【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
この世界には、ドラゴンにまつわる様々な逸話がある。そして、同じようにドラゴンにまつわる地名や地形も存在する。竜の谷、竜の家、竜の巣など、ドラゴンが群生している場所は特にこういう名前がつけられやすい。
もちろんダンジョンとして扱われるが、厳密にはダンジョンではない事もある。
やつら、翼を持っているからどこにでも飛んでいける。つまり発生した場所が野外のダンジョンだった場合は、別の住み良い場所に向かう事もできるのだ。
できるというか、そうしているドラゴンは多い。それが、通常のモンスターと大きく違う生態を可能にしていた。
そうして住み着いた場所は、自然発生的なダンジョンとは違う半人工的なダンジョンと化す。
「やるんだね、加賀美くん」
「はい」
「いやー感慨深いね! まさかこんな早くになんて!」
「あんまり深くないという事でしょうか」
「ええ? あはは! そうかも!」
呆れた人だ。
「でもさ、やっぱりこう……ワクワクしてくるよね! ドラゴンに挑む人ってここら辺だとあんまりいないからさ」
「それは確かに」
探索者は社会的に身分が低いという話はさておき、俺たちにも俺たちなりの名誉はある。その中で最も分かりやすいのがドラゴンの討伐だ。
「加賀美くんもいつか挑戦するんだろうなあって思ってたけど、まさかこんな早いなんて! 20歳未満での挑戦者が出るのはウチとしても非常に鼻が高い事です!」
「俺もここまで前倒しになるなんてのは予定に無いですね」
「怖いとかないの?」
「怖い怖くないで言えば断然怖いですよ」
「そうなの?」
怖くなきゃ対策しないし武器も持たないし身体も鍛えない。
「あー……でもほら、加賀美くんってそういう感情ないのかなーって」
「痛いのはイヤですから」
そしてドラゴンと戦うやつがいるとなれば、普段は他の探索者が何をするのかなど気にもしない探索者連中も『おっ?』となる。視線が集中したのを感じた。
この前は良くない視線だったけど、今回は何となく感心したような視線も混じっている。
その中で近付いてきたのは一つだけだった。
「…………よっ」
「ようディーン!」
「うるさ……」
「おい戻んなよ!」
ドラゴンという事で、あのディーンさんも励ましに来てくれたらしい。嬉しいけど愛想が無い。
「あんた、マジで1人でやんのか?」
「何がなんでも1人でやりてえ! ──なんて思ってるわけじゃないぞ? 例の如くだけどダメだったってだけだ」
レベルが上がって以降、俺の面接は以前にも増してグダグダだ。探索者ってのはぶっちゃけ見た目じゃレベルがわからん。だから本来なら商工会にその探索者のレベルを聞いて判断するのが一番なんだけど……
「美味い汁を吸いたいやつが多すぎる」
「そりゃなあ……俺も吸えるなら吸いてえよ」
「俺も吸いてえよ」
誰かが牛を完全放牧できる方法を開発してくれれば後乗りするだけで俺の人生は完了だ。
だけど、世の中そう簡単にはいかない。俺の元にやってくるのは技術者でも研究者でもなく探索者だ。偏差値でいえば確実に50は切ってる奴らの集まり。
頭を回すにしても小狡いことしか考えやがらねえ。俺が1人で探索者をやってるもんだから、寂しいだろうとか、2人ならもっといろんなことができるようになるとか、異能すら持ってないやつがそんなことを宣う。
俺が目指しているのは探索者としての高みじゃない。そこを伝えてもピンとこないのかあまり理解してもらえないし、理解したふりをしているだけな奴も多い。
「面接とかやめてさあ、あの2人と組めばいいじゃん」
「無理だ」
「じゃあ、あのチビは?」
「ハシュアーは……目的が違う。あとチビって呼ぶのやめろ」
「依頼をこなすだけならできんだろ?」
「今は無理だ」
「得意じゃん、そういうの。とりあえず一緒にやってみるやつ」
お気楽なもんだ。こっちは色々とバランスを考えて生きているというのに、こいつは女といかに上手くやるかだけ考えてりゃいいんだから。
「今回はドラゴンの討伐だからそういう余裕ねえんだよ」
「…………」
ディーンはドラゴンが大好きだ。
昔はドラゴンを飼いたいなんてことを思ってたらしい。元々は良いとこの御曹司をやってたそうだから、そういうバカみたいなことを考える余裕があったんだろう。でも家族が色々と酷い目にあって、結果として会社が潰れた。本人も相当キツかったようだ。
それでもここまで──つってもまだパーティーレベルも20だからギリギリ3級の始まりみたいな所だけど、だからって頑張ってないわけじゃない。
「まあ、俺の良い報告を楽しみに待っててくれや」
「ふんっ」
「よろしくやりながらな」
「ざけっ…………ははっ」
盛り上がりかけて抑えると、テーブルにいる仲間に手を振る。そんな細かい芸も必要なんだねえ、楽しそうでなによりだよ。
──────
「やっとでーい」
「わふっ」
第100セクターよりもさらに孤立した地帯。出発した中継地点のセクターから数百kmは歩いたのではというような遠さ。まだ完全に冬季が過ぎ去っていないため、当然のように雪道だ。そろそろ終わりだとは思うんですけどね。
2週間弱で来ることができたのは探索者の超人的な力ありきだ。
身体は臭い。
戦闘もいくつか経た。
盗賊がいるとは思わなかった。
こんな寒い中じゃなくて雪が溶けてから行くのはどうかと母さんには言われたけど、そこら辺は素人だな。八季を構成し冬に続く四季は、探索者にとって全く追い風にならない。そこを待つとしたら一年間待って次の春が来るのまで待たないといけない。それなら、寒さで多少は動きが鈍っているであろう今行くのが良い。
心配は嬉しいけど、プロに任せてちょ。
ちなみに、寒さでドラゴンの動きが鈍るという実証結果はどこにも無い。トカゲがベースの生き物として空想されているからそうなんじゃないかという俺の妄想ありきだ。
「…………荒れてんな」
かつては人の住むセクターがあった場所だけど、今はもう廃墟しか残っていない。人工物とは、人が管理しなければこうも容易く崩れ去ってしまうのだと改めて思い知らされるような有様だ。
しかし自然的な崩壊では無い。半壊した家を『そうした』と思しき巨大な爪痕や、転がっている列車に残る焦げ。元々は綺麗に均されていたであろう地面も風雨風雪に晒されており、緑の侵食ももう少しで中心部に届こうかというところだ。
「すんすん」
静かに隣を歩くコマちゃんは、先ほどから周囲の匂いを嗅いでいる。俺の匂いはどうなのかと聞けば、いつもと大差ないそうだ。
正直傷つく。
そういうのには敏感なんだって。
──コマちゃんの先導を頼りに安全な場所を探す。ここは竜の生息地に近いセクター。かつては製鋼所を作ろうと発展を続けていたこの街は、突然やってきたドラゴンの群れによって滅ぼされた。何故ドラゴンがやってきたのかの理由はわかっていない。
しかもドラゴン達はこの街にいた人間や建物を破壊すると、この場所には留まることなく近くの谷へと落ち着いた。レベル75を超える主を含めたドラゴンたちの住処であるその場所は竜の谷と呼ばれている。
ドラゴンの群生地隊の中では最も難易度が低く、外へと出る個体も多いため討伐には向いている場所だ。
しかし、いかんせん距離がある。
竜の住む場所というのは、人の住む場所から離れているのだ。というよりも、竜が住む場所から自然と人が離れていくというべきか。
一級探索者を動かせば良いと思うかもしれないが、ドラゴンの群れを滅ぼすことによる2次的なダンジョン化が予想されて手が打てないらしい。
「──」
サクサクと進む探索。
コマちゃんは匂いに従って歩くだけ。
それだけで、お目当ての場所に辿り着いた。
「わふ」
廃墟だったのだろう。周囲を壁に囲まれており、上は雪の中でも枯れぬ木の樹幹が覆い隠してくれていた。おかげで若干の薄暗さはあるけど、隙間から十分に光は入ってきているので行動に困ることはない。テントを張るのに最適の場所だった。
しかし、やはり雪に埋もれているので整地作業に入る。こういう時も俺の魔剣は役に立ってくれるんだ。黒焔が禍々しく雪を焼いて溶かしてくれる。可燃性ではないはずの雪すら燃やす不思議な炎──よく分からんが、使えるならヨシ!
「すっげえなこれ、俺たちのために作られたってくらいの場所だ」
「わふ」
「ここでいいよな」
「わふっ」
他にも誰かが活動していた痕跡が残されていた。そこを起点に場所を取り、テントを建てていく。
『────ォォォ』
「!」
「……!」
唐突に、遠くからやってきた音が空を駆け抜けていった。
俺が聞いたことのない異様な音。低く唸るような質で、汽笛を思わせた。ただ、もっと生物的で柔らかい音だ。
それと同時に本能的な恐怖を呼び覚まさせる。
コマちゃんも即座に戦闘モードに切り替わっていた。
戦意も敵意も感じられないにも関わらずこの圧力。
しかも呼応するように次々と音がやってくる。
「……」
「……」
1人と1匹は、空を見上げて固まっていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない