【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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106_どこかで見覚えがあるような

 

「う゛ー……なんともなんとも」

 

「風呂は良いものですね」

 

「先人に感謝だな」

 

 先人、つまりは第1期の生き残り達が残した文化の一つ。この世界がたった100年でここまで文明然とした生活を送れるようになったのはひとえに、生き残り達が死力を尽くしたからに他ならない。

 でなきゃ、俺はこの世界が地球と同じだなんて気付くことは絶対にあり得なかっただろう。

 

「いやあ……本当、いなかったらどうなっていたことやら」

 

「案外どうにかなってそうだけどね」

 

「ご冗談を」

 

「ふむ」

 

 意味のないたらればは置いといて、とても奇妙なことについて話をすることにした。

 

「同時多発の爆発……」

 

「引っかかるところがあるのかい?」

 

「あるかないかで聞かれればあります」

 

 同時多発と言えばでまず思いつくのはテロだけど、それよりも思うのは──

 

「この街の人間、うんこしすぎじゃ無いですか?」

 

「…………ふはははは! たしかにな!」

 

「いろんな場所で爆発するのは中々ないでしょうけど、それってつまり、1箇所で起きた爆発に刺激されて起こったとも考えられますよね」

 

「はっはっは!」

 

 おそらく、相当な量の汚水が流れ込んでスライム達を成長させたに違いない。その一端を担っている身として、あまり馬鹿にするような発言をするとブーメランが大きくなるけど、それはそれとして俺は観光客なので当然のように文句は言う。

 観光しにきたのにうんこ臭くなったのはここの住民がうんこしすぎなせいだ。俺たちは数日しか滞在してないんだからほとんど関係ない。

 

「そもそも俺、スライムが地上に上がってこないように押し留めてたんですからね? それであんなふうに言われちゃ商売あがったりですよ」

 

「まあまあ、店主にはそんなこと分からないだろうさ」

 

「……服はどうしますかねえ」

 

「染み付いてるからねえ」

 

 捨てるか。

 

「臭い消しはあるだろうけど、それ買うなら服を新しく買った方が早いからね」

 

 探索者が扱うアイテムってのはどれも、一般的な価格水準に比べると高額なものになっている。それだけ効果があることの証明みたいなものだけど、服の臭いを消すために服の総額よりも高いものを買うのは本末転倒だ。

 

「こう……折角なら酒を飲みながら風呂に入ってたいなあ……」

 

「そりゃあ良い、でもあの店主さんは許さないだろうねえ」

 

「こっそりやっちまえばバレませんけどね……まあ、先生がやるのはお勧めしませんけど」

 

「はぁ〜……立場ってのは使える時もあるし邪魔になる時もあるし……」

 

 どちらかと言えば立場は邪魔になることの方が多いので、俺はこの一緒においてはなるべく責任とか立場とか持ちたくない。ですが……! なんと……! 女の子3人と……! 何をしているんですか俺は……! 

 

「ど、どうしたんだいいきなり……頭痛いのかい?」

 

「そうですね……本当、頭が痛くなりますよ……」

 

「ミツキちゃんの事かい?」

 

「それもまあ、はい……そうですね」

 

「子供でもできたのかな?」

 

「まだですね」

 

「……年が経つのは本当に早いものだ」

 

「分かる」

 

「──そうだろうね、君は忙しいからすぐに時間が過ぎるだろう」

 

「時間が全然足りないですよ」

 

 時間距離の縮小された世界がここまで厳しいとは思わなかった。この国から人類が出るのに果たしてどれだけの時間がかかるのやら。

 

「探索者は長寿になるとも言うし、案外足りるんじゃないかい?」

 

「そうですけど……どうなんでしょうね」

 

 人生が80年なら走り切れるだろう。だけどそれが数百年になったら……そもそも人間の精神って耐え切れるのか? 俺はそこまで強い心を持っているわけじゃないから、途中で発狂するような気がしてならない。

 それも、長寿になるという話が本当であればという前提があるけど。

 

「なんにせよ、とにかくやるしかないですから」

 

「良いねそういうの。私も負けてられないなあ」

 

「……そろそろ上がりますか」

 

「私はもう少し入ってることにするよ。昼間から風呂というのも中々悪くないことに初めて気付いた」

 

 部屋に戻ると、ミツキが口をとんがらせていた。

 

「臭くなっちゃったんですけど!」

 

「あーあ」

 

「あーあじゃないよ!?」

 

「しょうがねえだろ、あんなの誰も予測できないんだから」

 

「予測も何も、近づかなきゃよかったでしょうが!」

 

 ムキィィ! と怒り心頭のままに詰め寄ってくる。

 

「これどうすんのさ!」

 

「臭い消しあるから、後で使えよ」

 

「どこ!」

 

「家」

 

「無いじゃん!」

 

「うん」

 

「もぉぉぉ!」

 

 おもしろ……

 

「窓開けても臭いが漂ってくるし……なんなのもう!」

 

「マジで?」

 

「──フリじゃないから! 開けようとしないで!」

 

 過剰反応すぎるような気もするけど、おニューの服を汚されたので仕方ないか。

 

「じゃあ明日匂い消し買うから、それで良いだろ?」

 

「むぅぅ……分かった」

 

 ミツキもひと足先に風呂を使ったのか、服を着替えている。元々着ていた服もちょっと臭くなっていたとのことだ。

 

「はぁ……折角の1セクなのに、なんでこんな目に合わなきゃいけないの……」

 

 どこのセクターだってこうなり得るんだから、直で爆発喰らわなかっただけマシだと思った方が生産的だと思わないかい。

 

「そんな極論が通るわけないでしょ!」

 

「わがままだなあ」

 

「じゃあアキはあの黒い服がウンチまみれになったらどう思うの!」

 

「悲しい」

 

「私もそうなの!」

 

「ごめんごめん」

 

 グッと詰め寄ってきた。

 でも、こういうことに関してはなるようにしかならないので考えすぎるのは良くないと思います。

 

「な? 次のこと考えようぜ」

 

「…………」

 

 よしよし、ミツキちゃんは可愛いねえ。

 犬に例えるとチワワみたいな感じかもしれない。臆病だけど、噛み付ける奴には噛みつくしきゃんきゃん吠える。それでいて絆されやすいときた。

 俺が幼馴染で良かったな! 

 

「あーもう……浮気性のバーカ」

 

「…………」

 

「バカヒロ」

 

「誰だよそれ」

 

 解説不要につき。

 

 ──戯れてくるミツキと遊んでいたら、扉をノックされた。

 

「はーい」

 

『加賀美さん、お昼ご飯にしませんか?』

 

「あいよ」

 

 鼻がひん曲がってそうだったシエルはどうなっているのだろうか。もしかしてガスマスクでも身につけているんじゃないだろうなと予想しながら部屋を出ると、全然そんなことはなかった。

 

「……」

 

 だけど微妙に顔を顰めている。

 この宿に関してはマジで匂いとか無いんだけど、鼻の中に刻み込まれてしまったのかもしれない。

 そうだとしたら相当な拷問なわけだが。

 

「相当嫌だったみたいで……」

 

 思い出して怒ってるだけか。

 

「今日はもう外出たくないって言ってました」

 

「お、おう」

 

 なぜ全てのセリフを三船君が説明したのか。口を開いたら罵詈雑言が飛び出してきたりするのかもしれないな。

 

「二人はなんか食べたいものある?」

 

「ええと……ハンバーグ……ですかね」

 

「シエルは?」

 

「一緒でいい」

 

「どうせなら違うの頼めばいいんじゃねえ? そうすれば分けて違うもの食べられるし」

 

「…………これ」

 

「刺身の盛り合わせね」

 

 系統が……違いすぎる! 

 別に良いけど。

 

「お酒はダメだぞ二人とも」

 

「……はい」

 

「…………」

 

 なんでちょっと不満そうなんだ。

 そんなに美味しかったのか? 

 

 

 ──────

 

 

「えー……本当に行くのお?」

 

「行きますが何か問題でも?」

 

「臭いし寒いし、今日はやめようよ……」

 

「お前は部屋にいるだけだから別に良いだろ」

 

「寂しいじゃん! 部屋で一人なんて!」

 

「勉強しろよ」

 

「むかっ! そんなこと言ったらアキだって勉強するべきじゃないの! そもそも勉強道具持ってきてないし!」

 

 本部で受付だけ済ませたいんだよな。確かに風呂に入った分の清潔さを失うのはキツイところがあるけど、無意味に部屋でのんびりするのは意味がわからない。下水道の事は他の探索者たちが勝手に進めてるだろうし、俺は大人しく外へ突進する所存だ。

 

「……外から帰ってきて臭かったら部屋入れないからね?」

 

「へいよ」

 

「本当だからね!」

 

「風呂入るくらいするから……」

 

 みんなも調査業務を人生で50回ぐらいは受けてみると良いんだ。そうすれば下水の臭い程度、なんてことないって分かるから。

 

「……危ないことしないでね?」

 

「うん」

 

 これだからうちの幼馴染は最高だよなあ!?

 

「はぁ……振り回されてばっかだよ……自覚ある?」

 

「あり寄りの無し」

 

「じゃあアリじゃん」

 

 パーティーが開かれたのは会館なので、距離的には本部に近いところだった。だけどパーティーが終わったのは夜中。受付なんか一人も残ってないから、行く意味はなかった。精々、潰れたやつらが──いや、本部なら夜には外に追い出されてるか? 

 

「いってきます」

 

「はーい」

 

 そういうわけでやってきた本部。

 うんこ臭えなあ! 消臭しろ消臭! 

 でもラッキーだぜ、そこまで探索者の数が多くない。

 

「こんにちは」

 

「こんにちは……なんですか?」

 

 なんですかって……ここに来る目的なんて、めちゃくちゃ絞られると思うんだけど。俺、何かしちゃいました?

 

「登録をしにきました」

 

「えーと……じゃあここに必要なこと書いてくださいねー」

 

「はい」

 

 235セクターでもそうしたように登録を行う。名前、住所、レベル、性別などなど。

 大したことじゃないのでさっさと記入は終わらせて説明に進んだ。

 

「これ読んで、特に問題とかなければサインしてくださーい」

 

「ああ、なるほどね」

 

 口頭での説明は行わないらしい。今日は人がいないけど、普段はいちいち対応してたら時間が足りなくなるからだろうな。マニュアルみたいなのを渡されて、市街地での戦闘に関することなど内容を確認してサインした。他のセクターと大差ないけど、街中で探索者同士が戦闘しないことに関しての厳しさは数段上だ。

 他だと罰金とか厳禁って書いてあるぐらいなのに、第1セクターだと一発で資格剥奪だ。

 

「ちょっと聞いても?」

 

「はい?」

 

「ここ、この部分なんですけど」

 

「…………読めばわかりますよね。街中で戦ったらライセンス剥奪なんで」

 

 誰も信じぬと光貫く目、への字に曲がった口元、綺麗な顔が台無しのぶっきらぼうな口調。相当にスレてしまっているっぽいな。探索者と接していると人間性が崩れていきやすいってのは色々なところで言われている。

 彼女も初めはもっと愛想良く、さっきの質問にも優しく答えてくれていたのかもしれない。

 どうでも良いけどな。

 

「そうなんですね、ありがとうございます」

 

「──ああ、はい」

 

「ところで……先ほど、複数箇所で下水道が爆発したようですがよくあることなんですか?」

 

「無いですけど」

 

「へえ! 何が原因だったんですか?」

 

「さあ、部署が違うのでそういうのはわからないですね」

 

「なるほど」

 

 本当に知らなそうだし、表に出せるような情報もまだ集まってないのかもしれない。土産話でも持っていければと思ったけど、そう甘くはないみたいだな。

 

「──?」

 

「なにか?」

 

「あ、いえ……どこかで会いましたっけ?」

 

「ははは、このセクターに来たのは初めてですよ」

 

「そうですか……」

 

 しきりに首を傾げては、下をチラチラと見ている。それはもしや俺の書いた書類では。やめてよね、個人情報を君の私的な興味の対象にするのは──というのは前時代的な考え方なんだ。個人情報とかねーから! というスタイルで突き進んでいくのが彼らの隣人コミュニケーション。大丈夫、20年もあれば慣れたからな。

 ともあれ、支障無く登録できたので帰るか。家に買ってくお土産と日向たちに買ってくお土産とアリサに買ってくお土産を買わないといけないし、帰りがけにどっか寄ろう。

 

「──あ!」

 

「はい?」

 

「加賀美明宏って! なるほど!」

 

「?」

 

 俺、バカだからよくわかんねえけど……人の名前をこんな場所で大声で叫ぶのはやめた方がいいんじゃねえかと思うぜ。

 

「あーすっきりした!」

 

「何が?」

 

「──ここに何しに来たんですか?」

 

「登録ですよ!?」

 

 3歩進んだら自分がやったことを忘れるのはニワトリだけで良い。受付がそれやったらおしまいだよ。

 

「そうじゃなくて……ほら、登録だけしに来るわけ無いじゃいですか」

 

「…………なんでいきなり?」

 

「ええ? いやぁ、ほら……凄いなーって」

 

「なにが……?」

 

 なんだこの子、いきなり丁寧な言葉遣いになって怖いぜ! 

 いきなり笑顔になったのも怖いぜ! 

 やめて欲しいぜ! 

 

「ま、まあ観光ですよ、ええ」

 

「へー! この後はお暇なんですか?」

 

「暇……まあ、時間を潰す予定ではありますね。お土産を買ったり…………はい」

 

「案内しましょうか?」

 

「仕事は!?」

 

「休憩時間なんで大丈夫です!」

 

 な、なんだあっ!? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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