【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
夜、風呂を上がったタイミングでミツキの様子を伺った。
当然寝ている。
昨日今日と歩き通しで、中間の休憩はほぼなし。洞穴での就寝も固い岩の上だ。そこにいきなり超絶技巧のベッドが現れた。これはもうノンレム睡眠まっしぐらだ。
「どうしようか」
放置するわけにもいかない。
なにせ夕飯を集会場で取らないといけない。
冬だから腐ることもないだろうが、起きるまで置いておくのは流石に無理だ。そもそも、夕飯を作ってくれるのに寝通しというのが礼儀に欠けているというのもある。
「だけど起こすのもなあ」
ものすごくグッスリ寝ている。
これを起こすのは少しばかり気が引けた。
置き手紙も位置が全く動いていない。俺が部屋を出ていく前からここに至るまでずっと寝ていたのだ。
「……ミツキー」
「すぅ……すぅ……」
一回だけ肩を揺らしてみたが、効果は無い。
これはもう寝かせておくのが正解だなと諦めた。
詰められたら謝ろう。
「──こんばんは、加賀美さん」
「フィアステラさん、起きたんですか」
「夕飯は食べないと力が出ませんからね」
「おっしゃる通りで」
「ミツキさんは……」
「寝てます」
「仕方ないですね、あれだけ頑張っていたのですから」
「本当は食べさせたいんですけど……あそこまで熟睡してる子を起こすのも気が引けて」
出されたのはクラムチャウダーとワームの輪切りステーキ。そしてステーキには岩塩がまぶされている。そもそもワームの肉は塩っ気が全く無くて甘みが強いけど、それが塩によって引き立てられていた。
良い意味で味変というか、しっかりとした味付けになっている。
皿が小さいのだけは悲しいな。
「……見たところ、足りていないようですね」
「はは……」
それもそのはず。
鍛治師達は体が小さい。
一皿の盛り付けもそこを基準にしてあるので、俺が食べるにしてはだいぶ少なかった。腹一杯になるにはこれをあと4つぐらいは食べないといけないだろう。
しかし、もてなされる側としてそんな恥知らずなことはできない。『おい、足りねえやコレ!』なんて言えないだろ?
後で、持ってきた乾肉でも食べようと思ってんだけど──
「遠慮されても困ります」
そう言うとフィアステラは立ち上がり、厨房へ向かった。すぐに戻ってきたその背後には、大きめの皿に山盛りの肉とサラダが。
『〜〜〜』
『────?』
周りにいる鍛治師達がそれを見て面白そうにしている。
「これだけあれば十分でしょう」
「ありがとうございます」
「これくらいは私が言わずともやって欲しいところだったんですが……失礼、余計な愚痴でした」
「ははっ、でも本当に助かります」
周囲の鍛治師からの視線を感じつつ、皿の中身を平らげていく。探索者は動くとかなりエネルギーを食うので、そのぶん食事も多めだ。そこを踏まえての量で、俺としても満足がいく量を用意してもらえたのは嬉しいところだ。食べ尽くすとちょっと尊敬の目で見られたのも嬉しい。
「それにしても──」
「?」
「子供達の言っていることが聞き取れないとか」
「あ、そうなんですよ。文字も読めないし……何か知りません?」
あまり期待せずに放った質問はやはり首を振られる。知識がないなりに考えてはみたが、納得のいく答えにつながりはしなかった。
今回の主題と関係ないとは言え、脳に欠陥があるなんてことがあれば怖い。今後のためにも理由を知っておきたかった。
「なぜ、子ども達の言葉だけ聞き取れないんでしょう」
「そこなんですよね」
「……子供は嫌いですか?」
「大好きです」
「だ、大好きですか」
「はい」
「嫌いならなにか……こう、何かがあるのかなぁとか思ったんですけど」
「そうですよね」
嫌いならば、子供と全く関わりたく無いという変異を起こしていてもおかしくなかったけど──その場合は俺がとんでもなくおかしな人間という事になる──全くもってそういう事はない。
そもそも、それならばもっと早い段階で聴こえないだろう。第32セクターでも普通に子供らの言葉は聞き取れる。
「──あ」
「なにか思い出しました?」
「確か……あの子の言葉も聞き取れなかったな」
「あの子?」
「知らない子ですけどね……銀細工のアクセサリー売ってました」
「へえ」
「もしかしたら鍛治師だったのかな」
「背は?」
「普通……だったな、うん」
アクセサリーのうちの一つは今、ミツキが持っている。流石に零下の中で金属製の首飾りなんぞ身につけていたら凍傷を起こすので着けてはいないが、果たしてどこにあゆやら。
「ほら、呑んでください」
「ああコレはどうも──いや多くない?」
「何言ってるんですか、普通ですよ」
ジョッキに注ぐとかじゃ無くて小樽で渡された。蓋を開けると、周囲から漂っていた匂いがムワッと強く広がる。中は茶色強めの液体だ。
物は試しと、まずは一口。
「……後味が良いな」
「そうでしょう、これは慣れてない人でも飲みやすいやつなんです」
「あるんですね、そういうのが」
「?」
「アルハラ対策というか、配慮というか」
「…………シキルス達はそういう意味でも向いてないのです」
「あっ」
どうやらアルコールに対するスタンスは個人差がはっきりしているようだ。
フィアステラは気配りが細やかなところからして、アルハラなどをするようには見えない。
一方であの3人組は──
「ただ呑めれば良いだけの、舌が焼けている奴らはダメです」
「そ、そうですね……」
──顔に影が差している。鍛治師はアルコールで死ぬことはないと聞いたが、それはそれとして何かあったのだろう。
「──はっ!? も、もしかして鍛治師はアルコールでは酔わないとかそういうことを言われませんでしたか?」
「あ、言ってましたね」
「それ嘘ですからね!」
「え゛っ嘘なの!? 普通に信じてたんですけど!」
「あの3人は本当にもう……」
フィアステラは額に手を当てた。
──何つーか……胸がテーブルに乗っかってて良いっすね! あ、浮気じゃないです。
オッパイって若さの象徴だと思うんですよ。だって、年取ると垂れてくるじゃないですか。こう……ツンと張っている時の胸ってすごく貴重で、だからこそブラジャーでちゃんと形を維持しているのが偉いなあって。
あれ、何の話だっけ。
「アルコールで酔うのは当たり前のことでしょう。過ぎたれば体に良くないのは当然です」
「それはそう」
それはそうなんだけど、あのお髭と体型で言われると本当なんじゃないかって気がしてくるんだよ。
まさかあのタイミングで嘘つくとは思わないじゃん。
「アイツらは酒が大好きなんです」
とうとうアイツらって言い出した。でも、酒が好きなのはあなたもだと思いますけどね、俺は。
「もちろん私だってお酒は好きですけど……度が過ぎるんですよ」
度が過ぎると言われて思い当たるのは、あの3人が持ってきた酒だ。とんでもない酒気を漂わせた、レベルすら上がっている酒。頂いたが、まだ開封はしていない。
わざわざあんなものを持ってくるのだから、相当な酒好きだということには間違いがなかった。
「腕は確かなんですけどね……」
「腕──フィアステラさんはどんな武器を作ったりするんですか?」
「え……」
「え?」
「…………」
答えたくなさそうにしている。何でだよ、鍛治にプライド持ってんじゃないのかよ。
「何を作ってるんです?」
「…………」
このタイミングで若干恥ずかしそうなのは、何か人に言えないようなものを作っていたりするのだろうか。アダルトグッズとか。
「じ、神器を持っている人に見せるにはちょっと……」
「そううことか! でも俺は神器かどうかなんてどうでもいいですから!」
「えっ」
「単純な刃物としては、あのナイフはそこまでじゃなかったんですよ元々。俺は元々と比べたいんですよ」
「うーん……」
「良いじゃないですか、見せてくださいよ」
「…………でも、私の活動拠点ってここじゃないんですよ」
「あ、そっか」
じゃあ仕方ない。
本部? に着いたら見せて貰えば良いか!
「ほ、本当に見せるんですか?」
「はい」
「うわあ……」
「あの……恥ずかしがるのやめてくれません? 俺が変なこと言ってるみたいだから」
「…………文化の隔たりを感じます」
「このタイミングで!?」
少なくともこの街にいる間はフィアステラの作品は見れないようだ。あまりしつこくしても良いことはないし、今後の話でも聞いておこうかな。
「第二の砦? ……いえ、そういうのは無いですけど」
「そうしたら、次は本部……本国? に行くってことですかね」
「本国っていうとまた別の意味になっちゃうんで……本部ですね」
「そこへはまた2日ぐらいですか?」
「長くてそれくらいですかね」
おそらく、またブリンクポイントが設置されているのだろう。気になるのは、ヴォルフガングがブリンクのことをはっきりワープと表現したことだ。もしかしたら鍛治師達の間では通常、ワープと呼ばれているのかもしれない。
「出発はいつですか?」
「明後日です」
「おお」
流石に明日すぐとなるとミツキの生活習慣が酷い事になりそうだったから、それは助かる。
それに、昼間のうちにこの街をもう少し見ておきたい。他にも謎の技術が使われているかもしれないからな。
あと、デスターの作ったやつが見れてない。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない