【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「おい、ハゲ」
「なんだと……?」
「報連相もできないのか」
「…………」
「なんか言ってみろ」
「パーティーたのしみだな!」
「何言っても良いわけじゃねえからな」
このモヒカンハゲ。ミツキが俺に確かめることまで織り込んでやりやがったな。
さて、一体何が目的だ?
俺のレベルが多少上がったとて、パーティーに出るような一級の探索者様方からすれば木端にすぎない。場に現れた雑魚に対して興味を持つことなどほとんどないだろう。
「求められていることがわかりませんね、ミツキのお守り以外に。これまでのパーティーに出なかったのと同じく、俺がそこにいる理由がわからない」
お守りだって、結局はコウキさんがすれば良いことだ。そもそも一級探索者は既婚者ばかりだから若い女に手を──それはまた別の話か。
じゃあ、やっぱりそういう役目?
「最速でレベル50の壁をぶち破ったくせに……言うに事欠いてそれか?」
「まさか……そんな事で呼ぶんですか?」
「……ジジイにゃわかんねえか」
「ジジイなりに分かるものはあります」
「んだよ」
「どれだけ力を得ようと、タイミングに間に合わなければ意味が無い」
「…………そうだな」
僅かな沈黙、コウキさんも経験しているのだろう。間に合わなかったという過去はついて回る。その後どれだけ活躍しようが、ふとした時に思い出す。あの時、何故自分は──もっと上手くやれた筈なのに、と。そんな時間がどれだけ虚しく、胸を掻きむしりたくなるような苦しさに包まれているか。
「──だけど!」
「うお」
指を一本、俺の眼前に立てた。なんだその、俺の主張を否定する時にとある女子がやっていた仕草は。お前はもしかして体内に女子でも飼っているのか?
もちろん、白いお玉杓子がいるからその可能性自体は飼っているだろうが……まさか、コウキさんは高校生だった……?
「それは別の問題だ! いいか、いずれは顔を合わせることになるんだぞ!」
「一級達と?」
「そうだ!」
「それが?」
「それがって……お前まさか、一級になっても1人でやってくつもりか……?」
「いいえ?」
「あ、そ、そうだよな」
「俺の目的と合致する方がいるのなら──パーティーは今だって組みたい。そもそも俺は、1人でやっていきたいなんて思ったことは一瞬たりともありませんから」
「…………」
「まあ、一級になれるかどうかも怪しいですけどね」
「は?」
「先日、鍛治師と取引をしましてね」
「──」
名前などは伏せたが、ベネディアス達との話を教えた。義父である以上、伝えておいた方が後々に問題が起きた時もやりやすいのは間違いない。
「……お前、ミツキ達を置いていくのか?」
「人聞きの悪い……そこまで長丁場になるようなら一旦こちらに戻ってきます」
「それでも、必要なら行くつもりなんだろ?」
「ええ」
「…………クズが」
苦々しげに絞り出された言葉。否定のしようがない、俺としては言われても頷くことしかできないことだった。
付き合って間もない彼女達を置いて出張に行く──浮気されたって仕方ないようなアホなことだ。
でも、仕方ないじゃないか。
そりゃあ3人のことは大好きだぞ? もっときちんと愛せるように頑張りたいし、何はそこまで辿り着けるだろう。だけど俺はどうしようもなくこんな男なんだよ。自分のことながら、なんて女々しい野郎だって思う。
だとしても……新しい恋に狂って夢を捨てられるほど、若くはないんだ。
俺は変わらない。
揺るがすことができない。
「申し訳ないけど、俺は死ぬまでこうだと思う」
「ちっ……」
「ていうか、3人とも来れるなら来ればいいし」
「ええ!?」
「別に待っててもらう必要ないよね、一緒に行けばいいんだから」
「そしたら俺が顔見れねえじゃん!」
「──俺だって見れねえんだぞ一生! 娘の顔が!」
甘ったれた事を言ってるのに腹が立った。
いつでも可愛い自分の娘を見られるのが、どれだけ恵まれているか分かってんのかコイツ。死は終わりじゃないけど、別れは永遠だ! その気になればどこにいたって会いに来れるんだからいいだろうが!
「いや、だっ……それはお前ちょっと……反則だろ」
「反則もクソもあるか! 俺が苦労してんだからお前も苦労しろや!」
「無茶苦茶じゃねえか!」
「子供なんてそのうち自立して、顔も年一回しか見せなくなるんだよ!」
「そ、そんなの分かってらあ……ていうかてめえ! ミツキ達のことは置いてけるくせに娘の話になったらそれか!」
「──別の話だからだよ」
やっぱり、自分の血を分けた相手というのは特別だ。どれだけ遠いところにいても繋がりがある。悲しいことに今の俺とは血が繋がっていないけど、それでも愛おしい。
「バカ親」
「娘の世話を幼馴染に半分放り投げるようなバカに言われたくないね」
「…………もういい!」
モヒカンのおっさんがいじけてるのは率直に言って正視に耐えない。ミナさんならまだしも……男同士でそんなのを見せるのは男子校だけにしとけ。
イケメンでもないんだからな。
「──で、どんなパーティーなんですかね」
「普通のパーティーだよ」
「もっと早くに教えてくれりゃあ、準備だって出来たんだけどなあ……」
礼服を準備するにしても、ギリギリになるだろうな。仕方ない、今日この脚で依頼しに行くしかないか。
「準備って、なんか持ってくのか?」
「服」
「服?」
「パーティーでしょう?」
「おん」
何だその間の抜けた返事は。
「タキシードとか」
「たきしぃど」
「……正気か?」
「なんだよ、たきしぃどって」
「じゃあ、コウキさんは何を着て行くんです?」
「俺? これ」
その世紀末ファッション、パーティーに持ち込んだら雰囲気とか爆発しない?
「…………」
「俺たちは探索者だぞ? 企業の役員やら商工会の奴らはカチッとした服着てくるけど……とにかく、たきしぃどってのを着ていく必要はねえよ」
「じゃあ、普通に行くか」
「そうだな」
──────
「普通って何だ」
「何が?」
「お前、そんなジャケットなんか持ってたんだ」
「パーティーなんだから、多少は整えますよ」
「……なんか違和感が」
「むしろ、きちんとした場でそんなカスみたいな服着てるあなた方の方がよっぽどおかしいですよ。違和感のイワの部分です」
「んなことねえわ!」
当日、パーティーに現れたアキヒロは普段とだいぶ違った。服装がいつもよりビシッとしているというか……探索者の中でコイツだけ明らかにおかしい。
「やっぱりお前も、いつものやつ着てた方が良かったんじゃね?」
「……」
「ほらあの……黒いやつ」
「でもほら、アレは鍛治師に預けてるんです。言いませんでしたっけ」
「あ、そうだったのか。知らんかった」
そんで、アキヒロはここまで1人で来た。途中で合流すればいいのに何なのかと思ったら、例のガキ2人を連れてきていたらしい。前乗りでやってきて、観光気分だとよ。コイツ、どこにいても子供の世話してるじゃん……ところで、
その2人はどうしたんだよ。
「あの2人は?」
「今日は別行動ですよ、本当に何の関係もないあの子達を連れてこられても困るでしょう」
「…………」
第1セクターは蒼連郷最大の都市だが、探索者用の大都市みたいなところがある。最悪はこの都市に人々が集まる事を想定されていると同時に、最終防衛ラインが外周に設定されている。故に、他のセクターと比べると人口に占める探索者の割合は相当だ。
一級探索者も多くいるし、それに続く二級探索者も多い。
あのガキどもはまだペーペーだし、見た目がいい。変なことにならなきゃいいが……まあ、そんなこと俺が心配するだけ無意味か。
……一応、注意だけしておこう。
「おいアキヒロ、2人のことだけど……」
「ご心配なく、永井先生も連れてきていますから」
「なんで!?」
無茶苦茶だよ。
「この際、商工会に苦情を入れようと思いましてね」
あまりにもクレーマー気質すぎる。
なんであの人のことを巻き込んでるんだコイツ。
「永井先生も、例の青髪の男にうんざりしているところだったようで」
「だからって来るか? 普通」
「きました」
そりゃ来たんだろうけど……あの人も何を考えてんだよ。大学でなんか色々忙しいんじゃないのか? たかが忠告のためにこんなところまで来るか?
「それで……永井さんに2人を預けたのか?」
「ええ、3人で観光しているはずです」
「よくもまあ、学校の先生に弟子を預けようと思ったな」
「弟子?」
「弟子だろ?」
「いや、そういうのじゃないですね」
「はあ?」
「なんていうかな……えーと、依頼の対象物と受諾者みたいな感じですかね」
とち狂ってんのかコイツ。
とち狂ってたわそういえば。
とち狂ってなきゃこんなことになってない。
「少なくとも、俺は師匠だの弟子だのっていう大層な関係だとは思ってませんよ。そう呼ばれたこともありませんし」
「…………もういいや」
「ところでミツキは?」
「ああ、もう少しで来る」
「楽しみですね!」
「…………」
「なんですか」
「お前が何で喜んでんのか、俺にはもうわからん」
「?」
コイツの具体的な年齢(夢)は知らないけども、話ぶりからしてミツキとの年齢差ってじじ孫のそれだろ。育ての親的な目線で見てるのか、兄的なアレなのか、ちゃんとパートナーとしてのソレなのか。
どういう感情だったんだ今の言葉。
「あの扉から来るっぽいですね」
「おう」
赤い扉。
いかにもな飾り付けを施されたそこの奥から足音が近付いてくる。
来るのはミツキだけではなくて、他の招待客の付き添いだ。
この場においてはミツキは主役じゃ無い。
……俺の人生においてはミナと並んで第一位の主役だけどな!
「──ミツキ」
「…………」
ミツキは髪色が日によって変動するから、前日までに色を考えたコーディネートをするってことができない。だから普段は──家にいた時は服を選ぶのに時間をかけていた。アキに見せるんだ〜って、ミナと一緒になってこれじゃないこれでもないって。
今日は銀髪。
外に向け軽くカールした肩までの長さ。
整えたんだろうな。
身に付けているのはイブニングドレス。メタリックさを感じるような薄氷色。あしらわれた宝飾は僅かながら、煌めく髪を際立たせる淡い桜色。
『…………!』
小さく手を振った。だけど、俺のことなんて絶対見てない。
隣でにこやかな笑みを浮かべている明宏を見ているだけだ。何でお父さんの俺が無視されてこんなや……こ、こんな…………ぐぅぅっ!
「綺麗だ……」
「そ、そうだな」
「本当に……大きくなったな……」
「…………あ、ああ」
何で泣きそうなんだ……本当に気持ち悪いなコイツ……でもミツキ、本当に大きくなったよな……
泣き虫で、アキヒロの後ろにいるばかりだったあの子が人前でこんな…………あれ?
「え、あれ……」
何でこれまでの思い出が一気に……これじゃあコイツのこと笑えねえよ。
「うわ、泣いてる……」
「お前も泣いてんだろうが……」
完全につられてしまった。
そうでもなきゃ、俺が自発的に人前で泣くなんてありえん。
元一級探索者の俺が。
「くそ……」
「──そうかい」
「あ? ……なんでもう泣き止んでんだよ」
「…………泣きすぎだろ」
何で俺の方がおかしいみたいな目で見てんだコイツ!? お前につられただけだわ!
「ちょっと後で抜けるかもしれないんで」
「それは好きにしろよ」
恥ずかしそうに歩いてきたミツキ。
アキヒロもゆっくりと歩み寄ると、恭しくお辞儀をする。芝居がかっててすっげえ滑稽だけど……服装のせいか、いやに
「お待ちしておりました、お嬢様」
「やめてよ……もう……」
「ふへっ、それにしても似合ってるぞミツキ」
「……そ、そう?」
「ああ、コウキさんも泣いてた」
「お父さんが?」
コイツ、バラしやがって……
「でも……アレ、だね、その」
「?」
「あ、アキも……結構、似合ってる、じゃん……」
「そうか、ありがとう」
「…………ムカつく!」
「なんだよ……」
ミツキ達はウェイターから飲み物を受け取って会場の隅っこに移動した。
パーティーといっても企業の売り込みと顔つなぎ、商工会は探索者との単純な関係強化を目論んで開かれている。
明宏はそんな事どうでもいいんだろう。
基本的にはミツキとおしゃべりをして、話しかけられた時だけは対応していた。
ただ、先んじてレベルや実績を伝えて自分を下げているようで、企業側もある程度話したら興味を無くして去っていく。逆に商工会側からは今のところアプローチがない。
「……」
「ヨツカド様、お久しぶりでございます」
「ん、ああ」
誰だっけ。
全然覚えてねえ。
「半年前にお会いしたシノベ屋でございます。宝石商を営んでいる──」
「ああ、はいはい」
あんまりにもしつこいから適当に返事だけしていたような気がする。どんな会話だったかな。
「前回約束させていただいた通り、ご息女であらせられるミツキ様にも似合う物を……」
「…………」
ダメだこりゃ。
浅層から中層で取ったやつを磨いただけだな多分。
まあ所詮は企業。
深層まで潜れるような人材なんかいないんだろう。
期待するだけ無意味だったな。
「もういいよ」
「あ──」
次に会ったのは商工会の探索部の顧問審査官。
「よう」
「お久しぶりでございます」
「大きな問題は?」
「はは……知ってらっしゃるでしょうに」
「何のことだか」
「ダンジョン化ですよ」
「解決しそうなのか?」
「風の噂では……」
視線の先。
明宏。
……商工会がコソコソかぎ回ってるって言ってたのは、これか。マジでコイツらアイツのこと疑ってんのか?
「俺の義理の息子になる予定なんだが──お前ら、あんまり調子乗ってるなよ?」
「もちろんでございます! 本来はもっと早くに私の方からお伝えすべきところ、この場での話になってしまい申し訳ない次第ということでございまして……」
「…………」
「トラブルを招きたいなどとは微塵も思っておりませんで……しかし──」
来たか。
「我々は探索者の皆様の味方であると同時に、蒼連郷に住む人民を守る義務がございます。そのために必要な事はどうしてもさせていただく場合がございます」
「けっ、俺たちがいなきゃ何もできねえくせに良く言うぜ」
「ええ! ええ! 勿論ですとも! なのでこうして、言葉でのみのお願いとなってしまうわけでして……」
お願い。
「邪魔するなってか?」
「滅相もない。ですが、そうですね……あくまで人々のために動いていると知っていただければと」
「…………」
「何卒、今後もよろしくお願いいたします──では、失礼いたします」
ジジイめ。
深層のゾンビぐらい厄介だぜ。
──あれは。
「青髪……例のやつか」
早速とは、肝がすわってやがる。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない