【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
行く場所といえば一つ。
探索者が恒常的に集まって、依頼を受注する重要拠点。一応俺も軽い付き添いで支部の入り口までは行ったけど、中には入らないことにした。俺が関わってるって思われると露骨に反応変わりそうだし。
……俺ももうちょっと人気があればなあ。
というわけで俺は用事があると言って一旦別れた後、フードを深く被って完璧な変装をした上でカウンター席を陣取った。コマちゃんは中に潜ませて、ハシュアーが何を話してるからわかるようにな。
我ながら惚れ惚れする変装の出来栄えに、思わずガッツポーズが出る。
──ハシュアーはまず登録から始めた。そもそも探索者として登録していなかったからな。段取り悪っ。
「あの人なに? なんか怖いんだけど……うちの探索者じゃないよね? 七緒ちゃんちょっと聞いてきてよ」
「嫌ですよ、あんな明らかな不審者。気持ち悪い」
「……ほっとこうか」
「そうしましょ。そのうち出ていくだろうしね、気持ち悪いし──あ、君がハシュアーくんね……はいじゃあここに書いてって」
書き終えると、講習を受けに行った。たまたまぴったりの時間にやってて良かったな。三船君達がそれに同行しようと思ったら金がかかるので、ハシュアーが1人で行くことになったっぽい。いつもだったら一応俺が着いて行くんだけど……ん?
今、名前とか記入してたけど……方目さんは読めるのか? いや、イルヴァの牙と同じことか? 俺が読めてないだけで普通に書いてるのか。
「──は?」
脳裏によぎった疑問にキレそうになった。
ドワーフとヒューマンの使う言語って同じなの?
どういうこと? それって何で?
「うわっ、なんか怒ってる?」
「ブツブツ言ってるよ……給仕は男の人に任せようか」
「そうですね……」
意味がわからなさすぎてキレそうだったけど、三船君達がその間に絡まれていた。
「よっ! レイトくん!」
「あ、ど、どうも……」
「シエルちゃんも!」
「…………」
初級探索者のうちの1人──顔しか知らない──が話しかけていた。初級でも、たいていは今の2人よりもレベルが高い。万が一何かしようものなら叩きのめそう。
そんな俺の勘繰りは無意味で、会話ベースで進んでいく。
「この前オススメした店、どうだった?」
「えと、美味しかったです」
「だろ? 今度一緒に行かね?」
「う、うーん……ごめんなさい、シエルちゃんがちょっと……やめときます」
「シエルちゃん、ダメぇ?」
シエルは常に三船くんの背後からソイツの事を睨み続けていた。意外と愛想良さげな男だが、シエルはお気に召さなかったらしい。
「ちぇーっ、じゃあ三船君だけでもいかない?」
「ダメ」
「ええー!」
「あはは……」
「じゃあうちのテーブルで一杯だけでも飲もうぜ?」
「ダメ」
「ごめんなさい、シエルちゃん疲れてるみたいで……」
「はぁー……わかった、じゃあまた今度な」
「あ、はい」
ソイツだけで終わりかと思えば、後から後からやってくる。
「ねえレイト君、やっぱウチに来ない? 人たりてないんだよねー」
「あはは……」
「シエルちゃんも一緒でいいからさ」
「……とりあえず僕たちだけで頑張りたいんです」
「でも2人じゃそのうちキツくなるよ?」
「…………」
「みんな言ってるじゃん、アイツはおかしいから真似しちゃダメなんだって」
あれ、なんか風向き違くない?
「それに、うちなら色々教えてあげられるよ?」
「いつかはそうなるかもしれないですけど……でも、せめて今は僕たち2人だけでやらせてください」
「……欲しいなあ」
「え」
舌舐めずりをした女子。
捕食者の目をしている。
ともかくこんな感じで結構くる。
驚きだ。
探索者ってこんなに積極的なの? 俺が挨拶しても全然返さないのに?
源さんとディーンくらいだよ挨拶ちゃんと返してくれるの。
「じーっと見てるよアレ」
「はい、レイトさん達のことですね」
「もしかしたら誘拐とか狙ってるのかな」
「! ……じゃ、じゃあ止めなきゃ!」
「私たちじゃ何にもできないでしょ……」
「とりあえず、2人が何かないように気をつけなきゃ……!」
「そうだね…………もう、こんな時にいないなんて何してるのかな? カガミくんは」
例の葵ちゃん──方目さんの後輩の受付嬢は、今日もトテトテと頑張っているようだ。若干の視線を感じるけど、もしかしたら俺だってことに気づいているのかもしれない。
「(疲れた……)」
疲れ顔のハシュアーが講習から戻ってきて、ようやく状況開始だ。三船くん達もさりげなくそばに寄っている。
ドキドキしながらハシュアー達が探索者パーティーに話しかけるのを待つ。最初に向かったのは比較的体格の良い男──確かブレンとか言ったかな──がリーダーを務めるパーティーだ。パーティー名は大地の守護者。
パーティーレベル40半ばくらいなので結構やる奴らだ。このセクターでは上位に入る。4人で組んでいるメリットを存分に活かしているタイプの探索者だったと覚えている。俺は接点無い。なにせ少し前までレベル30前くらいだったからな、向こうからして絡むメリットが無い。
そんな相手に、俺よりもレベルが低いハシュアーが……あいつレベル幾つだ? そういえば知らない。ドワーフだから測ったことなんてないだろうし、なんて答えるんだ? やっべえ! もっと早くその話するべきだった! 登録の時にも測ってなかったし! あれ測るの任意なんだよな……
でもアレだよな! 自然とその話題は出るはずだし、勝手にやってくれるよな!
……お、話しかけた!
「(お、俺、ハシュアーって言います! パーティーに入れてもらえませんか!)」
「……は?」
すごい直球だ……! でもアレくらい真っ直ぐの方がワンチャンあったりするのか!?
「……ブハッ、ハハハハハハ! ええ!? マジで言ってんの!? このチビを!?」
「(んなっ……!?)」
「マジで? お前何ちゃい? 6ちゃいぐらい?」
「(んがっ……じゅ、じゅうさんだよ!)」
「いやいや、そんなわけねえじゃん。流石にわかるって…………お前、ママはどこだ? ……おいカガリ、まさかお前の子供か?」
「ぶっころすぞ」
「──あ、もしかしてシエルちゃん達の弟か? 2人が入ってくれるなら良いぜ」
「(あの2人は関係ねえ!)」
「とにかくさ、暇じゃねんだわ」
「(さ、酒呑んでるだけじゃん!)」
「そうだよ? 知らん坊ちゃんよりも酒の方が大事なの、良いから帰りな。お兄ちゃん達が待ってるぜ」
「(はあ!? …………ぐぐぐ)」
うおっほ……案の定、追い払われてら。まあ初見だと分かんねえよなあ……鍛治師ってことは伏せるように言い含めてるから仕方ないとはいえ、とりつく島もねえ。
でも、鍛治師だなんて宣伝したら普通に誘拐されるからな。それか、奴隷としてパーティーに加えられる可能性がある。
そこのリスクも一緒に伝えておいた。
守ってくれておいちゃん嬉しいよ。
「(っ……!)」
顔真っ赤で次へ歩き出した。
向かったのは3人組の女探索者達。
そこ選ぶ?
子供だから、まだ女だらけに混ざる気まずさとか理解してないのかね。三船君とシエルはそれでも律儀に着いていく。少し離れた後ろをゆっくりと、ハシュアーが3人組に話しかけても黙って見ている。
「──なに?」
本当はわかっているだろうにわざわざ尋ねるあたり、すでに拒絶感が出ている。
「(お、俺はハシュアーってんだ! 入れるパーティーを探してる!)」
へー、直球だわやっぱり。
そういう性格なんだ。
あの真っ直ぐさに俺は負けた。
「ふーん……レベルは?」
「(え?)」
「わかる? レ、べ、ル」
「(レベル……わからない)」
「私たちもさ、暇じゃないのよ。冷やかしならよそでやって」
「(ひ、ひやかしじゃ──)」
「レベルも分からないのに冷やかしじゃないとかないでしょ。自分のレベルも知らないなんて、そんな探索者いないからね?」
「…………」
予想していた通りに仕切り直しが起きた。ハシュアーもレベルが分からないということの不便さというかデメリットを理解したようだ。受付に行って方目さんにレベルの測定を頼んでいる。
「じゃあ、ここに記入してね」
「(はい)」
スラスラと書いていくハシュアーを見ていたら、方目さんがこちらを向いた。一応手を挙げて挨拶をしておく。ここにいるよー^^
「うわっ、なんか手あげてる」
「ちょっと、見ちゃダメだって。絡まれたら大変だよ? 助けらんないかもしれないんだから」
「そ、そうですね……気を付けます」
忙しいのか、反応はなしにそそくさと書類をまとめ始めた。こうして見ると受付嬢ってやっぱり大変だよなあ。窓口応対と書類のどっちもやってるんだから。タスク自体の難易度は全然高くないし、何なら低いだろうけど相手してるのが人格者じゃないからな。変な奴に絡まれてるところもよく見るし。
「まだこっち見てるよ……!」
「どうしよう……」
「アオイちゃん、尾けられないように今日はこっそり帰ろっか」
「はい……」
すっげえ不安そうな顔してるんだけど、ハシュアーのレベルそんなにやばいの? 少しくらい手伝ってから来た方が良かったのかしら。
「(レベル7か……)」
「何でもない13歳にしては高いね」
「(ありがとうございます)」
「ううん、頑張ってね〜」
別に変なことはなかった。
魔素を含んだ鉱石なんかをトンカンしてると魔素が飛び散るものなのかもしれない。普通のヒューマンに比べたらよほど高い。一般人だとレベル10に到達しないまま死ぬからな。
「(レベル7!)」
「あっはは! そうなんだ! ……でもまあ、私たちのパーティーに入ろうと思ったらその──あれ、何倍だろ」
「10倍くらいじゃない?」
「そうね、それくらいになってから出直してね〜」
「(そ、そんな無茶苦茶な!)」
「そう思うなら入らなきゃ良いじゃない」
あれは確か男嫌いなことで有名なパーティだ。パーティーレベルは確か30ちょい。個人のレベルはもう少し低いだろう。つまり、10倍なんてトンチキなレベルは必要ない。まあ、なにがあっても入れないよってポーズだな。
「(レベル以外でなんかないの!? 条件!)」
「うるさいなあ……まあ、レベルが低くても実績があれば良いでしょ」
「………」
「何もないでしょ?」
「(す、すぐに作れる!)」
「そっ、じゃあ作ってから来て」
しかしまだ折れない。3パーティ目はディーンのパーティーだ。ディーンは4人パーティーのリーダーを務めている。男1人女3人で、非常に羨ましくない人員構成のパーティーだ。日々、パーティー内の不和を取り除くためにあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。
「話は聞いてた。ウチには要らない」
「(…………なんで?)」
「単純にレベルが低すぎる。俺たちはレベル20くらいのモンスターとメインで戦ってるのに、レベル7のやつが入ってきたら単純に足手纏いになるだけだ」
「(俺は──)」
「俺ならできる、なんて言うなよ? 無理だから言ってんだ」
「…………」
アイツは比較的理性がある。冗談抜きに、探索者連中は理性がどっかに飛んでったような振る舞いしてることの方が多いからな。割とマトモだぜ。
しかしこの少年、心が強い!
ディーンをまっすぐに見つめ返すと、再び口を開いた。
「(俺はすぐに強くなるぞ? それでも?)」
「それでもだよ。そもそもうちのパーティーにはこれ以上、役割が残ってないんだ」
「(役割?)」
「そこら辺は……あの人に聞け」
「(あの人?)」
「そっちの2人がいるってことは、そういうことだろ」
「(……)」
キラーパスはやめてくれ。俺は近接とか遠距離とかの役割分担に全然詳しくないんだ。無理やり理屈をつけることはできるけど、あまり健全じゃない。そういうのは高い金を払って講習で学ぶべき内容だ。
「とにかく、他を当たってくれ」
ハシュアーは全く折れずにパーティーを探し続けた。
心が強え……!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない