【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ふむ、子供の声が全くわからないと」
「子供もそうだし、若い人が全体的にそうですね」
「文字も読めない?」
「はい」
「なんでなのか、サッパリじゃ」
「あの子たちは……あー……」
言って良いものか、非常に悩ましかった。言語体系の全く違う地域の子供を誘拐してきたのでは? と脳裏を過ぎったのだ。
それを聞くことによるメリットというものが存在しない。仮に本当にそうならば、即座の敵対もあり得る。そうじゃないなら、本当に全く意味がわからない。
得るものが無いので禍の元は封印しておくこととした。
「ワシらの話してることはわかるんじゃよな?」
「普通に」
「普通に、の」
「デスターさんからすると、子供達と自分達の話してる言葉は一緒なんですか?」
「そうじゃよ? ──ミツキちゃんは?」
注目が集まるミツキ。明宏と全く同じ場所からやってきて、文字を読めた彼女ならどうなのかと。先ほどまで椅子で爆睡していたが、頭が冴える飲み物を渡されて目がバキバキになっていた。
「普通に分かるよ?」
「そうかー……そうかー!」
「逆に何でわからないの?」
ミツキは、とても疑わしいと目を細めていた。
身内からの疑いの目に弁解を図る。
「まじ! マジでわかんないから! こんなことで嘘つかないから!」
「……怪しいな〜」
「マジだっつーの!」
明宏とて好きでわからないわけでは無い。本当に何を言っているかがわからないのだから、それをそのまま伝えただけだ。そもそも彼に子供をいじめる趣味などあるわけもない。
しかし彼としては困ったことになった。これで村八分みたいなことにされてしまっては当初の目的を全く果たせない可能性もある。
何とかしようにも、全く音がうまく意味として入ってこない。
『'geghm'ayt?』
「──えっ」
そこに、子供の中では比較的年齢のある子がミツキへ少し恥ずかしそうに話しかけた。相変わらず小さいので年齢の程は正確にはわからないが、おそらく15歳くらいなのだろう。
「なんて?」
「私たちはお兄さんの言ってることわかるよ? って言ってるよ」
「なんで!?」
「やっぱ怪しいなあ」
「お前誰の味方なんだよ!」
「ふふふー」
「どうなってんだ!」
しかし、こんなところで叫んでいても状況は進展しない。そもそもここに連れてこられた理由というものを聞かなければ何も始まらないと、デスターを促した。
「せっかくだから神器を子供達にも見せてやりたいと思ってな」
「あー……子供に刃物を触らせるのは……」
「鍛治師の子らじゃぞ。刃物なぞ普段から飽きるほど触らせとるわい」
「それもそれでどうなんだ」
「お主とて、子供の頃からモンスターと戦うようにしとるじゃろ?」
「ああ、それはだいぶ昔の話ですね。俺たちの世代ではそういうのなくなってますから」
「本当か!? ワシが若い頃は、誰もが狩猟を行えるようにしていたと思うんじゃが……」
デスターは最近の蒼連郷というものをあまりわかっていないということが明らかになった。というのも、纏め役や指南役としてイルヴァの牙本部や商工会本部に行くことはあっても、蒼連郷に住まう人間たちの生活までをジックリと見てはいないからだそうだ。
「そもそもワシらは鍛治師──基本的には探索者のみと関わることにしているからのう。まさかそんな風になっとったとは……蒼連郷になってから方針が変わったということかの?」
「方針……まあ、上が変われば下はそれに着いていくだけですからね」
「統一戦争も一瞬だったからの」
「歴史上の出来事ですね」
「ああ、そうか……」
蒼連郷の前身である組織が高レベル者たちに滅ぼされ、根本から在り方を変えられた統一戦争。ミツキたちは遠い昔の話と認識しているが、デスターはどうやら鍛治師としてその件に詳しいらしい。
「まあ、戦争の話はやめよう」
「そうですね」
若者からすれば過去の面白エピソードの一つになるかもしれないことでも、間接的とはいえ当事者からしてみれば何と血生臭いことか。積極的に思い出したい話でもないだろう。
「それにしても……やはり凄まじいのお」
それは、賞賛というよりかは呆れに近い表情だった。
苦笑いをしながらナイフを見る砦長の後ろには次は自分だと鍛治師たちが群がっている。
1人ずつが彼の隣に座ってナイフを見聞していく。
「神器を得るというのは偉業じゃがの……お前さん、あまり人に褒められた人生を送っているわけではないのじゃろうな」
「失礼な! 誰に見せてむぎゅっ」
押し退けて顔を出したのはミツキ。
私のターン! と手札を切った。
「ほんっとうに大変なんですよ! アキと一緒にいるの!」
「そうじゃろうな」
「牛ですよ、牛! そんなの私んちに来ればいつでも食べさせてあげるって言ってるのに、自分の力でやり遂げるって全然話聞かないんです!」
「うむうむ」
「そのくせアッチの女を見たりコッチの男を見たり、顔が良ければ誰でも良いのかっつーの! 本当最低ですよ!」
「う、うむ……?」
「この前もダンジョン化に巻き込まれにいくし! もう本当、目を離したらいつかモンスターになっちゃうんですよこの男は! だから来ました!」
「なるほどの……やはりクセ強迷惑人間じゃないと神器を得ることなどできないというわけか」
「……同じような人がいるんですか!? 私が説教してやりますよ! 連れてきてください!」
「ほっほっほ」
「笑ってんじゃねえ!」
「ほっ!?」
ヒートアップし過ぎて関係ない相手にブチギレた。すぐさま冷ますために座らせ、明宏が頭を撫でる。暴走チワワのようになってしまった幼馴染を明宏は若干引き気味の顔で見てたが、それも含めて血と諦めた。
内心が彼女にバレれば、誰のせいだとブチギレ確定であった。
「ところでフィアステラさん達はどこに行ったんですか?」
「あの2人は案内があるからの。もう宿で休んどるよ」
「──なんか、そう言われると、疲れが、すごい気が……」
「ふむ、ミツキちゃんはお疲れのようじゃな。部屋へ案内しよう」
「ふぁーい……」
「お風呂は入るかい?」
「入りまふ……」
ミツキは先ほどから挙動の温度差がすごいことになっていたが、それも仕方ない。眠くて眠くて仕方ないところを無理やり飲み物で覚醒させられたのだから。しかし、そんな効果もすぐに切れる。
彼女は本当に疲れているのだ。ベッドに入れば今すぐにでも眠りに落ちることができるだろう。
「ここじゃよ」
通された部屋は1人部屋。
鍛治師たち基準の小さな部屋かと思いきや、しっかりと人間基準の大きさを持つ部屋だった。この建物の中でここだけがそうなっているのは違和感を感じつつも、ありがたく荷物を置く。
「ふむ……ミツキちゃんはお風呂じゃろ? その間にベッドを増やすかの」
「おねしゃす……」
明宏はデスターと共に部屋に残る。
監視の意味もあった。
お互い様だが、聞きたいことがあったのだ。
「なぜ、ここだけが俺たちと同じ基準の大きさなんです?」
「使うものがいるからとしか言いようがないの」
「ふうん……」
明確な答えではなかったが、ある程度は察する。
その間にもデスターは凄まじい勢いで部屋中でベッドを組み立てる。大きさ的に明宏達が問題なく泊まれる部屋はここだけなので2人一部屋だ。そして幸いなことに、2人は同じ部屋でも何の問題もない。
「ほい、完成」
「お見事です」
「…………」
木屑すら部屋に残さず完成した。
まさに神技と称するにふさわしいが、それを誇ることすらしない。
「やはり、鍛治が本職ですか」
「……」
「不躾な願いとは存じておりますが……デスターさん、あなたの作品が拝見したい」
「…………はあ」
腰を軽く叩いて、着いてこいとジェスチャーを取るデスター。明宏は爆速で書置きを残してから後ろについた。
しかし、デスターは作品どころか先ほどの鍛冶場にすら寄らない。
砦の中をゆっくりと散歩し始めた。
意図は理解できなかったものの、そこにあるものを目に収めていく。
花壇が道端にあり、今も1人の妙齢の婦人が水やりをしていた。その手に持つのは金属製のジョウロ。重さを感じさせずに動かしている。
「あら師匠、案内ですか?」
「うむ」
この2人は師弟関係。
明宏はそのことを刻んだ。
「こんにちは、来訪者さん」
「初めまして。加賀美明宏です」
「初めまして、私はテアよ。ふふ、この街にまさかまたヒューマンが入ってくるなんてね」
「ヒューマン?」
「そうよ、あなた達はヒューマン」
「俺たちはヒューマン……では、あなた達は?」
ミニヒューマン? と一瞬だけ言いそうになったが抑える。どう考えてもケンカになる未来しか見えなかった。
「私たちは──あら、ごめんなさい。師匠がダメって」
「はぁ……誤解を招く言い方はやめろ。ワシがどうとかではなく、少なくとも本部に行ってからということじゃ」
「おほほ」
「全く、幾つになってもいたずらっ子じゃの」
「おほほ〜」
ジョウロを片手に優雅な足取りで去っていった。
次は外壁。
グリムス砦を囲い、守る壁だ。
しかし、必要なのだろうか。遠ざける輝きとやらがあれば、こんな壁が無くとも襲ってくるモンスターはいない。かつての名残か?
そんな明宏の内心を見透かしたかのように、デスターはコンコンと壁をノックした。
「備えじゃよ」
「備え……」
壁は高さにして10mほど。
モンスターに対しての壁としてはいささか低い。
壁の上に梯子で登ると、等間隔で鍛治師が立っている。
手にしているのは弓。
あくびをしながら退屈そうにしているのを見るに、敵が来る気配はないらしい。
「──?」
違和感。
明宏達は崖に片側を預けた道を通ってきた。
つまり、この街から外を見た時にある程度は奈落が広がっているはずなのだ。だというのに、ここから見える景色は普通の草原。
やや高台に立っている砦だということはわかるが、あの崖は一体どこに行ってしまったのか。
「不思議じゃろう?」
「はい」
「仕組みがわからんじゃろう?」
「はい」
「ワシらにとっては、お主らの作る機械が似たようなものじゃ」
「…………なぜ、文化が途絶しているのですか?」
「色々あるんじゃろ」
「技術交流を行えば、今よりも発展が──いえ、なんでもないです」
明宏は文化特使や交流などという目的のためにきたのではない。余計な言葉は慎んだ。
しかし、それはそれとして希望もあった。
「お主が求めるモノがあるのかは正直分からんがの。ワシとしては純粋に楽しんで行ってもらいたいのお」
「そうさせていただきます」
正直、すでに楽しかった。
知らぬ土地で、知らぬ技術を抱えた人々が、自分を迎え入れてくれた。家の一つを見ても蒼連郷とは少し違う。
鍛治師の集団が作った街らしく金属の装飾があちこちにあしらわれている。高級感というよりは普段使いを重視された作り。それでも、第1セクターであれば云十万するようなものがふんだんに使われている。
文化体系が違うからこそ、とても新鮮だった。
しかし、関わりのある鍛治師がまさかこんな堂々と生活していたとは。
明宏は彼らが地下住まいだとばかり思っていた。
「ほっほっほ……」
「意外と売っているのは普通の食材なんで──あ、そんなことねえわ」
寄った店で売っているのは、明宏も見たことが一応あるような食材。しかしその中に、全く知らんものが売っている。何かの果実や、芋らしきもの。
食べ物だけで無く鉱石も売っている。
「これは?」
「鍛治師じゃぞ?」
「ああ……これでやるんですか」
「自分で取れない者はそうじゃな」
「えー」
「なんじゃ?」
「そもそも自分で取りにいくとかあるんですね」
「採掘にかけてはお主ら探索者にも負けぬ自信があるぞ」
「えっ!」
「……もちろん、高レベルの探索者は別じゃ」
「いやあでも凄いですね! ……俺もなんか買ってこうかなあ」
「何言うとるんじゃ、わざわざ買う必要なんぞない!」
「そうですか? でも……」
「いいから! 言う通りにしときなさい」
「──あ、はい」
明宏は、先ほど壁の上から街を見下ろした時のことを思い出した。
通常のセクターに比べて、だいぶ密度が高い。
もちろん広げすぎると防衛がしづらくなるから、そういう意味では正解なのだろうが──ダンジョン化に関してはどうなのかという疑問が浮かぶ。
畑なども、割としっかりと作ってある。
「そこら辺はいい塩梅に」
「なんですかそれ!?」
「ワシらは鍛治師じゃぞ」
「だから何が……」
「そこら辺は向こうで聞いてくれ」
「……わかりました」
それだけ重要な事。
砦長でもおいそれと話すわけにはいかないという事だろう。
「──ところで作品は?」
「焦るなて」
「……」
「もう少しこの街をゆっくりとな」
「……それもそうですね」
夕飯の時間まではもう少しだろう。
空は赤くなっているが、街には人が普通にいる。
「陽が沈めば夕飯、その前に風呂に入ればええ」
「この街にも普通に風呂があるのには驚きました」
「熱が余っとるからの」
「確かに」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない