【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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76_土下座は良い文化

 

「うへへ」

 

「…………」

 

「ふへへへへへ」

 

 抱きしめて密着している身体から感じる熱。

 軽い虚脱感。

 そして、ソレを大きく上回る心地よさ。

 久しぶりの感覚だ。

 肉体も、精神も。

 ……どちらかといえば心の方が、か。

 

「げへ…………へへへへへ」

 

「……ミツキ、その笑い方はダメだろ」

 

「ふぇ? …………〜〜!」

 

 顔を隠されてしまった。顔を見るどころか、もっと凄いことしたのに……とは言うまい。そういうものだ。

 ああ……愛おしい。やはり、身体を重ねるというのはとても良いものだ。ソレが、通じ合っていた子であれば尚更。

 ……罪悪感も凄かったから凄い出た。

 

「はぁ……気持ち良かった」

 

「うぅ〜……!」

 

「ヤバいな、今後が」

 

 我慢出来るのだろうか、俺は。

 我慢に我慢を重ねると、その我慢が終わりを迎えた時に一気に……というパターンを何度か知ってる。

 それ自体は俺の話では無いけど、今回は俺の番だ。多分ダメそう。…………ダメそうとか考えるな! 少しは…………無理そう。

 

「ケダモノォ……」

 

「仕方ないじゃん」

 

 正直、歯止めが効かなかった。これまで、正直なところあんまりそういう欲求を感じたことがなかったのに、今日に限ってはすごかった。……日向の時もそうだったな。

 ご無沙汰だし、身体も若いし、栄養状態も頗る良い。それでいつもと違うのは……心構えだろうか。

 アキヒロThe Beastって感じだった。

 

「初めてだったのに……」

 

「俺も初めてだし」

 

 この肉体では初めてで、何十年ぶりだからほぼ童貞と変わらない。でも、エロってのは男の根元に染み付いているものなのか、すんなり出来た。

 

「あ、あんな事しないよ! ふつー!」

 

 AVとかエロ本とか無いもんね……

 最中も『うあっ……やっ……! そ、そんなとこ……!』とか言うだけに留まらず、確かめるたびに知らない知らないって鳴いてた。なぜ、そんなにも煽るのが上手なのか。

 

「気持ち良かった?」

 

「……へんたい!」

 

「ちょっと待ってほしい。それを言うならさっき、俺の部屋で──」

 

「うわあああ!?」

 

「…………」

 

「あ……あ…………」

 

 口がわなないている。

 眉が下がって、泣いているのか恥ずかしがってるのかよく分からないことに。

 可愛い。こんな可愛い幼馴染がいる俺は幸せそのものだ。もっと可愛がってやりたい。

 今日はあんまりゆっくりもしてられないのが残念だ。

 あと、死にたい。何してんだ俺……孫くらいの歳の子を……パパ活とかそういうレベルの話じゃなくて犯罪。

 でも、それはわかった上でこうしたはずだ。……分かってなかったよ! こんなに複雑な気持ちになるなんて! 

 それを置いても気持ち良かったけど! 

 心がグチャグチャだ! 

 

「あれだよ。今後は……隠れてしちゃダメだぞ」

 

「──ふぇっ」

 

「んいや違う! これだと変な意味になるな……ちゃんと、したい時は言おう。というか言って欲しい、俺も言うから」

 

「………………うん」

 

 ああ、死にてえ……

 賢者タイムと浮気鬱タイムが同時に……

 

「……その人のこと、忘れさせてあげるから」

 

「それは…………」

 

「その溜めの時間すら無くすくらい夢中にさせてやるから!」

 

「……はは、もうメロメロだよ」

 

「…………」

 

 ひと段落ついて静かに抱きしめあっていると、強く脳裏に浮かび上がってくる情報が二つある。

 1つ、アリサと日向と早苗ちゃんの三人を放置しているという状況。

 2つ、日向と早苗ちゃんが隣に越してきたという情報をアリサとミツキにまだちゃんと伝えていないということ。アリサはもう分かってるのかもしれないけど、この可愛い可愛い幼馴染はまだ知らない。

 

 ……ここからどうやってそれを伝えるんです? 

 なんか勢いで押し切ることは……グズグズに溶かした状態ならもしかしたらという話もあるけど……今はもう、一旦休憩だしな……

 ──そういう、しょうもない搦手で行くくらいなら真正面から伝えた方が後腐れないか。

 

「…………ミツキ」

 

「んっ……」

 

「実は、言わなきゃいけないことが一つあって……」

 

「──なに?」

 

「女の子がどうだって話、あったじゃん……あの時、通話が切れたから最後まで話せなかったけど」

 

「………………あ」

 

 雰囲気が少しだけ、変わった。

 

「あのとき言おうとしてた事でさ」

 

「…………」

 

「連れて帰ったとかそういう話じゃ無いんだけど……」

 

「……山田ちゃん?」

 

「! ──流石に、わかる?」

 

「だって……ダンジョン化があったんでしょ? 今は何も無いけど、コレからのことはわからないし」

 

「…………」

 

「山田ちゃんのお家には何もなかったんだよね?」

 

「大きなのは無いな」

 

 石柱が一本、屹立している事くらいだろうか。

 それ以外は特に……早苗ちゃんがどうなるかって事は気になっているけど。

 大丈夫だよな、あの子。これから呪いでどうにかなったりしないよな? あと、都会(当社比)に来たばかりだから騙されないか心配だ。

 

「…………あの時、通話切ったのは──なんとなく、山田ちゃんの話なんだろうなって思ったから」

 

「そ、そうなのか」

 

 女の勘って凄い。

 

「どっかの幼馴染さんがあまりにも同じような事をしているからですけどねー」

 

 違った。勘じゃなくて人読みだった。

 そんなに俺はわかりやすいだろうか。

 

「それで……」

 

「ん」

 

「あ、アキの家に泊まるの?」

 

「いや……隣」

 

「隣?」

 

「隣の空き家に引っ越してきた」

 

「はぁ!?」

 

「え」

 

 今の今までは理解者面をしていたのに、引っ越してきたという話を聞かせた途端に声がガビガビになった。どこが逆鱗に触れたのか見当もつかない。

 腕を振り解いて、馬乗りされた。

 

「な、なんで隣!?」

 

「理由は知らないんだよ、全然教えてくれないから」

 

「もう来てるの!?」

 

「うん、一緒にこっちに来たし。俺が帰ってきた時は隣で荷物整理してたんだよ」

 

「────」

 

「ミツキ」

 

「なに!」

 

「ごめん、もう一回」

 

「え? ──あっ、な、なんで、さっきしたばっかりなのに──ひゃあっ」

 

 うん、やっぱり我慢は無理だ。

 日向の話がどうとか以前に、ちょっとね。

 貯めてた分──とかいう概念は無いはずだけど、凄いのです。

 

「ごめんな」

 

「ご、ごまかされな──んんっ…………ちゅ……」

 

 たっぷり、時間をかけて上を楽しんだ。

 

「──ちゃんと紹介するから」

 

「わ、わらひはそんにゃので──」

 

 絡み続けた口で酸素を取り込むのは難しかったのか、舌が回っていない。それに、強がりながらも腕がしっかり背中に回っている。狂おしいほどに興奮をそそる姿に、一度弾けたモノを元に戻すのは難しかった。

 

「──────あっ」

 

 

 ──────

 

 

「エッチしたんだ!」

 

 2人で家に戻ってきたら、玄関で待ち構えてたアリサが早速叫んだ。

 キミは鼻が良いですからね……

 

「ずるい! ずるいずるいずるい! ずるい!」

 

「あ、アリサちゃん……えっとね……」

 

「うるさいうるさーい! 聞きたくなーい! さっきの何だったのー! わけわかんないよー! 何でエッチして帰ってきてるの! 私だっていたのに! 4時間も待たせやがって! もう夜だよ!」

 

「そ、それは……」

 

「…………ヒロさん!」

 

 ギン、と睨みつけてきたアリサ。

 こういう時のバイタリティがすごい。

 中学生で探索者になろうなんて考えるんだからそりゃああるだろうけども。

 

「アリサ…………えーと、明日は時間あるよな?」

 

「今日もあります!」

 

「わ、分かっ──」

 

「今日は私のだからダメ!」

 

 インターセプトは許さないとミツキが両腕を広げてブロックする。

 ──しかし。

 

「……そもそも、ミツキさんはなにを抜け駆けなんかしてんの?」

 

「ぴゃっ」

 

「今日の24時回ったらすぐ退いてもらうから」

 

「ひい」

 

 

 ──────

 

 

「えっと……四門美月です」

 

「久しぶり……だよね」

 

「こっちは山田日向です」

 

「よう、四門」

 

「こっちの子は日向の姉の早苗ちゃん」

 

「早苗です!」

 

「この子は関根有紗です」

 

「アリサでーす!」

 

 日向達を隣から呼んで、それぞれをそれぞれに紹介したけど──これで良いのだろうか。良くない、アリサとヒナタから薄目で見られている。

 

「で?」

 

 で、とは。

 アリサから。

 

「なんでさっき、この女にもキスしたんですか?」

 

「アキ?」

 

「…………」

 

 おっと、1人増えて、1人減った。

 なんだこれは、もしかして人間関係的な修羅場というやつか。初めての体験だが、その空気を実際に味わってみると──なるほど嬉しくない。しかし、理由はどう考えても俺にある。

 

「っ……」

 

「「…………」」

 

 日向は口押さえている。

 それを見た2人の視線は、さらに鋭さが増した。もう、視線だけで突き刺されそうだ。実際、眼からビームを出すモンスターもいるのであんまり冗談にならない。

 

「私、隣に引っ越してきたとしか聞いてないんだけど?」

 

「私もそうでしたよ」

 

「アキ、どういうこと」

 

「ヒロさん!」

 

 こいつら同盟結んでるからダブルアタックで来た! はえーよ仲直りが…………良かった、もう1人いなくて。ジェットストリー◯アタックだったらさしもの俺でも死んでた。

 ……全部俺が悪いから言い訳とか出来ない……どうしよう詰んだ。

 

 俺、浮気がどうだか悩んだ後になんでこんなことになってんの? 勢いで行動しすぎるとこうなるよっていう悪い例を早苗ちゃんに見せつけちゃってない? 大丈夫? 早苗ちゃんには綺麗なアキヒロくんだけを見ていて欲しいんだけど。

 

「ええと……説明するのが難しいな……」

 

「難しくないでしょ!」

 

「そーだそーだ!」

 

 拳を突き上げるフーリガン、2名。

 困難な状況だけど、こうなれば前提から話すしかない。そして、俺が浮気性ではないことを証明しなきゃ……! 

 

「い、一応はその……親友なんだ」

 

「──親友とキスするかあ!」

 

「女子同士はしたりするだろ……」

 

「アキは男でしょ! 何意味わかんないこと言い出してんの! あと親友だとしても女同士でキスとか無いから! 私、風香とキスしたことなんかないもん!」

 

「いや、世の中ではあるだろ」

 

 あるだろ。

 思春期で自分の性自認とか自我が曖昧な状態で、距離が近くて、何かの拍子にドキドキしたのを恋だと錯覚してキスしちゃうみたいな。あとは酔って。これが多いだろうな。

 

「聞いたことないから!」

 

「そうだそうだ!」

 

 どうやらこいつらには無いらしい。

 まあ良いよ、俺も興味ないから。

 

「とにかく、親友だったんだけど……」

 

 あれって、なんて言えば良いんだろう。

 寝ている間に背中から抱きつかれたり全裸で迫られたりしてちょっと思うところがあって──そこから一緒に暮らしてたらちゃんと大事な人間になった。

 

 …………浮気だ。

 まごう事なき浮気だ、これ。

 全部説明した方がいいかな…………っと。

 

「日向? ──」

 

 見た事ないくらい顔を真っ赤にした日向が、そばにいた。袖を引っ張られた意味はわかる。耳を近づけた。

 

「やめて…………」

 

 蚊の鳴くような声で、そう言われた。

 なんか、すごいグッとくる。

 ──じゃない! やばい、思考が性欲に引っ張られすぎてる! 落ち着け加賀美明宏! お前はジジイだ! 

 

「ミツキさん! あの女今、やめてって言ってましたよ! 絶対エッチな事したんです!」

 

「ま、まさか……!?」

 

「1ヶ月お泊まりの間に親友と仲を深めてゴールイン〜冬の冷たい雪の中で〜ってことですよ!」

 

 何を言ってるんだこの子は。

 頭がおかしくなってしまったのか。

 

「してないから! 何も変な事してない! なあ、日向!」

 

「…………ん」

 

「それで納得できるわけないでしょ!」

 

「見てくださいよその女の顔! そのメス顔で何もないわけないでしょ!」

 

 メス顔……確かに恥ずかしがってはいるけど、これがメス顔かと問われると良くわからないというのが正直なところだ。

 さっきのミツキみたいな顔のことを言うなら分かる。

 

「良く分かってない顔してますね」

 

「これだからジジイは……!」

 

 

 ──────

 

 

「すいませんでした許してください!」

 

 男は土下座していた。

 色々と理由を並べ立てて悪あがきをしようとしたが、途中で菩薩のような顔になってから土下座に切り替わったのだ。

 葛藤を全て振り切ったともいう。

 潔い土下座。

 何と見事な形か。

 

「俺は浮気性のクズです!」

 

「あ、明宏……」

 

「はいそこ! 悲劇のヒロインみたいな顔しない! だいたい、お前が原因だろ! ヒロさんをたぶらかして私たちの仲を引き裂こうだなんて、100年早えんだよ!」

 

「あ、アリサちゃん……怖い……」

 

 いつもよりも荒い口調に、ミツキは露骨に怯えていた。

 ソファーの後ろに隠れて静観の構え。標的が明宏ならば詰めようもあるが、元々が知り合いということに加えて元ヤンということも知っている。一つ叩けば鬼と蛇が出てくるかもと弱気なのだ。

 故に、任せた。

 逃げたとも言う。

 

 そして、日向もまたアリサの言葉に反応した。

 

「仲を引き裂くだあ? テメェの方が私よりもアキヒロに会ったの後のくせして何言ってんだ!」

 

「会ったのが先のくせに友達止まりだった雑魚は言うことが違えな! ヒロさんがおかしくなってなきゃ、お前なんか相手にもされてねえからな!」

 

「はあ? お前が何されたってんだ、言ってみろ」

 

「ええ? 本当に言っちゃっていいのお?」

 

 明宏はソソクサと起き上がり、膝を払うと早苗の保護に移行した。子供に聞かせる話じゃない。たとえ、若干手遅れだとしても。

 

「早苗ちゃん、お耳ぎゅー」

 

「ぎゅー」

 

 耳を両手で包み、コマちゃんに目で合図する。

 やってきたコマちゃんが尻尾をシュルシュルと伸ばして、明宏の手の代わりに優しく顔を包み込んだ。

 

「モフモフー」

 

「よし」

 

 なお──

 

「このっ……! ゴミが!」

 

「てめっ! ……ぐっ!」

 

 ガチの掴み合いをしていた。

 

「ストーップ!」

 

「「(お前/ヒロさん)が悪いん(だろうが! /ですからね!)」」

 

「くっ……すいませんでした!」

 

 土下座再開。

 発言すればするほどドツボにハマっていく未来しか見えなかった。ならばいっそのこと、土下座だけしていればなんとかならねえか!? という思考回路。

 

 ──こ、こんなのどうすればいいんだよ! 

 

 彼の人生の中で、こんな状況になったことなどない。もっとひどい状況なら何度もあるが、土下座と手土産と土下座と土下座と土下座だけが役に立った。 故に、こうする。

 愚者は経験に学ぶのだ。

 

「俺が悪かった! だから、2人が喧嘩するのだけはやめてくれ!」

 

 最悪の結末。

 それは、喧嘩別れだ。

 碌なことにならない。後で思い返しても気分が悪い結末にしかならない。

 少なくとも、日向と有紗が殴り合うのだけはやめて欲しい。

 

「……アキヒロ!」

 

「はいっ!」

 

「コイツに手出しといて…………な、何で、私はダメだって言ったんだよ!」

 

「──か、勘弁してくれ……そもそも、女の子2人に手を出すのだって意味わからねえんだよ! もう今更だけども!」

 

 それは彼の本心だった。

 ミツキとサワサワして、それで終わりだった。

 心の整理がつくまではそれで押し通そうと思っていた。最低だが、そもそもミツキに手を出すのすら最初は心苦しかったのだ。

 今だって、心苦しさが消えたわけじゃない。だけど、離れていくくらいならば自分のモノにするのが男なんじゃないかと振り切っただけだ。

 

 兎にも角にもアリサに手を出したのは完全に彼の中では想定外だった。手を出させられた──ようなものだ。

 なぜこの2人がそんな意味のわからない約定を結んでいるのか、いまだに分かっていない。

 

「い、今はいいんだな!?」

 

「……いいです」

 

 いいですって何だ、意味不明だ。

 明宏は自分が何をしているのか良くわからなくなってきた。

 なぜ、自分が手を出すことの可否を向こうが自分に対して確認して、自分がその答えを返すのか。

 

「とにかく! コイツ、嫌いですから!」

 

「そっくりそのまま返してやるよ……!」

 

 日向は肩を怒らせたまま、早苗を連れて家に帰った。

 

「なに!? これなに!?」

 

 何が何だかわからない早苗。

 日向の顔が険しいのと、場の空気が悪いのだけは目にして理解した。

 

「ア、アキヒロくん! またあとでね!」

 

 そう──夕飯は、集まって食べるのである! 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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