【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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83_これは素晴らしい研究につながるぞ!

 

 レベル0

 少なくともこの星において、レベル0の存在はいない。定義上の問題で魔素そのものはレベル0と呼べないこともないが、それは反則だろう。

 

 レベル5

 何もせずに、濃度の高い領域や物質に近寄らないように緻密に生活して、最終的にたどり着くレベルはこれくらいだと言われている。つまり、ダンジョンにいない野生動物や、モンスターなどに近付かない一般人はこのレベル付近であることが多い。探索者であれば研修生。成り立てでよわっちぃのでモンスターの駆除・討伐などは行えないため、もっぱら調査や採取業務を受注する。

 

 レベル10

 肉体の変化が現れるのはここら辺から。レベル1や2の同種とは、体格が同程度でも成体と幼体くらいの膂力の差が出る。探索者という括りにおいては、研修生の域を脱して初級探索者という位置付けになる。駆除・討伐が解禁され、このレベルに至って初めて武器を持つという探索者もいる。つまり、ここまでがチュートリアルだ。

 

 レベル20

 肉体のリミッターが外れた。

 火事場の馬鹿力。

 通常程度の人類にあっては、そういう生理的な現象では決して辿り付かない領域。単純な身体能力だけの戦闘だとしても、第一期の人類においては天賦の才能を持つものが全ての時間と努力を戦闘のためだけに費やし、かつ前述の状態にでもならない限りお話にならない。ここからは三級探索者の括りになり、戦闘もガッツリこなしていかないといけない。上に行くためにいろいろな努力が必要になってくる段階。

 

 レベル30。

 生物という括りを脱した段階。素手で石を砕いたりする。彼が認識していた通り、出力としては重機に近くなっている。このレベルの人類は異能を入手していることがよくあるのと同時に、このレベルに辿り着くまでに通常は10年以上かかる。

 サラマンドラや三尾のタマモなど、明らかに生物の形を超えたモンスターも増えるのでモンスターによった対策というものをより意識して行わないといけなくなる。必要物品にかかわる費用も、一般人だと目が飛び出るような額になってくる。

 

 レベル50

 もはや、低級探索者の域では無い。二級探索者の中でも中位──セクターによっては指名で依頼をされることも増えてくるような領域だ。最強でなくとも、もはや常人には手出し無用。酒場に連日入り浸っても侮られることはない。

 

 そんなところに到達するには、いったいどれだけの経験を積めばいいのか。

 

 獅子騎・グレンアギト・蛇面蝶・レイスなど、レベル40台でも強力なモンスターはいる。異能を保有し、単純な膂力だけでも建物を容易に破壊する。

 そんなモンスター達と何度も何度も何度も何度も戦い、やがて到達するのがレベル50。

 

 つまりはドラゴンに挑戦する最低限の権利だ。

 

 架空のモンスターとして名前をあげるとしたら決して外すことはできない、キングオブモンスター。

 例として最弱の種族、コモンドラゴンを挙げよう。

 火を吹く能力を持っているが、それは異能ではなくて肉体の力。そして、飛翔能力。体長8mにも関わらず自在に空を飛び、地に足ついた人間の手の届かぬ場所から見下ろす。加えて最低一つは異能を持っている。

 

 まず、どうやって戦うかというところから考えなければならない。空から引き摺り下ろすのか、自分が空に上がるのか。引き摺り下ろすには何を使うのか。空で戦うなら異能でも持っているのか。

 戦闘するモンスターとして完成された造形。

 それこそがドラゴン達の脅威。

 

 三級以上の探索者は全てのセクターを合計して約十万人。

 その中でレベル50に到達しているのは3000人弱。

 つまり、探索者の中では上位3%の戦力に数えられるのだ。

 いかに傑出していることか。

 

「うぼおおおおおお…………」

 

「なにしてんの」

 

「壊れちゃったみたい」

 

 早苗のお腹に顔を埋めて奇声を発する男。

 帰宅して早々、人の家のソファーでのんびりしていた早苗の元へ駆け込んできた。

 

「ぼぼぼぼぼぼぼ」

 

「あはは、くすぐったいよー」

 

 _人人人人人人人人人人人_

 > 突然のレベルアップ <

  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

 ヒラからいきなり部長に昇進させられるくらい突然だ。

 どう考えてもバグっている。

 明宏の内心には、嬉しいとかより先に『永井さんに報告しなきゃ』と湧き上がる。こんなの研究題材としてあまりにも面白すぎる。むしろ、研究しなかったら絶対に後悔する。解剖はごめんだが、何がどう変わったかをメモしなければ──

 

「っ!」

 

「うわっ」

 

「──メモ!」

 

「え?」

 

 ガバリと起き上がると、寝室へ駆け込む。姉妹がこっそり覗くと、ノートを急いで取り出して持ってきた。

 

「──魔素溜まりに突っ込んで、一切の変異をせず、人間の形を残したまま戻ってこれるとしたら……」

 

 ダイニングに着席すると、ぶつぶつと呟き、それを全てすさまじい速度で書き込んでいく。話す速度と書く速度が同じだ。

 

「きもっ」

 

「そもそも、レベルアップってのは魔素による原子レベルでの物質の変化──のはずだ…………その恩恵だけを受け取ることができるなら確かに納得できる──」

 

「おーい」

 

「前例は知らないが、恐らくあるはずだ。魔素溜まりに突っ込んで帰還した人間の記録が──いや、そこまで記録を密にとっているとは考えられないか……公務員の仕事なんて最低限で終わりだからな。やはり先生に聞こう」

 

 大丸で過去の記録という文字を囲む。

 

「採血も……チッ、さっさと医療器具発達させろや」

 

「ダメだコイツ、頭おかしいわ」

 

「くそ……CTでもMRIでもいいのに……なんで無いんだよ……」

 

 呟きながら延々と文字を書き続けるので少し怖くなってソファーから見る姉妹。明宏は何かに取り付かれたかのように、自身の変化について書き留めていた。

 

「何やってんだアイツ」

 

「ケンキューってやつじゃない?」

 

「あー……大学のあのおっさんのアレか」

 

 実際のところ、今やっているのは研究でもなんでも無い。題材を練るために、自身の状態について整理をつけているだけだ。だが、そんな事が2人に伝わるわけもない。

 

「明宏くーん」

 

「探索は……一旦後回しだ。大学……永井さんは今日……は居ねえ! くそ、休みだ!」

 

「明宏くーん!!」

 

「うおっ!? な、なんだ早苗ちゃん」

 

「なんだじゃないよ! 何度も話しかけてるのに無視して!」

 

「ごめん、それで何の用?」

 

「こっちが言いたいよ! なんでいきなり色々書き始めたの?」

 

「んえ? ……ああ、うーん……」

 

 さりげなく、ノートを閉じて中を見られないようにガード。早苗は指差した。

 

「レベルがどうとか、大学がどうとか……帰ってきていきなり、だ、抱き着いてきたのもアレだし……」

 

「そんな事してないよ」

 

「してるよ!? さっきしてたよ!? 覚えてないの!?」

 

「早苗ちゃん……帰ってきて早々にそんなことするわけないだろ?」

 

「なんで真顔でそんな堂々と言えるの……!」

 

 

 ──────

 

 

「レベルが上がってた…………ハッ!?」

 

「…………」

 

 日向と早苗は、ほぼ同時に例のことに思い至った。明宏を見つけた時、彼は血溜まりに沈んでいた。つまり神と対峙し、戦闘をしていたということだ。そしてコマちゃんは、あの空間で自分の周囲以外にいる事は死を意味すると言った。そんな場所に長時間いた明宏には一体どんな変化が起きていたのか。

 

「流石にヤバいからさっさと永井先生に相談したいんだけどな」

 

 事情を知る日向達には、具体的な事はともかくあのダンジョンにいた事が理由であるとわかる。しかし、記憶が無い明宏はそこに思い至る事ができない。だからこそあの老師に相談しようとしているのだ。

 

「あーあ! 日向が教えてくれたらなあ!」

 

「わふっ」

 

「コマちゃん……お腹ブーだぞ」

 

「ぐるるるる!」

 

「…………」

 

 コマちゃんと何事かやりとりをして黙り込むと、日向の手を引く。

 

「日向、ちょっとこっちこい」

 

「はぇ? ……な、なんだよ……」

 

 強引に腕を引かれ、少しドキドキしながらついていく日向。そのまま2人は寝室に消えた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 犬と姉はコッソリと廊下の壁に耳をそば立てた。

 

『──―!』

 

『──?』

 

『────!?』

 

『〜〜〜!』

 

『────』

 

『……』

 

 ガタガタと物音が鳴り、何か言い合っているようにも思える。不安になった早苗が寝室の扉を開けようとしたがコマちゃんがそれを抑える。

 しかし思いのほか短かった。数分も経てば物音はやみ、近付いてくる足音に1人と1匹が慌ててリビングに戻った。

 

「ア、モ、モドッテキター」

 

 日向が明宏の後ろに隠れている。少しだけ襟周りが乱れていた。しかし、誤魔化すので精一杯の早苗はソファーの上でコマちゃんのことを一生懸命に撫でている。

 

「ナニシテタノー?」

 

「いや、ちょっと今後の話を」

 

「ソッカー」

 

「……ゼンゼンハナサネエ」

 

「エ? ナニー?」

 

「なんでもないよ」

 

「ソッカー」

 

 顎に手を当てると、次に何をするべきかを考える。そこで浮かんだ顔は──

 

「コウキさん」

 

「へ?」

 

「今暇かな…………暇だろ」

 

 端末を取り出し、連絡をかける。

 

「あ、コウキさん今いい?」

 

「…………パーティーだあ? なんだそりゃ」

 

「いやさ、ちょっと相談したい事があるから戻ってきて欲しいんですよね」

 

「パーティーの100倍くらい大事だっての」

 

「──いや、俺はパーティー関係ないし」

 

「顔繋ぎって……どうせジジイババアしか居ねえだろうが」

 

「もういいから帰って来い、俺も一旦そっち行くから」

 

「………………はいはい、じゃあ明日な」

 

 通話を終えると一杯の水を飲む。なにやら難しい顔で手のひらを見ていた。

 

「怪我したの?」

 

「いや……気を付けないといけないから」

 

「レベルアップで? そんなに変わってたの?」

 

「うん」

 

 加減を間違えれば、大惨事だ。最大出力がどんなものか、試すにしても家とか市街地じゃなくてダンジョンでしなければならない。今度、西の原に行こうと決めると話題を切り替えた。

 折角面白い事があったのだから、話さなければ勿体無い。

 

「そういえば今日さ──」

 

 話したのは例の二人組のこと。

 わけのわからない奴らの演説を通りすがりが集まって聞いていたら、探索者がブチギレたという話だ。

 

「物騒だねー」

 

「早苗ちゃん……もうちょっと危機感を……」

 

「でも、探索者が怖いのなんて今に始まった事じゃないじゃん」

 

「………………まぁうん……」

 

 反論の余地なし。

 それはそれとして、お前は危険人物だと言われたようなものなのでアキヒロの心は普通に傷ついた。

 

「あ! でもアキヒロくんは別だよ!」

 

「──そっかあ!」

 

 よかったよかった。この場に傷付いた悲しい人間はいなかったのだ。

 

「んふふ」

 

「でもアレだぞ、怪しい二人組を見つけたら近づいちゃダメだからな。誘拐とか怖いし」

 

「心配のしすぎだよ」

 

「そんな事ないぞ、例の商工会の男の事だって覚えてるな?」

 

「もっちろん! 話しかけてきても対応しちゃダメなんでしょ!」

 

「そう!」

 

「…………でも、本当に悪い人なの? 商工会の人なのに」

 

「日向を舐め回すように見てたんだぞ。こーんなに顔を近づけて!」

 

「やー!」

 

 やや大袈裟な表現ながら、コレは何度目かのやりとりだ。

 しかし、早苗の感覚としては商工会の職員がそんな危ない人間であるとは考えづらかった。なんなら、235セクターの職員には早苗も何度かお世話になっている。

 明宏の言葉と言えど、なかなか信じられるものでもない。それに対して、明宏はまじめ腐って伝える。

 

「公権力が必ずしも正義とは限らないんだよ、早苗ちゃん」

 

「コーケンリョク」

 

「力を持った人間は遅かれ早かれいずれ腐敗する。信用するのは身近な人間だけで十分だよ」

 

「うーん…………」

 

 少しだけ悲しい顔をした明宏の顔に、なんとなく察した早苗は硬い髪に手を置いた。

 昔、日向にやったように左右へゆっくり動かす。

 

「…………」

 

「だいじょーぶだよ」

 

「ふぅ……早苗ちゃんはお姉ちゃんだなあ」

 

「なんたって、ホンモノのお姉ちゃんですから!」

 

「俺も兄なんだけどなあ」

 

「ケイケンチが違うのです!」

 

 むふーっと胸を張る。

 男は眩しそうに目を細めると、別の話題に至った。

 

「まだ、身体は痛い?」

 

「…………うん」

 

「マジで成長してるの?」

 

「まじ」

 

「…………」

 

「気にしすぎぃー!」

 

 早苗は明宏の頬を挟み込むと、ギュウウと押し込む。

 

「変な顔〜!」

 

 ずーっと気にしてることの一つがこれである。なんぼなんでも、地元を離れたからっつって神様の呪いが剥がれるなどという甘い想定をする事はできなかった。

 なにせ、見ただけで精神を冒されると言われているような奴らだ。出会っただけで肉体の成長を止められた実例がこうして目の前にいることもあるし、仮に距離で呪いが解けるのならソフィアが苦しむこともなかっただろう。

 

 しかし、彼の想像妄想に意味は無い。結局は、年単位で一緒に過ごしていればわかる事だ。成長するならば、身長だって大きくなるのだから。

 

「そのうち明宏くんより大きくなってやるから!」

 

「そうなる前に俺が圧縮する」

 

「ひどい!?」

 

「冗談だよ」

 

「ぜったいおおきくなってやるー!」

 

 モジモジといつまでも静かな妹。そんな彼女のとても目立つ部位を見つめながら宣言するのであった。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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