【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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104_ひさしぶりに話でも(答えは聞いてない)

 

「ほえー……スノーマン、ですかあ」

 

 三船くんはスノーマンのことをあまり知らないようだ。孤児生まれの貧乏育ちだからだろうか…………おっと、こういう思考はあまり良くないな。憐れみは生産的な感情じゃないから控えないといけない。

 

「うん、雪だるま……あー、雪だるまってのは雪を丸めて重ねたやつでな」

 

「そうなんだ」

 

「その雪だるまが動くようになったやつ……みたいな……」

 

「はあ」

 

 雪だるまがまずわかってないからピンときてない。

 

「だるま……」

 

 ダルマがまずわかってないっぽい。そこからか……! いや、そうだよな! だってダルマがないもんな! これは俺が悪い。

 ……じゃあ雪だるまってなんで説明すりゃ良いんだよ! 雪……雪玉重ね!? 

 

「とりあえず観に行くか?」

 

「えっ…………寒い……」

 

 キュンってする。

 身体起こしたけど寒くて首元まで布団引き上げてるの見ると心臓がキュンってする。眩しくてまっすぐ見つめられない。

 

「ア〜キ〜?」

 

「なしてほっふぇをつまむゅんでしゅか」

 

「目つきがいやらしいよ〜?」

 

「みへないみへない」

 

 俺が立場を利用して三船くんを視姦しているみたいな言い掛かり、本当によくない。俺はただ、三船くんが身体を起こしたけど寒くて首元まで布団引き上げてるところを見ると心臓がキュンってするだけだ。

 このキュンっはもしかしたら不整脈かもしれないし、可哀想だなって気持ちかもしれない。一義的に捉えるというのは選択の可能性を狭めることで俺にとって不利なので、疑義を唱えさせて頂きますよ。

 

「…………」

 

 ほれみろ! 

 二人とも俺のことを変態を見る目で見ているじゃないか! せっかく築いてきた俺の信頼が壊れちゃうじゃないか! やめてよ! 

 

「いや、アキが変態なのは今に始まったことじゃないから」

 

「おおっと……それはブーメランというやつだなミツキ。変態は俺じゃなくて、お、ま、え」

 

 過去の例が示す通りだ。

 

「だって山田ちゃんのサラシ姿見たことあるんでしょ?」

 

「あのなあ……アクシデントだよアクシデント。俺から見せろって言ったわけでも覗いたわけでもない」

 

「アリサちゃんも尻尾触られたって」

 

「それは……まあ、うん……」

 

 なんで知ってるのん……あれでしょどうせ、二人で結んでいた共同宣言みたいなやつのアレ……今になって考えても意味わからんわマジで。まあいいや、もう過ぎた話だ。関係も整理されたし──され……さ、された……うん、整理されたはず──そう、つまりあの話はもう無かったことになっているだろう! (やけくそ)

 

「まあいいや、ごめんな寝起きに」

 

「いえ……」

 

「まだ眠そうだし寝てても良いからな?」

 

「…………ん」

 

 寝起きは色々と準備もあるし急かす必要もない。ミツキもちゃんと支度がしたいらしいから俺は先に酒場に行っておこうかな。2階と1階を繋ぐ階段の方からこゆーい脂の香りが漂ってきた。これは間違いなく朝飯ですだ。

 

「──やあ」

 

「ああ、あったまっているようで」

 

 階段を降りると、永井さんは暖炉に向けて手のひらを向けていた。雪だるま共を散々撫で回して冷えた手先を労っているらしい。まあね、朝っぱらからあんな雪まつりみたいなことする羽目になるとは思わないよね。いくら霊領の研究者でも。

 

「はは、手袋も乾かさないとね」

 

「たくさん観察できて中々良かったんじゃないですか?」

 

「おやおや、そういう君こそ。お目当てのものは手に入ったのかい?」

 

「流石に街中でいきなり相手の鼻を引っこ抜くようなことは出来ませんでしたよ」

 

「食べるって言ってたけど、そんなに美味しいのかい? ニンジンは」

 

「まずいとは言いませんけど……普通の野菜ですよ」

 

 期待させたようで申し訳ないけど意外だな。永井さんもそういうのに興味があるんだ。

 

「食事の大切さくらいわかっているさ。食べればこそ、人は全力を発揮することができる」

 

「まあね」

 

『へいお待ち!』

 

 別卓に届いたのは海棲モンスターの肉を焼いたもの。魚のような香ばしい脂の香り、先ほど2回で嗅いだのはアレだったのか。鰭部分が丁寧に揚げられていて、いわゆる骨煎餅になっている。

 それにしても揚げ物とは、朝から濃いものを食べるね。

 

「気になるね」

 

「……胃は大丈夫なんですか?」

 

 この人の胃が脂に耐え切れるとは到底思えないんだけど。それとも、霊領に行っているなりに内臓が強くなるとかあるのかしら。

 

「そこを突かれるとは……しかし私はこんなことでは諦めない。たとえ明日が辛くとも、今が幸せならばそれで良いんだ」

 

「……」

 

 何言ってんだこのおっさん。いきなり幸福論語り出したのかと思ったわ。

 

「おーい、アレと同じものを一つ」

 

『おう!』

 

「ふう……良い匂いを嗅ぐと腹が空くんだよね」

 

「食欲旺盛ですね」

 

「まだまだ若いつもりだよ」

 

「良いことです」

 

 程なくしてやってきた三船くんとシエル。流石にこういう旅行でまで一緒の部屋にする必要はない。最初は分けようとしていたのだけど、二人ともお金がもったいないと言うので同室だ。

 俺としては普通に分けて良いと思うんだよ。日常生活全てを同一にするのは逆に良くないからな……合宿はまた別だけど、ずーっと一緒にいるとお互いの良くないところというのも見えてくる。

 

 長く一緒にいるコツは適度に距離を取ることだ。長くいるほど自分の思考の中を相手が占める割合が多くなるし、嫌なところが一つ見つかるとそこばかり思ってしまう。夫婦ならばそれを乗り越えるのも一つの義務──あるいは子供というカスガイが繋ぎ止めてくれるが、この二人はただのパーティーメンバーだ。正直な話をすると、同じところで住むメリットって少ないと思う。

 寂しさも、基本的には時間が解決する程度の問題だ。

 

 そうは言っても、たまに遺伝子レベルで相性のいい相手もいるので侮れない。

 

「おはよーございます」

 

「おはよ」

 

「おはよう二人とも」

 

「どうやら二日酔いにはなっていないらしいね」

 

 二日酔いになる程飲ませてないからな。

 飲酒は程々に、だ。

 というか俺が、子供に酒を積極的に飲ませるわけないじゃん。そんなことしたら脳みそが萎縮しちまうし、血管にも心臓にも悪影響だ。

 せめて18になってからだ。

 心がきちんと育って知識が身についてからじゃないと飲ませませんよお! 

 知り合いには鬱陶しがられたりするけど、これは当たり前の気遣いだからな! 

 

「あれが酔うってことなんですね」

 

「お腹は空いてるかい?」

 

「…………へへ」

 

 ぐぅぅと腹を鳴らすと、永井さんの隣に腰を下ろした。な、なぜ俺でなくてあの人の隣を!? ……というのは冗談で、永井さんの隣が空いていただけだ。

 

「もう少しでご飯が届くからね」

 

「はい!」

 

 こうして見ると本当に祖父と孫みたいにも見える。二人ともだいぶ打ち解けられたようで安心した。知り合いと知り合い(知り合い達は知り合い同士ではない)を連れてくるのは基本的に悪手だからな。これで相性が悪かったら酷いことになっていた。

 

『へいお待ち!』

 

 届いたのは別卓と全く同じ皿。朝からこんなの食べられねえよ……と日本人の俺が言っているけど、俺は日本人じゃなくて探索者なのでいけます。自分、朝から脂ものいけます! 

 

「ちゃんとナイフで切り分けようね」

 

「はい!」

 

 丁寧にナイフ(キッチンナイフではない)を使って切り分けていく。俺、ミツキ、永井さん、三船くん、シエルで5人分にちょうど分けられた肉をグヘヘと頂戴した。

 俺が若い頃……じゃなくてガキの頃はこんなもん食えなかった。激安の人工肉ばっかだったね。おかげであの整った味には食傷気味なんだ、永久にな。

 

 母さんと父さんのせいではない。ただ、時代と運が悪いだけだ。そして……そんな二人を補う能力を持っていたことを誇りに思う。茜にいっぱいご飯を食べさせられるようになって本当に良かった。

 

「むぐむぐ」

 

 やや弾力の強い噛みごたえ。空気よりも強い粘性を持つ、海水という液体の中を泳いでいるだけはあるな。それに、とても脂が乗っている。やはり魚は冬が美味しい。秋に蓄えた分が全て味に転化されてジューシーだ。

 

「メダルリアというモンスターだね」

 

「ああ……確か真空波を放つっていう」

 

「うん、流石に鍛えられている味だ」

 

「…………」

 

 メダルリアかあ……

 平べったい目ん玉みたいなやつだよな……うーん……

 

「美味しいです」

 

「うんうん」

 

 美味しいなあ……

 

「──先生」

 

「ん? …………え」

 

「おはようございます」

 

「あ、ああ……なんでここに?」

 

 誰? 

 

「サニアだ」

 

「加賀美明宏です」

 

 サニア、聞いたことのない名前だ。

 西洋風の名前。

 おそらくそっちの血も混じっているのだろう。

 目の色や髪、顔つきからしてそんな感じはある。

 そこは不思議ポイントではない。

 人種や耳、尻尾の有無でなんとか言われるほど世界は旧態依然とはしていない。なんなら、俺しか気にしていない。この異世界人どもが! 

 

 不思議なのは、こんな朝っぱらからわざわざ人の泊まっている宿にやってくることだ。約束をしていたわけでは無いんだろうというのは今の短いやり取りでもなんとなくわかった。

 

「話をしにきました」

 

「…………ああ、話ね」

 

「まさか……忘れてた……?」

 

「いやいや! そんなわけはないさ!」

 

 社交辞令で言ったことを真に受けてしまったようで……サニアとかいうのは生真面目な性質をしているらしい。しかし、なんの話だ。霊領関係で色々と教わってるか、それとも元々は俺と同じ大学生だったのかもしれない。

 

「わ、私は久しぶりにゆっくり話をしたかったのに……!」

 

「全然忘れてないから! サニア! 大丈夫!」

 

 相当懐いていたのか、涙目で訴えている。

 永井さんは先生としてはそこまで面倒見が良い方では無いんだけど、昔は違ったりして。

 

「…………ふぅ、取り乱しました」

 

 取り繕うには少々遅い上に、その手のセリフはなんのリカバリーにもならないことが多い。

 見ている分には面白いけどな。

 

「それで、なんの話だったかな」

 

「色々です! これまであったこととか、色々話したいことがあるんですよ!」

 

「……以前に見た時とは装備が違うね。多くの経験を積んできたと考えていいのかな?」

 

「そうです! 昨日、先生の話が終わったら話したかったのに待っていてもいつまでも来ないし!」

 

「そ、それはすまなかった……」

 

「リサとセナの事もちゃんと紹介したかったのに!」

 

 何やら雲行きが怪しいような。

 

「引っ張ってでも連れて行きますからね!」

 

「朝から誘拐宣言……」

 

「はい!」

 

「はいじゃないね?」

 

 肉を食べた後は、助けを求める子犬みたいな目をした永井さんを嬉々として連れて行ってしまった。まあ、用事は済ませたし問題ないんですけどね。

 

「良かったんですか?」

 

「大人しく連れてかれたし、別にいいんじゃない?」

 

「おとなしく……?」

 

「本当に嫌ならそこら辺うまくやるだろ」

 

「ああ……」

 

 大人なんだから、自分のことは自分でやってくれ。個人的な親交にいちいち首は突っ込んだりしねえよ。

 

「そこらへんドライなんですね」

 

「いやドライではないでしょ、普通だよ」

 

「えー」

 

「3人はどこか行きたいところはあるのか?」

 

 腹拵えは終わった。店はまだ開いてないだろうから中に入れるのは商工会くらいだろうけど、行きたいところがあるなら一応聞いておきたい。

 

「私、ブティックいきたーい」

 

「はい」

 

「僕は……武器のお店とかちょっと見てみたいかも……」

 

「はい」

 

「……別に」

 

「はい」

 

 服と武器ね。

 そしたら三船くんとシエル、俺とミツキで別れ…………いや、四人で行くか。

 

「──どうかなこれ」

 

「もう少しがいいんじゃね?」

 

「だよねえ……」

 

「それよりはもう少し裾長いほうがいいな」

 

 ミツキの場合、似合わない色が無いからな。むしろ自分のスタイルの心配した方がいい。

 アリサは探索者、日向は武術の師範、コイツは一般人。何もしてないと一番初めにだらしなくなるのは、間違いなくこの幼馴染だ。

 

『高っ!? ぼ、僕こんな高いの買ったことないよ……』

 

『ふーん』

 

『こちらなどおすすめですよ?』

 

『へ……へ……ええと……』

 

『ほら、お似合いですよ?』

 

『あ、そ、そうなのかな……』

 

『こちらの服と合わせるともっとお似合いですよ?』

 

『へー……』

 

『──レイトは貧乏だから無理』

 

 店員の掌の上で転がされそうになっていた三船くんが目を回しているところ、シエルが見かねてフォローを入れていた。

 

『分割払いと言って、少しずつ払っていただくこともできますよ?』

 

『…………ダメ、そんなの』

 

 露骨に嫌そうな顔をしたシエルは、店員の提案を跳ね除けた。何度かやりとりをしてやっとこさ諦めさせることに成功したのか、店員は別の客の元へ。

 

「あ、これいいかも」

 

「部屋着」

 

「うん」

 

「じゃあそれな」

 

「はい」

 

 モコモコの寝巻き、サッカー選手みたいな名前してたやつを受け取った。

 次は何かしら。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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