【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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139_誰が持って帰るんです?

『あの像を持って帰りたい……それはまた妙な話を持ってきたな』

 

「はい、ダメですか?」

 

『もしかしたら聞いてるかもしれないが、あれは簡単に作れるものでもない。欲しいからと言われても、我々の一存で決められるものじゃないんだ』

 

「そこは聞いてます! だから、ガワだけもらえないかなって!」

 

 神の力ありきで作られたのだとしても、鍛治師達の腕であればあの像の形を作ること自体はなんの問題もなく行うことができるだろう。仮にそうじゃないのだとしたら、煽りみたいな話をすることになってしまう。

 

「あの像って形だけならドワーフさん達にも作れますよね?」

 

『それはもちろんだが……ガワだけ、か。あまり考えたことがなかったな』

 

「どうですか……!?」

 

『…………一度預かろう』

 

「何をですか?」

 

『話だ』

 

「話を預かる? どういうこと?」

 

『一度持ち帰って中で話すということだ』

 

「でも、今って中にいますよね?」

 

『……ふふふ、なかなか食えないやつだな』

 

「?」

 

 面白こいつら。

 常識が噛み合ってないな。

 

「ミツキ、相談させてくれってことだよ」

 

「あっ……へー! いいですよ! 相談しても!」

 

 こいつホンマ……婉曲的な言い方した意味無いだろそんな風に言ったら。

 

「でもほら神様の力を借りるわけじゃ無いのになんでダメなのかなって」

 

「神様の力を借りないからって、良いかどうかはまた別の問題だろ?」

 

「うん、だから良いじゃん。別の問題なんだから」

 

「……とりあえず、良い返事がもらえることを期待しております」

 

 ここで話しても埒が明かない。早めに切り上げたいな。

 無駄話ばかりしていても向こうの時間を食うだけだ。

 

『ああ、待ってほしい』

 

「はい?」

 

 と思ったら、向こうから引き留めてきた。

 何かを持って来させたかと思えば、箱から取り出したのはナイフ。やや赤みがかった刀身が目を引く。

 

「これは?」

 

『それはオリハルコン製のナイフだ』

 

「お゛っ」

 

 オリハルコン。

 確かにアレは赤みを帯びた金属だった筈だ。加工が極めて難しく、高温にも強い。耐酸性、比熱容量、伝導性、あらゆる面で既存の金属を凌駕する性能。

 その代わり、産出量も相応に少ない。

 ダンジョンの深層などで見つかる例はあるが、それも結局高値での取引なので俺たちみたいな末端探索者の元には流れてこない。

 流れてきたところで手を出すことなんて不可能だけど、とにかくそういう代物。

 

「オリハルコンかあ……お父さんもこれの武器持ってた気がする」

 

「まあ一級だったからな……」

 

 一級なら持っててもおかしくないけど、持ってなくても全くおかしくないという。それほどに貴重な金属だった。俺たちの世界におけるイリジウムとかプラチナみたいなものと言えばいいか。

 でもこっちの世界だと隕石とかバンバン降ってるからイリジウムとか貴重じゃないかもしれない。成層圏でよく爆発してる。上空にいるモンスターが対応してるっぽい。

 

『あまり……珍しくないか?』

 

「いやいや、そんなわけないですから。めっちゃくちゃ珍しいです。ただほら、こいつの父親って元一級探索者じゃないですか」

 

『ああ、一応顔は見たことあるな』

 

「え…………」

 

『とは言っても、そこまで話したわけではない。あくまで軽い挨拶程度だ』

 

「モヒカンでした?」

 

『ああ──本当に彼の娘なのだな』

 

 識別記号になっているモヒカン。

 もうモヒカンに改名した方がいいんじゃないかな。帰ったら打診してみよう。

 

「何年前なんですか?」

 

『…………まあ、そこは伏せさせてくれ。色々とバレてしまうかもしれないからな』

 

「あ、へーい」

 

 遠回しな言い方をやめて、直接の拒否。ミツキにはそういうのが通用しないと気づいたのかもしれない。

 ごめんねえコミュ障で。

 

「結局、これがどうしたんですか?」

 

『……代替品だ』

 

「え?」

 

『神器を譲り受けた暁にはこれをあなたに』

 

「ええ……アキにこれを?」

 

 なんでそんな顔して見るんだよ。

 いいだろ俺にくれても。

 神器やぞ! 

 

「勿体なくないですか? なんかもうちょっと安いやつで……」

 

「お前俺の敵か!?」

 

「いやいや、だって焼肉に執着してばっかのアキにこんなもの渡してもしょうがないじゃん」

 

「有効活用した結果として神器になったんだぞ……?」

 

『その通りだ。彼はあのなんの変哲もないナイフを神器にまで押し上げた──あるいは元から神器だったのやもしれぬが、そうでないのならば彼に対しては勿体無いなどという言葉は当てはまらない』

 

 真面目な目をしてそんなことを言い腐る。流石にそこまで褒め殺されるとは思わなかったので気分がいいな。

 

「うわ、なにその顔。腹立つ〜」

 

『はは』

 

「でも、これ本当に高いですよね?」

 

『鉱石はいずれ集まる…………一方の神器はどれだけ金を払っても手に入るかわからぬものだ。ナイフなのか、石ころなのか、食べ物なのか。我々はその神器がなんなのか、実際に目にして見るまではわからない。たったの100年で武器を見つけることができた。だが、この機会を逃せば今度は何年後になるかわからない』

 

 それは切実な言葉だった。

 神の力を受ける器となったものが武器である確率。

 それの高低などまるでわからない。だけど、そもそも神器がこの世に現れるというのが神の奇跡なのであれば、その分母自体の数も少ない筈だ。分子に至ってはもはや──といったところか。

 

「…………」

 

 圧倒されて言葉も出ないらしい。

 目をまんまるにしている。

 

『値を決められないということだ』

 

「そんなこといったらこのナイフだって決められないでしょ……」

 

『あくまで高額というだけの金属と神器では比較にならない』

 

 なんでミツキが敵側に回ってんだよ。そもそも敵も味方もない筈なのに。いいだろ俺が高級品もらっても。

 

「アキが高級品〜? ダメだよなんか似合わないもん」

 

『物々交換だと思って貰えばいいだけだ』

 

「うーん……」

 

『……そもそも、彼が決めることなのだが』

 

 その通り過ぎる。

 武器は多ければ多いほどいい。それを使いこなせるかどうかはまた置いておくとしても、手持ちに色々な札があるだけで自由度が上がるからな。オリハルコンのナイフはそれだけで単純な戦闘力が上がる。

 

『彼の得物がナイフなのでナイフを用意したわけだが……そこは大丈夫だろうか?』

 

「まあそこは貰えるものであればなんでもありがたいです、はい」

 

 実際のところ、俺の間合いはナイフじゃない。身もふたもない話だけど、ナイフからニョキーンって魔剣が伸びた状態で使うのがベースになってる。ナイフだと刃が短くてモンスターの体に深く刺さらないからダメだね。

 最初は武器とか持ったことないから繋ぎでナイフのつもりだったんだけど、そのうち変異して薄刃の剣になった。じゃあ俺もそろそろ異能とかゲットするか……!? なんて期待してたのになんもない。本当に。

 コマちゃんが喋る異能をゲットしたのに俺は普通の人間です。

 母さんは喜んでるけどな、息子が化け物にならなくて良かった〜って。このままレベル上がってったら詰むかもしれんぞ? ええんかそれで。

 空も飛べないし水の上も歩けないし無酸素空間で無限に活動できるわけでもない。ビームも放てないし骨肉砲も生えてない。

 厳しいなあ。

 

 だからこそ! 

 良い武器をもらえるならそれがナイフであっても貰うよ俺は! 最悪は棒の先にくくりつけて槍として使うし! 

 

『ナイフとして使っていただきたいが……まあ、仕方ないか』

 

「でも早とちりすぎません? これだけの量のオリハルコンをナイフ一本に使うのってめっちゃ勿体無い気が……」

 

 合金として混ぜるだけでも劇的に強度を上げるオリハルコンを単品に使うのは、おそらく前代未聞のはずだ。

 

『覚悟だと受け取ってくれ』

 

「受け取るにしても、私が目的を達成してからの話にはなるでしょう」

 

『そこはもちろん理解している。ただ、いつかその神器が我々の元に来るのであれば……それは是非とも、という話だ』

 

「…………重いねえ」

 

『そうだ、重いんだ。このあと何千年にわたっても見つかるかどうか、そして手に入るかという保証はない』

 

 大袈裟だ。

 言うだけなら誰にでもできるけど、実際本人たちの立場にしてみないとそこの重みは見えてこない。鍛冶に心血を注ぐ事に対する共感はできないが、情熱を燃やすという部分であれば俺も同じところにいるつもりだ。

 

『他の者には内密にな』

 

「あ、はい」

 

 どうやら『牙』肝入りにして、トップシークレットの案件なようだ。

 ……やっぱダメなんじゃねーか! 

 

「──持って帰りたいだけなのになあ」

 

 城から出た後、ミツキが溢した一言。

 なんでそんなに像が欲しいのか心底理解できない。持って帰るのも大変だろ。

 

「風情がないなあ」

 

「お、喧嘩か?」

 

「写真とか撮っちゃダメでしょ? だから思い出を持って帰ろうかなって!」

 

 武器でいいじゃん。

 

「形だけのものだからこそいいんでしょ!」

 

「…………もうちょい軽いやつじゃダメか?」

 

「もう聞いちゃったから!」

 

「そもそもどうやって持って帰るの?」

 

「え? ………………」

 

 なんだその目は。

 なんで俺を見るんだ。

 

「ねっ!」

 

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