【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
帰ってきたから暫くのんびり〜などとしているわけにもいかない。
「待たせたな! なかなか馴染まねえもんだからまいったわい!」
「これが……」
「良いだろ! 各種耐性もてんこ盛り! ドラゴンのブレスだって耐えるぜ! 俺様謹製の防具でい!」
「そんなキャラじゃなかったでしょう」
「バカおんめえテンション上がってんだよ!」
「そうでっか…………ところで彼女は?」
寒空の下。
やってきたのはアキヒロの顔馴染み鍛治師であるヴォルフガングだけではない。さりとて前回ついてきた3人組ではなかった。
モコモコとした毛皮のコート。
冷たくないのかと言いたくなるような水色のメガネ、メタリックな輝きを見せている。
そして最もアブノーマルなのは、子供ほどの身長ながらしっかりと胸元を押し上げる膨らみと怜悧な顔つき。
ヴォルフガングはその容貌に若干ムホムホしているようだった。
「……」
「あ、どうも初めまして。加賀美明宏です」
「存じております。私はフィアステラ、しがない鍛治師ですが此度は案内役を務めさせていただきます」
「はあ……あの3人は?」
「レイフィニアのブレイク。メビウスのベネディアス。稀雨のシキルス。あの者どもは此度の案内には少々──ええ、少々適していないので私が参った次第です」
明弘の預かり知らぬ理由で彼女はコメカミに血管が浮き出ていた。初対面でそんな態度を見せられるとビビってしまうのが普通の人間だ。不機嫌そうだし、氷のような拒絶感を感じるし。
「まあ、そこはいいんですけどね。一つ想定外がありまして」
「はい?」
「いや、本当に俺もそんなつもりは無かったんですよ。ただの情報共有だったし……何でこうなったのかなって思いながら言わせていただくんですけどもね」
「……っ!? あなたは…………いえ、どうぞ」
「あ、はい。おーい」
呼びかけに答えて角から顔を出したのは鼻先を赤くしたミツキ。珍しく黒髪だが、フードに埋まってほぼ見えない。そんな彼女が転びそうになりながら雪道を歩いてくると、気さくに手を挙げた。
「あ、どもー」
「…………あの、何故ここに?」
困惑に包まれたのはフィアステラ。
メガネを一度整えると質問を明宏へぶつけた。実質的に無視された形となったミツキはややブー垂れたが、以前同じような仕打ちに合っていたこともある。その時と同じように明宏の背中へしがみついて後ろから並んだ。
「こいつも一緒に行きます」
「……んん?」
片眉が上がる。状況がよく飲み込めていないのだろう。
それともヴォルフガングへの叱責の予兆か。話が違うとでもいいたげに視線を向けた。その視線を浴びせられたヴォルフガングは慌てる。大袈裟に、否定の意を強く見せつけるように手を振るしか出来ることはない。
「お、俺じゃねえやい! こいつだけの話だったぞ!」
「では──どういう事ですか?」
であれば当然、次に睨め付けられるのは明宏だ。意を問うような少しだけ厳しい視線を軽く受け止めると、ミツキのフードを引き剥がして顔を見させた。
「んざむいい!」
「俺も最初は説得しようとしたんですけどね、着いていくって言って聞かないんですよ。仕方ないから連れていくことにしました」
「ぞ、ぞうでずう! 寒いから返して!」
剥がされたフードを慌てて引き戻すと、軽く礼をした。そして、強い意志を宿した黄の瞳を光らせて言霊を放つ。
「わ、私の家族が危ないところに行くなら! 私も着いていきます!」
「……家族?」
妙だな、と首を傾げる。
「家族です! 幼馴染ですから!」
「…………」
なおをも言い切る。
ここで引く気は無いのだろう。しかし、それでもどうしてもダメだと言うのならやはり置いていくしかない。少しの間いないくらいでどうにかなるような女では無いと明宏は信じていた。
「1人……一級探索者の娘……既に部外者を入れることは決まっている……」
フィアステラは瞳を目まぐるしくあちこちへ彷徨わせる。それは思考が高速で彼女の神経内を動き乱れていることを否応なしに想起させた。リスクしか無いミツキの存在をどうするか、この場で考えているのだ。
基本的な話をすれば、ダメに決まっている。
コレから先は、秘匿された鍛治師の内情に触れることになる。しかし無理だろうかと、明宏は腕組みをした。
「…………」
不安げに裾を摘む幼馴染の姿を見ていると庇護欲がそそられる。何せ、十数年間こうして飽きもせずに我儘に付き合ってきたのだ。出来るならば叶えてやりたい。
コレはもう、そういう風に調教されてしまったと表現するのが正しいだろう。
「はぁぁ……わかりました。光輝迸る探索者の娘、四門美月──あなたの参加を認めます」
フィアステラは観念したように俯くと、グインと顔を上げて是を告げた。
しかし、その中で一つ妙なことが。
「えっ? お父さんのこと知ってるんですか?」
「こら、まずはなんて言うんだ?」
「あ……あ、ありがとうございます」
素直に感謝を述べるミツキへ、複雑な表情を浮かべる。
「一級探索者は、我々鍛治師のお得意様に決まっているでしょう」
「確かに……?」
「とてもあの探索者の娘とは思えない貧弱ぶりですが、まあそこは良いでしょう」
「酷い言われようだあ……」
「ですが、あなたが貧弱な只人であるとしても道のりを変えることはしません。着いてこられますかね」
「えっ」
その言葉に、途端に腰が引けていくミツキ。
チラチラと他力本願の他力の部分を見る。
「私、大丈夫かな……」
「はいはい」
俺が何とかすれば良いんでしょ、とわかりきった表情をする。
「そしたら、すぐ行きますか?」
「疲れたので今日は休みます」
「あ、はい」
案内役らしく、彼女は自分の体の事に対してあくまで冷静だった。そもそも彼女が依頼したことでも無いので急ぐ気はないらしい。
「宿は?」
「ご心配なく」
「そか、まあどっか取ってんならいいけどさ。泊まれなさそうだったらウチも空いてるからな」
「あなたは変態なのですか!?」
「はあ!?」
「初対面の女性を捕まえて自分の家に泊まれなどと……変態以外の何者でもありませんよ!」
「ご、誤解だ!」
「五回!?」
「おいやめろ! 現実でそんなテンプレな勘違いすんな!」
「なんて破廉恥な! ヴォルフ! 貴方はとんでもない変態を呼び寄せようとしているのですね!」
めちゃくそに言われてショック抜け切らぬままに、家に戻る。ミツキと一緒にのんびり過ごした。
コマちゃんは日向達の家だ。
──────
4人。
結果的に加賀美明宏、四門美月、ヴォルフガング、フィアステラという一行が今回、鍛治師達の王国を訪れることになった。既に挨拶自体はしてある。
受験がもう少しで終わるアリサには応援の言葉をかけ、姉妹のところには今回もお留守番を選択したコマちゃんを付ける。レイト&シエルはなにやらショックを受けていたが、方目七緒に相談すれば間違いないという話をした。
「おはようございます」
「よお!」
2人と合流したのは例の路地端。
朝だが元気いっぱいだ。
ヴォルフガングの荷物は相変わらず少ない。露店を開いている時のあの大荷物はどこへ消えたのかと問いたくなるようなコンパクトさ、背嚢を一つだけだ。
「おはよーございまーす」
「お早いようで」
挨拶はそこそこに歩き出す。
進んですぐに密集を避けるための緩衝地帯に到着した。基本的に、セクター内には市街化の進んだ部分と何も手をつけられていない緩衝地帯がある。その中の一つ、森の木へ進んでいく。
「ここにあるんだな」
「他言無用です」
「勿論、それは前提の話だからな」
「ならば安心です」
荒されていない雪の上を、ヴォルフガングは鍛治師らしく謎の棒をかざしながら進んでいく。赤く光を放つ棒は雪を瞬く間に溶かしていき、歩くための道ができる。
「流石鍛治師だな」
「あれ、私も欲しい!」
「光輝さんなら持ってんじゃね?」
「えー、お父さんが持ってても意味ないじゃん」
「意味ないことねえだろ……」
更に進んでいくと、やがて壁のように高くなった雪の中を歩く事になる。今にも崩れるのではないかと言いたくなるような圧迫感、それでも歩き続ける4人の前に現れたのは穴。
「んだこりゃ」
「コレが入り口です」
「こんなところにこんなもんがあったんだな」
高さは2m半程。
ヴォルフガングとフィアステラが入るには過剰なほどの高さだが、逆に明宏とミツキは安心した。この2人や例の3人のような身長を基準に作られていたら窮屈で仕方なかっただろう。
「お邪魔しまーす……」
恐る恐ると洞窟の中へ入る。
すると、仄暗いながらも明るさがある。
まるでダンジョンのようだ。
「別にこの場所に拠点があるわけではありませんよ?」
「あ、そうなんですか?」
「ここは入り口、第一の秘密というだけです」
「やつは秘密の中でも最弱……後には第二第三の秘密が待ち構えているのだ……」
「何を言っているんですか?」
小粋なジョークも冷たく交わされながら、トンネルを進む。ここは自然発生した洞窟ではないことが明らかだった。綺麗なアーチ状の内部構造。時折吊るされているランプと設置された像。女性を模っているようであり、それに加えて兜・槌を装着している。
「なんだあ? 何かの偉人か?」
明宏は初めにそれを目にした時、立ち止まった。
同じように3人も止まる。
フィアステラとヴォルフガングは互いに目配せをし、ミツキは「おっぱいでっか……」と呟いた。
「それとも……神様か……」
「そうですね、我々の信奉している神です」
フィアステラは素直に答えた。
「聞いたことないですね。神様の形を直接模った像なんて」
「我々の信奉する神はそういう方なのです」
「名前は?」
「イーヴァ、あるいはイルファーレと呼ばれています」
「ふうん……鍛治の神様ですか?」
「ええ、当然ですね」
「火の神様の可能性もあったからな」
「…………確かに、そうですね。ある意味ではそうなのかもしれません」
「でも、凄いな……まさかこんなハッキリと神の形をとらえた像があるなんて」
感嘆。
直接見れば気がふれるとまで言われている神をこうもしっかりと形として残しているということは、その神様は安全なのだろう。明宏は、永井をこの場に連れてこられなかったことが猛烈に申し訳なくなった。
ミツキの顔を見てみろ。
「ほへ〜……」
アホ面を晒して像の胸ばかり見ている。
確かに胸が大きいとは思うが、象徴としてそう作ってあるだけで、実際にここまで大きいわけではないだろう。
この像の奥にある真意について、何も感じていなさそうな──
「がっ……!?」
明宏は、唐突な頭痛に片膝をついた。
一瞬だが確かに、堪えきれぬ痛みが走ったのだ。
レベル50(たぶん)に到達した彼は既に、人類の病気などとはおさらばしている。病気の線は絶対に無い。
つまり……
「大丈夫ですか?」
「──ここは、霊領なんですね?」
「まあ、そう呼ぶこともできますけど……何故ですか? それよりも頭の調子は……」
「いえ、問題無いです」
「ですが……」
「霊領と相性が良くないようでして」
「霊領と相性が良くない?」
「はい」
そんなことある? とおうむ返しに半信半疑をぶつけてくるフィアステラへと肩をすくめる。
「いつものことなんで…………なんなら軽い方です」
「そういう方もいるんですね」
「他に見たことないですけど、俺はそうなんです」
明宏はここをただの洞窟だと最初は思っていたが、それを改めた。ここは一種の宗教施設も兼ねているのだろうという認識が追加されたのだ。
「暖かいねえ〜」
「うふふ、ここはイルファーレ様の庇護下にありますから」
「イルファーレ様……好きになっちゃいそう!」
洞窟に入ってからというもの、寒さからは完全に切り離されていた。ミツキは早々に分厚い上着を脱いだが、それでも問題なく活動できている。
「こんなことなら、コレ持ってこなくてもよかったかもな〜」
「ここの事は外ではお伝えできないので、ええ」
「そっかあ」
「まだ疲れてはないですね?」
「はい! 寒くないから大丈夫です! コレでも最近、少しずつ運動し始めたんですから!」
「そうですね、運動は大事です」
「レベルも上げないと私だけ歳取ったら嫌だし……はあ、やる事いっぱいだなー」
「……加賀美さんとはお付き合いを?」
「え? ……えへへー、わかっちゃいますぅ?」
「それはもう」
露骨過ぎるほど露骨だ。
誰だってわかるほどには。
「滑らかすぎる……これ、鍛治師が掘ったんです?」
「そりゃそうだ」
「はえー、とんでもない労力だな」
「俺らを何だと思ってやがる。大したことねえよ」
壁面を見て仕上がりに感心した明宏は鉄道の工事者達を思い出した。彼らも凄まじい勢いで仕事をこなしていく。それこそ人間とは思えないほどに。超人的な要素は探索者だけの専売特許ではないということだ。
危険もクソもない。
ただの暖かい洞窟を進むことしばし。
ミツキが良い加減に休憩しないとヤバそうな顔をし始めたところで開けた空間に出た。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない