダメなの!」

 

「早苗が用意した格好だよ」

 

 ………………

 

「離れなさい! ほら! ……ちべたっ!」

 

「寒いんじゃん」

 

「ぜ、ぜぜぜんぜん!? い、いいいいから、は、はなれて!」

 

「こっち来て」

 

「うわあああああ!」

 

 ……………………

 

「し、シエルちゃっ……!?」

 

「え? …………あ」

 

「ご、ごめんっ!」

 

「…………ん」

 

「あっち向いてるから!」

 

「…………うん」

 

 ……………………

 

「も、もうダメっ! 帰るっ!」

 

「ずるい、逃さない」

 

「死んだら意味ないから! 三人とも上がるよ!」

 

 …………………………

 

「あれっ、全然動かない!? ……クチュッ!」

 

「か、かかかかかみさん! しんじゃいまず!」

 

「だぶん死んでぅぅっ……行こう」

 

「お前ら何やってんだ……」

 

「ざなえぢゃん! あがびろぐんがうごぎゃない!」

 

「誰だよ……はぁ……明宏がその程度で死ぬわけないだろ。ほら、早く家に戻るぞ」

 

 

 ──────

 

 

「あー寒かった……あれ、誰もいねえ」

 

 滝から出てきたら、誰もいなかった。

 どういうこと? 早苗ちゃんたち最初いたよね? 

 ……木剣で殴られたの、やっぱりマズかった? 

 やばいな……病院行こうかな……

 

「つっても、CTもMRIもねえんだけどな! ガハハ! ……うーむ、笑い事じゃ無いな」

 

 いや、やっぱり最初は三人ともいたはずだ。

 この時期だから、まずは俺から入ろうと思ってクソ寒かったのは覚えてる。氷系、って言えば良いのかな。火熱を操るモンスターってのは多いんだけど、氷系のモンスターは少ないんだよな。

 大量にみたのはソフィアの時くらいだ。

 あんまり戦わないから、耐性もあんまり無い。多分ほんの少しだけはあるんだろうけど、焼け石に水だな。

 ……対義語みたいな状況だから、氷に焼け石? 

 

「お、雪……そりゃあ寒いわけだ」

 

 木々の間を抜けて、雪の結晶が降り注いできた。

 うーむ、これが自己相似性ってやつか。

 でもなんか、俺の知ってる結晶と明らかに違う.六芒星みたいな形をしてるのが俺の知ってる雪の結晶だけど、この世界だと結晶が立体的だ。

 ……まあいいか、結晶のパターンなんていくつもあるだろ。

 滝から上がっていつまでも外にいたら風邪引いても文句は言えない。

 さっさと風呂に入ろうと山田邸に戻ることにした。

 あったかーい温泉が俺を待ってるんだ。

 

「──うわ、戻ってきた」

 

「ダメなのか、戻ってきたら」

 

 この山田日向というおにゃのこは本当に酷い。

 寒ーい寒ーい滝行から戻ってきたら普通は『おかえり(はあと)』ぐらいの態度で出迎えるもんだよな。

 ……わざわざ玄関まで来たくせに、なんだその顔は、この、この! 

 

「つめたっ!? ち、ちかよんじゃねえ! さわんな!」

 

「うへへへ……三人は?」

 

 三人分の草鞋が並んでいる。

 濡れた足跡があるところを見るに、ちゃんと滝行に参加していたのは間違いないようだ。

 ……何故早苗ちゃんも? 

 あの子も滝行したの? 

 

「あいつらは風呂だよ」

 

「三人で!?」

 

 三船君も!? 

 いくら美少年つっても男の子だよね!? 

 大丈夫!? 

 

「知らね」

 

「おいおい……」

 

「そんなに気になるなら見てくりゃいいんじゃねえか?」

 

「馬鹿野郎! 覗きは犯罪だ!」

 

「別に犯罪じゃねえだろ」

 

「犯罪じゃ無いの!? ……そうだったわ」

 

 法律が無いもんね。

 ……そういう問題じゃ無い! 

 

「お前こそ、寒くねえのか?」

 

「家の中だからそこまでだな」

 

「ほらタオル」

 

「おっ、サンキュー」

 

 渡されたフェイスタオルで足を拭き、とりあえず上がれるようにした。

 

「三人とも、リビングでぬくぬくしてるぞ」

 

「……ん?」

 

「ジョーダンな」

 

「お前……冗談下手だなあ」

 

「……死ねっ!」

 

「可愛いなあ日向は!」

 

「かわっ……い、いきなり変なこと言うな!」

 

 最後まで元ヤン成分タップリで満足感がすごい。

 これだから日向を揶揄うのはやめらんねえぜ。

 こんな娘がいたら楽しかっただろうなあ。

 多分食べちゃってたんじゃないかな。

 

 ……娘に不満とかないからね!? 

 

「あっ! 加賀美さん! ちゃんと生きてたんですね!」

 

「ちゃんと生きてたんですね!?」

 

「はい!」

 

 リビングからひょっこり顔を出した三船くん。

 髪に艶が。

 濡れ髪をちょうど乾かしていたようだ。

 しかし、とんでもないことを言われてしまった。

 俺は死んでたのか? 

 

「お前、すげえ集中してたから何が起きてたか知らないんだろ」

 

「何が起きてたんだよ」

 

「アレだよ…………ていうかいい加減風呂入れよ」

 

「ここで切るとは……流石、山田家の小悪魔の異名は伊達じゃねえな」

 

「呼ばれてねえよ!」

 

「いてっ」

 

「痛くねえだろ!」

 

 何が起きたのかはとても気になったものの、三船くんも「お風呂入ったほうがいいですよ!」みたいな顔してるので入ることにした。

 

「──うぃぃ〜」

 

『おっさんみてえだな』

 

 オッサンですが。

 温泉に自分の家で入れるなんて、恵まれすぎだろ。この家を捨てて出ていくとかアホか? 

 源泉だけここから俺ん家まで引けないかな……

 

「日向ー」

 

『んだよ』

 

「お酒持ってきてー」

 

『殺すぞ』

 

「ケチ」

 

『沈めんぞ、マジで』

 

「沈めるって日向……女の子が簡単に混浴とかしちゃダメだからな? 俺は良いけど」

 

『言ってねえよ! ……もう知らん!』

 

「………………」

 

 右手を握りしめる。

 出力を最大に引き上げると、やはり何か違和感があった。観客に飛び込んでいった矢を止めた時と同じ。

 明らかに俺に異変が起きている。

 ──思い当たる節は、記憶の中には無い。

 つまり、俺がダンジョンで無くした記憶の中にその答えがあるのだろう。

 武器の進化。

 魔素溜まりへの突入(おそらく)。

 

 …………もしかして俺、レベルアップしてるんじゃないか? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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