【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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145_くせえな……

「そんじゃあ……」

 

「ヴォルフガングさん、今回はいろいろお世話になりました」

 

「うんにゃ、こっちこそ迷惑かけたな。あそこまで拒否反応出るなんて思ってなかったわい」

 

「──また、武器を頼みます」

 

「任せろ」

 

 一段階、彼と近づけた気がした。

 ガッシリと握手を交わす。

 

「ハシュアー、お前さんも頑張れよ」

 

「(お、おう!)」

 

「ガッハッハ! ガチガチじゃねえか!」

 

「(し、しかたねえだろ!)」

 

「心配するこたねえ、こいつは俺が知ってる探索者の中では一番マトモなやつだからな。基本的に」

 

「(…………)」

 

 それでも顔色から不安は拭えない。当然だ。10歳を過ぎて2つか3つ歳をとった程度の少年が、未知の領域で戦おうとしている。俺が12歳の時はカマキリとか追っかけてたからな、この場にいる時点で十分すぎるくらいに頑張ってる。

 

「アキヒロ、コイツの背中にはアルス様とイーヴァ様の目も載ってるって考えろよ」

 

「当然!」

 

「あんま長くいすぎるとあれだな……そんじゃあな」

 

 ヴォルフガングはのんびりすることもなく例の路地裏に向かった。冬の寒空の下でよくやるぜ。

 俺たちも俺たちで、いつまでも街中にいるわけにはいかない。愛しの我が家だ。

 

「水道凍ってねえよな……」

 

 家についての懸念点はそこだけだ。

 早苗ちゃんは無事だよな? ヒナタは? アリサの受験は? 

 コマちゃんはしっかり仕事をしてくれただろうか。きっと大丈夫だろうけど、不安だ。

 犬だからな。

 

「ちかれたあ……」

 

 玄関の扉を開けると、いの一番に入ったミツキが倒れ込んだ。

 

「そこ倒れると邪魔だから」

 

「うあー」

 

 ゴロゴロとミツキをリビングに転がしていくと、太々しさマックスのお犬様がいた。チラッとこっちを見たらすぐに視線を外し、ポリポリと首元を掻く。

 

「ただいま」

 

「…………」

 

 嫌な顔をすると、置いてあった消臭剤を咥えて俺の足元に放り投げた。俺、臭いんか? 

 

「わふ」

 

 早くやれってさ。

 シュッシュッ。

 

「(なにこの……モンスター……?)」

 

「犬、知らないの?」

 

「(知らない、見たことない)」

 

 犬を知らないと来た。

 でも、確かにイルヴァの牙では見なかった。

 地下だからだろうな。

 

「わふっ」

 

「(うわぁっ!)」

 

 コマちゃんが軽く吠えるとビビって尻餅をついた。フンフンと匂いを嗅ぎ、目を細める。

 めちゃくちゃ牙剥き出してるけど吠えないのはなんなんだ。どういう感情で向き合ってるんだ。

 

「(お、怒ってる?)」

 

「コマちゃん、あんまりビビらせないで」

 

「(…………な、なんだよ!?)」

 

 うろうろとハシュアーの周りを歩き回る。何か言いたげにしながら、それでいて何も言わない。尻尾もおったってるし耳も張ってるのに。

 

「──ふんっ」

 

 高飛車なお局みたいな感じで鼻を鳴らすと、再び定位置(ソファー)に戻った。どうやら許されたらしい。

 でも消臭剤を投げ渡された俺の立場はどうなるんですかね。

 

「お風呂沸かしてー」

 

「はいよ」

 

 ──素晴らしい旅だった。

 

 辛い結論を得ることになったけど、あれだけが答えとは限らない。

 現状、超常の力が無ければ成し得ないというのは理解した。確かにあれだけのものを見せられれば納得せざるを得ない。神様が独自のルールを敷くことができるのも、ナニカを奪うことができるのも、その力の延長線上にあるということだ。

 

 俺は科学技術を信じている。魔素も神様もいない世界で、錬金術と幽霊と深海と星を解き明かした人類の真髄。

 既に失われてしまった力。

 未曾有の大災害に飲み込まれ、風に吹き流されて、どこかへと消え去ったもの。だけど完全には消えていない。確かな既知がこの世界には残っていて、どうしようもなく懐かしい。

 

「絶対にあるはずなんだ……」

 

「──わふっ」

 

「お?」

 

 風呂を沸かしていたらコマちゃんがいつのまにか後ろにいた。首を少しだけ傾げ、可愛らしく聞いてくる。

 何があるはずなの? と。

 

「世界に元々あったものを取り戻すための鍵が、きっとどこかにあるんだ」

 

「…………」

 

「なかなか見つからねえんだよなあ」

 

「わふ」

 

「永遠の命? ……まあ無限に時間があれば探せるだろうよ」

 」

 

「わんっ」

 

「いらねえよそんなもん。無限分の一はゼロと一緒なんだから」

 

 ミツキが風呂に入ったので、さあ困った。

 ハシュアーとのコミュニケーションどうするよ。

 

「(別に喋れなくても俺は困らないから大丈夫だぜ、分からないのアンタだけだし)」

 

「とりあえず、次お風呂入りな」

 

「(いいの?)」

 

「俺は最後だから」

 

「(わ、わかった)」

 

 雰囲気で会話はできるけど、実際のところなんて言ってるんだ。やーいうんこうんこ! とか言われてたらどうしよう。

 

「住むところどうしような」

 

 流石にうちに住まわせるのはなんか違う気がする。かといって放り出すのも人間のやることじゃない。

 

「コマちゃんどう思う?」

 

「わふ(あの二人に押し付けな)」

 

「最終的にはそうなる可能性大なんだけどさあ……投げっぱなしジャーマンは気分良くないねって話をしてるんだよ」

 

「わん(そんなの知らないよ)」

 

「そういうにゃよコマちゃーん……」

 

 なんかいい案出してくれよ! 三船くん達の家にぶん投げるのは最終案だから! 探索者用の宿に長期滞在ってのも案としてあるにはあるけど、あそこに住ませるのは不安が大きい。

 

「(もしかして、俺が住むところのこと考えてる?)」

 

「…………コマちゃん、頼む」

 

「わふ」

 

「(──つていうか、モンスターと喋ってる!? めっちゃ普通に喋ってるからスルーしてたわ! どうなってんの!?)」

 

「!? ──バウバウッ!」

 

 なんかコマちゃんがめっちゃ抗議してる。モンスターだって言われたらしい。確かにコマちゃんはスコティッシュフォールドとしては随分変だし、実質モンスターみたいなものでは? 

 

「ガルルルッ!」

 

「ああスコティッシュテリアね、ごめんごめん。ハシュアー、こいつはモンスターじゃなくて動物だから」

 

「(動物もモンスターも一緒じゃん)」

 

「ワン! ワン!」

 

「一緒じゃないし、なんならそこら辺の人間より賢いからマジ舐めんなよ。だってさ」

 

 俺はハシュアーの言葉がわからない。ハシュアーはコマちゃんの言葉がわからない。コマちゃんは二人の言葉がわかる。これは良い関係を築けそうだな! 

 

「──上がったよー……ってうわっ、なにしてんの!?」

 

「分からないか?」

 

「分かんないよ!」

 

 ハシュアーとコマちゃんが見合っている。

 ロマンチックな雰囲気は微塵もなく、睨め付け合っているというのが正確な言い回しになるだろうか。

 

「なんでこんなことになってんの…………いやもうさあ、超疲れてるから今日はやめて?」

 

 イライラしている人がいるので、場はお開きになった。

 ハシュアーが風呂に入ると、今度はミツキが口を開いた。

 

「疲れた……でも……楽しかったなあ」

 

「そうだな」

 

「あのさあのさ、他にもいろんな人たちが地下とかで暮らしてるのかな!?」

 

「うーんどうかな」

 

「もしかしたら空に住んでる人もいたりして!」

 

 ラピュ◯的な? …………ありえるか。

 でも、そこまで行くと辿り着けないから考える意味もないな。

 

「また行きたいなあ……」

 

「イルヴァの牙に?」

 

「ううん──あ、もちろんイルヴァの牙にも行きたいよ? 姫様とかアルスさんともまた会いたいしね。でも、なんかこう……目が覚めたみたいな感じ」

 

「ん?」

 

 覚醒しちゃったの? アルミホイル巻く? という事ではないな。海外旅行で新しい価値観に気づくのと同じか。

 

「知らないことばっかなんだなって」

 

「そうだなあ」

 

 どうやらミツキはソクラテスに追いついたようだ。

 

「探索者っていつもあんな感じなの?」

 

「なわけ」

 

「まあそうだよね……」

 

「なに? やりたくなった?」

 

「……ちょっとだけ」

 

「コウキさんが許しても俺が許さないけどな」

 

「えーなんでー!?」

 

「だって向いてないもん」

 

「そんなことないし!」

 

 そんな事ないわけない。

 四門美月とかいう絶望的に性格が探索者に向いてないやつ。最近は少しだけ改善したけど、そもそも他人との付き合い方が絶望的に下手くそだった。運動は可もなく不可もなくで、髪色や誘拐未遂を経て若干ネジくれた性格になっている──と、俺はなんとなく感じている。

 コウキさんの影響もあるのかな。

 いっその事、あの人みたいな暴の化身だったらよかった。そうすれば周りに自分の在り方を委ねるなんてしなくて済むのに。

 

「いやいや! お父さんもアレで結構ナイーブだよ!」

 

「それは知ってる」

 

 特にミツキのことになると途端に使えないので、床下に引っ込んでてくれとしか思わない。だけど、それを口に出すと俺がやらかした事も言われるのでグッと堪える。

 

「お父さんも友達いないからなー」

 

「そりゃいねえでしょ」

 

 一級探索者と友達ってなんの罰ゲームだよ。一級にまで上ったやつってのは基本的に人格破綻者ばかりだというのが俺たち低級探索者の感覚だ。

 というか、人格どころか肉体が破綻してる奴も結構いる。コウキさん、実はめちゃくちゃまともな部類なんだぜ。親としてはまだ足りない部分もあるけど、人間性を保ってるのは素直にすごいと思う。

 

「……そうだねー」

 

「なんだよ」

 

「なんでも〜」

 

「…………」

 

 窓から外を覗くと雪が降っていた。

 もう少ししたら冬は終わる。

 そうなれば次は雷が降り注ぐ季節だ。

 同時に、一般的には雷獣と総称される、雷に由来する強力なモンスターが各地に出現する時期でもある。探索者の仕事も若干忙しくなってきて、二年間八季節スパンの中では上から2番目に厳しい。

 

「ゴロゴロするのかなあ」

 

「するだろ」

 

「……わたし、嫌い」

 

「俺も好きじゃないよ、うるさいし」

 

 雷が常に鳴っているので、たまったものではない。この時期は自殺者が多いなんて噂もまことしやかに語られるくらいだ。講義もマトモに聞こえなくて抗議が起こる、なんちって。

 

「眠いから寝るね……」

 

 次の日、目を覚ますと裏庭から微かに音が聞こえた。

 誰かというのは明らかで、ハシュアーだ。

 剣を振っている。至ってシンプルな剣、とても使いやすそう──彼の腕の長さに合わせられているような気がする。もしかしたら自作だろうか。

 なにせ鍛治師の一族、それくらいは事前にやっていてもおかしくない。だけど、型も何もないメチャクチャな振り方だ。昔の自分を思い出す。

 

「(あ──)」

 

「おはよう、ハシュアー」

 

「……」

 

 練習しているところを見られたのが恥ずかしいのか、振るのをやめてしまった。思春期だなあ。

 

「武器の振り方は誰かに習ったのか?」

 

「(ううん、違うよ)」

 

「習ってないか……それじゃあ、変な癖がつく前にあいつらのところへ行くか!」

 

「?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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