【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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161_その心、笑ってるね!?

 

「なんたってこう、ここは霧だらけなんだ……」

 

 起きて頂上部に戻ると、昨夜に比べて寒さはそこまでだった。これは霧による保温効果なのかもしれない。風も流れていないし、雨の気配も今のところない。

 

『────』

 

「あ?」

 

 二度目の何かを感じた。高山病による幻聴などではなくて、間違いなく俺の体は何かを感じている。よく分からない何かだということしかわからないけど、コマちゃんは無視して問題ないと言っていた。なぜもっと真面目にやってくれないのか。もしかしたら飼い主の命の危機かもしれないんですよ!? 

 などと言っていても仕方ない。

 

「薄いな」

 

 濃霧とまではいかない霧がうっすらと立ち込めて、シトシトとした感触を肌に感じる。方向さえわかれば天候はあまり気にならない──が、ここにきてコマちゃんも分からなくなってしまったらしい。この霧も幻惑の性質を保有しているのかと聞けばそんなことはないという。

 

「わふ」

 

「でもさあ……おかしくね? 俺がいくら準備不足情報種集不足っつっても、そこらへんの探索者よりはちゃんと情報集めてる自信あるぞ?」

 

 いくら探索者の気質がアレだとしても、ドラゴン討伐にくるレベルの探索者であれば人間としての性能はある程度担保されている。それは言葉遣いや態度などという社会的なものではなく、個人としての能力に限った話だ。

 探索者の中でもそういう才能の差ってやつが現れる。

 

 ──むしろ、探索者は他の職業に比べて残酷なほどはっきりと才能の有無が影響してくるかもしれない。例えば異能をどれだけ手に入れられるかというのは思い切りそいつの素質に依存している。

 俺は才能のあるナシに関して、どちらかといえば…………どちらかと言えば! 

 才能は無い。

 

 ということで才能はとても大事なわけだけど、才能だけじゃやっていけないのが探索者でもある。求められるもののうちの一つが、さっきも言った通り情報収集能力。

 ものすごく極端な例を挙げると、ドラゴンは炎を噴くことが有名だ。じゃあどんな対策が挙げられるかって言ったら、炎に耐性のある防具を身にまとうとか、バリアみたいな異能がある探索者と一緒にやる、みたいに対応策を立てていく必要がある。

 

 そこで必要なのが情報収集だ。

 そもそも今回の依頼では何が必要なのか。何が対象なのか。どこでやるのか。そこらへん諸々を考えた上でやらないと、達成できるものも達成できなくなってしまう。

 上の方に行くにつれて──とかそういう話じゃない。

 推奨レベルが低かろうが高かろうが、そこはきちんとしないと命に関わるのだ。

 

 その筈なんだけど……想定以上に軽視されがちなんだなこれが。だから3級の探索者はポンポン死ぬし、2級も調子に乗って死ぬ。三船くんだって、ダンジョンを舐めるような人間じゃなかった……んだろうけど、それでも身内が全滅している。コウキさんだってディーンだって、みんな誰かを失ってきた。

 

 翻って俺はどうだ。

 元々がソロ。

 コマちゃんが一緒に来るようになってからは厳密にはソロじゃ無いかもしれないけど、どんな状況でもある程度は対応できる自信がある。前世で培った知性がこの世界でもかろうじて生きていて本当によかった三股に関しては御免なさい。

 それで、そんな俺でも今回の件に関しては本当に予定外。ちんぷんかんぷんのわけわからんっちゃ──こんなことはあってはならない。ネタとかじゃなくて、本当にそんな事では探索者としてやっていけないはずなんだ。

 

「時間が無かったっつっても、割と調べてはいるんだけどな……もしかして古い情報だったのか? いや、竜の谷に行くやつなんてごまんといるだろうし、意味わかんねえ……」

 

「わふ」

 

 最近のイレギュラーの連続具合は異常だ。三船くんとの出会いに始まり、シエル、記憶喪失、鍛治師の国と続いている。しかも一年内に。

 

「ばふ」

 

「え? いやいや、そんな流石に……」

 

「ばふっ」

 

「本当に? …………いやあまさか!」

 

「…………」

 

 たまたまそういう出来事に出くわすタイミングが重なっただけで、前から大して変わらないそうだ。いやあ……流石にそれは無いな。レベルが一気に上がるなんて、俺の人生でもうなどと起こらないだろうし。

 ただ、次に高難度の何かしらに挑むときは下調べをきちんとやろう。

 

「まあ、一旦俺のことは置いておくとして──どこに進むかな……昨日まではこっち方向に進路を置いていた筈だから、一応こっちに進むか」

 

 霧で道が見えなくなった! じゃあ昨日までの道とは違う方向に進んでみよう! とはならないので、当然進路は昨日と同じだ。

 30m先くらいは見えるのでオブジェクトの位置でわかる。

 

『──』

 

「っ……またか」

 

「…………」

 

 やっぱり高山病かもしれない。

 

 

 ──────

 

 

「──なあ、なんか強くなってるよなあ!」

 

「ワフッ……」

 

「やっぱ強えよなあ!!」

 

「ワウッ……」

 

 出発してすぐに猛烈な暴風雨が吹き荒れ始めた。こんな季節に台風なんて来ないのに、季節外れにも程があるぞ! 

 あまりの風でコマちゃんも狛犬モードになっていた。スコティッシュテリアの姿だと身体が小さすぎて風に飛ばされそうだったから、早い段階で変身している。しかも、風も雨も時間が経つごとにどんどん強くなっていく。これほどのものは前世含めて体験したことがない。地面にナイフを突き立てながらじゃないと身体が浮かされてしまう。

 

「あの穴に入るぞ!!」

 

「……」

 

 夜と同じく、一段下がって避難しようとした。急いで穴に駆け寄って下を覗き込む。

 

「……だめだ」

 

 あまりの降水量で穴の中は深さ30cmほどのプールにっていた。これでは避難どころじゃない。上でこれなら、下はもっと酷いことになっているに違いない。

 

「進むぞ!」

 

 先へ進んで、うまいこと水が入っていない穴を探すことにした。悪天候時に進むのは本来やめたいんだけど、これは仕方ない。

 

「ここもダメか……!」

 

 進んでも進んでも穴はダメになっていた。体力的にも体温的にも俺たちの肉体ならば耐えられる。だけど、耐えられるだけではいずれ尽きる。

 しかも──

 

「くるぞっ!」

 

 白い稲妻が空を駆け、俺たち目掛けて降り注いだ。

 

「ぐぬうううっ!」

 

 魔剣は意味ない。雷を斬るとかいう力は無いし、むしろ振り上げた分だけ雷がやってくるだろう。

 代わりに鎧が雷を受けた。

 驚くことに、雷は高い各種耐性を持つ俺の鎧を微妙に貫通してくるだけでなく、衝撃が俺の体にのしかかってきた。人間の体を浮かせるほどの暴風雨を発生させる雲の中では一体どれだけの電圧が溜まっているのだろうか。

 

「こ、こいつは結構やべえかも……」

 

 ダメージは大したことない。

 だけど、ダメージが発生するということは大問題だった。俺たちはモンスターと戦うことはできるけど自然と戦うことはできない。空に対して剣を全力で振ったところで風圧が届くのはせいぜい十数m。

 無駄に体力を消費する気はないので、そんなことはしない。

 

『────』

 

「こっちか……!」

 

 かつてないほど、スピリチュアルな衝動に身を任せていた。コマちゃんの先導はもはや無い。何かに呼ばれているような気がしてその方向へと度々進路を変えるという事を何度か繰り返している。

 それでもコマちゃんは文句を言わず着いてきてくれた。だからとにかく、早く休める場所を見つけたかった。

 

 ──だけど、雨はどんどん激しくなっていく。もはや打ち付ける雨の一粒一粒が弾丸のような威力、ひっきりなしに音を弾けさせる雨滴は、狛犬モードコマちゃんの体にも当然のように当たっている。

 

「コマちゃん、こっちおいで」

 

「…………」

 

 体調があまり良くなさそうなのをひしひしと感じたので、コマちゃんを服の中に隠す。外套型の鎧を着ている俺は、中までは濡れていないので避難所にぴったりだった。

 

「無理すんなよ」

 

「くぅん」

 

 コマちゃんが弱っているのを見たのはこれで二度目だ。出会ったばかりの頃にいきなり弱ってしまって、死ぬんじゃ無いかと思ったことがあったのを思い出す。

 

「ほら、これでも食べながら落ち着いてな」

 

「くぅん」

 

 ジャーキーを渡すと、ちまちまと噛みながらへたっている。好きなものを食べる余裕はあるようだ。

 しかし、こうしている間にも風雨は強いままだ。いつまで経っても止む気配のないそれらを悠長に眺めていられるほど気楽ではなかった。

 

『────』

 

「だから……なんだってんだよ」

 

 俺は異能を有していない。空を飛んだり火を噴いたり、他人の思考を読んだりすることはできない。だから、こういう体験は初めてだ。

 モヤモヤとした何かが耳に届いているような、思考の一部を邪魔されているような奇妙な感覚。

 害意も敵意もなくても、常に誰かにそばで囁かれている感覚というのはとても気分が悪い。数回だけなら気のせいで済ませたけど──ここまで来ると、そして明らかな意図を感じると無視はできなかった。

 

「ハッキリしろ! 誰だ!」

 

 用件があるなら手短に、そして明確に。

 こちとら頼りのコマちゃんがダウンしてるし異常気象に見舞われるしで大変なんだ。あまり構っている時間はない。

 

『────』

 

「人様の頭を覗くなら、せめて挨拶くらいしたらどうだ! ママに教えてもらわなかったのか!? 耳がゾワゾワして気持ち悪いんだよ! というか異能者だよな!?」

 

『────』

 

「ああ、そうか! その気なんだな! あくまで邪魔をしようというんだな!? あったまきた! 待ってろ! 竜の谷より先にお前の場所を突き止めてやる!」

 

 臨場感たっぷりの無音ASMRを強制的に体験させられるのはうんざりだ。直接乗り込んで文句の一つでも言ってやらないと腹の虫が治らない。

 

「お前はどこにいる!」

 

『────』

 

「……こっちだな!」

 

 先ほどよりも一層強く、導きの感覚が強くなった。どうやら相手は俺を呼び込むことが目的でもあるようだ。それならその思惑に乗ってやろうじゃないか。こんな秘境の果てみたいな場所にいるのがどんな異常な相手なのか、この目で見てやろうではないか。

 

「待ってろ! お前を必ず見つけ出す! そして説教24時間だ!」

 

 俺の体力なら無駄じゃない! 有る事無い事、世の中への不満を全部ぶちまけてストレス発散してやる! 

 

「逃げるんじゃないぞ! お前のレベルがいくつか知らんし、どこの誰様なのかも知らん! だが! コソコソと人様に迷惑をかけるなんてのが許されると思うなよ! 人間社会ってのは相互の信頼があって初めて成り立つものだって事をごめんなさいするまで──」

 

『────』

 

 今のは分かったぞ! 

 笑っただろ! 

 人様の脳に直接笑いかけて来るな! 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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