【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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170_でもそれってさあ、俺にメリットがないよね

 

 お風呂も済ませてさあ寝ようという段階になって、外に誘われた。その顔はどこか緊張しているように見えて、真面目な雰囲気に若干引き込まれる。立ち止まった彼女は、振り返ると口を開いた。

 

『アキヒロ』

 

「うん」

 

『あなたは、自分のことを探索者だと言ってましたね?』

 

「はい」

 

『ドラゴンを狩りにきた、と』

 

「そう、だな」

 

『なら……私たちは戦わなければならないのでしょうか?』

 

「…………」

 

『私たちを殺したいと思っていますか?』

 

「それは──卑怯だな」

 

『分かってます。でも……教えて欲しいんです』

 

「…………俺は、こういう時の言葉にはあまり意味が無いと信じてる。その上で言うのであれば──戦う意思はないよ」

 

「探索者なのに?」

 

「確かに俺が普通の探索者だったら、君と出会ったとしてもドラゴンを討伐してたかもね」

 

 というか、彼女と出会った時点でもっと酷いことになっていたかもしれない。かもかもで全部俺の推測だけど、今まで生きてきて探索者の人格が優れてるなんて思ったことは一度しかない。

 三船くんだけだ。

 だから実力の話は置いといて、たどり着けるとしたら三船くんか俺かみたいな? 

 

 探索者が義理人情を持ち合わせているというところは確かに認められる。ただ同時に、義理人情と人格は全くもって関係ない。

 例えば源さんも義理人情はあるけど、酒浸りで方目さんや角田さんにセクハラしてばかりだし、ディーンもパーティー内で大変そうにしているけど、前はもっと傍若無人だった。

 

「でもほら、俺って普通じゃないだろ?」

 

『はい』

 

「…………まぁそういうわけだから」

 

 肯定されるとそれはそれでなんかな。

 

『どうしてアキヒロは普通じゃないんですか?』

 

「そりゃあ良い両親の元に生まれたからだよ」

 

『良いお父様とお母様……それなら納得です』

 

「俺の親は遠いところに住んでるけど……君のお父様はどこに?」

 

『お父様は今、巣篭もり中なんです』

 

「巣篭もり? 冬眠?」

 

『次の番を見つけたので』

 

「あ、そう……」

 

 すごい複雑……ちょうど子育て中ってこと? 挨拶くらいしていこうかなあって考えてたけど、それなら逆にスルーした方がいいのかしら。

 確かにメスが死んだら新しいのを探すって自然界の話なら浮気じゃないんだろうけど、なんかすごい微妙な気分になる。彼女が人型なせいだな。

 

『新しい子供が待ち遠しいですね!』

 

「ソウダネー」

 

『……安心しました』

 

「なにが?」

 

『あなたと殺し合いにならなかったことに、です。一緒にいて楽しかったので、できるなら仲良くしたかった』

 

「うん」

 

『さて……ベッドに入ります!』

 

「あ、はい」

 

 彼女はウキウキだった。昨日も一昨日も、早く出来ないかとソワソワしていたからな。

 そそくさと中に戻り、ダイブ。

 木材は彼女の体重をしっかりと支え、黄金製の釘もブレをしっかりと吸収してくれた。そのうち曲がっていくだろうけど、そうなったらまた作り直せばええんや! お爺様の黄金を操る異能があればいくらでも作れる! 

 

『っはあああ……ふふふ……』

 

『…………ブン』

 

『お爺様、作るのを手伝ってくださってありがとうございました』

 

『ブン』

 

 うるさっ。

 低周波攻撃やめてください! 公害ですよ! 

 

 冗談は置いておくとしても、ドラゴンと人間が文化的迎合をするということになったらこういう問題は必ず発生するよな。家が小さいとか身体が大きいとか歩く度に振動が発生するとか声がうるさいとかうんこがデカいとか。

 ドワーフと職人が協力すればなんとかなりそうな気もするけど──魔素の影響は少なからずあるだろうし、やっぱり無理だな。

 

『アキヒロ、寝ましょう』

 

「分かった」

 

 ドラゴニアの文化なのか、夜になるとみんな洞窟の中に引っ込んでしまう。彼女も同じで、寝る時は一緒にとのことだ。しかし、彼女は庵で1人。離れて暮らしている事はどうなのかというと──

 

『寝返りにでも巻き込まれたら最悪死にますからね』

 

 冗談めいた言い方だったけど、多分本当のこと。

 

『その点、アキヒロは私と同じくらいなので潰される心配もありません!』

 

「うん……まあ、そうだね」

 

 今日は俺も久しぶりに寝袋で寝られるらしい。

 流石にあのグシャグシャのベッドモドキで寝るのも飽きてきたところなので、寝袋とはいえしっかりした寝具に体を横たえられるのは嬉しい。

 

『ほらほら、一緒に作ったんだから一緒に寝ましょう!』

 

「いや、寝袋で寝るよ」

 

『ダメです! それはドラゴニアの流儀ではありません!』

 

「俺は人間なんですが」

 

『ここはドラゴニアの住む場所。そこにいるならあなたも今はルールに従ってください!』

 

「今言うの?」

 

 もうちょい早いタイミングで言うべきだったのでは? 

 なんて言っててもドラゴニアの硬くて鋼よりも強い心は曲がらないらしく、全く譲らない。寝袋を抱えて離さないので、俺の寝床はベッドモドキかベッドか床のどれかになってしまった。

 

「それじゃあ俺は床で──」

 

『ほいっと』

 

 持ち上げられてベッドに放り捨てられる俺。それを横目に見てるコマちゃんはすでにベッドの隅っこを陣取っていた。

 当然スコティッシュフォールドの姿だ。

 狛犬のサイズじゃ入らないしな。

 

『んー……』

 

「あんまり引っ付かれると寝づらいんですがね」

 

『……誰かと一緒に寝るのって幸せです。物心つく頃にはすでに他の子と大きさが違いすぎて一緒に寝られませんでしたから……こういうのは初めてなんです』

 

「あーもう、そういうのは聞きたくない」

 

 何でいちいち人の心を揺さぶろうとしてくるのか。俺だって人の子だから、そういうこと言われたら断り辛いじゃん。

 

『──寝られないです』

 

 諦めてベッドの端っこで目を瞑っていたら、そんなことを言いやがった。やっと寝付いたかと思ったら、実は目が冴えて眠れなくなっていたというまさかの現象が起きていた。

 

「喋らなきゃ寝られるよ」

 

『一緒に寝てるって思ったら全然眠くならないんです』

 

「ダメじゃん。やっぱり俺外で寝るよ」

 

 寝袋とテントさえあればどこでだって眠れる、それが探索者。ダンジョンだけどドラゴニアの里だし、モンスターは他にいないということで安全だからな。

 

『……』

 

「……どうした」

 

『わからない、です』

 

 迷子みたいな顔で、揺れた瞳で、何か言いたげな唇で、自分が何をしたいのかがわからないんだ。俺の腕を掴んで離さないその左手には、俺じゃなければ握りつぶされていただろうというほどに力が込められている。

 

「慣れておいた方がいいよ。感情に振り回されると碌なことにならないからさ」

 

『振り回されるって……私は別にそんな……』

 

「感情ってのは誰かと触れ合うことで育ってく。何かを見ることで豊かになるし、経験を糧にして大きくなるんだ」

 

『いや、だから私には家族がいるのでそこまで赤ちゃんでは……』

 

「それなら手を離してもらっても?」

 

『…………』

 

 こうして改めて見ると、やはり彼女は幼いのだ。顔付きが人間基準だと整いまくっているだけで、情緒も言動も育ちきっていない。

 

「もう分かったから、ちょっとした冗談だから」

 

『そ、そうですよね。なにせドラゴニアのルールですから……うん』

 

 

 ──────

 

 

『──え』

 

「うん、そういうわけだから」

 

『い、いやいや……まだここにきて7日ほどで……』

 

「すでに滞在しすぎでしょ。普通こういうのって3日ぐらいで帰るもんだよ」

 

 いつまでもドラゴニアの里にいても集められる情報は多くない。年単位で滞在すれば色々わかるかもしれないけど、そんなことしたら死亡扱いされるでしょ。ミツキ達も心配するからしません。

 そういうわけで、そそくさと帰る準備じゃ! 

 

『ま、まま待ってください! まだ全然話聞いてないですよ!?』

 

「うーん……まあ、話をしようと思えばいくらでもできるからさ。それこそキリがなくなっちゃうんだよねえ……それに俺も家族いるんだわ。あんまり観光気分でいるわけにもいかないというか……とにかく、一旦お開き!」

 

『じゃ、じゃあ! またすぐ戻ってくるんですよね!?』

 

「え? …………うん」

 

 1週間。色々やりながら見て周った感じだと、正直よくわからないというのが答えだった。この里が牧場につながるような場所かどうかってのはもっと先の時代にならないと結論が出せない。

 20年後ぐらいにくれば何か変わってるかもなあ。ということで、その時に話を聞けばいい。

 

『今、間がありました……戻ってくる気ないでしょ!?』

 

「戻ってくるって」

 

『絶対に来ない!』

 

「別にいいじゃん」

 

『ほら! やっぱり戻ってこない気だ!』

 

「この里の事は人類に明かさないから君たちに危険が及ぶわけじゃない。これまで通り、のんびり暮らしてくれてて全く問題ないよ。強いて言うなら、君主導でもう少し文明のレベルを前進させたり子供を作って欲しいというのが俺の個人的な要望です」

 

『めちゃくちゃなこと言ってます! お爺様!』

 

 おっと、それは反則だ。

 

『ブン』

 

『! ……で、でも……』

 

 しかし黄金竜は逆に彼女を諌めたようだ。娘は肩を落とし、恨めしげに俺を睨んだ。

 

「お爺様。この度は歓待を受けまして、誠にありがとうございました」

 

『ブン』

 

「お孫さんはまだなんかあるみたいですけど、俺も自分の人生があるので帰ります」

 

『ブン』

 

「季節の変わり目で、時期的にもちょうどいい。おせわになりました」

 

 すでに、遠雷どころか見える範囲で黄色い雲がある。

 筋斗雲ではない。

 あれは雷がそのまま雲の形をとっている雲雷だ。

 冬が終わって、雷の季節が来たということだ。コマちゃんが不調だった理由は結局教えてくれなかったので、帰り道もまたぶっ倒れるなんてことになったら本格的になんらかの対処をしないといけない。

 そうでなくても、帰ったらゆっくりさせるつもりだ。

 なんなら秋川家にいくのもいいかもしれない。

 …………うん、そうだな。里帰りさせよう。

 

『本当に帰るんですか……?』

 

「うん」

 

 これで一ヶ月もいてみろ。いよいよミツキがブチギレだ。アカネもアリサもヒナタも──なんならヒナタは既にキレているかもしれない。

 

『ほ、ほんとうに!?』

 

「帰るって」

 

『……ちょっとコマちゃんとお話しさせていただいても?』

 

「そこは好きにどうぞ」

 

 なんだかんだ、コマちゃんはドラゴン達から特別扱いされていた。何もしてないのに。

 

『──!』

 

「──」

 

 少し離れたところに連れて行ったコマちゃんへ熱心に何かを説明し、コマちゃんもそれを受けてワフワフと話していた。

 何で俺だけ仲間はずれ? 

 あいつ何もしてないんだぞ! 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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