【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
『僕たちは、お払い箱ですかね?』
寂しげに、悲しげに、それでも受け入れる目をしていた。
『裏切り者』
冷たく澄んだ瞳。いつだって辛辣だった彼女の、一層拒絶するような声色が俺の心を錆びつかせる。
『アキ……それだけはダメだよ』
優しく、そしてわずかな失望を滲ませた表情。俺は何を間違えた。何をやってしまったんだ。どうすればよかった。
『ヒロさん、何があったんですか?』
『うおっ(笑)。情に熱いフリして自分の目的のためだけに動くマシーンみたいな人間こと加賀美明宏くんこと僕の飼い主じゃんwwwちーっすww──それで、自分が何のために寄り道をしているのかすら理解できなくなったのかい?』
──それは、ただの夢。
「目覚めわろし」
昨日は、こっちに帰ってきて一週間ちょいぶりに三船くんたちの顔を見た。二人の成長を実感して、俺が間違っていたことを知った。
ハシュアーのことは次の日にしようと家に帰ったけど、なんでかシエル達に置いていかれたような気分だった。
だからだろうか、あんなクソみたいな夢を見たのは。夢の中で俺は三船くん達にさようならをして、ハシュアーの面倒を見ると宣言していた。
くだらない。
「…………」
昨日は日向達の家に泊まっていた。帰ってきたって事で小さなお祝いの会を開いてもらったからな。
ミツキはミツキで、一旦実家に帰るってんで昼間のうちに連絡はもらっていたから参加してない。
三船くんたちも反省会を開くとかで帰ってしまった。
若干寂しいけど、早苗ちゃんたちもプロの料理人とかではないからそんなに大人数分は用意できないという事情もあるしアレで良かったのかもしれない。
会自体はとても楽しかった。
「…………んん」
ひっついて寝ていた早苗ちゃんの頬を突くとモチペタフワトロサラリンチョ。結局例の件はどうなったんだろう。早苗ちゃん、成長してるのかな。
「……」
それにしてもこの肌触り、男の俺ですら若干羨ましさを覚えるほどだ。足元で寝ているコマちゃんも流石に唸るしかあるまい。
「…………あきひろくん?」
「うん」
触り過ぎて起こしてしまった。まだちょっとだけ早いので、軽く頭を撫でてもう一度夢の世界へ。
「んみゅ」
しかし、一度目覚めてしまうとそう簡単に夢の中へ戻るなんてことはなかった。顔を俺の服に埋めている姿はソファーを掘っている時のコマちゃんみたいだ。
「わたしのー……」
「うん? ──ああ」
昨日の夕飯で、デザートの最後の一切れを日向が食べるか早苗ちゃんが食べるかで揉めていた。結局半分に分けて事なきを得たけど、食べ物の恨みは恐ろしいからな。そこら辺は気を付けなきゃ。
「……ばーか」
「…………いや、起きてるよね?」
「っ…………」
「早苗ちゃん?」
「……すぅ……すぅ……」
今更そんな寝息立てようたって遅いんだよ!
「今の馬鹿は何かおしえなさーい……!」」
「やだー……!」
後ろで日向が寝てるのであまり大きな音を出すわけにもいかず、静かな攻防が発生した。
──────
「(その何とかって二人はアレか? デケェのか?)」
「わふ」
「いや、ちっちゃいな」
「(どんくらい?)」
「わふ」
「うーん……まあ、俺の口元くらい」
「(十分でかいだろ!)」
「わふ」
「そりゃあハシュアーと比べたらな? でもほら、こういうのは相対的なもんだから。ハシュアーくらいの大きさの人間なんてほぼいないし」
「(バカにしてんだろ!?)」
ハシュアーとコマちゃんと一緒に三船くんの家へ。用件は言わずもがな、パーティー加入の話だ。あの覚悟を見せられた後だと若干気まずいけど、レベルや強さ的には誤差だから問題ないはず。
「おあよーあいあす」
「おはよう、ごめんな朝から」
「ひえ〜」
ダンジョンに連チャンしているせいか疲れていたようで、気持ち遅めに行ったにも関わらず起き抜けだった。シエルに至ってはまだ寝室にいるとのこと。
「えっと……それで、君がハシュアーくん?」
「(ああ! アンタは三船黎人ってんだろ!)」
「うん」
「(よく分かんねえけど、アンタ達と組むかもみたいな?)」
「あ、うーん……分かんない」
二人がダメって言えばダメなので、そうなったら一人で頑張ってね(投げっぱなし)。俺も適当に野に放つ気はないけど、比重としては三船くんたちの方に寄っちゃうと思う。でも、時間が経つとそこらへんも曖昧になってどっちもどっちな感じになっちゃうんだろうなあ。
嫌だなあ、こういう予測ついちゃうの。自分のことだから分かりやすすぎる。
「──もしかして、それで昨日は僕たちのことをわざわざ?」
「いや、顔を見たかったのは本当だから」
「……へへ」
「とりあえず、シエルが起きてくるまで中で待ってていい?」
「あー……はい」
「俺たちはリビングで大人しくしてるから、三船くんもまだ眠いなら──」
「ああいやそういうんじゃないんですけど……でも、一応、はい」
ややぎこちない笑顔を浮かべると寝室に戻った。やっぱり疲れてるんだな。
「(なんかここ、2人で暮らすにしては配置とかおかしいな)」
「…………」
「コマちゃん?」
「…………」
「コマちゃん?」
「わふっ……」
「ああ、配置ね。ここは元々4人で住んでた場所だからな」
「(じゃあカガミ──さんと、さっきのレイトと、寝てるってやつと、あと誰かが?)」
「わふぅ……」
「いや、俺じゃない。寝てるやつでもない。三船くんと幼馴染3人だ」
「(その3人は? どっか行ったのか?)」
「わっふる」
「あー……」
三船くんだけの問題を俺が勝手に露呈させるなんてのは、果たして許されるのか。許されない気がする。
でもハシュアーお前鋭すぎるよ。なんなの配置で気付くって、それも鍛治師のチカラってやつ? それともイーヴァの加護?
「そこは三船くんにきいてくれ」
これは丸投げではない、はず。
センシティブな問題に関して他人が口を出したほうがいい場面っていうのは確かにあるけど、これはちと性質が違う。三船くん達とのコミュニケーションの中でやってくれ。
「(え、なんで教えてくんねえの)」
「わふん」
「三船くんのことを何でもかんでも俺が話していいわけじゃないの」
「(知ってるなら教えてくれてもいいのに……)」
三船くんの家に来ることはほぼ無い。大抵は俺の家に集まるからだ。
だけどこうしてじっくりと中を見ると、以前とは少し変わった気がする。机や椅子はそのままだけど、小物類や匂いが明らかに違う。
エッセンシャルな匂いだ。
植栽も増えた。
「……早すぎ」
シエルは若干不機嫌な様子で現れた。三船くんが起こしてくれたのかもしれない。しかしすでに昼前だ。
よほど疲れていたのだろう。
なんかすごい悪いことをした気分だ。
「(──うおあっ!?)」
ガタガタッとハシュアーが椅子から転げ落ちた。シエルの顔を見てビックリしているようだ。2人の顔が良すぎたのかもしれない。
「大丈夫か?」
「(あ、うん……ち、ちがうよな……?)」
「わふ」
なんかよく分かんないことを言い始めたので、もしかしたら存在しない記憶とかが脳内に浮かんでいるのかもしれない。2人は幼馴染だったみたいな。
まあどうでもいいや。
「いつもこんな寝てるのか?」
「流石にいつもはここまで寝ないですけど……最近の疲れが……」
「もしかしてモンスターと戦ったりした?」
「──はい」
「…………そうか」
「…………」
「……そうだな。そこらへんも関係する話だよ」
ハシュアーやアルスには事前に了解を得ている。俺が真に信頼している探索者であるなら事情を話してもいいと。それは協力を得るために必要な代価でもある。
イルヴァの牙、神が守る土地とそこを治めるドワーフ達。閉鎖された世界の鍛治師の子が地上へとその歩みを進めたこと。
そして、ハシュアーの口からも。
何故外に出たいと思ったのか。何ができるのか。何がしたいのか。どうなりたいのか。
俺がいつもやってることと一緒だ。
面接。
自分がパーティーを組むに値する人間であると主張させる。
これまで俺は一度たりとも面接を通したことがない。アリサは特別枠だけど、仮に知り合いでない状態で知り合ってパーティーを組む組まないの話になればあの子も面接で落としていただろう。
だけど、ハシュアーなら俺もパーティーを組むのは悪くないと思う。それくらいの逸材だ。今は鍛治師としての価値が勝っているけど、必ず大きな戦力になる。
「……」
ハシュアーの主張を聞き終えた三船君は、シエルと話し合う事もせずに難しい顔をしていた。シエルはシエルでカナヘビみたいな顔をしてハシュアーの顔を見ている。
君はどういう感情なんだい?
「──1つ聞いてもいいかな」
「(うん)」
「ハシュアーは僕たちとパーティーを組むことには賛成なの?」
「?」
「ほら──1人でやりたいとか、他のパーティーも見てみたいとか、そういうの無いの?」
「(…………わかんない)」
「僕は全然良いんだけど……」
「私も良いよ、使えそうだし」
「(く、口悪いなこいつ……)」
「コイツって言うな、ガキ」
「(んだと!)」
「わふん」
敢えて他のパーティーのことは択から抜いていたんだけど、そこに気付いてしまったか。あんまおすすめできるような奴がいないんだよなあ……3パーティーぐらい?
「(い、一応……見てみたいような気も……するかな?)」
「それなら僕も着いていくから、いろいろ聞いてみようよ」
「(え? …………いいの?)」
「うん。だってほら、納得できる人たちと一緒にやるのが一番いいでしょ?」
「(…………わかった)」
ドキドキ! 加入パーティーを探せ! の巻
が始まった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない