【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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123_イルヴァの牙

 

 グルングルンと回る視界。

 動き続ける世界。

 ブリンク直後は平衡感覚が無くなり、酔っ払ったようになる。音も光もまともに受け付けない世界で動くのは危ないという他ないので、その場に座って治るのを待つ。

 ミツキが背中にいるのかどうかすら分からない。感触すらまともじゃないんだ。

 

 だんだんと元に戻っていく視界の中で目立っていたのは、銀に輝く何かだった。気を付けると音も。

 何かがそこにいる。

 手を挙げた。

 モンスターが見えた瞬間ぶち殺す気満々でしたよ正直。

 

「──動くな!」

 

「お?」

 

「知らぬ二人組……一体何者だ!」

 

 意識がハッキリすると、槍に囲まれていた。

 モンスターでは無かったようで一安心だ。

 辺りを見回す。

 壁にかけられた篝火の留め具は丁寧な細工の施された高級なもの。俺を突こうとしている槍も均一な仕上がりではなくてそれぞれが特徴を持っている。

 もっと言うと、俺たちは巨大な空間のど真ん中にいた。

 見上げれば数百mはあろうか。

 それところか下方もあるようだ。

 僅かに見える隙間から、赤く光るものが見える。

 

「溶岩?」

 

「答えろ!」

 

 何やら喚き散らしているのは、全身をギンギラギンの鎧に包んだ鍛治師らしき男。兜が火を反射している。

 何故俺に向けて敵意を放っているのかは甚だ疑問だ。

 

「あー……どうやら行き違いがあるようなんですけどね。私は怪しいものではございません」

 

「意味のわからんことを言うな!」

 

「聞いてない? 神器の所有者が来るって話」

 

「…………!」

 

 慌ただしく駆け回る兵隊達。

 

 ──いや、待て。なんで兵隊が……そもそも兵士じゃない可能性はあるか。

 

「アキ……」

 

「大丈夫、落ち着け」

 

 これはアレだ。

 コンゴで部族にぶっ殺されそうになったときと同じ空気。とりあえず言うことには従いつつ、身の潔白を主張し続けるしかない。

 

「これが神器です」

 

「! …………と、取り敢えず本物らしいな」

 

「それにアレだ、俺たち二人だけでここに来たわけじゃないというか、来られるわけがないというか」

 

 あんな道のりを案内無しにやってこれる奴がいたら俺は両手をあげて拍手してやるよ。

 

「──フィアステラはどこだ!」

 

「俺たちは先にワープさせられただけです。おそらくすぐ後に来るかと」

 

「一人で来るという話だったはずなのに……何故二人なんだ!」

 

「そこはマジでごめんなさい」

 

 いや、なんの言い訳もできん。

 ……早くきてくれ! フィアステラでもヴォルフガングでも良い! なんとかこの場を収めてくれ! 

 こんなに人が集まるなんて聞いてない! 

 聞いてないし場所が異次元すぎて逃げることもできない! 

 

「牢にぶち込め!」

 

「「え」」

 

 とんでもない声が後方から聞こえてくる。

 ……もしかしなくても本当に良くない状況だ。

 フィアステラ、早く来てくれ。

 敵対は望む道ではない。

 彼我の戦力差が測れない以上は全力で戦っても勝てる見込みは無いし、何よりその先に待つのは鍛治師と蒼連郷の全面戦争だ。

 

「──また来るぞ!」

 

「!」

 

 俺と槍を持った鍛治師の間、空間が捻じ曲がって向こう側が見えなくなる。

 ブリンクを自在に操る不可思議な法。魔素に対する理解度は俺たちよりも数段階上。武器に異能を付与できることからも想定して然るべきだった。

 

 ヴォルフガングは目を閉じた状態でやってくると、少しだけふらついた。

 

「──おおっと、ヘングリスじゃねえか」

 

 すぐに持ち直して、俺に詰問していた鍛治師へ気さくに話しかける。一瞬だけ視線が辺りに巡るのを感じた。どういう状況か、今のでなんとなく察してくれたようだ。

 

「ヴォルフガング……そのガキはなんだ」

 

「ガッ──」

 

 そこで熱くならないでくれ。

 気持ちは分かるけど沸騰したら俺たちの努力が水の泡だぞ、気体だけに。

 

「こいつは四門美月」

 

「ヨッ……誰でも良い、俺は理由の方を聞いているんだ。誤魔化すな」

 

「こいつの幼馴染だってんだ、知らん場所に連れてかれるのが我慢できなかったんだってよ」

 

「それを通したのか! この愚か者めが!」

 

「…………なあ、いつまでも閉じこもってるもんじゃねえぜ兄弟」

 

「だから反対したのだ! 余所者を入れるなど!」

 

「バカが……それじゃあ何にも変わらねえじゃねえか……」

 

 やっぱり俺らってば──余所者、厄介者、お邪魔虫らしい。どちらに同調している顔が多いか──ヘングリスだ。

 どうやらこんな場所でも人は争うようだ。

 保守。

 革新。

 どちらがどうなのか、仔細を聞かずとも分かるような語り口だ。

 

「──三人とも、ぶちこんでおけ!」

 

「兄弟…………」

 

 俺たちは牢屋に入れられた。

 予想外……とは言えない。

 秘匿主義の鍛治師に着いていくということの意味を理解しなかったわけじゃ無い。どれだけ開いた間柄だとしても──それが大規模の組織同士のやり取りであったとしたなら、何かしらの手続きはあると思っていた。

 

 鍛治師が俺の想像を遥かに超える存在であったこと。

 その性質が保守的であったこと。

 これは予想のしようがない。

 

 俺の常識が通用しない物事の話になると、俺は赤ちゃんと同じくらい役に立たない。なんなら赤ちゃんは可愛いけど俺は可愛──可愛いだろうが! 俺も! 

 ……赤ちゃんは可愛さで役に立つけど俺は男なので客観的に見たら可愛くない。むしろ、筋肉あるので情けとかかけられずにぶち殺されるタイプだ。悲しい。

 

「悪いな、アキヒロ」

 

「気にしたら負けですよ」

 

「! …………落ち着いてんな」

 

「全裸で村中を歩かされるよりはマシですね」

 

「何言ってんだお前」

 

 警察のお世話になるようなことはしたことないけど、これくらいなら大丈夫。

 

「…………なんで私たち、捕まってんの?」

 

 俺たち三人は別々の檻に入れられた。

 武器や荷物は取り上げられなかった。

 正気か? と思ったけどヴォルフガング曰くこういう事はあまり無いし、神は盗みをよしとしていないらしい

 ぶち込まれた身として言うのはどうかと思うけど、犯罪者から危険物を押収するのは窃盗や強盗には当たらない気がする。

 

「イーヴァ様だって罪人に関しては別口だって言ってる。だけど俺たちは明らかに罪人じゃないだろ」

 

「……明らかかどうかは俺たちが決めることじゃなくないですかね」

 

「…………ああ、知らないんだったな」

 

「なんすか」

 

「まあいいや」

 

 何故そこで諦めてしまうのか。説明は最初から最後まできっちりしてくださいよ! 何も分からないんですからね! 

 

「私たちどうなっちゃうの……?」

 

 確かにどうなっちゃうんだろうな。

 武器とかは取り上げないけど一生ここに閉じ込められる──なんてことがあったらコウキさんが草の根かき分けてでもやってくる。そうなったら色々終わりだよ。

 

「…………」

 

 ヴォルフガングはムッツリと、難しい顔で黙り込んでしまった。

 

 

 ──────

 

 

「──い! ────おい! 起きろ!」

 

「…………」

 

 硬い床の上で寝ていたらガシャガシャと檻を揺らす声と音で目が覚めた。釈放の時間だろうか。

 

「起きろ!」

 

「いや、もう起きたでしょ」

 

「出ろ!」

 

「そんな威圧しなくても……いてっ」

 

 槍で小突かれた。

 ミツキだったら怪我してるぞ今の。

 どんだけ嫌われてんだよ俺。

 

「来いッ!」

 

「あの……二人は?」

 

「黙れ!」

 

「…………ミツキ、ちょっと行ってくるわ」

 

 置いてくのが非常に心苦しいけど、ここで無理やり檻をぶっ壊してもなんの解決にもならねえ……

 神様なんか嫌いだけどよ。

 イーヴァ様、頼むぜ。コイツらがミツキに手出そうとしたらぶっ殺してくれよ? 

 コマちゃんは……呼べねえからな。

 

「…………」

 

 五人に囲まれながら進むのは、岩の道。両脇には安全策も手すりもない。つまり、下に何があるかというのが良くわかる。

 

「ふほほ」

 

 先ほどのは見間違いではなくて、やはり足元には熱く煮えたぎった溶岩が流れていた。こんなところにまで進出するとは、鍛治師ってのは一考の余地もなく恐れ知らずだ。

 山を丸ごと切り抜いたかのような大きさの地下空間。

 通常はダンジョンとしてしか発生し得ないはずの規模。

 人間は精々小さな穴を掘り続けて支えを作るくらいしか手がない。山を中空にするくらいなら、全てを上から切り崩して行った方が早いからな。

 それも、バケモンみたいな重機が大量にあって魔素がない世界ならでは。

 この世界ではそんな大規模な開発は行えないだろう。

 

「…………凄いな」

 

 自然と漏れた。

 称賛せざるを得ない。

 如何なる方法を使えばこんな都市作りができるのか。

 これほど多くの人が住んで尚ダンジョン化しないとは。

 第1セクターよりも多くの人間がいるだろう。

 しかし空中廊下の上を渡るのはいずれも背の低い鍛治師。彼らがいうところのヒューマンがいない。

 

 ──それも関係しているのか? 

 

「前を向いて歩け!」

 

「あだっ」

 

 さっきから小突かれてばかりだ。

 鬱憤を晴らすなら嫁さんを相手しろよと抗議する為に振り返ったら女だった。鎧着てるから分からんねん! 

 

「……これから俺はどこにいくんですかねえ」

 

「──黙って歩けないのか貴様は!」

 

 キビキビしすぎだろ。

 女騎士か? 

 

「お姉さんも鍛治師なんですかね?」

 

「き、貴様……!」

 

「おおおい、落ち着けって!」

 

 首元まで槍が伸びてくるとは思わなかった。まさか俺、また何かやっちゃいました? 

 

「侮辱する気か!」

 

「ごめんなさい……マジで、そんなつもりないんです……」

 

 落ちちゃうよ! 

 崖から落ちちゃう! 

 この高さからの落下は俺の全力を持ってしてもリュックが弾け飛ぶ! 

 あと、溶岩は普通に死ぬ! 1000℃の熱を耐えるにはまだ耐性が──いや、レベル上がってから熱系のサラマンドラとかと戦ってないから分からんけど! それをドラゴンで試す予定だったんだ! 

 多分溶岩なら死ねる! 

 

「おい、落ち着け」

 

「…………ちっ」

 

 ブチギレですやん! 

 楽しく会話しようと思ったのに、相手が受け入れてくれないんじゃそれも難しいな。ここは牛肉の話でもするか。

 

「もう黙ってろ」

 

「はい……」

 

 ダメだった。

 これ以上喋ったら俺が代わりに殺すぞって目が語っている。

 仕方ないので大人しく着いていくしかない。

 どこに向かうのかと問うことすら許されない雰囲気。

 どちらかと言えば下に進んでいる気がした。

 

 ……もしかして、生贄にされちゃう感じですかあ!? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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