【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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92_節度を持ちましょう

 

「……これ、私に?」

 

「うん、綺麗だろ?」

 

「…………ふ、ふーん」

 

「首飾りにちょうどいいかもなって……あんま好きじゃないか?」

 

「べ、別に嫌いじゃないケド」

 

「ほっ……良かった……」

 

「……ん」

 

「?」

 

「ん!」

 

「──失礼します」

 

「!」

 

 日向の首にかけたのは、いわゆる雪の結晶のような見た目をした首飾り。枝分かれした形の脚の先には淡い紅色の結晶が計6つ……たぶんメタエレメンツではない。

 何気なく選んでいたけど、改めて考えると日向にピッタリな気がした。ちょっといかめしいかなあとも思ったけど、拒否はされなかった。

 

 プレゼントってのはどうにも気を使う。適当に買ったりするのは下の下だけど、きちんと選んで買ってもドツボにハマったりする。相手の好きなジャンルのものを買うと既に持ってることもあるから逆に地雷原だし、結局無難になりがち。

 

 今回は無難寄りだから、あんまりひどいことにはならなかったのだろう。これが神様繋がりでコマちゃんのぬいぐるみなんて送ってみろ、微妙な顔されるだけだ。

 良かった良かった。

 

「なあ……」

 

 

 ──────

 

 

「それくれるの?」

 

「うん」

 

 ミツキには、不思議な紋様が彫り抜かれた球の中にまた紋様の刻まれた球が入ってるやつを上げた。二層の球の中心には薄緑色のクリスタルが浮いている。

 

「わーい! ……あ、そうだ! 今度大学につけてこ!」

 

「うーん……」

 

 そう言われると途端に不安になった。

 学生が身に付けるものとして、果たしてこのアクセサリーは真っ当なのか。少々おばさんくさかったりしないだろうか…………大丈夫だよな……? 

 これを大学生がつける…………母親の形見とか言っておけば何とかなるかな……

 

「ええ? そんなこと気にしてるの? ……ふふーっおじいさんだねー」

 

「う゛っ! (心臓発作)」

 

 ミツキは俺の正体を知ってから、一番効くところを的確に攻めてくるようになった。こ、この小娘があ! 

 だけど、あれだな。自分のことを知っているやつがいるってのはとても気が楽だ。孤独感が少しだけ薄らいだような気がする。

 ──幼馴染がジジイなのって、どうなんだろうな。

 どんな気持ちでミツキが今、そばに座っているのか……それが少しだけ怖い。俺みたいな嘘つきの事を、それでも好きでいてくれているのか。

 ああ、情けないなあ俺は。

 男のくせに女々しいこと考えやがって。

 

「おじーいちゃん」

 

「っ……」

 

 泣きそう。

 孫に会いたくなってきた。

 

「──うそうそ! うそだよ! 何で泣きそうなの!?」

 

「…………」

 

「アキ! ほら、こっち見て!」

 

「──!」

 

「似合ってる?」

 

「…………すごく似合ってる」

 

「じゃあ大学に着けてってもおかしくないでしょ?」

 

 よく考えたらみんな金持ってないからアクセサリーとかたいしたもの持ってないし、大丈夫な気がしてきた。うん、たぶん大丈夫だな。

 

「うへへへへ……えーい!」

 

 

 ──────

 

 

「したい、です」

 

「!?」

 

 アリサに首飾りを渡した。

 胸元で抱きしめた後に、直球でそんな事を言い出した。慌てて宥める。

 

「お母様もいるから……」

 

 そもそもここは関根家である。

 一階でお母様はゆっくりしていたけど、二階から声が聞こえてきたら流石に上がってきてしまうだろう。そこで勉強をするどころか夜の大運動会をしていたら激怒まちがいなしだ。

 ──だよな? 

 

「…………」

 

「あ、アリサ……」

 

「そんなの……いいじゃないですか」

 

「…………」

 

 一回してからというもの、歯止めが効かない。誰かと二人きりで会うたびにしている気がする。みんな年頃だからそういうことに興味が強いのもわかるけど、もう少し我慢を覚えなきゃ……無理か。

 それにしてもアリサは直球すぎる。

 

「アリサ」

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

 肩に手を乗せた瞬間に瞳孔が細くなった。

 息が荒くなって、ジリジリと距離を詰めてきている。おそらくこれは俺の言うことなど半分くらいしか聞いてないだろう。

 後ずさると、ベッドに足が当たった。

 

「ヒロさんがわるいから」

 

 猫しっぽが俺のズボンに先端を引っ掛け、引き下げようと動いている。ずいぶん器用なことができるようになったんだな。

 ──言ってる場合か! 

 

「アリサ、少し落ち着いた方が──」

 

「……ふぅ」

 

 自分からそんな事をしてくるなんて、以前だったら考えられなかった──などと現実逃避をしていても仕方ないから最終手段を使おうかと考えて……やめた。そういう小細工をした結果としてミツキとの関係が拗れたのだから。

 全部受け止めるのが、男の責任ってものだ。孔子も言ってる。

 

 でも……このままだと俺、そのうちダメになるんじゃなかろうか。

 

 

 ──────

 

 

 軋む音が天井を貫通して耳に入る。

 

「若いわねえ」

 

 試験が近いということで、最近は彼の方から関根家を訪れることは減っていた。この段階まできたら、あとは自分の力で勉強するのが1番だそうだ。私たちはそういうのを体験してないからよく分からない。

 

「孫の顔、意外と早く見れそうね……」

 

 正直、以前は諦めていた。ルールにうまく馴染めないのは完全に血のせいだけど、不良になってしまうとはおもわなかった。

 それもただの不良じゃなくて……探索者崩れ。

 最悪の選択だ。

 夫と二人、嘆きながらも何もできなかった。

 

『初めまして』

 

 連絡を受けて病院に行ったら、そこにいたのは一人の少年だった。なんでも、物理的にも精神的にも娘達の鼻っ柱を折ったという。

 眼差しの強さに圧倒された。

 すぐに帰ろうとする彼を引き止めて連絡先を聞き出し、後日、お礼をしようと再会したらあれよあれよと話が進んだ。

 

「はぁ……」

 

 そこからこの時点に至るまで、どれだけお世話になったことか。返そうにも返せないくらいにたくさんのものをもらった。返したと思っても、それに返されるから手も足も出ない。

 

「まあ、義息子になるんだからいっか!」

 

 そんな事を気にするくらいなら、孫の顔がいつ見られるようになるかを考えていた方がよっぽど楽しい。

 

「良かったね、アリサ」

 

 彼もあった時の猫耳やしっぽを見れば、どう思っているかなんて一発でわかる。ずっと押し込めてきていたのも、ちゃんと見ていた。

 彼がまさか、3人も──とは思わなかったけど。

 

『〜〜!』

 

 ……アリサの声……大きくない? 

 ここにいるだけで恥ずかしくなってくるんだけど……娘のそういうのを聞くのって、なんかすっごい微妙な気持ち。大人になったんだなって嬉しさもあるけど……なんだかなあ。

 

『──!』

 

 やっぱり、声が大きい……

 

 

 ──────

 

 

「ああ、ドラゴンね……ドラゴン!?」

 

「はい」

 

「ほほー! そうか、レベル50を超えたんだったね!」

 

「はい」

 

「私がそっちの道ならば、是非とも帯同したかったところだけど……素材は期待していいんだね?」

 

「もちろん」

 

「っしゃあ! …………少しだけ、緊張しているね」

 

 当たり前だ。

 だってドラゴンだぞ。

 昔出会した時は両脚溶かされたんだから。

 何もできずに死ぬところだった。

 そんなやつと再び相対する。

 武者震いが止まらん。

 

「遺書は書かなくていいのかい?」

 

「へっ、負けるわけねえからな!」

 

「気合いは十分……肝臓は持って帰ってくるんだぞ!」

 

「そりゃあね」

 

 ドラゴンの肝臓は特殊な素材だ。

 決して燃えず、しかして常に500℃の高温を維持する。

 これを使って武器だって作れる。

 しかし、そんな程度で満足はしない。

 初ドラゴンの素材は全て俺のものだ。

 ドラゴンの素材でライターを作るなんて輩もいるらしいが……そーんな勿体無い事、誰がしてやるもんですか! 

 待ってろよドラゴン! お前の全てが俺のものだ! 

 

「差し当たってはドラゴンについて──」

 

「もちろん調べてるに決まってるじゃないですか」

 

「そうだよね、君はそういうやつだ」

 

「褒め言葉と受け取っておきます」

 

「空への対策は?」

 

「色々ありますけど……これが一番かと」

 

 銃を取り出して、テーブルに置く。

 

「ほう」

 

 躊躇なく手に取った。

 

「せ、せんせい!? なんかヤバそうな色してますよ!」

 

「白いし……多分カビてます!」

 

「触ったら爆発しますよ!」

 

 ゼミ生達が喚いているけど、そんな程度で永井先生が怯むわけがない。海千山千の男だぞ? 

 ……あと、カビてるわけはないな? 

 触れただけで爆発するのも整備不良がすぎる。

 俺に対して失礼だろ。

 

「うん」

 

 永井先生は銃を戻すと、静かに言った。

 

「──霊領に似た雰囲気を感じるね」

 

「マジか」

 

 この人、そういうのがわかるんだ。

 コウキさんみたいななんちゃってと違って。

 

「霊領…………吐いたことしか覚えてねえ」

 

「漏らした……」

 

「…………ゲロの海……」

 

 俺の同級生があまりにも霊領に関わる気がなさすぎて先生が悲しそう。でも、あの体験を経ても研究室に残ってるんだから、意外とやる気自体はあるんだな。

 

「加賀美くん……例の話、どうやら私が想像していたよりもアレだね」

 

「そうですか?」

 

「うん──あ、ここから先は聞いたら呪われる可能性もあるから。呪われてもいい人だけ残って、それ以外は一旦退室しといて」

 

 残ったのは当然、俺だけだ。

 ただ、呪われるってのは方便だな。

 話をした程度で呪われるなら、俺なんかどうなっていることやら。

 

「きな臭いね」

 

「?」

 

「なぜ商工会が第235セクターに拘るのか……それが少しだけ分かった気がするよ」

 

「と、言いますと」

 

「これは神器だね?」

 

「──鍛治師にも同じような事を言われました」

 

「知る者が見れば、と言ってもあまりいないだろうけど……そう、知っている人が見れば分かるよ。これは普通の物体じゃない」

 

「でも、きな臭いってほどではないですよね」

 

 武器が普通じゃないからと言って、すぐにそんな話には繋がらないはずだ。つまり永井先生は、長年の経験から何かを感じ取ったということか? 

 

「そうだね、きな臭いのは君だ」

 

「俺?」

 

「異常なレベルアップ、そして武器」

 

「ふうむ」

 

「それだけじゃない……霊領でのことも含めて、君は異常だと結論つけざるを得ない」

 

「永井さんに言われるとちょっと納得し難いですけどね」

 

「私だって個人に対してこういう事を言うのは好きじゃないさ。だけど、あまりにも外れ値がすぎる」

 

 いぇーい、外れ値でーす。

 

「うーん……だけど加賀美くん自身に変なところはあまり……焼肉のことかなあ……」

 

 怖いよこの人。

 自力でどんどん推理進めてくのやめて? 

 235セクターに目を向けて? 

 しかもニアピンだし。

 

「まあいいか、個人の詮索は碌なことにならないからね」

 

「そうですね」

 

「大事なのは高峰レオ、商工会の彼がまたやってきたってことだ」

 

「──なんだと?」

 

「山田さんの事についてきっちりと、後を継ぐ意思はあるようだと伝えたにも関わらずね」

 

「…………ちっ」

 

「コソコソと嗅ぎ回っているようだね」

 

「…………」

 

「気をつけてあげてほしい」

 

「ええ」

 

 公務員ってのは味方にいると対して役に立たないくせに、敵に回ると本当にしつこい。

 ……敵とは断定できないところもまた厄介だ。

 三権分立なんて無いからな。

 訴える先も無い。

 本当に──気をつけることしかできない。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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