【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「いつの間に帰ってるぅー!?」
「ただいまだぞ早苗ちゃん!」
「うわー! 今は入っちゃだめー!」
「え? 入るけど?」
「だ、だめえええ!」
なぜそんなに俺のことを拒むんだい早苗ちゃん! 何があったんだ早苗ちゃん! 俺たちの仲じゃないか早苗ちゃん!
なんで半開きで入れてくれないんだ!
「ったく……片付けたといたぞー」
「──日向ちゃんナイス!」
扉の隙間越しに見えたのは、我が朋友ことヒナタ。相変わらずのスカした顔で、だけどどこかニヤけている。
……ったくw
「……おかえり」
「ただいま、ヒナタ」
「…………あー……とりあえず上がってけよ」
ガシガシと艶やかな髪を掻くと、本意ではないというような顔をしながら宣った。
……ったくw
「──ドワーフ? このガキが? そもそもドワーフってなんだ?」
移動方法や名称なんかは誤魔化しつつ、ドワーフって種族なことだけは伝えた。身内なんだから良いよな。職務上得た情報でもないし、問題無い。
「(ドワーフってのは俺たちの事だよ)」
「見りゃわかるけどよ、何がどうなってるとドワーフなんだって聞いてんだ」
「(え? …………)」
「言ってみろよ」
「(…………だよ)」
「あ?」
「(ヒューマンよりも背が低いんだよ!)」
「……ふーん、他には?」
「(他? …………)」
なんだ? なんで俺を見るんだ?
……ああ、あれか!
「一応、鍛治師のところに行くってことは伝えてあるんだよこの二人には。だから、大丈夫」
「(……俺たちドワーフは、鍛治師だ)」
「あー……よく分かんねえけど分かったわ」
含むところがありそうな視線はともかく、ここにきたのは単なる紹介のためだけでは無い。
「弟子にしてやれって……あのな、何でもかんでも面倒見ようとすんのやめろって」
「──考えてみれば、これは悪い事じゃ無いと思うんだ!」
「うおっ!? なんだいきなり……」
「三船くんたちに足りないものが何かわかるか!?」
「は? なんのはな──」
「そう、勢いだ!」
「…………」
「二人とも静かなタイプだ! 悪口言う時はちょっと元気になるけど、基本的には穏やかで気分を盛り上げるような事はしない!」
「……まあ、そういうところはある」
「そこでハシュアーだ!」
「なんなんだよさっきから……」
「ハシュアーには元気がある!」
「うるさい」
「二人が冷静に見て、ハシュアーが盛り上げる! これでいいんじゃないか!?」
「……それ、二人には話したのか?」
「まだだ!」
「お前勢いで誤魔化そうとしてないか?」
「ああ!」
「何がしたいんだ?」
「ハシュアーの住む場所をどうしようか、すっげえ悩んでんだ!」
「それ、本人の前で言うか?」
3人から冷たい目で見られてしまった。だけど俺は気にしない。内心で悶々と抱えていていいことなんて一つもないんだ。答えは歩き回らなきゃ見つからない。
「私たちに聞かれても、良い案なんか思い浮かばねえよ。お前んちに住まわせてや…………」
そうなんだよ。
前だったらそれでも良かったんだけど、今はちょっと混み入ってるというか個人的な問題がというか男女のあれこれがというか。すごいモニョモニョする……
「(何この空気)」
「ちっ」
「!?」
早苗ちゃんが舌打ちを……?
「ま、まあアレだな。良いとこ見つけないとな」
「……」
すっごい。
早苗ちゃんの視線がすっごいネッチョリしてる。
……こいつら、今の一瞬で喧嘩した? さっきまでめっちゃ仲良かったのに。
「アキヒロくん、商工会の宿泊所ってあるよね。そこじゃダメなの?」
「いや〜あそこは流石に一人で行かせる場所じゃ……」
「(俺、別に一人でも平気だぜ?)」
「…………?」
「おい、返事してやれよ」
あ、そこの説明まだだった。
「──言葉がわからない? お前何言ってんだ?」
「いや、だからさ。なんか俺だけハシュアーたちの言葉が分からないんだよ」
何故か姉妹は廊下に出て行った。
頭コレだと思ってんのか!?
──────
「……姉ちゃん、どう思う」
「わかんない……神様の影響? あの時頭やられちゃったんじゃ……」
「かもしれねえな」
「コマちゃんに聞いてみる?」
この二人はコマちゃんと一週間生活してみて、意外と気さくな神格だと言うことを知った。知ったというか、思い出した。あの争いの中で最後の方は真面目フェースで心底恐ろしかったが、実家で初めて会った時は半分ほど頭がイカれてるコミュ強だった。
そういうわけで、畏れを忘れたわけではないが過度な謙りは取らないことにした。呼び方もコマちゃんで良いとのことなので、その通りに改めている。
「コマちゃん……教えてくれっかな」
「とりあえず──」
『別にあいつに何かやられたわけじゃないよー』
「……だそうです」
「そうだな……」
いつでも見られている。神様らしいと言えばそうなのだろうが、やはり空恐ろしいものがある。
二人は背筋を震わせた。
──────
結局、二人のところで稽古をつけてもらうもらわないの話は一旦流れてしまった。三船くんたちにもちゃんと話をしてから、だそうだ。
条件をつけるのが上手いねえ!
二人に会うために家に行ったが、誰もいなかった。
となれば、後は山田家か支部。山田家にいない事は既に証明されているので、支部の方を訪ねてみた。
「いないか……」
酒場もじっくりジロジロと、知り合いのけつの穴まで──というのは冗談で、一人一人確認してみたけど、三船くんたちの姿は無い。では、と方目さんに話を聞いたところ今は業務の真っ最中だそうだ。
……何処へ?
「──アンダーに行ってる? それは本当ですか?」
「うん、昨日出発してる。3回目だよ」
高頻度だ。
「すごい簡単なやつだから、そこまで消耗はしてないみたいだけど…………ちょっと様子見てあげてほしいかも」
「もちろんです」
この時期は地上が厳しいので、受注する業務はアンダーや建物などに集中しがちだ。その中で3件もぎ取ってんだからどんだけ張り付いてんだって話だけど、そこはまあいいでしょう。
「なんかね? レイトくんが凄い真剣な目してたの」
「三船くんが……」
「シエルちゃんも不安そうにしてたし……ちょっと顔が怖かったなあ」
「……何か話したりしました?」
「一応声は掛けたんだけど……」
大丈夫です、と固い声で言われてしまったらしい。確かにそれはどんな反応をするのが正しいのか悩ましいな。
「ごめんね……私からお願いしたことなのに、私が全然役に立てないや……」
この人にそんな殊勝な部分が残っていたことに少し驚いたけど、肩を落としている相手に言うことでもない。それに、何かをやろうとした結果としてダメだったのなら、それは役に立っていないわけじゃない。ただ、状況が難しいだけだ。
「今日中に帰ってきますかね?」
「うん、ただの採取だから」
「採取か……」
確かにそれなら今日帰ってくる可能性が高いだろう。とはいえ、舐めてかかるのはいけない。採取でも、ダンジョンが対象地であればモンスターには普通に遭遇する。そこで全てのモンスターにおいて逃走を選ぶことができるのが駆除や討伐との違いだけど、逃げられるとも言い切れない。
あの二人は正味な話、まだまだペーペーだ。シエルは多少慣れている感はあるけど、それでもレベル的に多少強いだけの一般人というところを脱する事はできていない。
高頻度で探索に赴くのは、俺のような死者でもない限りリスクが高すぎる。
「ここで待ちます」
「そっか……うん、お願いします」
「それでですね──実は、三船くんとは別のことで相談があります」
「わかったよ」
ハシュアーが円滑に探索者として働く事は可能か、また、彼が鍛治師であるという事を周りには伝えないでもらえないかということを聞いてみた。商工会に属する人間として、所属の利益に反する可能性がある事は重々承知だ。
「鍛治師は探索者になっちゃいけないなんてキマリはないから、問題は無いはずだけど……」
「でも、商工会の中で無闇に広げられるとあまり好ましくないんです」
「私たちでも?」
「特別扱いしてほしくないというか……良い意味でも悪い意味でも」
「まあわたしは出来るけど……他の子に伝えちゃったら結局特別扱いになっちゃうような?」
難しいな。実際のところハシュアーがここにいるのは特別な理由があるわけだけど、そこまで方目さんに話すわけにもいかない。
「とにかく、今言った通り鍛治師が入ってきた〜なんて喧伝しないでもらえればそれだけでいいです」
「まあそれくらいなら……?」
探索者連中はあんまり絡んでこないしいいか。
……あれ、でも俺はともかく三船くんたちはそんな事ないのかな。
「え? ……ああ、まあ人気だよね二人とも。そりゃそうでしょ、あんなに顔がいいんだから」
その通り過ぎた。
半分俺の趣味みたいなところがある人選なので、顔がいいのは当たり前だった。
「変に絡まれたりしてないよな……」
「加賀美くんがいない時は割とアレだよ」
「そうですか……それも関係してんのかな」
絡まれないように強くなろう、的な。
「うーん……そういうのとはちょっと違ったかなあ」
なんだかんだでちゃんと見てるじゃん。そういうのでいいんだよ。
「とりあえず、そこも帰ってきてからだね」
「…………」
「不安?」
「まあ……はい」
「とりあえずさ、何考えてても結果は変わらないからお酒でも飲みながら待ってれば?」
「…………いや、やっぱり俺もダンジョンに行きま──」
入口の方に見えた二つの小さな影。
何ヶ月も見てきた、ここ最近は近くにいるのが当たり前だった姿だ。
「──加賀美さん!」
「……三船くん、おかえり」
「あ、た、ただいまです……加賀美さんこそ、お帰りなさい」
「うん、ただいま」
身体が動きそうになったけど、一旦落ち着いて声をかけることができた。我ながら呆れた性格だ。
「なんでここに?」
「あー……顔が見たくてな」
「ええっ? …………また何かやらかしました?」
人がいつも何かやらかしてるみたいな言い方はよしてくれ──というか、そんなふうに思われてたのか。
「邪魔」
「あ、おう」
どうやら採取自体は問題なく終えたようだ。二人とも、アンダーにのみ生えてるキノコ──アンダールームを背中のカゴに入れている。そのまんまだけど、わかりやすいネーミングで非常にいい。見た目が似てる毒キノコもあるから気をつけないといけない。
「……」
変な雰囲気はない。思い詰めた様子も、切羽詰まった様子も、二人の様子からは見てとれない。
何もないなら、それが一番いい。
「アンダーに行ってた理由、ですか……」
疲れてるところで申し訳ないけど、早めに聞いておきたかった。
「…………」
「レイト」
「うん、わかってるよ」
答えには、躊躇いがあった。やはり何の理由もないなどという事はなかった。シエルの優しい声があって心の楔が取れたのか、口を開く。
「僕たちが今、何ができるのかを知りたかったんです」
「……いつもアナタがくっついてくるから」
それは、真剣そのものの表情だった。
「あの日、アンダーで…………あの場所で加賀美さんに助けられてからずっと思ってました。僕には何があるんだろうって」
掲げた腕は義手。俺が買ってあげたものだ。
「こんなもの、僕にはもらえる権利なんて無い。ずっと、そう思ってたんです」
「そんなことは──」
「そんな事あるんです。だって、見ず知らずの人に義手を買ってプレゼントする人がいますか?」
「い──」
「いないです」
「……」
「あ、感謝してないとか要らないなんて思って無いです! 本当に、すごく助かってます!」
「そ、それはよかった……」
「でも、それとこれとは話が別で…………これじゃあ僕たちは一生、探索者になれないなって思っちゃったんです。加賀美さんの──誰かの後ろにくっついているだけの僕たちが探索してるなんて……誰が聞いたって笑うと思います」
「──それは誰かに言われたのか?」
「言われました」
誰だ、そんなくだらないことを言ったのは。
「加賀美さん……それを聞いて、僕たちは『その通りだな』って思いました」
「だからアンダーに?」
「……この数ヶ月でわかりました。加賀美さんはとても大きなことに挑んでるんだって。いつか、このままじゃあ僕たちは足枷になるって」
「いや、そんな大袈裟な……」
「うるさいです」
「っ…………!?」
「とにかく、僕たちはこのままじゃあ胸を張って探索者だなんて名乗れないなって分かったんです」
「……そっか」
言い返す気力がなかった。
客観的に見れば、確かに三船くんたちの現状は二人の言うとおりなのかもしれない。俺は決してそんなことは思わないけど、事情を知らない他人からしてみれば。
「だから二人だけでアンダーに挑んだのか……」
「そうです」
「──私たちだけでも、クリアーできる」
「!」
ビクトリーのV。
シエルがお茶目な一面を見せてくれたのは初めてな気がした。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない