【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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「──よう、3人とも」

 

 帰ってきた男こと加賀美明弘。

 ドラゴン討伐に失敗した彼の元へと3人がやってきていた。レイジはどうしたのかというと、なぜかハシュアーが強い拒絶感を示したのでナシとなった。

 なんでだろうねえ。

 

「加賀美さん……」

 

「残念ながらドラゴン討伐は失敗だったよ」

 

 そういう割には爽やかな顔で笑う。本当に、全くこれっぽっちも悔しいとは思っていない顔だった。

 

「エグいのが乱入してきたせいでな」

 

「怪我したりしてないですか?」

 

「もちろんしてない」

 

「隠してると日向さんたちが怒りますからね」

 

「ははっ怖いな! ──ところで、何か用事があるんだろ?」

 

「……!」

 

「分かるさ、三船君の方から俺のことを尋ねてきたことなんて数えるほどしかないからな」

 

 2人の関係性といえば、基本的には明弘が様子を伺いに来るというのが大抵のパターンだ。ダンジョンや旅、その他様々な用事に引っ張り出していたのは、自分は1人にしておくと家の中でウジウジしていたからだというのはレイト自身がわかっている事でもあった。

 

「そういえば最近、3人で仕事を受けたらしいじゃん。それにハシュアーも教官をつけて訓練してるって聞いたぞ」

 

「あっ、知ってたんですね」

 

「噂でな」

 

「僕って噂になってるの……?」

 

 実際のところはナナオから情報を仕入れている訳だが、それを表に出す事はしていない。実際レイトのことは噂になるため、裏取りされても特に問題はなかった。

 

「ハシュアー」

 

「は、はいっ」

 

「あの人はかなりやるぞ」

 

「あの人…………先生のこと?」

 

「うん、レイジって言ってたっけ? 良い先生を見つけたな」

 

「…………いや! クソです!」

 

「そうなんだ……」

 

 明弘は手の内で何かを弄んでいた。

 

「カガミさん」

 

「はい何でしょう」

 

「実は──」

 

 3人の問題点と問題点の解決のためにレベルを上げたい旨を伝えた。そうすると、微妙に驚いたのか顔を顰めて目をキョロキョロとさせる。

 

「PDCAサイクル、マジか……まあプランはしてないだろうけど……」

 

「はへ?」

 

 3人とも聞き取れなかったが確かに何かを呟き、シエルを見る。

 

「シエル、お前だな?」

 

「うん」

 

「そうか……何でやろうと思ったんだ?」

 

「死にたくないから」

 

「そりゃそうか」

 

「良い案、無い?」

 

「ふうむ」

 

「あなたが教えてくれても良い」

 

「偉そうだなオイ! ──でも俺じゃ無理だな」

 

「1人だもんね」

 

「…………コマちゃんがいるし」

 

「真面目な話だからちゃんと考えて」

 

「つってもなぁ、シエルの言う通りに基本はソロで活動してるから連携もクソもねえんだよ」

 

「昔はどうしてたの?」

 

「動きを観察して慣れたら首を切ってた」

 

「…………話にならない」

 

「そうしなきゃリーチが足りなかったしな」

 

 取り出されたナイフは、拙い刃物とは言わない。しかしその刃渡りではモンスターの分厚い装甲を貫くことは厳しいだろうというようなものだ。

 

 シエルもレイトもハシュアーも、アキヒロの見守りがない状態で恐ろしいモンスターと初めて面と向かった。その経験を経て考える。これを使って1人でモンスターと戦っていたというのは、頭がおかしいと形容する他なかった。

 

「これでモンスターと戦ってたの?」

 

「そうだ──あ、違うわ」

 

「……だよね」

 

 そうだよね、こんなナイフで戦うわけないもんね! 

 3人はほっと旨を撫で下ろした。最初はきっと剣とか斧で戦っていたに違いない。

 あのアリとナイフで戦ってどうにかなるわけがない、なったら自分たちの努力はどこにいったという話になってしまう。

 果たしてアキヒロは置いてあったものを3人の前に置いた。

 

「これも前から使ってたわ、あぶねえあぶねえ嘘つくところだ」

 

「…………これって空気のやつだよね」

 

「そう、エアガン」

 

 エアガンとは何か──有り体に言ってオモチャだ。

 

「これと、これ?」

 

「そう」

 

「嘘だよね」

 

「ええ……何でそんな嘘つく必要が?」

 

「だって倒せないもん」

 

「いや、倒せるよ」

 

「倒せない」

 

「はぁ……人には得手不得手があるから、きっとその差が出ただけだよ」

 

「よく分かんないけど、ナイフじゃアイツらは倒せない」

 

「もうそれでいいや……ディーンとかどうだ?」

 

 ディーン。

 彼の知り合いであり、探索者としてはまともな倫理観を有していると彼が太鼓判を押す人間でもあった。

 

「ディーンさんって確かセイバートゥースのリーダーですよね?」

 

「うん、アイツならなんだかんだいって面倒見てくれんじゃねえかな」

 

 しかし、なぜか3人は尻込みしているようだった。

 

「…………タダで?」

 

「金は払うだろ」

 

「いくら?」

 

「100万くらいあれば猫撫で声で教えてくれそうだけどな」

 

「そんなお金無い」

 

「稼げよ」

 

「稼ぐ為に教えて欲しいって言ってるんだけど」

 

「そういうのは無料のセミナーに来るんじゃなくて自分でやってみるとか本読むとか色々あるでしょ。お前頭いいんだから頑張れよ」

 

「その結果があなたに聞くってことなんだけど」

 

「けどけど言ってないで専門家に聞きなって、俺どちらかというとゼネラリストだし」

 

「人が死ぬよ」

 

「これが自分の命を担保に脅すタイプのビジネスか……」

 

「何かない?」

 

「うーん……まあ、一応聞いてみるか」

 

 

 ──────

 

 

「んだよ、もう……」

 

「お願いがあるんだけどさあ」

 

「……絶対にイヤだ」

 

「そこを何とかさあ!」

 

「やめろよ! ひっつくな! そこの3人のこと面倒見ろってんだろ! やだよ絶対! アンタに関わると碌なことにならねえんだから!」

 

「人を疫病神みたいに言うんでねえ! ……こんなに可愛いんだぞ!」

 

「バカか!」

 

「丸ごと面倒見ろなんて話はしてない! こいつらが低レベル探索者のレベル上げについて教えて欲しいって言うからそこんとこだけちょろっと……」

 

「…………そりゃあアンタは参考にならないだろうけど、何で俺たちなんだよ」

 

「マトモなのがお前しかいないから」

 

「…………」

 

 露骨にイヤそうな顔。

 褒められたにも関わらず、全く嬉しくなさそうだった。

 

「何だよその顔」

 

「アンタにマトモって褒められると、なんか不安になるわ」

 

 二人のやりとりは、確かに知り合い同士のそれだった。

 ただ、ディーンは本気でイヤそうにしている。

 シエルとレイト、界隈では大人気な二人がいるというのに、関わり合いになりたいと本気で思っていなさそうなのは、どう考えてもアキヒロのせいだろう。

 

「俺が一番マトモだっちゅーの」

 

「…………」

 

「そんな俺からマトモって褒められたら泣いて喜ぶのが普通なのに……」

 

「もう行っていい?」

 

「ダメェ!」

 

「俺だって誰にも教えてもらわずに色々頑張ってやってたんだから、ソイツらにも苦労くらいさせろよ」

 

「その話はもうした」

 

「だからあ! 甘やかしすぎなんだって! 聞いたことねえよ1から面倒見て育てるなんて!」

 

 教育方針で揉める父母のような喧嘩をし始めた。

 

「俺に聞きにくる前にまずは自分の甘さを何とかしてからこいよ!」

 

「俺がディーンより甘い? それはおかしいな……女の子3人に囲まれて毎日ウハウハ生活を送っているディーンが、俺より厳しい態度で探索者をやっているなんて思わなかった」

 

「その話はいいだろ!」

 

 テーブルについているディーンのパーティーメンバー3人が今も二人の様子を伺っている。その視線には、アキヒロに対する確かな敵愾心が含まれているようだった。

 

「だ、だいたいアンタだってアリサと組んでたりするじゃねえか」

 

「だから何だよ」

 

「レベルが低いやつの戦い方ぐらいわかるだろ」

 

「どうやって戦かえばいいかが分かってなかったってところは共通点あるけど、流石に3人で戦う時の布石なんて分かんねえ」

 

「……俺たちは四人だよ」

 

「でもほら、あるんだろ? スキームが」

 

「すきーむ?」

 

「もったいぶってないで教えろよ」

 

「…………報酬は?」

 

「へ?」

 

「教えろってんならあんだろ、それなりのもんが」

 

 ニヤリと、いいことを思いついた人間らしい笑みを浮かべて手のひらを差し出す。

 

「お手ならいくらでもしてやるぞ」

 

「ちげーよ!」

 

「真面目な話をすると、別に金でもいいんだけどそれだと俺がお前に依頼する意味って無いというか……」

 

「どういうことだよ」

 

「だってパーティー組んでるやつっていう条件だけで見ればもっと上の奴らがいるし……それこそ教官達にもそういうの慣れてるやついるだろうし」

 

 いきなり真面目な答えを展開し始める。

 ハシュアーの訓練をしているレイジもかつてはパーティーを組んでいただろうというのは容易に想像がつくことだ。

 レベル40まで探索者を続けていた彼のパーティー戦闘技術を教えてもらうのも良い手ではある筈だ。その中で白羽の矢を立てた理由とはなんなのか。

 

「マトモ、レベルが比較的近い。この二つが理由だな」

 

「…………じゃあタダでやれってのか?」

 

「いやいや……うーん、そしたらなんか手伝おうか? 無料で」

 

「マジで!?」

 

「うん」

 

 レベルが30も離れている相手をタダで駆り出せるというのは大きなアドバンテージだった。なにせ、普通に依頼するとしたら一年通して稼いだ額が必要になるような相手なのだから。

 

「…………」

 

 口元を押さえて、テーブルの3人を見る。

 

『──!』

 

 嬉しそうに手を振ってくる仲間へ手を振り返すと、真剣な顔で話し始めた。

 

「……第二階層へ行きたいんだ」

 

「うん? ……なんでだ?」

 

「最近、俺たち結構うまくいっててさ」

 

「…………」

 

「調子に乗ってるわけじゃない。本当に調子が良いんだよ」

 

「タイラントは倒したのか?」

 

「倒した」

 

「は? お前……レベル幾つだっけ」

 

「俺は20だけど、パーティーレベルは22」

 

「あの新しく入った子、そんなに良い感じだったのか」

 

「ああ、だから道案内を頼みたくて」

 

「良いぞ、良いけど……まあいいか」

 

「なんだよ」

 

「あの子達の了承は得なくて良いのか?」

 

「俺はリーダーだぞ」

 

「おおっ、リーダーっぽい」

 

「だからリーダーだよ」

 

 そういうことになった。

 

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