【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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138_デカパイ像

 イルヴァの牙は至る所にイーヴァの像が置かれている。街の風景に溶け込むように、まるで計算されたような自然な場所への配置。目が自然と向く場所にあるので、パイオツが目に入る。

 秋川家を彷彿とさせる敬虔さだ。

 

「私たちも一個お土産に持って帰る?」

 

「いや、これそういうのじゃねえだろ」

 

 ただの置き物だと思っているのだろうか。どう考えても信仰のシンボルであり、入信してもいないものがおいそれと持って帰ることのできるものではない。火と鍛治に畏れを抱く者のみが神の真の恩寵を預かることができるのだ。

 そして、アキヒロは根本的に信仰というものと相性が悪い。神の存在を否定するわけではなく、神を不遜だと考えていた。

 何故、彼らが神様と呼ばれるのか。

 それはもちろん奇跡を引き起こすからであり、見たものを信じさせる力を持っているからだ。逆説的に、たとえ力があっても人と縁のない存在であれば神とは呼ばれない。

 

「一個ぐらい良くない? なんか見慣れると可愛いし」

 

「だから、それができるかは俺たちじゃなくてドワーフたち次第だっつーの」

 

「じゃあ聞いてみよーっと」

 

「誰に?」

 

「フィアステラさん」

 

 思いついたが吉日。

 せっせと鉄を叩いているフィアステラの家を訪ねた。案内役だからといって四六時中ついていなければならないというわけではない。そもそも東京のように超高密度でも無いので、アキヒロからすれば迷う要素はない。

 

「──イーヴァ様の像を? なんで?」

 

「可愛いから欲しいなって!」

 

「…………アルス様に聞いてみないとわからない。私が案内役としてついているのもあの人の指示だし」

 

 直属の上司が彼女だったとは思わず、その意外さに驚く。やることで部署を分けていないのは非効率じゃなかろうかと訝しんだ。

 

「私たちはほら──基本的に鍛治しかしないですから。必要になったら別のこともやりますけど、そうじゃない限りはただの鍛治師なんです。だからこそ『議員』『牙』『姫』が重要なんですけどね」

 

 しかし、単独であっても牙が意思決定機関として活動しているのであれば議員は何のためにいるのか。

 

「……そ、それはちょっと」

 

 明かせないこともあるようだ。

 

「フィアステラさん! 牙ってあの人ですね! あの偉そうな人! 会いたいです!」

 

「偉そうって……実際偉いからね」

 

「どこにいるんですか!?」

 

「うーん……」

 

 流石に上司の予定を完全に把握しているわけもない。それでも一応考えてくれるあたり律儀なのだろうが、こういうのは考えても仕方ない。

 二人は突撃訪問を敢行した。

 

「──待て」

 

 しかし、そう簡単にはいかない。

 少ないながら存在している警備の兵士や文官。彼らを説き伏せるための言葉を持たないからだ。無理やり突破することは本末転倒でしかない。

 仕方ないのでそのまま言葉をぶつける。

 

「像が欲しい……?」

 

 意味がわからないと二人の兵士は顔を見合わせた。

 そんな要望、聞いたことも無いのだろう。

 

「難しく考えないでもらっていいんですよ。ただ、こいつが像をお土産に持って帰りたいって」

 

「難しく考えてねえよ」

 

 しっしっと手を振る兵士。

 

「像を持って帰る……そもそもどこから持ってくんだ?」

 

「?」

 

「あれは俺たちが作ったもんじゃねえから簡単に補充できねえぞ」

 

 初代の牙がイーヴァの力を借りて作り上げたもので、熟練の鍛治師でも作ることはできないらしい。つまり、腕とは別に神の後押しのようなものが必要なのだろう。

 

「……だからアルス様の力が必要なんだね」

 

「そうだ──っつうか知ってたのかよ」

 

「フィアステラさんに一応アルス様と話す必要があるってことだけは」

 

「あー……」

 

 何かしら彼女なら話すと思わせるところがあるのだろうという反応。しかし大事なのは、この場を通してもらえるかどうかだ。招かれているのとも、街中を歩いていて出くわすのとも違う。自分から行った時に入れてもらえるか、それは未知数だ。

 

「──本来はこんな突然来られてもダメなんだがな。特例らしい」

 

「あ、それはなんか申し訳ない」

 

「その代わりと言っては何だが……例の神器、俺たちはまだ見てなくてな」

 

「こちらです」

 

 協力してくれるような人に対して冷たくあしらうことは無い。この兵士二人はアキヒロのことを殊更に敵対視しているわけでは無いようなので、それも加味すればナイフを見せることは全く何の問題もない。

 

「うおっ、すっげえ……これが……」

 

「ああ……普通のナイフにしか見えねえ」

 

 案の定の反応。

 誰かにすれ違うのも構わず、門脇でムキムキと談義を交わす。

 

「素材にどんだけの冗長性を持たせても、結局変異止まりなんだよな……」

 

「アプローチがダメなんだろい。結局のところ大事なのはどれだけ魔素を込められるかってことで──」

 

「ばか! 今まで散々そうしてきてんだろうが!」

 

「だーかーら! 許容量が足りねんだろ!?」

 

 あーだこーだと騒ぐ二人に気を引かれてやってきたドワーフたちがさらに神器に夢中になって、というサイクルを繰り返した結果。

 

「どうしてこんなことに……」

 

 二人の周りは鍛治師だらけだ。各々の鎚に特徴があるので見分けがつくが、そうでなければかなり厳しかっただろう。

 見分けを除くのであれば、厳しい。

 ただただ暑苦しい空間だった。

 

「す、すいませーん……先に行かせてくだーさい……」

 

 控えめな声で呼びかけるも、熱気のバリアーはまるで通さない。これではナイフを一回返してもらうどころか、当初の目的も果たせやしない。

 

「……どうする?」

 

「どうするったってお前……これにやめてくださいなんて言ったら暴動が起きるんじゃねえか?」

 

 暴動を鎮圧する側であるはずの兵士すらそちら側に回っているので、収拾がつかない。

 

「こんなつもりじゃなかったのに」

 

「世の中、そんなもんだ」

 

「むうーん……」

 

 しかしこの雑踏。

 進むには跳躍して飛び越えるか、かき分けるの二択を取る必要がある。そこまでする必要があるのかという話は置いておくと、ということにはなってしまう。

 

「そこまでする必要はないよね」

 

 まあ、そうなるよな。

 

『──何の騒ぎだ』

 

 そこに現れたのが頼もしい女人だ。彼女がいるだけで目が惹きつけられる。声のやや低いことはマイナスではなく、雑踏の中ですら良く通った。

 携えた鎚が証明する彼女の偉大さ。

 やはり、選ばれる人間というのは違う。

 

『あまりにうるさいから来てしまったが……騒ぐのは程々にしておけ』

 

 皆、先生に怒られる小学生のようにシュンとしてしまった。

 しかし……これは恐怖ではない。

 慕うものからの失望が怖い人間の仕草だ。

 善き王。

 善き政治。

 彼女はそういったことが得意なんだな。

 俺とは違って。

 

『──こちらへ』

 

 促されるまま、中へ。

 言っちゃなんだがここって役割としてはモロに王城だよな。謁見の間や執務室、食事用の部屋や専用の厨房まで。

 単一の建物として完結しているのだから、それ即ち城なり。

 

「本部の方が大きいけど、こっちの方が雰囲気あるよねえ」

 

「言ってもあっちは事務処理の建物って側面が強いからな」

 

「……こっちは違うの?」

 

「神域にある以上は、単なる事務処理云々よりはイコンの要素が出てくるのは当然だろ?」

 

「ふーん……それも永井先生に聞いたこと?」

 

「いや、当たり前の話というか……」

 

「だる」

 

「ええ……」

 

 どっちもデカい建物である以上は国力を示すって目的はあるけど……ぶっちゃけ諸外国という概念が西の部族以外に無いので、内部向けの主張という部分でどう見せるかっていうのがある筈。

 本部はあんなクソでかい建物を建てたのはバカだと思う。お前あんなん現代レベルの建物建ててエレベーターもないのにどうやって上下間の行き来こなしてるんだよ。

 

「あれはエレベーター? だっけ、あるらしいよ」

 

「え?」

 

「あれでしょ? おもり吊るしてウィ〜ンって」

 

「その擬音はよくわからないけど、多分そう。……あるんだ」

 

 全然知らなかったぜ。

 

「お父さんに付いて上に行ったことあるから、知ってるんだ!」

 

「…………」

 

「なんか言ってよ!」

 

 金持ち……とも少し違うか。

 一級探索者だったからだろうな、呼ばれたのは。

 

「逆になんで知ってるの? 私、あそこ以外で見たことないんだけど…………アレのおかげ?」

 

「うん、まあそうだな」

 

「ほえー」

 

『……ヒューマンの城には流石に見劣りするがな、我々の城もなかなか良いだろう?』

 

「見劣りっていうか……比べるものじゃないですからねこういうのは」

 

『おや?』

 

「俺は機能さえしっかりしてれば特に何も……強いていうなら、こっちの方が見た目は好きかな」

 

 おっぱいの像が門前に鎮座してるから、とてもグーです。不敬とかは知らん。

 廊下を歩いててもちょいちょいおっぱい像が置いてある、なんだここ。

 

「ねえ、あんまおっぱいばっか見るのやめてよ……恥ずかしいから」

 

 は? 全然見てないが? 

 像に埃がついてないかな〜って見てるだけだが? 

 そもそもジジイがおっぱいなんか見るわけないんだが? 

 性欲とかねえから

 

『……あなたは意外と俗っぽいな』

 

「意外とっていうか、この人アレですよ! 焼肉が食べたいからこんなことしてるんだよから! この世で一番俗ですよ!」

 

 世界で一番は言い過ぎじゃない? もうちょっと俗っぽい願いもあるでしょ。

 

『…………』

 

 なんか言えよ。

 

『彼女の言い分に反論の余地は無さそうだと思ってな』

 

「ほら! 全会一致だよ!」

 

 全会の中に俺が入ってないのは恣意的な排除行為だと断じます。

 

『私は最初──あなたの話を聞いた時は山のような、熊のような男が来ると思っていた。あるいは獣のように欲を剥き出しで冷静とは程遠い男だとな』

 

「どんなふうに聞いたらそんな印象になるんです?」

 

『肉が好きな男』

 

 端折りすぎだろ。

 そこから人間性を紡ぎ出すの、あまりにも難しすぎる。

 

『実際に目にした時は正直、驚きもあったよ』

 

「……なんでしょうか」

 

『若くて真面目そうな男だったからな』

 

 なんかいやらしいな……お口チャックしとこ。

 

『探索者──私も少しは顔を見たことがあるが、もう少し髭もじゃというか無精というか服が黄色というか……とにかくそんな感じのものが多かった気がするんだ』

 

 カードショップの話してる? 

 

『いいや、こんな感じだった。酒臭い奴らばかりだから、実はドワーフなんじゃないかと思ったくらいだ。あとカードショップとはなんだ』

 

「はは……」

 

 服が黄色はまあ、いることにはいる。中年くらいの探索者で実績を上げてないと色々身なりが酷いことになってくるからな。若い時は収入も鰻登りでやる気に満ち溢れていたからどんどん支出が上がっていって、年取ってやる気も体力も下がってくるとそこのバランスが取れない。

 探索者ってのは何かと金がかかるからな。

 

『まあいいか…………あなたは他の探索者と比べるとだいぶ落ち着いてると思っていたのだが、そういうわけでもないのかな』

 

「落ち着いてるといえば落ち着いてますけど、普段だけですね」

 

 普段落ち着いていることが一番いいのでは? 

 

『──さて、話をしようか』

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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