【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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121_滞在終了

 街の外に出ることはしなかったけど、隅から隅まで街を見て行った。鍛治の指南書(読めない)とか、鍛治風景まで見せてもらったりしてちょっとした社会科見学気分だ。

 そして夜、夕飯を食べようと集会場に向かった俺たちを出迎えてくれたのは──

 

「まさか……こんな宴を開いていただけるとは思ってもいませんでした」

 

「ほっほっほ、せっかくの客人じゃ。盛大に祝わなければと思っての」

 

「ありがとうございます」

 

 外で巨大な焚き火と、その周りに色々と料理が用意されていた。

 正直、驚いている。

 ここまでしっかりとみんなで祝ってくれるなんて。

 たった2日だぞ? 

 2日しか泊まらんような余所者をそこまでして祝うなんて……信じられるか? 

 あれかね。外人がホームステイで来たから、折角ならパーティーでも開こうかってノリなのかね。それならまあ分かる。

 

「おいひー! こっちもー!」

 

『おっ、良い食いっぷりだねえ!』

 

『姉ちゃん、胸はちっせえけど胃袋はでけえみたいだなあ!』

 

「はああ!?」

 

 ミツキは楽しそうにご飯を口一杯に頬張っているかと思ったら、なんかブチギレだした。

 確かにミツキの胸は控えめだが、俺は全然それで良いと思う。男と違って女の胸は千差万別が推奨される世界。的な感覚はあれど、ミツキの胸はあれで良いのだ。

 それはそれとして、女鍛治師の胸はでかい。

 北海道くらいでかい。

 多分身長に行くはずだった栄養が全部そっちに行っているんだろう。散歩中、女性とすれ違うたびにミツキは自分の胸を見下ろしてため息をついていた。

 可愛い! 

 

「喜んでくれているようで何よりじゃ」

 

「素直で良い子でしょう?」

 

「お主と違ってか?」

 

「おっとコレは痛烈な一撃。ボディーブローにしっかり入りますね…………ん? これなんだ? 何から作ったんだ?」」

 

「ふっ……ワームの体液じゃよ」

 

「マジか」

 

 珍味の類だった。

 チーズみたいな味がしたからワンチャン牛かと思ったけど、よりによってワームか。肉といい、だいぶワームに頼ってんな。

 

「ワームは弱くて、安定してワシらが狩ることのできる唯一のモンスターじゃからな」

 

「弱い……確かにそうかもだけどそうじゃないような」

 

 なんで探索者なんて職業があるかっつったら危険だからだ。モンスターの中でどれだけ弱かろうと、人間に比べたら強い。それを狩るなんてのは……少なくとも蒼連郷だとあり得ないな。

 

「ワシらは腕力が強い。ワームくらいなら倒せるんじゃよ」

 

 こうして実際に食物として並んでいるところを見るに、それは事実なのだろう。金属を掘りに地下に行くのだって、ワームが出てくる以上は坑道がダンジョン化しているのだろう。それを乗り越えて村として存続している時点で、デスターの言葉に偽りが無いのは分かる。

 

「そういえば、こっち来てからヴォルフガングさんの姿を見てないんですけど」

 

「あー……部屋でシコシコしとるんじゃないのかの」

 

「ぶははははは!!」

 

 名誉毀損が過ぎて笑いが止まらん。

 この人、こういうのもできるんだな。

 

「真面目な話をすると、アヤツは他者が好きじゃないからの。引きこもっているのが普通じゃ」

 

「え? そんな風には見えないんですけど」

 

「仕事は別じゃろ」

 

「あー……」

 

 仕事ならなんでも我慢できるタイプか。

 

「まあ、コレだけ騒いでいればそのうち勝手にやってくるじゃろ。あやつも酒は嫌いではないからな……ほれ」

 

 下を向きながら歩いてきたのはヴォルフガング。ズシンスシンと音がしそうなほど重厚な歩き方だ。なんでこの人はこんなにいつも重苦しい(物理)のか。

 

「よお」

 

「ヴォルフガングさん、何してたんですか今まで」

 

「荷物整理と、仕事を少し片づけとった」

 

「それは……お疲れ様です」

 

「ふん、仕事は仕事だ。休みだろうが関係ない」

 

「ですね」

 

「歓迎会をやるとは聞いてないぞ、デスター師」

 

 俺とイルヴァの牙を繋げた本人であるにも関わらず、完全に蚊帳の外。でもまあ、人と関わるのが嫌いだとそういうことあるよね。自分が関わっているつもりだったのに、いつの間にかスケジュールから外されて関係ないことやらされてるの。

 デスターは顔色ひとつ変えない。

 

「いつまでも部屋の中でモゾモゾしとるからじゃろうが」

 

「モゾモゾとか言うな。こっちは真面目に働いてるんだ」

 

「真面目すぎるのは毒じゃぞ」

 

「余計なお世話ってもんだ」

 

「…………こんな感じじゃ」

 

 こちら、ご注文の品ですと手で指し示す。

 確かにこの人が真面目なのはわかった。

 もしかしたらここまで真面目なのは鍛治師の中では特異なのかもしれない。

 

「さて、俺も酒をもらうか」

 

 手を揉み揉みと期待強めの揉み捌きを見せつけると、用意された酒の元へと向かう。小樽を3つ持ち上げると、一つはこちらへ歩いてくる途中に飲み干す。火にタルを投げ捨てると、残った2つ──満タンの小樽を持ってきた。

 

「ほれ」

 

「……あ、俺?」

 

「ああ、折角の祭りだ。飲まなきゃ損だぞ」

 

 同じアホならということだろうか、そこら中で顔を真っ赤にした鍛治師が馬鹿騒ぎを起こしている。酔っ払いがうるさいのはどの世界でもどの種族でと変わらぬ真理だな。

 正気の中にあっては正気に染まり、狂気の中にあっては狂気に染まる。それすなわち正気也。

 

「──う゛〜」

 

 死屍累々。

 鍛治師とはこんなおもしろ種族だったのか。

 口から火を拭きながら寝ている奴がいれば、半分飛んだ目で焚き火を使って鍛治をし出した奴もいる。俺が武器を見たいと言ったらデスターが半分寝た状態から覚醒して『もうこの歳になると恥もくそもないわい!』とか言って自慢の逸品を持ってきて見せてくれた。恥ってなんだよ。

 普段は家の倉庫に丁寧にしまっているものを持ってきてくれたのは普通に申し訳なかった。

 俺が使わないタイプの武器。

 まさかのメイス。

 重量系の武器の中では特に殺傷に特化している形状が特徴的だ。単純なハンマーの重さに加えて、わざと突起のある形状にすることで出血も狙える。

 

『うああああ!?』

 

 思い出しただけで笑えるぜ、振り下ろしたメイスが起こした地震にビビっていたミツキの顔はよ。

 あのメイス、おそらくは「振動」か「波」の異能が付与されている。あれを任意でつけられるんだから鍛治師ってやっぱえぐいわ。

 んで、その中でも会心の出来ときた。

 シンプルな性能だけを見ると、以前の魔剣なんか目にならんほどに……おっと、怒るなって。

 変化して以降はこうして何かを伝えようとしているような雰囲気を出すことがある。全く伝わってこんから雰囲気で俺も受け取って雰囲気で対処してる。

 そのうち爆発するかもしれん。

 

「ふっ、これで私も完璧な鍛治師……神の御業を再現する時が来ましたね……」

 

 フィアステラはさっきからブツブツと何かを呟いている。ちょこんとベンチに座っているので最悪は背もたれに寄っかかって寝るんだろうけど、寒くて死ぬぞ。

 酒であったまってるから身体感覚が狂っちゃってるんだろうな。

 

「ねえアキ〜」

 

「んー?」

 

「へへへへへ」

 

 なんだか変な手つきで俺の胸元を弄る幼馴染。

 

「んへへへへ」

 

「おいエロガキ」

 

「へっへっへ」

 

 こんなに嬉しくないスキンシップがあるだろうか。

 やっぱセクハラってクソだわ。

 

「ねぇねぇ」

 

「なんだよ」

 

「…………ちゅー」

 

「はいはい」

 

 人前でこんなことして恥ずかしくないのかねこいつは。なんて思いつつ、嬉しい気持ちも7割くらいある。

 やっぱ幼馴染って最高だわ。

 

「んー……酔っちゃった〜」

 

「酔ってるなあ」

 

「戻ろうよー」

 

「ええ?」

 

 この惨状を放置して大丈夫? 明日起きてきたらまだここにみんないて、グリムス砦全滅みたいなことになってない? そんで俺がその仇として追われる立場になるみたいな……嫌だよ俺。

 

「ねーえー」

 

「……ああ、まあいいか」

 

 所々に素面の目つきをしている人もいるので大丈夫そう。まあ多少はね? 

 

「…………」

 

 だから、そんなに期待の眼差しをされても困る。

 明日ここを出るんだから。

 

 

 ──────

 

 

「ありがとうございました! 昨日、すっごい楽しかったです!」

 

「火には気をつけるんじゃぞ」

 

 なんてーか、ミツキを連れてきたことで予想外な効果があった。俺だけだったらここまで親密感は高くならなかったと思う。僅かな滞在だったけど、ミツキが積極的にデスターと会話をしてくれたおかげでスムーズに話が進んだ──ような気がする。

 あと、最も大事なことは俺が言語弱者なことだ。

 人の言っていることの意味がわからないってのは本当にまずいことで、何で詐欺られるかわからん。

 暴力でという手もあるにはあるけど、西の部族が相手ならばともかく、友好的である彼らに対してそれを向ける意味はない。

 

『_j&hT(! az!』

 

「わあー! ありがとう!」

 

 今のは聞こえなくてもわかる。

 女の子がミツキに何かをプレゼントしていた。昨日の夜の宴で仲良くなっていた子だな。仲睦まじきかな、のほほん。

 

「何もらった?」

 

「うん、なんか腕輪もらった!」

 

「めっちゃいいじゃん」

 

「ばいばーい!」

 

『!!』

 

 ミツキの腕振りに合わせてピョンピョン飛び跳ねておる。身長も相まってうさぎみたいだ。

 

「なんか……妹っていいね」

 

「まあな」

 

「あーあ、私も妹欲しいなあ」

 

「羨ましい?」

 

「帰ったら茜ちゃんにオファー出そうっと」

 

「あげないぞ」

 

「アキより私の方がちゃんとお姉ちゃんできる自信あるもん」

 

「俺はお兄ちゃんなんですが」

 

「言葉のあやでしょ!」

 

 さて、楽しく話していたけどここで残念なお知らせだ。楽しくない徒歩タイムがまた始まる。

 

「…………」

 

 1時間も経たずに無言になった。

 賢い。

 フィアステラとヴォルフガングは前日あれだけ飲んでいたにも関わらず、二日酔いの様子は見えない。むしろ、ミツキがちょっと……という感じだ。酔い覚ましは飲んでるけど、こうやって荷物を持って歩くとなると話が変わってくるよな。

 

 グリムス砦内から外の平原に出た俺たちは、雪原をひたすらに歩いている。崖道などよりもよほど過酷だ。崖道は風の吹上や道幅がそもそも狭いことにより雪の積もる余地も少なかったけど、平原はどっさりと雪が積もっている。

 フィアステラの進む道も、こうしてついていかなければ決して見つけることはできないようなルート。

 案内人ってすごい大事なんだな。

 

「この腕輪……あったかい……」

 

 なんと、腕輪には軽いものの温熱効果が付与されていた。ホッカイロみたいなもんかしらね。

 低温やけどしないように気をつけてほしい。

 

「ミツキちゃんはあれなの? 誰とでも仲良くなれるタイプ?」

 

「はい!」

 

「自信満々だね」

 

「……自信がなきゃ何にもできないって言われましたから!」

 

「そうね、本当に」

 

 熱血指導講師でもいたのだろうか。

 コウキさんならあるいは言いそうな内容ではある。

 

「崖よりは休憩しやすそうで安心しました」

 

 あの崖と比べたらどこだって休みやすいだろ。

 雪は溶かせるし、地面も広い。危険なモンスターも上から落ちてこない。精々がそこら辺をほっつき歩いてるスノウリザードくらいだ。

 ……やべえ、スノウリザードだ! 

 

「ギャアアアアア!」

 

「キャアアアア!」

 

 リザードが叫ぶと同時、ミツキも叫び声を上げた。

 

「おいおいマジか!」

 

 ヴォルフガングも切羽詰まった感じで槌を取り出──いやそれ鍛治道具でしょ! 

 

「バカ! そんなこと言ってられ──お前探索者じゃねえか!」

 

「そうですけど」

 

「頼んだ!」

 

「頼まれた!」

 

 当然だよなあ!? 

 3人ともションベンちびりながら俺の勇姿を見ときな! 

 死ね雑魚ども! 

 バキュンバキュン! 

 

「とんでもねえや」

 

「頭だけ飛ばされてる……」

 

 雪染める

 紫の絵の具

 綺麗だな

 

「何でしみじみしてるの……?」

 

「やべえやアイツ」

 

 真面目な話をするとスノウリザードはワームより危険だ。

 

 ワームは知能とか無くて、基本的に穴を掘っている。音を聞きつけると餌と思って寄ってくるだけなので、数にさえ気をつければ何も恐れることはない。レベルが上がるとシンプルに体が大きくなって掘削能力が上がるけど、攻撃に生かされることはあまりない。

 

 スノウリザードは6本足のトカゲで、シンプルに強靭な肉体を持っている。ワームなんかよりも余程生物的に洗練された姿をしているから、鍛治師たちでは倒せないだろう。

 ついでに雑食、冬の時期に関しては目についたもの全てを捕食対象とする。群れでいるので、俺一人ならばともかくミツキたちがいつのまにか食べられたりしている可能性だってある。そうなったらこいつらを絶滅させなければならないので、俺としても楽しくない。

 つーわけで動き出される前にある程度は銃で仕留めた。以前ならば鱗に弾かれていただろう空気弾もしっかりと脳天を弾けさせている。

 だけど、まだ油断できない。

 

「ミツキ、ヴォルフガングさん、フィアステラさん、危ないから仕方ない」

 

「「「え? ……うわあああ!」」」

 

 3人を抱えて一旦離脱。持ち方めちゃくちゃだけど、生きたまま呑まれるよりは100倍マシだろ。

 

「痛い! なんか当たってます!」

 

「伊達に探索者じゃねえな……でも俺の持ち方すんげえ雑じゃねえかな……」

 

「アキ! なんで逃げるの!?」

 

 これは戦略的撤退。足手纏いが3人もいたらコウキさんですら全力出せねえよ。一旦雪の中に埋まっててくれ。

 

「今、雪に埋めるって言った!?」

 

「言った」

 

「死ぬよ!? モンスターとか関係なく!」

 

 俺がそんな酷いことをするわけが無い! ということで雪と地面を掘ってその中に3人を隠した。流石に生き埋めというわけでは無い。

 

「じゃあ、やろっか。真面目に」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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