【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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27_あの時、あなたは

 昔の夢を見た。

 

『アキは、どんな大人になりたい?』

 

『……大人かあ』

 

『うん、大人』

 

『大人になる……うーん……やっぱり子供のままのほうが楽だなあ』

 

『大人になりたくないの?』

 

『ミツキこそ、なんで大人になりたいんだ?』

 

『だって、大人になればみんな揶揄わないでしょ』

 

『髪のこと?』

 

『…………うん』

 

『あんまり好きじゃないのか?』

 

『うん』

 

『素敵な髪じゃないか。日毎に色が変わるなんて、オーロラみたいだ』

 

『ほんと?』

 

『──ああ、とても綺麗だ』

 

『…………? ……ありがと』

 

 何か違和感を感じた気がする。

 あの時、私は何を思ったんだったかな。

 アキは、どんな顔をしていたのかな。

 お日様が照っていたから、逆光でよく見えなかったんだったかな。

 

「──また、1人……」

 

 アキの部屋なのに、アキがいない。

 目を覚ました時には既に。

 ニュースを見ればわかる。

 

『祈りましょう』

 

 キャスターが口にしたのは、あまりにも不確かな言葉。

 ただ、手を組んでいる。

 

 この世界と切って切れない存在。

 直径2万kmの星に巣食う、体長わずか2kmのモンスター。

 お父さんは言っていた。

 

 格がちがう。

 

 百年間、ついぞ人類が討滅することができなかった。

 預言の書と崇められる、古い宗教の文書に記された獣。

 

「第一期の世界、かあ……」

 

 神様がいない世界。

 モンスターがいない世界。

 魔素の無い世界。

 私の髪が、普通の世界。

 そして──

 

「焼肉……牛が普通の世界……」

 

 頑なに、焼肉だけに執着する。

 焼肉のどこがアキをあそこまで寄せ付けるのか。

 牛の肉なんて、モンスターの肉と大差無い。

 食べたこともないくせに、何が良いのか。

 

『お近くのシェルターに避難して下さい』

 

 当然、避難しない。

 アキが帰ってきた時に誰もいなかったら寂しいから。

 お母さんには連絡だけしておいた。

 あんまり迷惑かけないようにって、いつ私が迷惑かけたのか言って欲しい。

 アキは私のすることなら何でも全肯定なんだから。

 

「んふぅー……すぅー……」

 

 枕に顔を埋めると、アキの匂いで鼻腔が満たされる。

 いつも隣にいるからどんな匂いかは知り尽くしているけど、特に寝室はアキ成分が濃い。

 1人きりでいる時の特権。

 

「さびしいなー」

 

 ボフボフと枕を殴る。

 幼馴染を1人放って外に出るインポ野郎の枕なんて、ボロボロにしてやる。

 

「……お腹すいた」

 

 アキが家にいれば、ハイハイなんて言いながら全部やってくれるのになー。

 服も持ってきてくれるし、ご飯も作ってくれるし、髪もすいてくれる。

 

「ちぇー……………………すぅ」

 

 いつのまにか二度寝していた私を起こしたのは、乱雑な衝撃。

 ガスガスと腰に走る衝撃は、絶対にアキが原因では無い。

 もしかして強盗が、と身を固くした。

 私はか弱い女の子で、乱暴されたら抵抗なんて──

 

「何、してん、だよ、起きろ、ヒロ、さんの、ベッド、だぞ」

 

 スンッと表情筋から力が抜けるのがわかった。

 襲撃者に顔を向ける。

 衝撃がやんだ。

 

「なんでいるの」

 

「ヒロさんに誘われたからだけど」

 

「──ミツキ、お前こんな時間まで寝てたのか」

 

 ひょっこりと顔を出したアキ。

 完全に呆れ顔で、心臓が大きく鳴った。

 今、私は枕に顔を埋めている。

 いつもはコッソリと楽しんでいたのに、寝ちゃったのは完全に失敗だった。

 

「う、うん……ちょっと疲れてたのかも」

 

「……本当か?」

 

 ずんずんと近づいてくる姿に一切の躊躇は無い。

 純粋に心配してくれている。

 何だか心が痛いような気もするけど、顔をじっと見つめられてそれどころじゃないよぉ。

 

「……お腹減ってないか?」

 

「うん、ご飯作って」

 

「分かった」

 

 台所に向かったアキの背を、アリサちゃんが追いかけた。

 

「ヒ〜ロさん、一緒に作りましょ!」

 

「おっ! 手伝ってくれるのか!」

 

「っす!」

 

「じゃあ冷蔵庫からペッチーズ取って」

 

「っす!」

 

 わ、わたしも手伝わなきゃ……! 

 

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