【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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94_やりたい放題

 

 話を聞きたいというけど、俺から何を聞き出そうというのか。

 そもそも──

 

「タダで話を聞こうと?」

 

「ばっかおめえ、土産ぐらい持ってきとるわい!」

 

 ドン! と小さな袋から取り出したのは一升瓶。

 

「酒じゃねえか」

 

「おうよ! アースドラゴンもこいつを飲めばイチコロじゃい!」

 

 案の定じゃねえか! 

 酔わせりゃ人が何でも話すと思ったら間違いだぞこのアル中ども! だいたい、アースドラゴンなんて見たことあるやついねえぞ! 

 ……お前ら、なーんか知ってんな! 

 

「んんっ、誰も見たことないドラゴンの名前出されても……」

 

「…………ぷはっ、おめえバカだなあ! 深えところにいんだよ! 深えところにらあ!」

 

「ほう、深いところとは」

 

「我らが──もごもご」

 

 ちっ……

 

「何いきなり口走ってんだ! 呑んでろ!」

 

 酒瓶丸ごと口に突っ込まれて、それを飲み始めた。

 嘘だろ、急性アルコール中毒で死にかねんぞ。

 

「大丈夫なんですか、その方は」

 

「策士だなあ、あんた」

 

「いや、今のは勝手に酒を飲み始めただけですけど」

 

「…………まあいいさ、俺たちは特別なんだ。酒じゃあ死なねえ」

 

「良い身体ですね」

 

「…………お前、そっちの気が!?」

 

「失礼な」

 

 というか、鍛治師もそういうアブノーマルなこと知ってるんだな。意外だ。

 もっと堅くて、下ネタとか一切話さない奴らかと思ってた。トンテンカンって鋼だけ打ってるような、職人一直線タイプだとばかり。見た目だけなら実際そんな感じだしな。指輪やら小刀やら、色々身につけているのはアレだろうか。

 護身用のやつ。

 

「おっ? これ、気になるか?」

 

「え?」

 

「こいつは俺が初めて作った指輪でな」

 

「……?」

 

「形も歪で仕上げも粗だらけ、そもそも配合が良くなかった──」

 

 なんか語り始めたぞ!? 

 

「最初はウィンダールの酒を混ぜるつもりだったんだが……親方にぶん殴られてヘイトリクスの胆石を入れたんだ。今でも思うぜ、酒を入れてたらどうなってたのかってな」

 

「鉄と灰と血……混じり合うことで命が宿る……15日間、一睡もせずに打つ……お前らはゴキブリだあっ! う゛っ……」

 

 何なんだこいつら。

 やべえ奴らと関わっちまった……今すぐに離れたい……! だけど、絶対逃げられないという嫌な確信がある……

 

「寒いから俺も呑もうかな」

 

 ヴォルフガングは、どこに隠し持っていたのかそれぞれ瓶を取り出すとグビグビと飲み始めた。それは考え得る限りの中では最悪の未来では? 

 この中で唯一まともそうなのがこの人だぞ。

 他3人は触りたい舐めたい欲しい。

 インド人も真っ直ぐになるレベルだ、まだ名前すら知らないのに何故こんなことに。

 

「はぁぁぁぁ……見せてくれよぉ神剣を」

 

「防具を仕上げてくださぅていれば、いくらでも見せるつもりでしたよ。鍛治師は仕事はきっちりこなすって思ってたから見せたんですけどね……ミスったか」

 

 参ったな、仕事中に酒飲むような奴に大事な防具を預けてたのか。ここが日本ならコンプラ部に通報で取引取りやめにできるんだけど……そうでなくても貸し一つに持っていけた。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「はい?」

 

 クレクレ男が真剣そうな表情でこちらを見ている。だけど、俺の方が真剣なんだ。仕事道具──しかも命に直結するし今後手に入るかも分からないっぽい超高級素材。よかったな、俺が探索者で。あっちにいる時だったらどんな手使ってでも今日明日で納品させてたぞ。

 …………とはいえ、明確に期日決めてない俺も悪いか。大抵は1週間で仕上げてくるから……くそ、鈍ってるな。完全に感覚がガキになってる。

 大抵はって……まあ、引退してから数十年経ってっから仕方ないとはいえ……なんか思考がまとまらん。

 

「ワシらにとって神器ってのは特別なんだ」

 

「俺にとって、あの防具は特別なんですよ」

 

「…………」

 

「あなたの物言いは──神器が特別だから、見たいから客には我慢させようって様に聞こえたんですけど。まさかそんなことは言いませんよね?」

 

「いや……」

 

「仕事舐めてんのか?」

 

 まあ、俺が鈍ってようが関係ない。

 仕事はしろ。

 それが当然の義務だ。

 

「……すまなかった」

 

「謝罪は要りません………………ん?」

 

 何で俺はこんなにイラついてるんだろう。

 おかしいな、いつもはこれくらい何ともないはずなんだけど…………イラつくイラつかないで言うなら、普段のシエルや方目さんの物言いの方がよっぽど…………まさか、この匂い……

 

「その酒、レベルが……?」

 

「ん……ああ、この酒はレベル高いぜ」

 

「マジか……」

 

 酒のレベルを上げるやつは初めて見た。どんだけ魔素をたっぷり吸わせたんだ……ドラゴンがイチコロだって話もあながち間違いじゃないのかもしれない。空気中を漂うアルコールだけで人間が酔うなんて──作り話だと思ってたぜ。

 でも、道理で。

 俺はこの肉体になってからほとんど酔ったことがない。レベルが上がったからとかそういうのじゃなくて、前からだ。未成年だってこの世界では酒を飲める。

 源さんとの付き合いで酒を飲むことだってよくあった。

 でも、あまり酔わない。

 その俺が一時的とはいえ自制効かなくなる状態に追いやられるとは……やばいな。

 

 ていうかテロだろ。

 こんなもんそこらへんで蓋開けたら、どいつもこいつも酔っ払って仕事が手につかなくなっちまう。

 

「それ、蓋閉めてください。みんな酔っちまう」

 

「ああ悪い、つい楽しくなっちまって」

 

「でも……任された仕事もせずにまた見せろだなんて、本当に感心しないですね」

 

「すまん、なるべく早く仕上げたいんだが……なかなか適合する素材が無くてな」

 

「あ、そこは真面目なんだ」

 

 危ない危ない、頓珍漢な理由でガチギレかますところだった。クールに行け、明宏。

 

「でもアレだな、お前さんやっぱり仕事には真面目なんだな」

 

「いつも真面目じゃないみたいな……というか、普段は顔合わせたりしてないでしょ」

 

「だって武器の扱いが……」

 

「それはもう良いから!」

 

 いつまで引っ張ってんだその話。

 

「それで俺の何を聞きたいって?」

 

「おお、そこは一応話進めてくれるんだな」

 

「頭ん中に酒と鉄しか詰まってない気狂いどもでしょ? 聞かなくてもわかりますよ」

 

「…………」

 

 確かにそうだけど人に言われるとムカつくな……みたいな顔してんじゃねえ。お前らの発言を思い返せ。

 

「──こんな場所でいいんですか?」

 

 5人でやってきたのは、まさかの支部の酒場。俺はてっきりあそこであのまま続けると思っていた──というか、こんな開けた場所で話したら筒抜けじゃなかろうか。

 

「鉄を隠すなら土の中だ」

 

「ふっ」

 

「なんだよ」

 

「いいや、面白い表現だなって」

 

 だけど、鉄塊を砂漠に置いたら普通に目立つと思うんだ。

 

「……思ったよりは見られるな」

 

「鍛治師って鍛治以外何もできないんですか?」

 

「!?」

 

 そんなの、すぐに考えたらわかることだ。

 鍛治師は群れないし、あまり人と関わらない。人前に立って何かをしているところなど見たことは無い。神出鬼没とまではいかないけど、出会おうと思って出会えるものでも無い。

 俺はある程度傾向を絞ってから出向かうから会える確率は高いけど、一般的な方法とは言えないだろう。

 

 つまり、こんなところに明らかに探索師では無い──鍛治師らしき金槌を背中にぶら下げた男4人が入ってくれば目立つというものだ。

 あと、俺はソロなので人といると目立つ。

 ……今、俺のことぼっちって言った? 

 

「どうやら……あまり良く無い方策だったみてえだな」

 

「扉くぐる段階で気付いてましたけどね」

 

「じゃあ言えよ……」

 

「場所変えます?」

 

「あー……」

 

 ヴォルフガングとやりとりをしている間、意外なことに3人は静かにしていた。

 

「……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 静かどころか、彫刻が如しだ。

 椅子に座ってどこかを見つめたまま全く動かない。なぜさっきはそれが出来なかったのか。

 

「あの嬢ちゃんにアピールしてんだろ」

 

「はい?」

 

「ほら、あそこのメガネの」

 

「…………方目さん?」

 

「そうか、カタメっつうのか」

 

「方目さんにアピールって……なんで?」

 

「お前ちんこついてんのか?」

 

「付いてますよ」

 

 お前らこそ、そんなちびっこい体じゃ逸物もポークビッツだろ。そもそも使う相手いんのか? 

 ……とは言わない。

 

「顔が良いだろ」

 

「はい」

 

「気も強そうだ」

 

「はい」

 

「酒にも強そうだ」

 

「はあ」

 

「良い女じゃねえか」

 

 何を言っているんだこいつは……

 

「そもそもヴォルフガングさんは幾つなんですか」

 

「あ? 26だよ」

 

「あー……えっ!?」

 

「なんだ」

 

「ハゲとりますやん!」

 

「剃ってんだよ!」

 

 42とかだと思ってたのに、その見た目で26!? もしかしてアレか、髭で年齢かさ増しされてんのか。だとしたら今すぐ髭剃った方がいいな。

 

「でもアレですよ、方目さんはアル中とか髭面とか好きじゃ無いですよ」

 

「む……」

 

「イケメンで、若くて、養ってくれて、かっこよくて、彼女だけに優しくて、ヤニも吸わなくて、飲兵衛じゃ無い。そんな人を求めてるんです」

 

「…………俺が言うのもなんだが、そんなやついるのか?」

 

「はっはっは! だから待ってるんですよ、白馬の王子様を!」

 

「よく分からんが、度の過ぎた高望みはいかんな。鉄を打つには火が必要だが、適温でなければ身を焦がすか熱すら入らん」

 

 うんうん、と2人で頷く。

 しかし、なぜか周囲が静かな気が……

 

「──あ」

 

 ヴォルフガングが俺の肩越しに何かを見つめている。

 

「?」

 

「ハーイ」

 

「……は、はぁい」

 

「随分愉快そうな話をしてたね?」

 

「え? あ……なんだろうな、わかんねえ……そこのオッサンがなんか言ってたのは覚えてますけど……」

 

「へぇ? ……どなたか知りませんが、随分な……」

 

 ふう、何とか──

 

「そんなわけないね?」

 

「なぜ」

 

「誰? この人」

 

「知らないです」

 

「ふーん」

 

 本当に知らない。

 鍛治師で、俺の防具を預けているということくらいしか知らない。

 あと名前。

 

「俺は鍛治師だ」

 

「あ、そうでしたか……何で私の悪口を?」

 

「悪口? いいや、悪口言ってたのはアキヒロだけで俺達四人はあんたが可愛いなって」

 

「え?」

 

「特にそっちの3人は……うわ」

 

「……え!? な、なんですか!?」

 

 むくつけき髭面のおっさん3人が方目さんに跪いている。しかも、ありえんくらい煌びやかな指輪をそれぞれ差し出している。

 

「あ、あの……?」

 

 方目さんが怯えている。

 いいね、もっと苦労しろ。

 なんなら3人とも受け入れてやればいいんじゃ無いか? 鍛治師なら探索者ほど危険な仕事じゃ無いだろうし、稼ぎだって俺より上だろうな。

 ……そのうち越すけどなあ! 

 

「どうすればいいんですか……?」

 

「受け入れる気がないなら弾き飛ばせ、それが礼儀だ」

 

「…………ごめんなさいっ!」

 

 パンパンパンと三つ、指輪が地面を転がる。

 うわ、無情……マジで弾き飛ばすんだ……

 

「せっかくのモテ期なのにもったいねえ」

 

「うるさいっ!」

 

「髭剃ってみればイケメンかもしれないのに」

 

「いきなり結婚申し込まれて受け入れられるわけないじゃん!」

 

「…………」

 

 それが理想の王子様だったらどうするんだよ……だけど、なんか可哀想になってきたな……いるわけもない幻想に恋してるのか……

 

「な、何その目!?」

 

「鳥の丸焼きお願いします」

 

「…………ばーか! ばーかばーか!」

 

 これが職員の言い草か……? 

 

「振られちまったなあ」

 

「っかー! いい女だったのになあ!」

 

「仕方ねえな」

 

 方目さんは凄い効いてる感じだったのに、この3人は全然そんなことない。ダメだったわ! (笑)ってな感じで酒を飲み始めた。

 おい呑むな。

 鳥食ったら場所を変えるんだから。

 

「ワシはレイフィニアのブレイクだ」

 

「俺はメビウスのベネディアス」

 

「稀雨のシキルスだ」

 

 俺の担当がイルックス、触りたいのがレイフィニア、舐めたいのがメビウス、欲しいのがマレアメ。

 そのあとは名前なんだろうけど……なんだ? これは。

 

「名字ですかね」

 

「そう思ってくれてもいい。ワシらは名字の代わりに好きなのを名乗っとるんだ。大抵は生まれた場所だがな」

 

「なるほど」

 

 江戸時代以前はそんな感じだったみたいなことを聞いたことがあるな。

 確かに名字がなければそうなるのも自然なのか。

 

「というか、意外とすんなり名乗るんですね。鍛治師ってのは苗字も名前も名乗らないもんだと思ってましたよ。そこのヴォルフガングさんみたいに」

 

「ワシらも普段は名乗らんよ」

 

「?」

 

「神器の所有者に名乗らんわけにもいくまい」

 

「ああ……」

 

 大したものじゃあございやせんって、マジで言いたい。言いたいけど、人間ってのは話を聞かないし文字も読まない。なんなら、本人の言葉よりも別の人がそいつを判断した言葉の方に重きを置く。

 つまり、何を言っても意味がない。

 

「お前は名乗ってくれないのか?」

 

「…………加賀美明宏です」

 

 なんか、あんまりメリットが感じられない……こいつらに名前知られたからって何なんだろう。

 

「ワシらの望みは一つ」

 

 そこで口を寄せてきた。

 くさっ。

 

「……神器を見たいのだ」

 

「できるなら舐めたい」

 

「ええい黙っとれ……! 話が拗れる……!」

 

 もう拗れてるよ。

 

「無論、タダではない。あの酒云々も冗談だ」

 

「酒はもらいます」

 

「そ、そうか……本当は色々調べたいが……ひとまずは見せてくれればワシらのできる範囲で何かしよう」

 

「それは……破格ですね」

 

「そうじゃろう!」

 

 本当に凄くてびっくりした。

 鍛治師が何かしてくれるってのはつまり、良い武器を作ってくれとかでも良いってことだ。いらないけどね。

 ……要らないんだよなあ。

 それこそ、こいつらが見たがっているナイフがあるし、銃もある。鍛治師要らずで済まんな。

 ということを伝えた。

 

「そうだよなあ……当たり前だよなあ……」

 

 弱った、みたいな感じだった。

 それ以外にできることないのかこいつら。

 …………! 

 

「じゃあアレです。俺、焼肉が食べたいんですよ」

 

「焼肉?」

 

「そんで、牛を育てたいんです」

 

「……うん?」

 

「できません?」

 

「そんなザックリ!? ちょっと、今のじゃ何がしたいのかあんまり伝わってこないぞ!?」

 

 職人なんだからそこは雰囲気で、と思ったんだけどな。

 熟練の大工なんか機械も使わずにマンパワーでホイホイやるし、一軒家なら数日でできちゃう。

 イカれた作業速度だ。

 

「まあ要は、牛の牧畜を行いたいって話なんですけど」

 

「ボクチク……爆竹ならよく鳴らすが」

 

「なんで?」

 

 中国人なの? 

 PM2.5とか大丈夫? 

 この世界の火薬の威力えぐいけど。

 

「そりゃあモンスターを追っ払うためじゃよ」

 

「……やっぱり無理ですか?」

 

「うーん…………ちと相談しても良いか?」

 

「3人と?」

 

「いや、上と」

 

「可能性があるんですか?」

 

「あまり期待されても困るが……思いつかんこともない」

 

 やっぱり名前教えてよかったかも。

 

「じゃあ、場所を移しますか」

 

「「「!」」」

 

 話聞こか〜^^

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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