【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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127_朝も夜も

 地下空間に太陽はない。

 当然だ。

 空に浮かぶ太陽が土の下に現れたら、星ごと溶け消えるだろう。

 だから厳密に言えばこの空間に昼夜は無い。篝火を消したら夜で、火が着いていたら昼。建物毎にそうなっている。

 

「じゃあ、今は一応昼なんだ?」

 

「そうですね」

 

「いつぐらいになったら火が消えるの?」

 

「うーん……私はいつも、疲れたらベッドに入って……そうしたら勝手に消してもらえるので……」

 

「おお、姫様っぽい」

 

 多くの建物が照らされている。

 空中廊下をすれ違う鍛治師──いやさドワーフ達の数も、そこそこいる。

 肩に木箱を乗っている。見ると、中にに道具を入れていたり剣やら防具やらが入っていたりした。

 

「つまりここが俺の預けた防具の届け先だったってわけですね」

 

「そういうこった」

 

「以前言ってた接着剤なんかもここで買えるんですか?」

 

「あったりめえよ! ここにいれば赤ん坊だって鍛治が出来るようになるんだから! それぐらい揃ってる!」

 

「俺もできるのかな……」

 

「あー……まあ出来るだろうが、やめといた方がいいな」

 

「でしょうね」

 

 何故とは問う必要すらない。

 俺の時間は有限だからだ。

 

「それにしても聞きたいんだが……何で姫様がここに?」

 

「成り行きとしか言いようがないですね」

 

 ヴォルフガングの抱いた疑問は俺も思っている。そのうえで一旦スルーした。

 この場で、鍛冶師たちがその理由について思い当たることが無いのであれば、俺に分かるわけがない。

 

「……ミツキは疲れとか無くなったのか?」

 

「無くなったらしいです」

 

「どうなってんだアイツの身体」

 

「倒れられるよりは全然ありなんでそこはいいんですけどね」

 

 怖いのは、体力の前借りみたいなことをしてやいないかということだ。

 ファンタジーじゃあるまいし体力の前借りなんてあるのかないのか……ありそ〜……特に霊領やそこを囲む土地──便宜上、準霊領とでも呼ぶか──準霊領だと通常の空間では考えられないようなことがよく起こる。

 とはいえ、今、何の問題もないのにあの二人を邪魔するのはあまりにも無粋だ。

 

「姫様に万が一があったら……」

 

「今はどう考えてもミツキのほうに万が一がありそうなんですが?」

 

 どうやら本当に疲れは無くなったようで、その後も姫様と一緒にイルヴァの牙内部を楽しく散策し続けた。

 ヒロポンとか打たれてないよな? 

 

「──さすがに歩き疲れたかなー!」

 

「ふふ、では本日はこれにてお開きとしますか」

 

「そうだね……姫様もごめんね? わざわざ最後まで付き合わせちゃって」

 

「私も楽しかったですから」

 

「そっか! ところで私たちってこれからどこに行けばいいの?」

 

「ニールセン」

 

『カガミアキヒロの宿にもう一人泊まれるよう手配しております』

 

 ニールセンはいったいどういう立場なのかよくわからない。

 というよりも、姫様以外のドワーフたちのスタンスがまるで見えてこない。

 基本的には閉鎖的な種族だというのはなんとなく分かる。

 だけど、そこから一歩踏み込んだ時。個人ごとの階級というか区分というか、社会的な立ち位置がふわふわしてる。

 王政なのかと思ったけど、よくよく話を聞いてい見ると王様がそもそもここにはいない。不在ってわけじゃなくて、王様っていう存在が設定されていなかった。

『イルヴァの牙』の運営方針を決定しているのは、『牙』という鍛冶師を頂点に戴く集会。それともう一つ、神様もどうやら意思決定に関与しているらしい。

 神様は全部コロコロしたいというのが俺の方針──なんですが、蒼連郷の神様とここの神様とでは性質が違うような気もする。

 

「おい、こっちだ付いてこい」

 

「はーい」

 

 姫様と別れて付いていくと、俺たちサイズの建物に案内された。

 しかし、中に入るとそれが宿じゃなくて、使われなくなった鍛冶師の家だと分かった。

 

「炉があるね」

 

「……だいぶ昔に使われてたってことか」

 

 家具に乱れはなく、他人の家の匂いもしない。

 なんにせよ、ありがたく使わせてもらうことにした。

 だけど食事は向こうが運んできてくれるってことなので、何もすることがない。

 暇つぶしに外に出た。

 

「ミツキー来いよー」

 

「あ、はーい」

 

 この『イルヴァの牙』ってのは恐ろしい内部構造をしている。

 基本的には通路、そして建物の基盤部分にしか地面がない。建物の集中部分は村みたいな感じで大きく土台が用意されてるけど、それは例外だ。

 つまり、中がスッカスカなんだ。使う部分以外は完全にくりぬいてしまっている。

 俺たちの建物の前も通路が通っているので通路から上下を見る。他の通路やちらほらと明かりの消えた部分が目立っており、そろそろ全体的に夜に切り替わるということが分かった。

 

「さっきも思ったけど……みんな落ちないのかな」

 

「絶対落ちてる」

 

 通路部分は幅に余裕があるので普通に生活する分には問題ないだろう。だけど、何かの拍子に絶対に落ちる。

 これはもう誰にだってわかる。

 

「ええ~……そんな縁によったら危なくない?」

 

「ほかにもしてる人いるぞ?」

 

 縁の端から脚を下おろす。横を見ると、お隣さんが同じように脚を下して一家だんらんをしていた。

 しかも縁に夕食を置いて食べている。

 

「……」

 

「無理にしなくていいから」

 

「は? 全然無理じゃないから。むしろ余裕だから」

 

「そうか……」

 

 あーたがいいならわたしゃ良いんですよ。

 

 ──夕飯を持ってきてくれたのは若い鍛冶師だった。なんでわかるかって? 

 

『jeikw,skfwiyovholw』

 

「はーい」

 

 何言ってるか全然わからないからだ。

 ミツキがいて本当に良かった。

 これ、俺だけでココに来てたら『言葉がわからない? ……妙だな』っていう疑念を持たれるし、姫様以外の若い子ともうまくコミュニケーション取れないからぎくしゃくするしで本当にまずかったのでは……

 

「ミツキ」

 

「うん?」

 

「ミツキがいてくれてよかった」

 

「っ……そ、そうでしょお?」

 

「うん」

 

「えへへ……ご飯食べよっか」

 

 なんか新婚旅行みたいだな。

 

「……」

 

「ウニウニウニ」

 

 目を覚ますといつもと違う。

 冬特有の寒さを感じることがないし、窓から入り込む弱々しい天空日射もない。

 セントラルヒーティング(都市規模)みたいなものだなこりゃ。

 地熱が直で得られるから冬の寒さが入り込む余地が無いうえに、イーヴァとかいう神様に祝福された土地は暖かいときた。参ったね、そりゃあドワーフに侵攻されるよ。

 

 ──ドワーフか。

 

 ドワーフってあれだよな。

 背が低くて、力持ちで、手先が器用な妖精。

 西欧の神話に登場するんだっけ? 詳細とか何も知らないけど、指輪物語のイメージはあるな。

 それってつまり……この世界はもしかしてその神話に関係する世界だったりするのか? 

 

「……おあよ」

 

「起きた?」

 

「ん……」

 

 亜麻色の髪をなでる。

 眠りが浅くなったタイミングで俺がもぞもぞしたから起きちゃったんだな。

 でも太陽の光も何もないから目が開かない、と。

 

「うんん……」

 

 寝起きのコマちゃんみたいな声出してる。

 コマちゃんも朝が弱くて、俺が起きても大抵は寝てる。それで軽く背中をなでると尻尾を揺らすんだよな。

 ……ヒナタ達大丈夫だよな。

 声が聴きたいな。

 

「……んー」

 

「起きる?」

 

「………………もう少し寝たい……」

 

 抱きついてきたので起きるのかと思った。

 だけど、昨日は厳しい道のりを乗り越えて死にかけだったところを謎の疲労回復した後に追加でここを少し見て廻ったからな。

 もっと寝かせてあげてもいいか。

 大学の講義も何もないんだから。

 

「おお……」

 

 外に出ると、大鍛冶場でひっきりなしに人が動いているのが見える。

 今が何時か知らないけど、本当に鍛冶中心の都市だな。逆に、鍛冶師以外のドワーフっているのか? 

 

「おはようございます。カガミさん」

 

「──ああ、フィアステラさんでしたか」

 

 後ろに気配があったので一応気にしてはいたんだけど何の用かな。

 

「朝ご飯の時間なので、呼びに来ました」

 

「……これは特に他意はないんですけどね。もしかしてどっかから見てます?」

 

 それだとかなり気まずい。

 

「私たちは何もしていませんが……」

 

 指さしたのは上。

 ってことは──

 

「あんま罰当たりなこと言えねえな」

 

「考えてたんですか?」

 

「ノーコメントで」

 

 だからちょっとだけ怖い目をするのをやめてください。

 

 朝食は姫様と一緒。

 何故そんなことになるかというと、ミツキが好感度を上げたからだろう。

 それに姫様からの話だと言えばミツキもすんなり起きた。

 

「ほら、行くぞ」

 

「ん!」

 

 元気だ。

 しかしこのタイミングで、フィアステラはやや気まずい雰囲気の顔のままミツキに向けて口を開いた。

 

「ミツキちゃん……えーと、昨日のことだけど……アリア様の髪色が変わってたのって気づいてた?」

 

「え? はい」

 

「その……どう思う?」

 

「どう思う? …………日ごとに変わるよりはあんな感じのほうが良いなあって」

 

「あ、そういう感じなんだね」

 

「だってそうじゃないですか?」

 

「……そうだね、うん」

 

「?」

 

 毎日髪の色が変わる人間に二色の間を行ったり来たりするだけの人間のことを聞いたら、『自分よりは楽そう』って感想が出ることは予想できそうなもんだけどな。

 だけどミツキは何か別のことに思い当たったらしい。

 

「もしかして、姫さまもそのことで悩んでるんですか?」

 

「悩んでる……まあ、そうとも言えるのかな」

 

「じゃあ役に立てるかも!」

 

「あ……その、深い悩みとかじゃないから。普通に接してあげてほしいの」

 

「──わっかりました!」

 

 意気揚々と建物を出て行った。

 張り切ってんなあ。

 

「あの子、道分かってるのかな」

 

「多分わかってないですね」

 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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