【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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120_砦内散歩

 

「──キ────アキ」

 

「…………?」

 

 寝ていたら、唐突に起こされた。

 真夜中だ。

 窓から覗く景色はグリムス砦内の中世然としつつも綺麗な街並み。金属と木、皮を組み合わせて家を作っているらしく、断熱と耐久性を兼ね備えている。よく分からないが、そういう普通もあるのだろう。

 皮を家に使うという発想をゲルやイグルー以外で初めて聞いたので最初は困惑した。家を建てるためだから皮の量というのも大量になってくるはずだが、ワームが地下に大量発生しているので問題ないそうだ。

 ……寝ぼけてた。

 

「──んなに?」

 

「お腹減った……」

 

「……おう」

 

「お腹減った」

 

「…………」

 

 お腹が減ったけど昼間は眠過ぎて街をよく見ていないし、そもそも何時かも分からないから起こしたとのことだった。

 赤ちゃんかな? 

 コレでも喰らえ! 

 

「干し肉……」

 

「よく寝た?」

 

「いたたた……うん、寝たよ」

 

 ハイパー☆筋肉痛タイムに陥ったらしい。

 昨日に引き続いて運動不足が露呈している。今度、山田家'sブートキャンプにぶち込んでやろうか。同じくらい貧弱な三船くん達でも、この程度では音をあげないぐらい鍛えられていた。

 

「いたーい……!」

 

 静かに窓っぺりに溜まっている雪。

 家の中まで寒さがやってこないのには驚きだ。これも鍛治師の為せる技ってやつなのかね。細部を完璧に仕上げるほど気密性が上がって断熱性能に大きく影響すると聞いたことがある。

 職人of職人である彼らの仕上げた家ならばそういう絶技もあるのかもしれない。羨ましい限りだ。うちの家の改装も頼もうかしら。

 

「ねえ、このお肉固いんだけど」

 

「あのさあ(笑)」

 

 夜中に笑わせるな。

 肉が硬いなら口の中でふやかしなさい。

 干し肉ぐらい食ったことあんだろ。

 

「寝起きで力が入らない……」

 

「…………」

 

 結局俺がちぎって食べさせました。

 どこかで見た風景ですねえ……あれは男女逆だったけど。

 

「おいひい」

 

「よござんした」

 

「アキはなにたべたの?」

 

「ワームのステーキとクラムチャウダー」

 

「うわああ良いなあ……なんで言っちゃうの! お腹空いてきたじゃん!」

 

「無茶苦茶すぎないかい?」

 

「今から駆け込んだら作ってくれないかな……」

 

「それは駆け込むところが全部閉じてるんですがそれは」

 

 朝起きたら好きなだけ食べれば良いんだから、夜はちゃんと寝ろ。俺は夜食とか食べない派閥なんだ。

 

「うーん……でももう眠くないし」

 

「俺はお眠ですけど……」

 

「でもあれくらいだったら寝なくても大丈夫なんでしょ?」

 

「…………」

 

 幼馴染って厄介っ! 

 

 結局、ミツキの暇つぶし相手になった。しかもいつの間にかミツキは寝ついてたのに俺は全然眠れなくて朝まで目開いてた。

 腹いせに髪の毛をツノにしてやったわ。

 

「──朝、早いのお」

 

「デスターさんこそ」

 

 日が姿を見せる少し前、起き上がって外に出るとちょうど砦長がいた。街の様子の見回りなのか、のんびりと散歩をしているところに出会したっぽいな。

 それにしても早い。

 頻尿ですかな? ガハハ! ──ってのが生前ならできたんだけど、今やると普通にハラスメントになってしまうのが悔しい。

 

「探索者だからといって、睡眠をおろそかにしてはならんぞ? 必ずパフォーマンスに影響してくるんじゃから」

 

「そこら辺は分かってます」

 

 ただ、うちの幼馴染がですね。

 

「わしも若い頃は寝る時間も惜しんで槌を振るったものじゃ。だが、そうすると決まって丸一日は寝込んだ。回復力がある若いうちはそれでも良かったが、やはり歳をとるとそれも出来んようになった。今になって思うが、もう少しだけあの時我慢していれば今も鍛冶場に直接立って活動していたかもしれないと思うと悔やまれるよ」

 

 俺、こういう長話をする年寄りにはならないように気をつけようって常々思ってたんだよね。

 無理だった。

 

「彼女は?」

 

「まだ寝てます。一度起きて軽くお腹を満たしたら、今までぐっすりですよ」

 

「……コレ、なんじゃろ?」

 

「そうですね」

 

「昨晩はお楽しみでしたねというやつかの?」

 

「いやいや……」

 

 どこで知ったんだよそれ。

 歩き通しで疲れていた子とそういうことをする気にはならないし、そもそも爆睡してたっつってんだろ。

 

「デスターさ……もうめんどくさいから村長でいいですか?」

 

「ま、まあいいけど……」

 

「村長はいつもこうして散歩してるんですか?」

 

「しとるよ」

 

「見回り的な?」

 

「そうじゃ──と言いたいが、実際はただ長く眠れないジジイが早朝に暇つぶしをしているだけじゃな」

 

「俺も一緒に行っても?」

 

「おお! 良いとも。暇つぶしのお供はどれだけいても足りぬからな」

 

 同じように散歩している人や明かりが漏れている家、こんな早くにも関わらず金の音が鳴る家もある。

 鍛治師の街なんだな、と感動した。

 

「期日までに満足いく出来にならなきゃ鍛治師の名折れ。あの音もワシらにとっては日常よ」

 

「ヘェ〜……うるさいとかそういう概念は無いんですか?」

 

「概念……変な言い回しをするのお主は…………少なくともアレをうるさいと感じたことはない。むしろ、無くなってしまったら静かすぎて逆に落ち着かないかもしれんの」

 

「なんというか……風流ですねえ」

 

 早朝の暇つぶしという言葉に偽りはなくて、それ以上のことはなかった。良い時間──上がったばかりの太陽が赤く世界を照らしているタイミングで一旦宿に戻る。

 その頃には朝飯を作るためかあちこちの煙突から煙が上がり始め、注意すれば良い匂いも漂ってきていた。

 

「朝だぞミツキ、ほら起きろー」

 

「…………」

 

「ほら、起きろ」

 

「ん」

 

 両腕を伸ばしてこちらをじっと見つめてくる。

 多分、コレで無視したら一日中イジケ虫だろう。

 仕方ないので体を抱き起こした。

 

「よいしょ」

 

「……」

 

「ほら、顔洗ってこい。お腹減ってんじゃないのか?」

 

「うん」

 

 朝飯はスープ。

 肉・野菜がゴロゴロ入っているので満足度は高い。

 正直、食事に関してはどちらが上ということはないと思う。強いて言うなら人工肉というディストピア感満載の食材がないということか。

 あれも人によっては大好物だったりするから、それが良いとも悪いとも言えないけど。

 安定的な物資の流通という面から見れば善でしかないのは間違いない。

 

 食べ終えたらまた部屋に戻った。

 そこで、なぜか少し緊張気味になるミツキ。

 

「…………何すれば良いの、私たち」

 

「なんも求められてないだろ」

 

「牛の話は?」

 

「それはここじゃない。本部に行ってから」

 

「じゃあなんでここに寄ったの?」

 

「なんでって?」

 

「来る必要なくない?」

 

「シンプルに遠いから休憩取るためだろ」

 

「そーなのかな」

 

「じゃなきゃ意味わからん」

 

 実際、デスターからは何をしろとも言われていないのでグリムス砦を見て周る事にした。軽くは案内してもらったけど、それとは別に好き勝手に見るのもまた乙だからな。

 

「みんなちっちゃいよねえ」

 

「お前、そういうのあんま口に出さないほうがいいぞ」

 

 身長が低いのは確かだけど、それはテアの口ぶりからして種族的な要因がありそうだった。いや、お前らもヒューマン──人間やないかーい! と突っ込みたかったけど、ホモ・サピエンス的な意味でヒューマンと言ったわけではないんだろうなってのはなんとなく分かっていた。

 身長が低いけど、でも人間なのは間違い無いと思う。

 ……100年ごときで人類が子供みたいな身長に揃ってなるのは無理があるし、こっちの世界では元からこういう人たちがいたのかな。

 

「ねえねえ、コレ凄くない?」

 

「うん?」

 

「ほら、これ」

 

 家の扉前に吊るしてある金属製の細工物。晴れ間に降り注いでいる陽光を反射してキラキラと輝いている。複雑な処理を施したのか、金属は虹色に輝いているようにも見える。

 

「綺麗だね〜」

 

「どっかで売ってたら買って帰ろうか」

 

「うん!」

 

「三船くん達にもなんか買って帰らないとな」

 

「あー! また甘やかすんだ!」

 

「いや、コレは甘やかすっていうか普通だろ」

 

 そもそも鍛治師って本来は遭遇するのも結構めんどくさいしな。だからこそ三船くんの武器は企業が売っているそこそこなものを使っているわけだし。でも鍛治師の母体──イルヴァの牙なる集団の本拠地に来ている今、周りにいるのは鍛治師ばかりだ。

 お前らこんなにいたのかよって驚きは少なからずある。50人くらいでやってんのかなあなんて思ってたからな。

 子供までいるとは……

 

 とまあ、良い武器を作れる人達がいるんだから、せっかくならここで直に注文してみたいよね。俺の武器はもういらないから、二人のやつ。

 ……アリサと日向と早苗ちゃんの分も買おうかしら。

 

「ちょっと? また無駄遣い計画立ててない?」

 

「ミツキ、ことあるごとに人の支出を無駄遣いって言うのはハラスメントだぞ」

 

「よく分かんないけど……じゃあ何しようとしてるか言ってみてよ」

 

「シエルと三船くんの武器を買っていこうかなって──アトアリサトカヒナタトカノモ」

 

「ほら!」

 

 チッ、耳ざといやつめ……いいじゃん! 俺の稼いだ金なんだから! 

 

「そんなこと言ってたらお金たまらないでしょ!」

 

「長期的な投資だから良いんです」

 

「ト、トウシ? ……レイトくん達にお金貸してなんになるの?」

 

「お前酷いな!? そういう事じゃねえよ!」

 

「でも、お金貸すなら返してもらわないと」

 

「いやまあそれはそうなんだけど……ちょっと違うというか……」

 

 今俺がやってるのは分類すると投資だけど、感覚としてはOJT……あながち間違ってないと思う。育成ゲームはめちゃくちゃ下手だったけど、人間相手ならまだやりようはある。

 まあ、ごちゃごちゃと理屈を捏ねることはできるけど、やりたい事優先で生きていかないとそのうち後悔するからな。

 俺は三船くんに死んでほしくないんだ。ここまで関わってしまうと、もはや息子とか弟みたいな感覚になってくる。

 

「とにかく、三船くんとシエルに買っていくのは良いだろ?」

 

「…………まあ……それくらいなら」

 

 渋々の許可を得た。

 その後も特に目的を決めずに街をぶらつく。

 田舎感は少ない。

 建物がきちんと建っているというのが大きいだろう。だけど、お願いして壁の上に乗らせてもらうとやっぱり周りは草木の生えた土地。ここが隔絶された隠れ村だという事がよくわかる。

 そして、そこに辿り着いたということの異様さも。

 

「ここ、どこなんだろう」

 

「そういうのは見つけ出しても良いことないぞ」

 

「そう? でもみんな来やすくなるし……」

 

「お前は何を言ってるんだ……来て欲しくないから隠してるんだろ? 俺とお前がここに入れたのだって特例なんだから、そういう変なこと言うなって」

 

 鍛治師二人はうんうんと頷いている。

 だよなあ……

 

 やっぱり、他所から来た人間をいきなり受け入れるのは無理がある。反発とかそれなりにある筈なんだ。この二人も、そこまで良い気はしてないだろうし。

 それでも表には出さずに受け入れてくれているあたり、とても寛容だ。

 

 別れる際、火の用心みたいな事を言われた。

 

「火には気をつけろよー」

 

「ありがとうございました」

 

 手刀を切りながら言っていたので、とりあえず俺も真似してから壁を降りた。ミツキは特に何も感じなかったようで、別のことを気にしている。

 

「なんか……屋台とかないんだね?」

 

「一般的な都市じゃないからそんなもん需要なんてないだろ。日用品を買えるような場所さえあれば十分なんだよ」

 

「特産品とか食べたーい」

 

「観光地でもありません!」

 

 メッ! 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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