【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ディーンだ」
「レイトです、よろしくお願いします」
「なんというか、お互いアイツに振り回されて大変だな」
「あはは…………ディーンさんって何歳なんですか?」
「17」
「あ、一個上だ」
「16なのか」
「はい」
「あいつ本当節操ないよな、人に言えた立場じゃないっつーか」
「か、加賀美さんも頑張ってるので……」
「フォローになってる? それ」
仲良さげに話しているが、実際のところ過去の交流は薄いどころか限りなく0に近い。お互いがお互いに姿を見たことがある程度の関係性しかなく、探り探りに会話をしていた。
「そんでお前がシエルで、お前は……まあ、うん」
ハシュアーに関しては以前にパーティーを組むのを断ったから微妙な気まずさはあったが、それでも判断として間違ったことをしたわけではないので申し訳なく思ったりはしていない。
「コイツらと組むんだろうなとは思ってたよ」
「……よく考えたら、女3人と組んでるって結構変だな」
「バカにしてんのか? 全員お前よりつえーぞ」
「バカとかじゃなくて、なんかすごい気まずそうだなって」
「本人の目の前で言うことか? あと、全然気まずくないから。みんな仲良いし、ちゃんと会話もできる」
「それは普通じゃないの?」
13歳の少年には、そこら辺の機微はよくわかっていなかった。ディーンもそう理解して会話を打ち切り、レイトとシエルに振る。
「取り敢えず、どうしようかな……3人で組んでるんだよな?」
「あ、はい」
「あー…………」
しかし、リーダ──―というよりもリーダーをいつまでも留め置いている憎っくき隣人に向けて視線を注がせる三人娘のことを無視するわけにもいかなかった。
「レイトです、えっと……ディーンさんをお借りしてごめんなさい」
丁寧に頭を下げる。
拙いながらも誠意が含まれたお辞儀をされて、完全に意表を突かれた形になった3人は狼狽えた。
「あ、いや……」
「別にそんな……」
「私たちはイヤなんて……」
気まずそうに視線を彷徨わせる3人には表立ってレイトたちのことを批判する度胸はなかった。
「そんで、具体的にお前達は何を教えて欲しいんだ? カガミからは大雑把な話だけ聞いてるけど、何が知りたいのか教えてくんねえと俺も教えようがない」
「えっと…………」
実のところ、シエルが言っていたことは複雑であまり覚えていなかった。妖精のとまり木のブレインはシエルなのだ。
「はぁ……」
ため息をついたシエルが助け舟を出した。
「低レベルの時は何を重視して戦えばいいのかって話」
「低レベルの時ねえ」
少しだけ遠い目をする。
思い出すのはもっとがむしゃらにやっていた時のこと。最初のメンバーと出会い、草原型のダンジョンである赤熱平原に何度も通った。最も通いやすいという意味簡単なのではアンダーだが、難易度という意味で言えばこちらはもっと初心者向けだ。
「お前ら、ダンジョンの難易度とかは調べてるんだよな?」
「ダンジョンの難易度……」
「推奨レベルくらいわかるだろ」
「もちろんわかる」
ダンジョンに乗り込むにあたって最低限必要とされるレベル。報酬の算定にも関わる数値だが、そこは探索者には関係ないところか。
「そうしたら、自分たちのパーティーのレベルに合わせていくのが一番無難だぞ」
「パーティーレベルは……10」
「アンダーから生きて戻ったのが奇跡みたいなレベルだな」
「でも、もう3回くらい行ってる」
「調子乗んな」
「乗ってない」
「おおかた、カガミがよくアンダーに潜ってるからそれに釣られて──」
「違う」
「?」
「別にあの人は関係ない」
「……そうだってんなら、単純にダンジョン選びを間違ってる。お前らは雑魚だ。アンダーに潜りたいからなんて理由で依頼を選んでいる場合じゃなくて,まずは行けるところから頑張るしかねえよ」
「あなたはどうだったの」
「俺は……はぁ……」
どかりと座り込む。
「ちょっと、あまり昔のことに突っ込んでこないでよ」
それに苦言を呈したのはディーンの仲間の一人だった。
「ダンジョンの事はともかく、私たちの事情に首突っ込んでくるのは違うでしょ」
「どうなの」
「聞いてんの?」
「個人的な事情なんて興味ない。ただ、必要なことを聞いてるだけ」
「はあ?」
その瞳には、あくまで話しているのはディーンであって、金魚のフンじゃないという態度が露骨に出ていた。
どこにいてもトラブルの種になるのがシエルという少女だとレイトも分かっているので、さりげなくフォローを忘れない。
「シ、シエルちゃんは言葉足らずで……今のはディーンさん達の事情に首を突っ込もうとしてるわけじゃないって意味です」
「それはその女に言わせなさいよ」
「この子は口下手なんです……」
何を教えるにせよ、ここにいても言葉だけになってあまり進展がないという事で、パーティー間での模擬戦を行うことになった。
──────
「パーティー同士で戦いたい!?」
「はい」
「イヤイヤ、ちょっと待ってちょっと待って……訓練所は空いて…………るぅ……」
まさかの展開に、成り行きを見守っていたナナオも驚きを隠すことができなかった。そもそも両者のレベルには大きな差がある上、パーティー間の正式な模擬戦というのはそこまで件数が多いわけではない。
体面上、人間を相手取って戦うと公言するような探索者は少ないからだ。無いとは言えないのは、他のセクターにおいては盗賊を狩ることを生業とするマンハンターもいるからだ。
しかし、そんなすぐ言われても……というのが公職の辛いところだ。
「いきなりパーティー間で戦うのかあ……殺し合いとかしない?」
「そういうんじゃない。あくまでコイツらが教えて欲しいっていうから戦い方を実践でわからせるだけだ。それにこれはカガミからの依頼でもある」
「それ本当?」
「ああ、本人に聞いてみろ」
「分かった、そしたらちょぉっとだけ待っててね〜」
「……相変わらず露骨に贔屓されてんな」
セイバートゥースの4人は、ナナオの変わり身の速さに若干苦い顔をしていた。
スタートラインはそこまで変わらないはずなのに、何が自分たちとあのボッチを分けているのかまるで理解できない。
レベル50という、究極的には折り返し地点と考えられている境界に到達した最速の探索者。
それを客観的に証明するだけの証拠があるのに、肝心の本人は他の探索者と違って功名心がないので話題にしづらい。
加賀美アキヒロという人間がどうにも掴みづらいことも関係していた。
「あの人ってなんでソロでやってるんだっけ、ねえディーン」
ちょうど彼の仲間がそうであるように、名前や風聞だけは知っていて、彼という人間の特性を知らない探索者が多いのだ。
ソロ活動をしていることにくわえて、彼自身が他の探索者に興味がないからだ。
「お眼鏡に適う奴がいねえからだよ」
「なにそれ、お高ーい」
「……実際お高い奴だけどな」
あれほど精神的に完成された存在を、ディーンは他に見たことがなかった。
「入っていいよ〜」
どうやら裏での確認が取れたらしい。
「一応あれね、私が立ち会うから」
殺し合いに発展するリスクを抑えるため、ということだろう。
「戦うっつっても、人数もレベルもこっちが上だからちょっと変則的にするぞ」
「へんそかてき?」
「変則的、な。こっちは一人減らして3人対3人で、武器はここにおいてあるやつを使うぞ」
武器を各自の持ち物で行なってしまうと、かち合っただけでレイト達の方は砕ける可能性もあるので妥当な判断だった。
「対人は正直、やったことねえけど……まあ、なんとかなるだろ」
「え?」
「なんか文句あんのか」
「戦ったことないんですか?」
「盗賊だってそんな簡単には出てこねえし、普通はこんなもんだよ。商工会の奴らは散々脅すけど、そこまで異常に怯える必要もない」
この前の探索で、他のパーティーと揉めたことを話す。
「ああ……まあ、お前ら2人はそうか」
「…………俺は?」
「お前はちっこいし、顔も普通だからな」
「はぁぁー!?」
「なんも間違ってないだろ?」
ハシュアーは激怒した。
ヒューマンどもはことあるごとに自分のことをチビだのなんだのと弄る。もし自分が鍛治師だってことがわかったら絶対にそんな態度は取らないくせに、なんと調子のいいことだろう。
「決めた! 絶対ぶっ潰す!」
「そんくらいの気概で来い。絶対勝てないから」
ますます激怒した。
舐めてかかられている。
これでも地元では負け知らずの気持ちでやっていたのだ。
「はい、それじゃあお互い準備はいーい? …………お仕事増えちゃったよ、もう……加賀美くんのバカ……!」
ぶつぶつと文句を言いながらも、準備ができたことを確認して腕を振り上げた。
「よーい、はじめ!」
セイバートゥースの3人は弓、大楯と剣、そして槍。
妖精のとまり木は弓、丸盾とメイス、剣。
まるっきり違うわけではないが、リーチなどを考慮するとセイバートゥースの方ががっちりしているような印象をナナオは受けた。
「まずはお前らから来い!」
見合っていても何も始まらない。
動きを見せろ、というわけだ。
「っしゃあ!」
メイスで一発。
自らの盾を叩いて鼓舞する。
最も前に立つハシュアーは、相手の攻撃にさらされる可能性が高い危険な役割だ。しかしダンジョンでは巨大なモンスターを前に尻込みしてしまったが、ディーン達を前にしている姿はいかにも堂々とした姿だった。
「いくぜ!」
「──えっ」
突然──レイトの視点からすると、本当に突然ハシュアーが走り出したとしか感じ取れなかった。合図は無かったし、声掛けに反応する前に距離が開いた。
しかしハシュアーは気にしない。自分が進めば後ろはついてくると信じて突っ走った。
「ちょ、まっ」
しかしレイトは呆気に取られて反応できていない。
真っ先に激突が予想されるのは,一番前で待ち構える大楯持ちの大利根雛見(オオトネヒナミ)。
「なんてーか、若いね!」
「お前も十分若いだろ……備えろ!」
雛見の元へ、盾を顔前に構えた少年が駆け込むような勢いでメイスを叩きつけてきた。
「はい──よっ!」
「うっ!?」
容易く受けるどころか、堅牢な城を殴りつけたような手応えを未熟な少年に味わわせる。
「そんな程度じゃ絶対に崩せないよっ!」
「!」
彼女の役割は盾を構えるだけではない。
軸足に力を込め、勢いよく押し上げた。
「う、わ……」
前からいきなりの圧力でタタラを踏んだタイミング、大楯の脇を通り抜けるように槍が出てきた。
「ぐえっ!」
鎧のど真ん中に鋭い突きが直撃。
穂先が丸まっていなければ徹されていた威力は、ハシュアーの身体を容易く吹き飛ばした。
「うっ! ぐっ! あっ!」
「──おっと」
ゴロゴロと後ろに転がっている最中、視界でわずかにとらえる。ディーンは追撃を喰らわそうとして、ハシュアーの背後から飛んできた矢に邪魔をされていた。
「流石にさせない」
「加減がむずいな」
「──うぐえっ!」
ハシュアーは勢いそのままに、レイトの足元まで転がってきた。普段であれば優しく抱き起こすが、今に限ってはそんな余裕はない。剣を構えたまま、先ほど特攻隊長が喰らった一撃を想起していた。
「…………」
鋭く、喰らえば肉に穴が開くのは確実だ。だが対人剣術として考えた時に、レイトはアレに近いもの──否、凌駕するものを見たことがあった。
その時は木刀だったが、試合相手の木刀に先端から入り込み余さず砕き散らせた一撃。気が付いたら一瞬で勝敗を決していたアレに比べれば。
「くそっ、かってえなあ……アリよりよっぽど硬いんじゃねえか?」
「…………」
憎まれ口は、この場においては無視された。いつもなら軽口で返すシエルは相手の弓使いである中井恵(ナカイケイ)と睨み合っていたからだ。
「出鼻はダメだった……だったら堅実に行くしかない、か」
咄嗟すぎてついていくことはできなかったが、初っ端特有の勢いはもう無い。低く構えた剣をもう一度握り直し、二人へ指示を飛ばすために口を開く。
「シエルちゃんはディーンさんを見てて! ハシュアーは…………とりあえず盾を構えて突っ込む! 僕はそれに続くよ!」
「今度こそ来てよ!」
「うん!」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない