【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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86_寒いけど仲間さえいれば関係無いよね!

 

「うん、知らないね」

 

「ああ……」

 

 これで終わりだ畜生め! 

 永井さんも流石に何も知らなかったよ! 半分くらい分かってたけどな! 間近でダンジョン化を見たことはないらしいし! そりゃそうか! 死ぬもんな! 

 だけど……手がかりがゼロになっちまった! 正確に言えば、一番でかい手がかりが身近にいるけど…………絶賛! 黙秘権行使中! だから詰まってしまったよ。

 

 つまり、もうやれる事がない! どうしたら良いんだ! ふざけるな、俺はこんなところで止まってられないんだぞ! ──なんとかしろ神様! アレだろお前、祈ったらなんかあるんだろ! 死ぬついでに俺の記憶喪失の理由とかレベルアップの原因とか教えろ! 

 ──おや? 

 

「いらっしゃい」

 

「──お願いがありまして」

 

 もう、諦めるしかないの? と半ば絶望していたタイミングで三船くんとシエルがちょこんと尋ねてきた。

 可愛い! 

 ──ちがう、そうじゃ無い! 自分たちは隠すけど俺には知恵を吐き出させようとはふてえ奴らだ……ますます気に入ったぜ。

 

「とりあえず、お菓子食べる?」

 

「食べる」

 

 クッキー的な食べ物──俺はクッキーって呼んでる──を出すと大喜びで齧り出す。大喜び(無表情)。

 アリサが作ってくれたものなのでおいしいのは当然だ。

 それで、相談もといお願いとは。

 

「僕たち……ダンジョンに行こうと思うんです」

 

「へえ」

 

 良いじゃん、探索者らしくなってきたじゃん。別に俺の許可とかいらないよ? ちゃんと自分で選ぶのも探索者としての仕事だからね。

 

「許可は求めてない」

 

「シエルちゃん! もう…………実は、着いてきて欲しくて……」

 

 それは探索に? 俺は問題ないけど、レベルがバカみたいに上がっちゃったから報酬が歪なことになると思うけど、大丈夫? 

 それこそ、標準報酬からだいぶ下がった報酬になっちまうぞ。二人のレベルは今は──

 

「私は10」

 

「8です」

 

 そうだな、通常であれば数万程度の報酬になるだろうな。もちろん、普通のバイトに比べれば全然貰えてる方だけど──危険度やら事前準備がある事を鑑みると割にあっているとは言えない。

 それが、俺が参加することによって5桁を切る可能性もある。

 

「それはもちろん分かってます!」

 

「バカにしてる?」

 

 バカにはしてない。

 ただ、良いのかどうかだけ。着いてきて欲しいっていうのであれば、俺は行くよ。

 

「……いいんですか?」

 

 自分で聞いといてその言い草には驚いた。美徳だけど、そのうち悪い人に騙されそうで心配だ。

 

「私がいるから」

 

「……どうかね」

 

 シエルもシエルで、世間知らずだから割と絆されそうだ。具体的には、イケメンでちょっと物腰弱めなやつに引っかかりそう。そして裏で酷いことされちゃうんだ……許せねえ! 

 

「それはない」

 

 冗談は流し台に置いといて、どこに行くんだ? 

 冬真っ盛りの現在。

 雪が積もってるから、そこら辺考慮しないとお話にならない。たどり着く前に遭難して凍死するなんて、笑い話にもなりはしないぞ。春になるまで誰にも見つけられないんだから。

 

「第100セクターです」

 

「えー……」

 

 徒歩オンリーだから遠い……でも、日向達の鬼スパルタ稽古を受けた二人なら行けるのだろうか。着いていく以上は手出しをしたくない。腕がちぎれるくらいは許容しても良いのだろうか。

 

「大丈夫です! 見ていてほしいだけなので!」

 

「……流石に腕が無くなったら困る」

 

「僕がちゃんと回収するから!」

 

「私の腕が千切れてる時点でレイトは死んでると思う」

 

「…………」

 

 確かに前衛が機能してないもんな。少なくとも戦闘続行状態じゃないか、レベル差が大きすぎるということだ。

 とりあえず、方目さんに相談だな。

 

「ええと……お願いします」

 

「早くして」

 

 このガキめ(笑)

 

 ──そんなわけで32支部にやってきたけど、角田さんと方目さんが隣り合って立っている。ちょうど良いと近づいたら目が合った。

 

「──見つけたああああ!」

 

「え?」

 

「捕まえて! アオイちゃん!」

 

「うやあああい!」

 

「なに? これはなに? ……ツノダさん、俺のことを騙したのか?」

 

「うっ……こ、これにはわけが……」

 

「加賀美くんは小さな子供が好きイコールアオイちゃんが抱きつけば無理には振り解けないイコール事情聴取の開始ィ!」

 

「か、かがみさん……?」

 

 まさか犯罪を……みたいな顔で見られるのは誠に遺憾です。俺が何をしたっていうんですか! 

 確かに三股はしてるけど個人の自由だし、八百屋の前で喧嘩したのだって向こうが吹っかけてきたからだ! 俺は無実だ! 弁護士を呼んでくれ! こんな相談室に連れてきて監禁か!? 

 

「ふふふ! さあ答えて!」

 

「なにを?」

 

「何であんなにレベルアップしたのかを!」

 

「えーと……必死で草?」

 

「バカにしてるよね!?」

 

 レベルアップの事がそんなに気になるらしい。

 でも何で? 

 

「詳しいことは言えないけど……でも、きっとみんなのためになることだよ!」

 

「ふーん」

 

「興味うっす……」

 

 みんなのためとか言われても、そういうのは商工会とかで勝手にやって欲しいというか。

 

「…………ねえお願い! 私だってこんなことしたく無いけど、怖い人たちに言われてるの! 加賀美くんから絶対に理由を聞き出せって!」

 

「……良くない人たちなら俺が殲滅しますけど」

 

「加賀美くんも怖い……」

 

「真面目に聞いてるんです」

 

「……」

 

「誰なんですか」

 

「…………本部の人たち」

 

「さーて、ダンジョン行きますか! 三船くん! シエル! 準備するぞ!」

 

「待ってよお!」

 

「ええい離せ! 誰が好き好んで実験体1984になるんだ!」

 

「なにそれ、実験なんかしないよ!? ……ねえ助けてよ! このままじゃ私、飛ばされちゃうかもしれないよ!」

 

「貴社におかれましては、末長くご健勝のあらんことをお祈りしております」

 

 そもそも、こんな事になった根本的な原因は方目さんが俺に三船くんの世話をしろと押し付けてきたことだ。それならば、内部的な事務処理は自分で全てやるのが筋じゃないだろうか。

 

「うっ……で、でも……加賀美くん以外の探索者って基本信用できないし……」

 

「はぁ……」

 

 これだ。

 この謎の信用度の高さに振り回されてきた。それでホイホイと言うことを聞いてしまう俺も俺なんだろうけど、信じていると言われてしまうとどうにも応えたくなってしまう。

 ずるいよな、女って。

 

「それでちゃんとやってくれるんだからいいじゃん……」

 

「あーもう聞きたくない!」

 

 嫌なことを思い出させるな! 

 言われたタスクをこなしたらどんどん増えていくんだ! こなせばこなすほど、まだ食べられると山盛りのキャベツが積み上がっていく! できないところを見せないと胃袋が破裂するまで口に詰め込まれる! 

 

「──俺だって、知りたいんですよ!」

 

「…………」

 

「本当に知らないんだよ! 何でこんなに一気にレベルが上がるんだ! 俺に何があったんだ! あんたらよりもずっと、俺の方がよっぽど俺のことを知りたい!」

 

「本当に……何も知らないの……?」

 

「知ってたら、こんなに一生懸命にあちこち調べるわけないでしょうが!」

 

「むぅぅぅ……」

 

「とにかく、その本部の人間とやらを直接連れてきてください! 個人単位の情報を集める程度、人にやらせるんじゃなくて自分でやれって俺が言ってやりますから!」

 

「む、むりだよぉ〜……だって私、ただの受付だもん……」

 

「別に誰でも良いんで、方目さんに指示を出してるやつに伝えてください──というかですね、今日きたのは俺のことじゃなくて、他でもない三船くんの業務相談なんですよ……」

 

 熱くなってしまったが、いつまでも二人を置いてけぼりにしておくわけにもいかない。シエルは飽きたのか三船くんの肩に頭を預けて寝てしまったし。

 部屋が暖かいからだろう。

 良い暖房器具使ってはりまんなあ!? 

 

「へへ」

 

 へへ、じゃない。

 

「実はですね、二人が第100セクターに行きたいって話なんです」

 

「行けばいいんじゃないの?」

 

「んで、俺も後ろからちょこちょこと着いて行こうかと思ってるんですけど……一緒に申請しちゃうとパーティー認定されちゃうでしょ?」

 

 パーティーを組んでいなくても同一業務をこなしている間はパーティーとして算定されるため、稀に起こるダブルブッキングはトラブルの元だ。俺は今回、基本的には見に徹したい。いい感じの業務斡旋、頼みますよ! 

 

「……子供に優しすぎるよね、やっぱり」

 

「無条件じゃないですからね」

 

 悪いことをしてない子だけだ。

 

「判定が甘いというか、そんなんで良く引っかからないよね」

 

 こちとら騙し騙されの世界で生きてきたんだ。悪知恵しか働かんようなやつにおつむで負けるわけがない。

 

「三船くんが悪い子だったら……?」

 

「それは無いので」

 

 俺は自分の目を信じている。世界とは見たものだけが全てじゃ無いが、疑念や感情よりは目で捉える方が確度は高い。だからこそ、三船くんは信頼に値する。

 

「それでも悪い子だったら?」

 

「お尻ぺんぺんですね」

 

「「「え」」」

 

「お尻ぺんぺん」

 

 お尻ぺんぺんです。

 みんなの前で下丸出しで。

 2人とも

 

「え」

 

 

 ──────

 

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

「……こんなに積もってるんだ」

 

「ちゃんと準備してきてよかったね……!」

 

 二人は雪の上を歩く。

 スキー板やスノーブーツではなく、微弱ながら水上歩行の異能を付けた靴を購入していた。耐久性も、彼ら二人が元々持っていたものよりは上だ。

 

 第32セクターから第100セクターへの道のりは雪で閉ざされている。標高が比較的高いため、平野部よりも多くの雪が降るのだ。前回訪れた時と比べて数倍の時間──往復だけで甘く見積もっても一週間以上がかかることを想定していた。当然、野宿用のテントに加えて食料も増える。荷物の重さが二人に重くのしかかっていた。

 

「でも……思ってたよりは全然動ける……!」

 

「ん」

 

 これが異能の靴なしであれば、後ろを着いてくる明宏のように自分で雪を掻き分けなければならなかっただろう。出発して2時間、32セクターから外は一面の雪景色だった。山田家を出るのがもう少し遅ければ、列車でも同じ光景が見られた。

 

 この時期の市街地外で気にしなければならないのは、氷雪系モンスターだ。例を挙げるとフロストボーン。見た目はトナカイだが、ツノが氷でできている。この時期になるまでは一切姿を現さないので、モンスターとかでなければ見ることができたら縁起のいい存在になっていただろう。

 しかし、モンスターなので全然縁起は良く無い。基本的な推奨レベル35前後と、今のレイト達では逆立ちしても勝てない相手。

 

 氷雪系モンスターは、ダンジョンでなくとも雪があればどこにでも出現するという悪辣さが非常に心地よい。

 

「でも、モンスター以前に……! この寒さ……キツい……!」

 

「さぶ」

 

 もこもこの毛皮を着込んでも尚入り込んでくる寒さ。まだ本格的な寒さとは言えないが、それでも零下11℃というのは二人のような低レベル探索者にとってはキツい。装備的にも肉体的にも、まだ人間から完全に脱したわけではないからだ。

 それでも幾分か余裕がありそうなのはシエル。寒いとは言いつつも、ちょくちょくレイトの顔を確かめていた。

 そうしてさらに進むこと4時間。

 

「──一旦休憩にしよっか」

 

「ん」

 

 2人とも、正確な時間経過は分からないが腹が減っていた。寒冷地においては食欲が減退しがちであり、意識的に食事を取らないと体力が消耗した状態で維持されてしまう。モリモリと雪洞を掘って中に入ると、そこで食事休憩とした。

 

『──よいしょ』

 

 明宏も別に雪洞を掘り、その中で腰を下ろす。なるたけ手を出さずにいくと今回は決めているので、そこまで距離は離さないが違うところを休憩地にしたのだ。

 あくまで主体は2人。

 

 その2人は、食事を摂りながらなにやら楽しげにしていた。

 

「……し、シエルちゃん?」

 

「くっついたほうが暖かい」

 

「…………そ、そうだね! あはは……」

 

 生物同士で触れ合っていれば、熱損失をなるべく減らすことができる。それは合理的な知恵だが、どうにも気恥ずかしく感じてしまうのも仕方ない。

 ──そんなことに気を取られている場合ではないが。

 

『氷爪兎(ヒヅメウサギ)か……初めて見たな』

 

 レベル25。

 ウサギが雪上に適応した姿。

 天命山脈の麓に群生していることが確認されている。

 厳しい環境で育った影響で、通常のウサギに比べても凶暴で強靭なモンスターである。

 氷の爪を持ち、白い身体で雪に紛れながら相手の手足をもぎ取る。そして、動けなくなった獲物をゆっくりと食べるという残忍さが恐れられている。

 通常種のウサギも捕食対象。

 

『ひーのふーのみーの……』

 

 そんなモンスターが10匹。更に、後ろの方から追加も来ている。一斉にかかってこられたらレベルによってはなす術もないだろう。

 

『ちょうどいいか』

 

 以前ならば相当キツい戦いだっただろう。しかし、今はレベル52──青年は、全力を試してみることにした。もしもその数値に偽りがないならば、対処できるはずだ。

 

『んー……』

 

 手甲は身につけたまま。

 以前のミスリル合金のままであれば耐えきれないと判断して外していただろう。しかし、鍛治師ヴォルフガングの反応から考えて、変質した武器であるナイフは神器級のようだった。

 

 神器とは読んで字の如く神の器である。神が授けたものや神が宿っているものなどがそれに該当し、初代魔素濃度計測器も神器の一つだ。神器級というのはそれに匹敵するような物品のことを指す。当然、驚くべき力を有している。

 

 そして、ナイフが神器級ならば同様の変質を起こしていた銃やミスリル合金製防具も同じだということだ。ダメだったら残念だと諦めるだけなので、特に問題はない。

 

『おお……』

 

 明宏が全力を試そうと集中し──なるほどこれは、と頷く。明らかに上限が以前よりも成長している感覚があった。

 

『──!』

 

 グーパーと握って開く明宏へ向け、弾丸のように回転しながら突っ込んできた。なにをよそ見してるんだ、ということか。数十mはあるところから一直線に跳ぶのは、流石のウサギということだろう。常人であれば呆気に取られている間に腕をもがれる。

 

 ──ギョロリと、瞳が動きをとらえた。

 

『ふっ!』

 

『ギッ!?』

 

 破裂音──直後、ピンク色の絵の具が雪を染めた。

 続いてポスポスと軽めの落下音が鳴る。自身の足元に落ちたものを拾うと、感慨深げに呟いた。

 

『ウサギの足……どうやら幸運らしいな』

 

 誰にとっての幸運かは置いておくとして、なんとも恐ろしい光景なのは間違いなかった。

 放たれたのはストレート。振り抜いた姿勢で感覚を確かめている。

 先ほどの破裂音は、威力過多な一撃を前にしてモンスターの身体が耐え切れずに爆発四散した音だった。

 

『ブー!』

 

『ブッ』

 

 先の光景を見てか、ウサギたちが一斉に鳴き始める。当然のように肉食である彼らは、こうして雪原に迷い込んだ被捕食者をたびたび襲う。迷い込むというと遭難した人間のように思うかもしれないが、ぶっちゃけこの時期の天命山脈以南は人里以外、全て雪で埋まっている。つまり、セクターとセクターを徒歩で移動しようと思えば誰もが氷雪系モンスターに襲われる可能性があるということだ。

 

 そんな彼らの鳴き声。悲しみ、怒り、いかなる感情であるかを正確に人間が理解することはできないが、負の感情であることは間違いない。まさか、四散した同種族を見て「あいつ、逝きやがった笑」などと爆笑していることはないだろう。

 

『さあ、次はどうくる? それとも尻尾を巻いて逃げるか?』

 

『…………グルアアアアアア!!』

 

 ウサギらしがらぬ吠え声。頬が裂けるほどに大きく開かれた口は、歯茎が剥き出しになっている。挑発した明宏に、上等だと返しているようだ。

 

『!』

 

 一斉に立ち上がったウサギたちが選んだのは、氷の礫。

 

『あ、ずる!』

 

 雪に紛れさせながら飛んでくるそれを弾く。礫と言っても氷柱の形状をしている為、下手にあたれば風穴が開くだろう。特にレイトたちなどは。

 氷柱をキャッチすると勢いに耐えきれずに砕ける。再利用として投げ返すことは難しそうだ。さりとて放置すればそのうち雪の即席ハウスを貫通して2人が穴だらけになる。

 

『…………』

 

『ビッ──』

 

『ブギャッ──』

 

『ギャッ──』

 

 わざわざ付き合う必要もないかと無言で接近し、潰し始める。かなり動物虐待な見た目だが、身体能力に差があるので有効な手だった。

 

『お前らは今日の晩御飯だ!』

 

 動物愛護の精神など微塵もない。手が汚れるのは嫌だな、くらいの感覚でパァン! していく。しかし雑にパァン! すると可食部まで周囲にパァン! するという大きな欠点があるので段々と出力を調整し、頭部のみをパァン! するという繊細な加工工程に辿り着いた。それにより、頭を失った白いモフモフがその場に残されていく。

 

『ブ、ブー!』

 

『ブーブー!』

 

『ブーイングは受け付けておりません、続ける場合はこの世から退場していただきます』

 

 世紀末食肉加工工場が完成した。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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