【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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17_すまん、いくわ

 

「…………」

 

 椅子の上でプラプラと足を揺らすハシュアー。

 先ほどの戦闘を思い出してニヤついていた。自分なりに、意外とうまく戦えたという自信があった。

 ダメ出しは多かったものの、鉄と同じで打てば変わっていくものだと理解している故にネガティブな感情は少ない。

 

「ハシュアーはさ、どこから来たの?」

 

 ヒナミが話しかけてきた。

 

「俺は……うーん……」

 

「あ……いや、なんでもないよ」

 

「え? あ、そう」

 

 どう答えたものかと悩んでいたが、勝手に引き下がってくれたのでボロを出さずに済んだ。

 

「それにしてもヒナミ、すごいね」

 

「ふふん、そうでしょ? ディーンと一緒に練習したから」

 

 ディーンと一緒に──のところはいらないが、先ほどの大楯の使い方を見て、ハシュアーは丸盾から大楯に乗り換えようかと悩んでいた。自分がやりたいことは、どんな攻撃も防ぎ切って返すこと。ドワーフとしての鍛治力があればエンチャントの乗った小さな盾で事足りると浅知恵を働かせていたものの、実際に相対してみると大楯の圧力というのは剣や槍みたいな武器以上に機能していた。

 それに、レベルの高い遠距離攻撃持ちは針の穴を通すような一撃を容易く放つことができる。

 

「私がその気なら最初に終わってたよ」

 

 セイバートゥースの弓使い、ケイが言う通りだ。突進中のハシュアーは盾を構えてはいたものの、特に何かから身を守るために構えていたわけではなく漫然と構えていただけ。アレが実戦なら、額や足を打ち抜かれてリタイアだっただろう。

 

「先生に聞いてみようかな」

 

 盾を変えてもいいかどうか。武器はメイスで特に問題無いし、そのうち衝撃発生を付加したものを作ろうと考えていた。

 

「ハシュアーは最近探索者になったばかりだもんね。いろいろ試してみるのもいいんじゃないかな」

 

「レイトさんは?」

 

「僕は剣でいくよ。ただでさえ弱いんだから、早苗さん達に教えてもらったことが無駄にならないようにしたいんだ」

 

 自嘲したレイトを見て、ディーンはビシッと指差した。

 

「そういうとこだぞ」

 

「え?」

 

「お前、自信がないんだろ」

 

「…………はい」

 

「探索者は気持ちでやってくんだよ。強さなんか後からついてくるんだから、とりあえず前のめりにやってみなきゃ何も起きないぞ」

 

「前のめり……」

 

 手に持った肉を見つめる。

 

「……あむっ」

 

 勢いよくかぶりついた。

 

「勢いってそういうことじゃねえんだけど、まあいいか……来たな」

 

 全員が振り返ると、入り口から見慣れた顔が歩いてきた。ウッキウキなところを見るに、楽しいことがあったのだろうか。

 

「──そうか! まあ三船くんもおいおい強くなってけばいいからな。今は基礎固めだよ」

 

「おい、誰が基礎だって?」

 

「根本がガッチリしてるってこと。褒めてんだよ」

 

「本当かよ……」

 

「そんなに褒めて欲しいのか、しょうがねえなあ」

 

「やめろ! 鬱陶しい!」

 

 ディーンへのダル絡みを終えると、改めて口を開く。

 

「俺ちょっと第一セクター行ってくる」

 

「ええっ」

 

 それに驚いたのはディーンだった。

 

「おまっ、俺たちを先導してってくれるって話はどうなったんだよ!」

 

「そんな長期間じゃないから大丈夫、ちょっと行ってさっと会って帰ってくるだけだから」

 

「女か?」

 

「いやオッサン」

 

「えっ!?」

 

「なんでさっきより驚きが大きいんだよ」

 

 失礼しちゃうわ……とジト目になるアキヒロは、しょうがないとばかりに指を立てた。

 

「先生が行方不明になっちまったからな、どうしても代わりに道筋を立ててくれる人が必要だった。その伝手が第一セクターにあるんだよ」

 

「探索者か?」

 

「ただの研究者」

 

「…………」

 

 加賀美明宏の知り合いで、目的に近づく為に利用されるような人間が『ただの』研究者なわけがない、と半ば確信に満ちた目で睨む。それは話を聞いているレイトやシエルも同じで、何してくるんだろうと不思議に思っていた。

 

「だから会って話して帰ってくるだけだって! アリサの入学式にも行かなきゃいけないんだから」

 

「お父さんかよ」

 

「そういうわけで、少しだけ不在なんであんまり無茶しないように。特にハシュアー、お前は気質が突っ込みがちな人間のそれだから気をつけるんだぞ! 三船くんは稽古で何言われても落ち込む必要はないからな、人間最初は誰だってできないんだから。シエル、お前は三船くんの言うことを聞け」

 

 言うだけ言って、駆け足に出て行った。

 反応する隙間はほぼ無し、周囲の探索者も流石に呆れたようだった。

 

 

 ──────

 

 

「あのー」

 

 朝早くから、誰かが三船家の家の前に来ていた。雷季のやかましい外気環境の中でも通る、鈴鳴る声。誰が寝ているとも気にせずに呼びかける。

 

「すみませーん」

 

「なんだよ」

 

 扉を開けたのはハシュアー。

 訓練に行く直前だというのに来客が来るなんて、と嘆きながらの対応。

 

「朝早すぎ」

 

「あはは、ごめんなさい」

 

「それで、なんの用事があるの?」

 

 ハシュアーは、一番可能性が高いのはレイトだと考えた。顔が良くて人当たりのいいレイトは、町人から嫌われる理由がない。道ゆくと声をかけられるし、ファンだっている。

 もしかしたら付き纏いかも……という不審な内心は顔に出ていた。

 

「あのね、シエルさんいるかなって」

 

 やっぱり──やっぱりじゃない!? 

 

「これを渡して欲しくて」

 

「…………なにこれ」

 

 よく分からない模様が刻まれた指輪だった

 

「道案内してもらったから、そのお返し!」

 

「…………わかったけど、なんでこんな朝早いの?」

 

「ここにいられる時間が終わっちゃってさ、なるべく早く帰らなきゃいけないんだよね」

 

 妙な言い回しだが、どうやら彼女は旅行中だったようだ。それならば朝早いのも納得でき──ギリギリ納得した。問い詰める意味もない。

 

「じゃっ、お願いね!」

 

 たったったと雷鳴立ち込める中を走っていった。

 

「…………」

 

 指輪は少なくともドワーフが作ったものではないことは確かだった。模様に見覚えはなく、指輪の作りもドワーフが作ったらこんなに雑にはならない。やすりがけや整形に甘さが現れていて、反吐が出そうだった。

 

「……」

 

 本当に反吐が出そうだ。

 

「うん、ちゃんと直しておこう」

 

 こんな粗悪品を人に渡したら人間として生きている価値がなくなってしまうと感じたハシュアーは、指輪をシエルに渡すのは今度にしようと決めた。

 

「ふっふっふ、俺の優しさに恐れ慄くがいい……!」

 

 ハシュアーは自信満々に訓練場へ向かった。

 

「──よう、昨日はボコボコにされたらしいな」

 

「ボコボコってほどじゃないです」

 

「…………あー……」

 

「?」

 

 突然口ごもり始めたレイジの態度を不思議に思っていると、軽く頭を下げた。

 

「この前は悪かったよ、人前でちんこ触って」

 

「……」

 

 言っていることのあまりの気持ち悪さに、思わず後退りしてしまった。盾も胸の位置に持ち上がっている。

 

「そんなに警戒するか!? ……ったく、まじで反省してるっつーの、罰金食らったら流石にな」

 

「…………普通にキモいから、二度とやらないで」

 

「わかった」

 

「──はい! この話終わり!」

 

 それを決めるのは被害者のはず……だが、ハシュアーも無かったことにしようと努めた。あの時の気持ち悪さは今も残っているが、それはいつかボコボコにしてやればいいだけの話。

 前のめりすぎると言われるのなら、そのまま強くなり切るまで前のめりでいてやる所存だった。

 

「丸盾から大楯に? ……いや、やめとけ」

 

「なんで」

 

「取り回しが全然違う。お前、今から槍とナイフ一緒に持って戦えって言われてできるか?」

 

 想像する。槍とナイフを一緒に使うというのは意味がわからなかった。

 そもそも用途が違いすぎる。

 

「盾ってのは繊細だからな、大きさが違うとそれくらい別物なんだよ」

 

「でも、今ならまだ間に合うんじゃない?」

 

「だからな? 適性ってものがあるじゃろ?」

 

 じゃろ、と言われても。

 

「お前の身長考えろよ」

 

「──!」

 

「おっと、今のは良い突進だな」

 

 これから身長のことをいじってきた相手にはシールドバッシュを喰らわせると心に決めていた。

 

「大楯なんて持ったら、お前の身体がすっぽり隠れちまうだろ」

 

「だから! なんだ!」

 

 ついでに、このロクデナシ教官に対してはメイスの一撃を喰らわせてやりたかった。だが、次の言葉で動きが止まる。

 

「自分よりも大きい盾なんか持ってたら敵が見えないだろ」

 

「あ」

 

 クリティカルヒットだった。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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