【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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22_最高の採掘家?

「ひー、ふー、みー……すごいです。完全な鉱石で、しかもこんなに早く……」

 

「まあねえ」

 

 アオイはハシュアー達から受け取った鉱石をカウントしていたが、鑑定機にかけた結果に驚きを隠せなかった。

 初心者向けの依頼である鉱石採取は商工会が出しているもので、探索者が自分で石を拾って武器や防具に当てられるようにという意味が込められた訓練の業務なのだ。それ故に報酬も格安だが、採取してきたものの中から使えるものを売って業務の資金としている。

 基本的には鉱石の数でカウントし、その中から使えるもの使えないものを選別する機械に充てるのだが、ハシュアーが取ってきた鉱石は全て、鍛治師に渡せば素材として認めてもらえるようなものだった。

 

「ハシュアーくん、鉱石採掘の才能があるんだ……!」

 

「ぷっ」

 

「な、なんで笑うんですか! 本当に凄いのに!」

 

「ご、ごめんごめん……でも、本人はあんまりそれ言われても嬉しくないと思うよ?」

 

「…………」

 

 アオイも商工会の職員としては初心者みたいなものなので、機密性の高い情報などはまだ知ることができない。というか、しばらくは知ることができない。

 つまり、ハシュアーが鍛治師の一族──ドワーフという未知の種族であるという情報を開示するにはまだ信頼が足りていなかった。

 

 それ故、アオイとハシュアーのやり取りには誰かしらが常々気をかけていなければならない。下手に探索者や他の支部、本部からやってきた職員にこの情報が漏れれば信用問題につながる。

 

 ハシュアーの情報について知っているのは、商工会に限って言えばこのセクターの職員のみなのだ。

 

「じゃあどうやって褒めてあげようかなあ」

 

「……別のことで褒めた方がいいかもねえ。ほら、男の子だから戦闘のこととか!」

 

「うーん……でも、戦闘のことって剣を振ることですよね? えい! えい! って」

 

「そうだね」

 

「あんまり戦闘って好きじゃないです……怖いし……痛そうだし……」

 

 自分にもそんな時期があった気がする、とナナオはアオイの様子に懐かしいものを感じた。

 

「じゃあさ、もっと別の話はどーお?」

 

「別の話ってなんですか?」

 

「……料理とか、かなあ」

 

「料理かあ……」

 

 あーだこーだと話していると、アキヒロが受付にやってきたという連絡が入った。

 

「あ、ごめんね。ちょっと行ってくるから!」

 

「はーい」

 

「──まったく、私は加賀美くん専用の受付じゃないっての!」

 

 と言いつつ、若干楽しそうではある。

 

「今日はどんな話かなあ〜」

 

 

 ──────

 

 

「西の部族? ……ああ〜……気付いた?」

 

「流石に気付きますね。なんなら、第一セクターに行った時に職員が道で話してましたよ」

 

 西の部族。

 獣のような風貌をした一族で、一応人間との意思疎通をとることはできるのだが余りにも行動規範が違いすぎる為、度々衝突が起こる。

 ナナオもニュースで聞いたことはあった。

 一般市民レベルで言うと、関係するようなセクターでない限りは情報は行かない。それは単純に、住民の不安を悪戯に煽らないようにという意味が強いと上司から聞いている。

 探索者は横のつながりで聞くことはあるものの、やはり基本的には級が上がらないと話は行かない。

 

 それをこの男はなぜか第1セクターまで行き、そこで道ゆく職員の話を盗み聞いてきたのだ。

 

「えー……それは勘弁してよねえ……なんのために規制してると思ってるんだか……」

 

「そうですね。それで……この街にはやってくるんですか?」

 

「いや、わかんないよ……だって私だってそんな詳しい話聞いてないし」

 

「なるほど?」

 

 淡々と、軽くメモを取りながら話を続ける。この男は情報収集や仕事モードの時はお堅いというか、バリバリの事務方の職員達と同じような雰囲気を感じる。そういった雰囲気は苦手だった。

 

「でも……ここまではやられたとか、今はここにいるみたいなのはわかりますよね。予測じゃなくて事実なら、担当部署じゃなくても周知の意味で全体に報告は来てるはずです」

 

「んん〜……そ、それ聞いて何になるのさ〜……」

 

 見てきたかのように言い当てるのはやめて欲しかった。確かに周知という意味での話はきているが、なぜ部外者がそんなことを知っているのか。

 

「もしかしたら近々遠くに行く可能性もあるから、活動範囲の目安を最低限は立てておかないと危ないでしょ? 流石にそれくらいは情報として集めておきたいんですよ」

 

「ええ?」

 

 しかし、西の部族の領域との境は文字通り遥か西だ。多少部族が移動したとていきなり出会すこともあるまい。

 その旨を伝えると──

 

「そう思うでしょ? 俺もそう思います。こんなに念入りに情報収集しても、大抵は空振りというか杞憂に終わるんですよ。それで『もっと他のことに時間使えたな』とか『あーあ、大学行けたな』とかなるんですよ」

 

「そうだよね?」

 

「しかもね!?」

 

「は、はいっ」

 

「アリサが大学に入ったんですよ!」

 

「……?」

 

「ミツキとアリサが大学にいるんですよ! あの2人が大学行ってるのに俺はなんかゴリラとかライオンみたいな人間のバケモン達のこと考えてて、その間にも男達があの2人に粉かけるかもしれないでしょ? ちょっともう……どういうことなのと!」

 

 壊れ出した。

 

「ヒナタも早苗ちゃんも三船くんもシエルもハシュアーもそうだけど……あいつらってすごく可愛いんですよ! ね? だからもうなんか……可愛くて!」

 

「ハイ」

 

「でもやっぱりそれだけじゃ生きてる意味ないからやることやらないといけないし、そんでもってヤる事もヤりたいし……」

 

「ハイ」

 

 イントネーションがおかしかった気がしけど、リア充の波動など感じたくないナナオはスルーした。

 

「スマホなんかあってもなくても、インターネットゴミでも、やっぱりどんな時代でも思うもんなんですね。身体があと3つくらいあればなあって。影分身とかできれば最高なんですけど……」

 

 意味不明な単語が連続した後、ニンニンと謎の指捌きを見せると更に続けた。

 

「ああ……早苗ちゃんどうしてるかな……」

 

 もはやタダの愚痴と化していた。

 ここまでヒートアップするのは珍しいが、やはり彼はよくわからない。

 

「最近は茜にお小遣いもあげてないし……父さんはどうせ事故ってるんだろうな……」

 

「なんの話だったっけ?」

 

「…………ああ、申し訳ない。忙しくなると前は当たり前にできていたことができなくなるので……環境変化というものが人にかけるストレスはやはり計り知れないですね? あ、ストレスといえば──」

 

 止まらない止まらない。

 弁が止まらない。

 

「西の! 話!」

 

「──おお! そうだ!」

 

 強制停止を経て、本題に戻る。

 

「ちょっと友達のことで、もしかしたらそっち行くかもな……という予感があるのと、最近物騒なので」

 

 そこまで物騒だっただろうか。

 思いつくことといえば──

 

「あのエリュシオンとかいうやつら?」

 

「…………」

 

「っ……?」

 

 それを聞いた途端、アキヒロは顔をハッキリと歪めた。

 

「な、何かあったの?」

 

 基本的に彼らは商工会および探索者を目の敵にしているような節がある。それ関係で不快な思いをしたのだろうか。

 

「これは……ただの雑談なんですけどね」

 

 その出だしでただの雑談なことが果たして本当にあるのか。

 

「商工会は彼らを放置しておくつもりですか?」

 

「うーん……」

 

 答えに困ることだった。確かに面と向かって否定されているという面から見れば敵なのは間違いないが、実害が出ていないので手出ししづらいのだ。もし手を出せば、味方をしている民衆から大抗議が始まるのは間違いない。

 

「第1セクターにも奴らはいました。正直……なんとかしないと、取り返しがつかないことになります」

 

 推量や推定ではなく、断定だった。

 

「…………」

 

「そうなれば方目さん、比喩表現じゃなくてあなたの身が危険に晒されることだってあり得るんです」

 

 正直、ナナオにはわからない領域の話だった。

 彼が何をそんなに懸念しているのかがいまいち飲み込めないのだ。

 

「でもさあ……私に言われても困るっていうか……」

 

「──方目さん」

 

「えっ!?」

 

 アキヒロが、正面からナナオの手を握っていた。

 こんな情熱的なお誘いが!? と驚くナナオとは対照的に、アキヒロは眼が険しすぎる。

 

「真剣な話なんです」

 

「…………じゃあ、私も真剣にね?」

 

「ええ」

 

 スッ、と手が離れた。

 

「その……ごめんね、私には何がどう危ないのかがいまいち分からないから……加賀美くんが何を考えてるか、よくわかんないの」

 

「…………」

 

 それをアキヒロは、無言で聞いていた。

 

「だって、探索者があの人たちに負けるわけないじゃん? 商工会だって小さい組織じゃないし、確かに住んでる人全員があれに賛同すればとは思うけど……そんなあり得ないことを考えてもしょうがないよ……」

 

「…………」

 

 難しい顔で考え込み始めたアキヒロを見て、ナナオは思う。

 

 やっぱり、違いすぎる。あまりにも思考のプロセスが違いすぎて、ついていくのが精一杯になってしまう。彼がナナオという人間のことを少しだけ外れた人間だと思ってるのは節々から見えてくるが、それは違う。

 彼が外れているから同じように対応しているだけの話だ。

 

『アルコバレノの怪物』

 あの絵は、見たものに本能的な恐怖を呼び起こさせると言われている代物だ。言われているし、実際アレを見ているだけで震えるような恐怖がウチから湧いてくる。

 商工会内部の人間しか知らないことだが、アレは誰かが描いたものではない。

 出土品だ。

 しかも出土するのは第一期の遺構に限定されている。つまり、絵自体にはさまざまな種類があって、それらを纏めて一種類の絵としているのだ。

 

「あー……加賀美くん?」

 

「……はい、なんでしょう」

 

「デートでもしない?」

 

「浮気になるのでダメですね」

 

「じゃあ市場調査!」

 

「ならいいか」

 

 言い方の違いで許されるんだ……と流石にドン引いた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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