【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
ミツキは兵士たちに囲まれながらやってきた。
完全に眉がしょげている。
元気ゼロだ。
ただでさえ疲れてたのにこの仕打ちだもんな。
「ごわ゛がっだよ゛ぉ゛ぉ゛ん゛!」
鼻水ズルズルでひっつくのやめてね。
「ずびびび」
俺の服で液体を拭うのもやめてね。
「んぶびっ」
……すいませーん!着替えさせてくださーい!すいませーん!今尋問中だけど新しい服を作ってくださる鍛治師の方はいらっしゃいませんかあ!
「うふふ、仲がよろしいんですね」
「これが仲良しの証拠になるわけないでしょうが!」
「ピッ」
『貴様ぁ!アリア様に怒鳴るなどと何事だあ!』
「そう言うなら俺の服のヌルヌルとってくださいよ」
『……ふんっ』
ふんっ、じゃないが。
歓迎してくれるってのに、俺だけ鼻水くっついた服で行くの?
これもう歩く不敬罪だろ。
「何がどうなってるのぉ……あの子誰」
「お姫様だってさ」
「お姫様!?」
「そう、王様の娘だから失礼なことしたら俺たち二人とも首飛ぶからな」
「!……ほ、ほんじつはお日柄もよくぅ……」
適当こいたら土下座し始めた。
こいつおもろ。
「そんな固まらないでください。あくまで一人の人間として接してくださると嬉しいです」
「――へ、へへへ……そ、そうだよね!じゃあジュース買ってきて!」
「うふふ、買うのはちょっと出来ないですけど……私が自分で作ってきます!」
「あ、じょ、じょじょじょうだんです!」
「ジュースを作るのはやったことなかったので、やってみたいんです!」
「あわわわわ」
姫様、ジュースを作る。
「ジュースとは確か、食べ物をすりつぶして作る飲み物のことでしたね」
「そ、そうです」
「流石に最初はお手本が見たいのですが……お願いしても良いですか?」
「うっ……そんなキラキラした目で見ないで……!」
女の子二人はあんなに輝い空間の中にいるのに、どうして俺はむさ苦しいおっさん達に囲まれているんですか?あと、いつになったらこの服を変えられるんですか?
『貴様のようなやつに作ってやる服などない』
グリムス砦ではあんなに歓迎してくれたのに……まさかイルヴァの牙ではこんな冷遇されるとは思わなかったぜ。本部と支部ではまるで性質が違うんだな。
『おい、勝手に動くな』
「いやいや、一歩たりとも動いてないですって」
『口答えするな!アリア様の言葉が無ければ貴様はまだ牢屋にいたのだぞ!』
「あったんだから良いじゃん……」
何が気に入らないんだよ。
『説明してやる義理も無いっ!』
「でも、説明されなきゃまた来ちゃうよん」
『貴様ぁ……』
子供が音の鳴るおもちゃにハマる理由を久しぶりに思い出せました。苦節数十年、僕は再び子供に戻ることができたようです。
「俺がダメで、ミツキがなんで良いんですか?」
『アリア様のお邪魔はできん……が!あの舐めた態度は許せん!』
「カルシウム足りてねえなあ」
でもそんなもんか。
姫様ってすげえ大事だよな。
政治的にというか、国体を維持する王の血縁でしょ?そりゃあ安全なところに居させなきゃいけないし、近くにいる以上は正の感情で接していないと辛いだろう。
……いや、王様わい!
なんで姫様に会わされるんだよ。
会うならまずは王様だろ。
それとも、忙しすぎて俺みたいな部外者とは顔を合わせる余裕もないか?
それならそれで良いけど、大丈夫かこの国……とはなる。
――国だよな?ここって。
イルヴァの牙とか言って誤魔化してるけど、蒼連郷と大差無い。単一の組織が支配して操作しているならばそれは国だ。
つまり……俺は国と関わってしまったと思われる。
発達した企業として見ていたが、想定が完全に外れた。
「王様は忙しいんですか?」
『はあ?王様がいるわけないだろ』
「???」
『どこだと思ってんだよ……』
『おいバカっ!』
『あ……』
なんだ?
王様がいない?
「うわあああ!なんか虫が出てきたあ!」
「きゃー!」
いるわけがないってことは……共和制なのか?
王様がいないのは共通認識。
そして、知られるとまずいっぽい。
「なんでこんな虫だらけの果物があるんですか!」
「料理したことないからわからないです!」
違うか。
部外者だから無駄に情報を渡すのが嫌なだけか。
今この時に限っては、シンプルに俺が嫌われているだけだな。
泣いて良い?
「ぎゃああ!火力が強すぎるんですけど!なにこれ!」
「か、鍛治に使う火を流用してる筈です!」
「家事!?家事ならこんな強い火いらないでしょ!」
「トンテンカンです!」
「あ、そっち………あちちちち!」
「ミツキさん!?」
「姫様!私このコンロダメです!魔石製のやつないんですか!?」
「なんでわざわざ負荷をかけるようなことをしなきゃならないんですか!魔石をみんなが使ってたら大変なことになりますよ!」
「不便でしょ!」
「もう!便利ばっかり目指してたら人間がダメになっちゃいます!メッ、ですよ!」
「マトモニリョウリデキナイヨー!」
魔石製のやつは高いんだよなあ(あきお)
当然俺んちのは魔石製だ。
安いやつはメタエレメンツを混ぜてたりしているので普通に危ない。母さんが騙されてそれを買ってきた時は説得するのが大変だった。爆発する危険性や、魔素に曝露する危険性のことを説明して、まず間違いなく父さんがやらかすと言ったらやっと納得してくれた。
「二人は楽しそうですよ」
『………』
「子供達が楽しそうにしている事の何が悪いんですか?」
『くだらねえ』
「……あなたにだって、あったんじゃないんですか?ああして友達と笑い合っていた時が」
『だったらどうしたんだよ』
「どうか、俺を許して欲しいんです」
『……あん?』
「一人で来ると言っておきながらあの子を連れてきたことは……本当に申し訳ない」
『分かってんならなんでやったんだよ、バカが』
「幼馴染を放っておけるわけがない……そうでしょう?」
『…………』
「大事な家族なんです」
なんのかんの言ったって、ミツキが本気でやりたいって言ったら俺が止められるわけがない。他者の意思を捻じ曲げるなんて事が許されてはいけないんだから。
でも、血のつながりがあるコウキさんは止める。美那さんも。
茜もそうだけど、あいつらにはやりたい事を我慢する癖があった。
そうしたら、誰かが背中を押すか一緒に飛び込んでやらなきゃいけない。よっぽどバカな事じゃない限りはな。
繰り返す人生だということをいまだに知らない、尊い人生を生きているミツキにはやりたいことを最優先で生きて欲しいんだ。
「お願いします」
『……これで許さなかったら、俺が悪者みてえじゃねえか』
「………」
『チッ、仕方ねえな』
「ありがとうございます」
なんとか一人には受け入れてもらえた。
グフフ、こうして草の根的に活動することで俺がここにいることを受け入れさせるのだ。そうすればミツキが安全にイルヴァの牙を動き回れるようになる。
俺も必要な情報に近付ける。
Win-Winだ。
『だが、完全に信用してもらえるなんて思うなよ』
「分かってます」
俺も信用してないしな。
そもそもこういうのは時間をかけるべきものだ。お涙頂戴の話で一度は誤魔化されてくれたが、誰にでも通用するわけじゃないし何度もやりたくない。
「姫様!そのバゲットフルーツ捕まえて!」
「バゲッ……これですか!?」
「それええええ!」
「ああああ!」
果物が一個、数百mを落下していった。
勿体ねえ……というか、何遊んでんだこいつら。
『ああもう!ジュースも作れないなんてしょうがねえな!』
「ニールセン!手伝ってくれるんですか!?」
『包丁の持ち方も分かってないようじゃあ、怪我しちまう。持ち方はこうです』
「……ありがとうございます!」
『へっ』
なんだ、やっぱり子供好きなんじゃん。
「――おいしいですね!」
「あれ、結局私何もしてないような……」
「良いんです!楽しかったですから!」
「そうかな……そうだよねですよね!」
なんだその取り繕い方。
もうどっちかに統一しろよ。
なんならタメ口の方が嬉しそうだぞ。
「……ふふふ」
「どうしたんですか?」
「やりたかったことリストのうちの一つが消化されました」
「おお!どんなことが他にあるんですか?」
「ええと……」
両人差し指でこめかみをグルグルし始めた。
「そうですね、私も人と一緒に生活してみたいです」
「?」
「なかなか難しいんですよ?」
「よく分かんないけど、やれば良いんじゃないですか?」
「あはは……そうかもですね」
「うーん、じゃあ一緒にやってみよっか!……あ、でも姫様だから勝手に色々したら…………あっ!」
なんだ、こっち見るな。
その目をした人間が碌なことを発言した試しがないぞ。
方目さんが良くする目だ。
「アキ〜お願いがあるんだけど〜」
「なんすか」
「お姫様と一緒に色々してみたくてぇ」
「……その前に聞きたいんだけど、あんなに疲れてたのになんでそんな動けんの?」
まさか、俺の目を誤魔化すほどの疲労擬態?
サボりプロになっちゃった?
「………え!?なんで!?」
「はあ?」
「疲れてない!牢屋にいた時はヘロヘロだったのに!」
「え……」
こわ……
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない