【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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95_わかんねえ……

「ふおお……!」

 

「これがヴォルフガングの言っていた……!」

 

「間違いない……間違いなく神器級だ……!」

 

 場所を俺ん家に変えて始めた観覧会。

 触るだの舐めるだの言ってたくせに、実際に目の前に置かれると3人はその周りをぐるぐると回り始めた。

 

「うう……すごい……!」

 

「良いなあ……」

 

「欲しい……」

 

 はいはい天丼天丼。

 その反応はもうあの髭面のおっさんで経験してるから。

 

「──俺たちゃ赤ん坊の時から鋼を見てきたけどよ、こんなのは見たことがほとんどねえ」

 

「あるんじゃないですか」

 

「そりゃあ一度くらいは見たことあるさ。でも、それはへ──」

 

「へ?」

 

 屁を見たの? 

 何でそれでそんな真剣な顔ができるの? 

 

「ううん……」

 

「なんですか」

 

「言えないことが多すぎる」

 

「社外秘を漏らせないのは普通だと思いますよ」

 

「あー難しい話はやめてくれ……頭が痛くなる」

 

 ベネディアスは額に手をやった。しかし、頭が痛いのは難しい話をしたからじゃなくて強烈なアルコールを浴びる様に飲んでいたからじゃなかろうか。死なないのは本人達の言葉だからその通りなんだろうけど、アルデヒドが回ってるんだな。アルコールが分解されていってる──つまり、生理的に反応を起こしているってことだ。探索者の火や毒に対する反応みたいに無条件でカットする様なもんじゃなくて、シンプルに体質として死なないんだろう。

 ……なんだそりゃ、どんな体質だよ。

 

「やっぱり……呼ぶしかないか?」

 

「……許されるか?」

 

「神器のことだ、許可は出るだろう」

 

「それはそうだろうが……大事なのは総意じゃろうて。できるできるゆうても、感情的なところでダメってなったら禍根が残る」

 

「ままならんなあ」

 

 そこら辺はそっちでうまく頼みますよ、俺に提示できるのはこのナイフと銃と防具だけなんだから。

 

「なあ加賀美の」

 

 何その言い方。

 一族の──みたいな感じ? 本当になんか古いね。俺も古さでマウント取ってこうかな。エヴァの話とかならできる。それっぽく脚色して俺が作ったことにしても誰にも分からんだろ。

 

「なんですか」

 

「黙ってワシらについてくることはできるか?」

 

 いきなり何を言い出すかと思えば。

 

「できます」

 

「──えっ!?」

 

「本当か?」

 

「ええ……?」

 

 ダメ元ってところか。甘いな、やっと見つけた手がかりをみすみす手の届かぬ場所に追いやる理由が無い。

 どれだけ俺が探し続けたと思ってるんだ。

 

「さあ行きましょう、いますぐに」

 

「いますぐに!? お主、結構思い切りがいいの……でも、ワシらの準備がまだ……」

 

「いつできるんですか準備は、明日ですか」

 

「待て! ちょっと待て!」

 

「ベネディアスさん、兵は拙速を尊ぶものです」

 

「何言ってるかよく分からん! とりあえず待ってくれ!」

 

「いつまでですか」

 

「乗り気がすぎるぞお主……」

 

 その情報が本当に牛をなんとかするために必要な要素として足りうるのであれば、最終的にはこの神器をくれてやってもいいだろう。それくらいには心が傾いている。鍛治師ってやっぱ神だよな、俺が求める物を全部持ってきてくれる。

 

「──んじゃあ、2週間後にまた来るから」

 

「ええ」

 

「……おいブレイク、シキルス!今のうちに見とくぞ!2週間後まで見納めだ!」

 

 またしても石像のようにカチンと固まってナイフを凝視し出す3人。俺はヴォルフガングと防具について話していた。

 

「いい素材が見つからないってのは、つまり今あるものじゃあいい感じに馴染まないってことですか?」

 

「ああ、どうにもうまくいかん。すまんがもう少し待ってくれ」

 

「ちなみに、プロとしてお聞きしたいんですけど」

 

「む」

 

 鎧立てに乗っけてある防具を持ってきた。

 ミスリル合金からミスリル合金(?)製になった防具だ。こんな数打ちの低レベルな防具を身につけて無茶をするなんて迂闊な野郎だと自分のことながら思うけど、これがどれだけ使えるものなのかはずっと気になっていた。

 

「…………」

 

「こいつがどれくらい使える物なのか気になって」

 

「……おまえさんは、どこまで俺を煽れば気が済むんだ?」

 

 難しい表情で防具を検分しだした。裏地をめくったり、腕当てを持って重さを確かめたり、コンコンと軽く叩いたりとチェックに余念がない。

 しかも、防具を見せた途端に赤ら顔が素面に戻った。これは流石になんらかの力が働いてるだろう。

 少なくとも異能の類なのは間違いない。身長が低い代わりに異能とかいっぱい手に入れてるのかな。

 

「ダメだ、わからん」

 

「分からない?」

 

「やはり何も見て取れん」

 

「え?」

 

 あんなに意味ありげに叩いてたのに? あんなにジロジロ見てたのに? 

 詐欺じゃん。

 水道工事業者じゃん。

 屋根瓦の改修工事業者じゃん。

 もしかしてあの3人も、何にも分からないで見てる? 

 

「ナイフは?」

 

「分からんよ、もちろん」

 

「なんてこったい」

 

 しかしそうなると、ちょっとだけあの光景も面白い物に見えてくるな。『わかんねえ〜』って言いながらナイフを見続けてるんだろ? 俺と一緒じゃん。

 

「見ただけで分かるなら鍛治なんぞいらんわい」

 

 それができるから鍛治師なんだと思ってたぜ。じゃあ、なんのためにここまでじっくり見てるんだ? 

 

「分かるところがないかを見てるんだ」

 

「?」

 

「もちろん、見ただけで分かることもある。手入れの様子や刃の摩耗なんかは特にな」

 

「おお、それっぽい」

 

「こいつで叩けば音で大体の硬度や強度も把握できる」

 

「出た、ハンマー」

 

「しかし……そこまでだ」

 

「十分では?」

 

「なんのために俺たちが鍛治師をやってると思うんだおまえは……」

 

 俺がそんなこと知るわけないじゃん。いいお嫁さんを見つけるためじゃないの? 求愛ダンスみたいな感じで、どれだけ良い指輪を作れるかが鍛治師達のステータスになってるかみたいな。そうじゃなきゃ、あんないきなり指輪を取り出せるわけないもん。

 少なくとも、金を稼ぐためじゃないだろうな。だったらもっと価格を釣り上げることだってできるはずだけど、こっちで売られてる金だけかけたオモチャ達にあえて値段が合わせてある。

 

「良い指輪を作るため!」

 

「…………惜しいな」

 

「良い武器を作るため!」

 

「そうだよ!」

 

 exactly! と指を鳴らす。

 確かにそれは鍛治師っぽい。

 ブヒブヒとナイフに感じ入ってるキモオタどもよりはよっぽど鍛治師だ。いつまで見てるんだ、意味ないのに。

 

「そこらへんもいずれ教えるから、今日のところはお暇するわい」

 

「わかりました」

 

「よいしょ!」

 

 ゴソゴソと背嚢を背負った4人。

 やっぱり男がこんだけいると暑苦しいし酒臭い。

 三船くんだけで良いよ。

 

 ──ひとりでに玄関の扉が開いた。

 

「ただいうわくさっ!? …………きゃあああああ!」

 

「うおわあああああ!」

 

 

 ──────

 

 

「もう! お酒臭いし汚い!」

 

「そんな汚くないって」

 

「汚いよ! 見てこれ、あの人たちが歩いた後だよこれ!」

 

 指差した先には微妙に足跡が残っている。だけど先週三船くん達と帰ってきた時なんかもっとやばかった。この程度を気にしていたら、やってられないと思う。

 

「もー! 臭いしぃ!」

 

「気にすんなよ……」

 

「おじさんには分からないかもしれないけど、すんごく汚かったからね!? あの人たち!」

 

「はぅぁっ!」

 

「おじさん聞いてる!?」

 

「俺が悪かったよ……」

 

「全くもう……掃除するの私なんだからね!」

 

「…………」

 

 くきぃぃ! 

 

「大体なんなの、あの人たち!」

 

「あれは鍛治師だ」

 

「へ? ……かじし?」

 

「武器を作る人たちな」

 

「なんでそんな人たちがいたの?」

 

「なんでって……仕事の話」

 

 まさか俺が、鍛治師四人を呼びつけて家で酒盛りをするような人間だとでも思っているのだろうか。

 

「なんの仕事か聞いてるんでしょー」

 

「俺の武器とか防具のことについて聞いてたんだよ」

 

「…………これ?」

 

「そう、これ」

 

 ミツキは防具だの武器だのには興味がない。それよりは流行りの服がどうとか小物がどうとか。

 

「なんかきたない」

 

「おまえ汚いしか言わないじゃん……」

 

「だって……もうちょっと色合いが良ければなあ……」

 

「何? 使うの?」

 

「…………は?」

 

「?」

 

「聞いてないの?」

 

「なにが?」

 

 何を誰から聞いてないのか。大学のレポートなら既に提出しているし、そもそも探索者として活動している俺にとってはあまりにも簡単だった。

 魔素を物質に与えた際の変化についてのレポートなんて……そもそも何もしなくても書けるぞ。

 もちろん、ちゃんとやったけど。

 

「大学の話?」

 

「お父さん……」

 

「コウキさん、またなんかやらかした?」

 

「アキも一緒にパーティー来るって聞いてたんだけど」

 

「???」

 

「何にも聞いてないんでしょ?」

 

「聞いてない」

 

 そもそも、パーティーなんか着いて行くわけ……ハッ!? 

 まさか、事前に伝えたら断られるからこんな手を!? 

 

「お父さん、本当にむのー」

 

「それコウキさんに言ったらガチで効くからやめてあげろよ」

 

「アキも効いたの?」

 

「…………」

 

「あー! 効いたんだー!」

 

 やめてね、辛い過去を掘り返そうとするのは。

 おとなしい子でも反抗期はちゃんと反抗期なんだよ。賢い子だったから暴力とかは無かったけど、反抗期だってちゃんと分かるくらいには反抗期してた。

 

「よいしょ……ちょっとー!」

 

 ソファーに突っ込んだミツキにのしかかると、抗議のつもりなのか腕を振り上げた。

 無意味だね。

 あー、体ちょっと冷えてんじゃん。

 

「外寒かった?」

 

「重い〜……」

 

「重くない」

 

「デブ!」

 

「デブじゃない」

 

「筋肉デブ!」

 

「…………」

 

「重いー!」

 

 ミツキで遊んでいたらコマちゃんが帰ってきた。

 雪だらけで、どこで捕まえたのか虫を咥えている。

 20cmくらい。

 汚い……! 

 

「それ、ペッしてきなさい」

 

「ペッ」

 

「あっ……はあ……」

 

 板間にペッてしちゃった。

 しょうがないので、もう使わない箸でつまんで庭に捨てることに。そして見えるところに捨てるととても気分が悪いので、土の中に埋めた。

 虫なんだけどめちゃくちゃ木っぽかった。

 多分ナナフシの仲間だ。

 

「珍しいな、食べないなんて」

 

「わんっ」

 

「あ、そう……なんで捕まえたの?」

 

「…………」

 

 答える気は無いのか、ソファーの上でグルグルと10回ぐらい回る。良いポジションを探し当てたらそこに寝そべった。

 気ままなもんである。

 そのまま円な瞳を輝かせて俺のことを……くっ! そんな目で見るな! 

 

「わふ」

 

「ええ? まだ早いような……しょうがないな」

 

 今日はコマちゃんの大好きなジャーキーにしてあげよう。

 個人でやってる肉屋さん──大島肉店で売ってるものだ。基本的には探索者が保存食として買っていくやつだけど、味が良いから一般向けにも販売している。セクターの一等地に店構えるだけはあるよなぁ。探索者から卸したモンスターを丁寧に処理してるんだってさ。丁寧のレベルも俺とは全然違うんだろうな。もしかしてあの人から素材を買ったら相当質がいいのでは? 

 

「ほら……あだあああっ!」

 

 身を乗り出して待っていたコマちゃんにジャーキーを献上すると、俺の小指ごと齧り付く。痛みで悲鳴を上げるとミツキも飛び上がってアワアワと動き回った。ブリキ仕掛けの人形のように8の字を描いて慌てふためくのを見て、コマちゃんはクッチャクッチャとジャーキーを咀嚼するばかり。

 俺の小指を齧ったことなんて気にも留めないらしい。

 

「ふー! ふー!」

 

「だ、大丈夫……?」

 

「取れたかと思った」

 

 何故こんな目に遭わなければならないのか。俺はコマちゃんに日ごろの感謝を込めてジャーキーを贈ったのにその返礼がこれではやるせない。

 

「コマちゃ! 噛んだらダメでちょ!」

 

「クッチャクッチャ」

 

「…………」

 

 俺の言葉は届かなかった。

 無意味──無力──何故、両者の愛にはこれほどの差があるのか。

 誰ぞ知らぬか。

 

「そういえば、例のパーティーのこと」

 

「うん?」

 

「行くよね?」

 

「何も聞いてない俺がそれを決められるとでも?」

 

「行くよね!?」

 

 首根っこを掴み、剣幕も程々にしてくれと言いたくなるような目付きで参加の是非を問うのはやめていただきたい。NOって言ったらどうなるんだこれ。

 

「だって私も行かなきゃならないんだもん……」

 

「じゃあ行くわ」

 

「だよね!」

 

 コウキさんがいるから心配する必要無いはずだけど、コウキさんだからあんまり信用できない。ミツキを不憫な目に遭わせるのは俺だけで十分だ。

 

「ちなみにいつやるんだ?」

 

「1週間後」

 

「どこでやるんだ?」

 

「第一セクターの商工会の会館だって」

 

 …………ふぅっ! ↑

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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