【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ドラゴン! ドラゴン!」
日頃の200%くらいのテンションで雪道を歩く。見る人が見れば、こんなにテンション高いことあるんだ……と驚くだろう。中々見ない姿に、隣をいくスコティッシュフォールドは若干暑苦しそうにジト目を向けている。
犬からすれば、アリだろうが鳥だろうが鯨だろうが魚だろうがドラゴンだろうがゴキブリだろうが、モンスターである以上はあまり変わらない。彼のテンションが上がっている理由であること自体は理解しているが、それはそれとしてうざったかった。
「わんっ」
「ええ? 良いじゃんたまには」
「わんっ」
「別に迷惑かけてるわけでも無いんだし、問題は無いな」
「わふぅ」
まるで話も通じない。ちょっと強くなったくらいで調子乗りやがって……と力んだ。
「あ!」
「…………」
スッキリしたら、後片付けは飼い主の仕事。当然の事なのでコマちゃんは明宏をぼーっと見る。
「うんちできて偉いねえ〜!」
クシャクシャと雑に顎を撫でた後、うんちの後片付けを行う。具体的には土を掘って埋めた。
そんなことしてたら地中がそのうちウンコだらけになるって? 一掴みで30cmは掘れるので、なんの問題もない。そもそも、明宏の家のすぐ近くには家は無い。住居の密度が低いから、コマちゃんがうんこをそこら辺にしまくっても文句を言う人間はいない。それを明宏自身が我慢できないだけだ。
「…………」
うんこを埋め埋めしている飼い主のことは無視してうろうろする。ドラゴンを駆除する業務がないか──無いわけない──を支部に確認しに行くついでに、色々とやるべきことがあった。
ヴォルフガングがいるかいないかの確認、昼飯の買い出し、そして雪かき。
明宏は、家からここまでずっと雪かきをしながら来ていた。彼自身は雪があろうがなかろうが問題なく移動できるが、他の人間──早苗やミツキ、行商人などはかなり厳しい。特に行商人や道路整備の人間などは、仮に作業があっても雪があったら『今日は……やめよう!』となってしまう。
道路の大切さはよーく理解しているので、みんなの為にも雪かきをしていた。
「えっさ、ほいさ」
次々と雪を脇にかきあげる。
ビバ第一期、シャベルもスコップもちゃんと受け継がれている。これが無かったらもう少し面倒くさかっただろうなと先人に感謝しながら、第32セクターの中核部へ向けて進んでいった。
「──お疲れさん」
雪かきをしていると、差し入れを入れてもらえることがある。そして明宏は、目の前の男に見覚えがあった。最近見たばかり。
「って……あの時の兄ちゃんか」
「どうも」
少しだけ気まずそうにしながらも、差し出したものを引っ込めるつもりはない様だ。手に乗せた饅頭みたいなお菓子を取る様に促す。
「いいんですか?」
「ああ」
「じゃあいただきます」
一旦雪かきをやめて、口にお菓子を放り込む。自然由来の甘さというべきか──小豆の様な甘さが口の中に広がった。
小豆の様な甘さとはつまり──小豆じゃねえか!
「アンコですか」
「よく知ってんなお前」
「まあ、はい」
「…………」
「…………」
気まずさありき。
先日の出来事は二人ともはっきりと覚えている。そして、老人はかなり厳しい顔をしていた。一度見たらそう簡単には忘れそうにはない顔であるにも関わらず、明宏は見た覚えがない。
「最近ここに越してきたんですか?」
「アホ抜かせ、10年前からいるわ」
「それは失礼しました。俺は高校3年の時にこっちに越してきまして」
「……」
「ここらのセクターだと32支部が一番稼ぎが良いですから」
「…………女の子には、やさしくせにゃぁいかんぞ」
「あれ誤解なんですよ」
「なに?」
わけのわからないことを言い出したのはあっちだと教えた。明宏としてはむしろ、助けて欲しかったくらいなのだ。
「ふうむ……」
「まあ、そんなわけで俺は悪くないんですよ」
「……ワシには普通に聞こえたがのお」
「違う店の人が話してるのと混ざっちゃったんじゃないですか?」
「てっきり、あの子供を脅して代金を安くしようとしてるのかと……」
「そりゃあ偏見ですよ」
「そう……かのお……」
「そもそも、探索者なのにあんなので値切ってどうするんですか」
「それもそうか」
「まあとにかく、誤解が解けてよかった──ていうか、あの後ちゃんと買ってますからね3つ」
「3つ?」
「ほら、女の子に……」
「…………」
「浮気とかじゃないですから」
「どうでもいいわい」
「じゃ、身体にお気をつけて」
「…………」
再び雪かきをしながら路地裏へ向かう。
雪の中ということで、一般の出店は他の季節に比べると減っている。もしかしたらもうできてるかも、と期待を込めて覗き込んだ。
「!?」
例の鍛治──ヴォルフガングがいれば良かったのだが、一人じゃ無かった。
「まったく! アチキとかいうやつはどこに行ったんだ!」
「知らん!」
「アチキはいつになったら来るんだ!」
「知らん!」
「はよ呼べ!」
「知らん!」
「だから端末? とやらを持っとけばええんだ!」
「お主とて持ってないだろうが!」
「全く! これだから人間は!」
「おい、俺の悪口か?」
3人に囲まれていた。2人はヴォルフガングと同じ様に背が低く、筋肉質な肉体をしている。もう1人はやや背が低いが普通の範疇には収まっていた。いずれも金槌を背中に背負い、見ているだけで熱気がやってきそうな暑苦しさだ。
「…………なんだあれ」
「わふっ」
一旦覗くのをやめた明宏は、顎に手を当てた。
様子からして、あの3人はヴォルフガングの仲間──鍛治師なのは間違いない。しかし、鍛治師が4人もひと所に集まっているところなど見たことがない。どう考えてもおかしいが、会話の内容からその理由というのは推察された。
「これか」
つまるところ、あの3人は明宏の武器を見にきたのだ。あの暑苦しさ、そしてヴォルフガングを問い詰めている顔の感じ。明らかに職人気質で、こだわりが強いタイプということが見て取れる。
「最初が肝心だな……」
「?」
「良いかコマちゃん、ああいう暑苦しい奴らは真正面から相手すると面倒臭いことになる」
「…………わんっ」
「違う、それじゃあ結局飲み込まれておわりだ。しかも見ろ、あの赤ら顔……あいつら絶対に酒好きだぞ。酔い潰れるまで飲まされる可能性もある」
「わふ」
「よし、じゃあ見てろよ?」
「わふ」
「いやそんな事にはならんから、この曲がり角くらいで待ってりゃ良い」
「…………」
「おーい……」
トコトコとどこかに歩いて行くコマちゃん。ムキムキたちと関わるのはごめんだと吐き捨てていった。
「ったく、とんだ忠犬だな」
相変わらず曲がり角の向こうではあーだこーだと言い合っている。おそらく、明宏が現れるまでこの調子なのだろう。
「ていうかアチキじゃねえよ」
一言呟くと、曲がり角から身を踊り出した。
「──やあやあ、みなさんお揃いで」
「「「「!?」」」」
「あれ? 私のことを待っていたんですよね?」
「…………」
お、おいどうすんだよ……なんかやべえやつ来たぞ……みたいな感じで3人が目配せをしている。ただ1人、ヴォルフガングだけは顔を限界まで顰めていた。
何してんだこいつ──そんな思いが聞こえてくる様だった。
「これが見たいんでしょう?」
「「「!」」」
取り出されたるは、ヒゲモジャの鍛治師が神器級だと認めた武器。
「ほーれ」
「あ……あ……」
右へ左へ揺らすと、つられて彼らの視線も右へ左へ。
ウィンブルドンでよく見る光景だ。
「見たいでしょう?」
「触りたい!」
「舐めたい!」
「欲しい!」
「調子乗んな」
どうやら3人は、やりたいことが違うらしい。見るどころか、欲しいなどと宣うやつもいる。
「触って覚えたい!」
「舐めさせろ!」
「くれ!」
「ダメです」
「「「ああー!」」」
スッとしまい、ヴォルフガングに話しかける。
「誰ですかこの有象無象達は」
「う、有象無象……一応、俺の上司なんだが……」
「まあそれは良いんですけど、アレってもうできました?」
「いや……その……」
「?」
「出来てない」
「ああ、そうなんですね……じゃあ、また来ます」
「ちょっとまってー!」
「なんですか」
「ほら! …………ん!」
指差した場所。3人は明宏の足に縋りついている。
「ざわらぜでー」
「なめざぜでー」
「ぢょうだーい」
何なんだこいつら……と足を引っこ抜く。
「実は……こいつらがお前さんの話を聞きたいって……」
「結構です、ヴォルフガングさんがいれば十分でしょ」
「おお! 分かってるなお前! …………じゃなくて、だな……」
どうやら、彼はめんどくさい事に巻き込まれたようだった。そして、気まずそうに髭を触っているヴォルフガングがその原因なのは、もはや議論の余地がなかった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない