【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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135_やることといえば

「ただ見て回っても面白く無いな……よしっ!」

 

 せっかく滞在するなら霊領との比較もしてみようということで聞いて回ることを決めたアキヒロは、まずは一番身近なドワーフを頼った。

 

「──モンスターが侵入すること? 無いですよ、あるわけないじゃ無いですか」

 

 通常の霊領とイルヴァの牙の大きな差。それはモンスターがいるかいないかだ。

 

 争いを起こせば木に変えられる。

 水を口に含んでおかなければ破裂する。

 視界内に空を入れたら重力が反転して降りて来れなくなる。

 服を着て入る事が許されない。

 入るには身を捧げなければならない。

 

 世の中にはさまざまな霊領が存在するが、このような場所は初めてだった。それはつまり、この地の法そのものである神がそのようにこの地を設定しているからだ。

 常識が通用しないという点ではこの地は他の霊領と共通している。しかしモンスターが寄りつかないというのは、人間の明白な味方として行動しているのが明らかだった。

 

「カガミさんは大学に通ってるんですよね? どんなことをする場所なんですか?」

 

「魔素とか神様とか、科学とか!色んなことを学ぶところです!

 

 基本的にはミツキを連れている。言葉が通じない相手に対しては彼女の存在が必須だからだ。それに、警戒心の強い相手に彼の容姿では威圧感が少々強い。具体的には壮健な肉体と目力。

 ミツキは雰囲気も肉体も緩い(太いとは言ってない)感じなので、彼よりは話をするのに向いていた。

 

『──────』

 

「ええと……教えて欲しかったら第四坑道の奥に住んでるミスリルゲッコーを捕まえてきてって」

 

 だからといって、いつも話がすんなりと進むかというとそういうわけでもない。お使いを言い渡される事が多かった。今回は溶岩の意味について尋ねたところ、そう返された。

 

「……本当に行くの?」

 

 坑道は手掘りのものと自然形成のものが複雑に繋がっている。素人が行けば遭難してしまうのは間違いなかった。鼻のいいアリサやコマちゃんはこの場にはいない。それでもアキヒロは行くと決めた。

 

「俺は探索者だぜ? いつだって報酬と業務は引き換えだ」

 

「……なんか破滅的だよそれ」

 

「破滅的なもんか、前向きなんだ俺は」

 

「むー……」

 

「お前は待ってろ」

 

 坑道に足を踏み入れたアキヒロがまず気付いたのは、内部の暗いこと。ダンジョンであればメタエレメンツや魔素の混じった鉱物が自ら光ることでほんのりと照らされているが、ここは全く明るさを持たない。

 

「…………」

 

 松明を付けると問題なく見通す事ができるようになった。壁面には取り残された鉱物が見えている。そのうちの一つに触れてみるが、焼け付くような感触はない。ひんやりとした手触りだけが伝わってくる。青く光を返す石だ。

 

「メタエレメンツじゃないな」

 

 呟きに答えるものはいない。

 本当に一人でやってきた。

 案内役すらいないのに大丈夫なのかというミツキの心配。しかし、彼女が思っているような事にはならないだろうというのが予想だった。

 その証拠に人のいた痕跡が残っている。所々にはリボンがくくりつけられ、土や岩を掘り返したドワーフ達が何らかの意図を持ってそれを残したという事がわかる。足跡も、人が確かにここを行き来している証拠だ。

 黄、赤、水、黒。4色に分けられたそれらが何を意味しているのか分からずに、通り過ぎる。

 しかし、無視するほどに気になるのが人間の性質というものだ。次に現れたリボン、まずは黄色の方向へ進んでみる。

 

「──うおっ!?」

 

 その先にあったのは光り輝く富の象徴。

 Auで表される元素の塊だ。

 

「き、金ってこ、こんなに塊で現れんのか……!」

 

 彼とて普段から金を見てはいる。

 通貨が金貨なので当然だが、彼の金に対するイメージといえば岩にへばりついたカスみたいなものや砂金だ。これほどの塊──人の背丈ほどもある金塊が、丸ごと地中に埋まっているなどあり得る事なのかと戦慄に襲われ、口が半開きになる。

 

「…………」

 

 手を伸ばし、金に触れる。これだけの金があればどれだけの金持ちになれるか。財力もまた、必要なものだ。だが、これが誰のものなのかということもまた明白だった。

 

「盗んだら全ドワーフが敵に回るなこりゃ」

 

 わざわざ目印をつけている以上は重要な意味があるだろう。それこそ、部外者である自分が持ち出すことは禁忌に等しい。

 そんなことをする気もないが。

 

 一度リボンの意味を分かってしまえば、次は躊躇もなくなる。赤いリボンの先に進むと、今にも崩れ落ちそうな洞窟だ。

 

「……なるほど、危険信号か」

 

 閉鎖すればいいのにそうしないのは、やはり何かの意味があるのか。この場は安全のために引き返す事にした。どれだけの地下かすら分からないところで落石に巻き込まれれば、いくらレベル50の探索者とて帰還は厳しい。なりふり構わず全てを破壊し続けるという選択をしても、燃料が切れる。

 

「水色……」

 

 予想通り、その先には地下水の溜まった空間が。

 松明の火に照らし出されたクリアウォーターの中を覗き込むと白い石筍が中で育ち、黒く輝く魚が泳いでいる。

 

「!?」

 

 松明を取り落としそうになり、慌てて掴み直すと地面にゆっくり置く。這いつくばり、目がおかしくなったわけではないことを証明するためにもう一度見た。

 

「──ま、幻じゃない」

 

 巨大な地底湖の中には、他にも魚が泳いでいる。ゆらゆらと身を揺らしながら時々口をぱくつかせる姿は、まさしくコイだった。

 

「どこかに水流が通じてるのか?」

 

 石筍が育つということはこの水が石灰質を多分に含んでいるということだ。そんな中でまともに魚が生息できるとは思えなかった。そもそもプランクトンがいるようには見えない。彼の視力ならば、そこにいたらプランクトンも見ることができるはずなのに。

 

「食えんのかな……」

 

 しかし、自分で言っておきながら顔を顰める。極限環境に棲む生物の肉は美味しくないのが大抵だし、鉱物など人間の体に毒となるものを蓄積している可能性もある。

 手出しは無用だ。

 

「戻ったら聞いてみるか」

 

 仮に食べられるのならば、どんな味なのかが気になった。この際、脚が生えているのは我慢しよう。

 霊領にいる魚を食べるなど、滅多にないことだ。

 

 ──水を人差し指につけ、顔をなぞる。

 

「神を連れて帰る…………姿のない奴を持ち帰るって一休さんかよ」

 

 しかしそれは冗談では済まない。アルス達の主張が正しいのならば──本当に、神に列するものを自らのもとに手繰り寄せる必要があるということだった。

 まるで糸口が見えない。

 しかし、その先にはこの光景に連なるものがある。

 

 坑道に戻ると、一人のドワーフがこちらを見ていた。女性だ。子供ではないようで、開いた口からは意味のある音が漏れ出た。

 

「見てきたの?」

 

「はい、何があるのかが気になって」

 

「……殺したりしてないよね」

 

「見てきただけです。ところであの魚はなんというんですか?」

 

「イシグライだね」

 

「イシグライ?」

 

「石を食うんだ」

 

「おお……食用ですか?」

 

「一応食べられるよ。でも、あいつらがあそこにいるのはそっちの為じゃないから」

 

「?」

 

「水をきれいにする為だよ」

 

「ほお」

 

「じゃあね」

 

「あ、はい」

 

 最後に入ったのは黒のリボン。

 進むと洞窟が途切れている。先にあるのは真の暗闇。火をかざしても奥を見ることは叶わず、はるか奈落から響く風切音だけが聞こえる。

 

「死に道か」

 

 これより先は彼ですらどうなるか分からない。大規模な崩落か、それとも断層か。人間の手で軽々しく作り出せるものではないのは確かだ。

 何にせよ、行くべき場所ではないのは明らかだった。

 彼が探すように言われているミスリルゲッコーもいないだろう。特徴は聞いている。緑色の手乗りサイズだそうだ。

 

「ヤモリなんて本当にこの場所にいるのかね……」

 

 探し回ると、通常サイズの虫が見つかったりもする。全身に目がある毛虫がウニョウニョと這い出てきて、また石の中に消えていく。

 口をへの字に曲げて虫を見送ると次の道へ。

 探せど探せど見つからず、流石にこれ以上進むと遭難のリスクが極限に大きくなるだろうというところで声が聞こえた。

 

『!』

 

『──!』

 

「ん?」

 

 それは、進行方向側から聞こえてきた。

 つまり洞窟の奥側だ。

 こんな奥まで来てもドワーフはいるのかと感心して、顔だけ見ようと進むとまず出てきたのは小さな手。すぐに飛び出してきたのはこれまた小さなお顔。

 

「──!?」

 

 驚きと恐怖の入り混じった表情で固まる。

 

「……」

 

 とりあえず子供を後ろに隠して何が来るのかを見守るが、特に何も来ない。

 

「なんだ?」

 

 振り返ると、少年は不安そうに見上げていた。

 半ば諦めながらも口を開く。

 

「モンスター来るのか?」

 

「…………」

 

 首を横に振る。

 

「何か来るのか?」

 

 首を横に振る。

 

「誰か向こうにいるのか?」

 

 首を横に振る。

 

「…………迷子か?」

 

 俯く。

 

「そしたらここをまっすぐ進んで、右、左、真ん中、左から3つ目、右、下、右上、真ん中、左で戻れるぞ」

 

「…………」

 

 無理と首を横に振る。

 しかし彼にはゲッコーを捕まえて帰るという使命がある。このタイミングで戻るとまたここに戻ってくるのも面倒だ。あまりに早く移動すると接地の衝撃で足元が砕ける可能性もあるため、ダンジョンと同じようにはいかない。

 

「着いていきたいのはやまやまだけど……ここで待ってられるならまた戻ってくるぞ」

 

「……っ」

 

「そもそも何でこんなところにいるんだ?」

 

「……#dcgj@dNGpagaw(イサクとの勝負に負けたから)」

 

「ああ、ごめんな。言葉わかんなんだ」

 

「?」

 

「俺はちょっと頭に怪我しててな。子供達の言葉が聞き取れないんだ」

 

「…………」

 

 軽く笑ったが、不安に揺れる目はアキヒロを見て離さない。

 

「まいったな……ミスリルゲッコーとかいうやつも捕まえなきゃいけないんだが……放ってもおけない」

 

「──!」

 

「さっきの嬢ちゃんはいねえかな、あの子なら言葉もわかるだろうし、まだそこまで離れてないか────お?」

 

 考え込み、さきほどイシグライとやらの名前を教えてくれた女ドワーフに押し付けるという天才的な解決方法を思いついた。ちょうどそのタイミングで袖をクイクイと引っ張られる。

 

「ん!」

 

「?」

 

「ん! ん!」

 

 強く袖を引き、とある方向を指差す。

 少年が飛び出してきた方向だった。

 

「なんかいるのか? …………いや、何も聞こえないぞ?」

 

「aIhk#yj/!」

 

「…………まさか、本当は誰か別のやつが遭難してるのか?」

 

 子供は、取り残されると何をすればいいのか分からなくなる。火事や山における遭難などにおいても、救助隊の大声を聞くと怒られると思って隠れてしまう子もいるのだ。

 

「qfxyAIa)GeT!」

 

「むう……」

 

 流石に複数人の遭難を放ってはおけない。仮に子供が合流しても、わけのわからぬ方向に進む可能性が高い。そうなれば非常に後味の悪いことになってしまうだろう。

 

「──行くか」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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