【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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113_負けそうな女

 

「んわあああ! 着いたああ!」

 

「ははっ、身体ガチガチだな」

 

「くる時も思いましたけど……身体痛い!」

 

「でもまあ、俺たち若いから全然問題ないっしょ」

 

「へへっ!」

 

 途中でアツシやコウキは下車した。32セクターに到着した4人は荷物を携えて駅へと足を下ろすが、そこには信じられない光景が。

 

『私たちエリュシオンは今こそこの国を変える時が来たと確信しています! 立ち上がり、そして力を貸してください!』

 

『…………』

 

『そこのあなた……そう、黄色い帽子のあなた』

 

「へ?」

 

『あなたは探索者ではないですね?』

 

「……はい、まあ、普通に」

 

『では日々、感じているのではないですか? 探索者にいつ襲われるのかという恐怖を』

 

「え……いやあ、どうかなあ……」

 

『私はとある村で話を聞きました…………何の罪もない少女が、依頼でやってきた探索者の男に襲われて純血を散らし、それを苦に思って命を絶ったのです!』

 

「え──」

 

『私は、この話が決して許せなかった……だから、エリュシオンに属して世界を変えようと決めたのです』

 

「ううん……」

 

『だから、どうか……私たちを助けてください。人々を助けてください。自分たちのかけがえのない命を捨てないためにも協力をお願いします……!』

 

 例の団体が駅前で演説していた。前は道端とかもう少しセクターの端っことかで身の程をわきまえてやっていたのに。しかも相変わらず訳のわからないことを宣い、聴衆に何かを働きかけている。

 さながら政権演説のようだ。

 少なくとも明宏にはそう見えて、そう聞こえた。

 

「アキ、聞いてく?」

 

「いや……意味無いから離れよう」

 

「うん、ご飯何にする?」

 

「早苗ちゃんがきてるはずだから何か作ってくれてるんじゃねえかな」

 

「んー……」

 

 ものすごーく微妙な顔になったミツキ。ご飯を作ってくれるのはありがたいけど、なぜ自分たちの家に他人がいるのか。考えずとも分かる理由ながら、納得しきれないことというのはある。

 

「早苗ちゃん……山田ちゃん……」

 

 ミツキは早苗のことが嫌いなわけでは無い。むしろ個人として、友人としては好ましさマックスの部類に入る。日向に関しても怖いイメージはあるが、最近は柔らかい表情を浮かべるところを見ているのでそこまでではない。

 

「──それはそれとしてどーゆーことなの!」

 

「だって……」

 

「だっても何もなーい!」

 

 そうこうしているうちに到着した家は案の定、扉が開いている。玄関先で待っていたコマちゃんに列車で買ったおつまみを渡して留守番代とし、奥へ進むとミツキはキノコになりたくなった。

 

「あ、おかえりー!」

 

 太陽のように眩しい笑顔で早苗が2人を出迎えた。ちょうど料理しているところで、いい匂いが部屋全体に漂っている。

 

「ただいま早苗ちゃん」

 

「今作ってるから、片付けだけしちゃってね〜」

 

「はーい」

 

「ふんへーん」

 

 鼻歌を奏でながら料理に戻る早苗を尻目に、ミツキは彼を睨みつけた。

 

「…………」

 

「…………さーて! 荷物出すか!」

 

 そんな視線は何のその。まずは荷物を片付けるところからだと解体を始める。服を出し、武器を出し、お土産を出し、床に並べていく。

 まず手をつけたのは武器。今回の旅行で使わなかったとは言え、これがなければ探索業は務まらない。服など二の次なのは当たり前だ。

 台に載せるだけなので手間も何も無いが、するかしないかは大きい。

 次にお土産。

 ほとんどは玄関に出しておくが、一つだけリビングに残した。

 最後に服。

 タンスに放り込んでおしまいだ。

 

「疲れたあ……」

 

 列車の心地はお世辞にもいいとは言えなかったので、ミツキはソファーに座り込んでいる。口を半開きにしてボケーっとしている最中に早苗がやってきた。

 

「ミツキちゃん、第1セクターどうだった?」

 

 料理を終えたばかり、エプロンをつけたまま。髪も後ろで纏まっている。ワクワクとした表情を隠さずに質問をしている様子は、微妙な感情であるミツキでも答えざるを得ないようなものだ。

 

「まあ……そこそこ楽しかったかな?」

 

 スノーマン達と戯れたり暇な時間はお店を見たりと、32セクターでは味わえない刺激があそこにはある。それに、食事もここより洗練されている。海産物が直で手に入るというのも大きいだろう。ここらでは鮮度のやや落ちたものしか手に入らない。

 潜在的には危険だが、都市として格が違うのだ。

 

「いいなぁ、私も行きたかった〜!」

 

「あはは……」

 

 今回来なかったのは、引っ越したばかりでバタバタしていたからだ。道場をこちらに立てる為にも今は、地元民との交流が急がれた。雪かきをしたり買い物の時の世間話などで少しずつ街の人間達と顔を合わせる機会を得ている。このタイミングで1週間とはいえ外に出るというのはあまり得策とは言えなかった。

 

「あ、でもね! 八百屋のおばちゃんが新しい料理の作り方を教えてくれたの! 今日はそれだよ!」

 

「……そうなんだ、楽しみだなあ!」

 

「えへへ!」

 

 可愛い。

 同性であるミツキの目から見ても、早苗は愛嬌という観点において満点であり、家事という観点から見ても満点だった。

 凄まじい主婦力、ミツキは戦慄した。

 得意な家事ですら負けるかもしれない。

 

「さ、早苗ちゃん」

 

「なあに?」

 

「そんなに無理してうちの事やらなくてもいいからね?」

 

「大丈夫! 全然無理してないから!」

 

「あ、そ、そう……いやでもほら、引っ越してきたばっかりだと他にも色々やらなくちゃいけないこととか……例えばあの、学校とか!」

 

「──がっこーは私ほら、20歳超えてるから……」

 

「あ……ご、ごめんなさい…………」

 

 キノコになりたいと言ったな、あれは嘘だ。すでにキノコになっている。

 あんな寂しそうな笑顔を見せられたら、どんな鬼畜生でも謝罪をせざるを得ない。

 彼女が不可思議な呪いにて歳を取らなくなってしまったという話は聞いている。そこを不用意に突くべきではなかった。

 

「でも大丈夫! 私はお姉ちゃんだから! それにほら、明宏くんの──明宏くん達のおかげで全然寂しく無いし!」

 

「そっか……」

 

 ミツキは、この少女のような女性がなぜ明宏に懐いているのかを理解した気がした。子供好きがいい方向に働いたのだ。なぜなにどうやっては分からずとも、あの男はそういう男なのだ。どうしてかについては、もうわかったけど。

 

「それに、もう大丈夫!」

 

「え?」

 

「もう、大丈夫なの!」

 

「なにが?」

 

「もう少ししたら、私も大きくなるから!」

 

「あー……そうらしいね」

 

 世の中、何がキッカケかよく分からないものだ。彼女の幼馴染曰く『よく分かんねえけど良くなったらしい──信じてねえけどな!』という事なので、彼も良く知らないながら一ヶ月の間に早苗達と何かをやってきたのだろう。いまだに何も教えてもらえないのは、彼自身が記憶喪失だということと早苗達も話す気がないということが原因だ。

 彼1人だけ何も信じてないところを見ると、そういうところは本当にジジイなんだと納得できた。

 

「──2人とも、休憩か?」

 

「あきひろくーん!」

 

 シュバッとソファーを離脱して飛びついた早苗。20を超えてあの天真爛漫な姿は、羨ましさすら彼女の中に湧き出てくるようだ。しかし負けていられない。この家の第二家主は誰なのか、新人にわからせてやらねばと飛び出した。

 

「なんだなんだ!? 何で2人して!?」

 

 飛びつかれた明宏は困惑している。それもそうだ。ただ片付けを終えただけなのに、なんで2人から抱きつかれる必要があるのか。

 若干の恐怖すら感じる不自然さ。

 しかし見上げてくる2人の顔を見ていると、それもすぐに掻き消えて優しい顔になる。

 

「なんかあったのか?」

 

「なんもなーい!」

 

「なーい!」

 

「なんだこいつら……まあいいや、ご飯にしようか!」

 

「「はーい!」」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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