【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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27_そういうこともある

「むふふ」

 

「……」

 

「むふふふ」

 

「…………」

 

「むふふふふ!」

 

「楽しそうだな」

 

「……たのしーに決まってるじゃないですか!」

 

 もう入学から1ヶ月くらい経つんだけど、いまだにアリサは一緒の大学に通っているのが嬉しくて仕方ないらしい。

 もちろん俺も嬉しい。

 

「はぁ〜……ヒロさんと同じ学校にいるんですよねえ私……!」

 

 今歩いているのは、講義棟の階段。昼までの講義が終わって昼食をとりにいくところだ。

 

「友達とか作れた?」

 

「作りましたよ!」

 

 ブイブイと人差し指中指を立てる。まあ、アリサのコミュ力で作れないわけないわな。

 逆に俺は作れてないわけだが、これは決して俺のコミュ力が破滅的とかそういうわけではないので悪しからず。

 

「ホントーに金持ちばっかで最初はどうなるかと思いましたけど……意外とみんな良い子でした!」

 

「良い子が集まる学校みたいなところはあるけどな」

 

「──確かに!」

 

「俺は一緒にいれて嬉しいけど、友達と一緒に食べなくて良いのか?」

 

「はい! 今日はヒロさん──先輩と一緒に食べるって先に言ってあるんです!」

 

「あ、そうなんだ」

 

「むぅ……先輩!」

 

「なんだい、後輩」

 

「!」

 

「こ、こら、尻尾はいったん落ち着けて……」

 

 こんな廊下で尻尾巻き巻きなんてエッチすぎます! 猫耳ちゃんももうちょっと落ち着いて! ただでさえ俺は浮いてるんだから、変なことをしたらアリサまでハブられちゃう! 

 

「──あ、そうだ」

 

「ん?」

 

「飲み会来るかって誘われてるんすけど……行っても、良いかなあって」

 

「良いでしょ、行きなよ」

 

「…………」

 

 つまらなそうな顔をするのはわかっていた。

 

「何も思ってないんじゃなくて、ちゃんと帰って来てくれるって信じてるだけだよ」

 

「っ! ヒ、ヒロさんっ……!」

 

「どうどう」

 

 落ち着いてね。

 

「でも……アレだな、コマちゃんには着いてってもらうか」

 

「良いんですか? 借りちゃって」

 

「別に俺のじゃないしな」

 

「それは違うんじゃないですか〜?」

 

「だってあいつ、真面目なシーン以外で俺の言うことあんまり聞かないっていうか……ビジネスライクなところあるし」

 

「ふーん……?」

 

 食堂は学生で賑わっている。

 ミツキは広瀬さんたちと一緒にご飯を食べていたので、軽く手を振っておいた。

 

『アキくーん』

 

 広瀬さんは嬉しそうに大きく腕を振ってくれた。

 ええ子や……

 

「あそこの席、空いてますね!」

 

「じゃあそこにしようか」

 

 いったん荷物を置いて飯を受け取ってから戻ると、俺の席に男が1人座っていた。俺から話しかけると怖いかもしれないから、まずはアリサがなんとかするのを待つ事に。

 

「あれ……小野田くん、だっけ?」

 

「ようアリサ」

 

「うん、どうしたの?」

 

「俺もここでご飯食べようかなって。アリサの荷物見つけたからさ」

 

「!?」

 

 わしの荷物わい! 

 ……床に落ちてるぅ!? 

 しかも椅子の足で踏んづけられているう! 

 

「あー……その、そこにあった荷物は……」

 

「……ん? ああ、なんだこれ。全然気付かなかった」

 

 これがお貴族様の腹芸!? 

 いや、腹芸なのかどうかすらわからないけど……ともかくアレの中には魔石が入ってるから、砕けてなきゃいいなあ。

 

「そ、そこの席、実はこの人が……」

 

「…………」

 

 めっちゃ睨みつけられた。

 分かってるよな、っていう意が込められている気がする……! 

 ライバルなのか!? 恋はハリケーンなのか!? 

 

「……はあ」

 

 無反応でいたら、やれやれみたいな顔で改めて立ち上がった。

 

「悪いんだけど、今からアリサ──この子と一緒にご飯食べるから、席変わってもらえない?」

 

「え?」

 

「──失せろって言ってんだよ」

 

「ううっ」

 

 耳元でそんなボソボソ喋られたら流石に鳥肌立つからね? 探索者もそういう無害な奴には一々防御力高めたりしないから。

 

「ほら荷物返してやるからさっさと──」

 

「いや、後から来たんだからキミがどきなよ」

 

「…………」

 

 とりあえず、料理はテーブルの上に置いた。

 これで何があっても一安心! 

 

「あのお……」

 

 アリサが恐る恐ると言った様子で声をかけて来た。

 

「大丈夫」

 

「そ、そうですよね」

 

 大学生なんだから、話せば分かってくれるはずだ。

 

「お前、どこの学部だか知らねえけど……火傷しないうちに退いたほうがいいぞ。というか、失せろ」

 

 どこかへ目配せをした。

 

「──わお! まさかそんなおしゃれな言い回しをできるなんて驚いた!」

 

「は?」

 

「キミ、頭良いんだろう? 流石に裏金入学なんてことはないだろうし、ちゃんと受験で通ってるはずだ」

 

「何言ってんだお前」

 

「会話が成立するということは、ある程度論理的な思考が養われている証拠だ。この世界でそこまで教養を育めたことは素晴らしいと思う。純粋に賞賛に値するよ」

 

「…………」

 

「だけど、そういう脅しをするには足りないものがある。金と力と権力だ」

 

「あ?」

 

「キミが起業していて多くを稼いでいるのなら今のは撤回しよう。だけど俺の服装を見て質素だからと判断しての事なら──あるいは、これまでの人生でそう扱われてきただけだというなら、今のうちに改めよう。うん、俺も手伝うからさ!」

 

 アリサが素敵な女の子なのは俺が保証するところだけど、流石に認められないこともある。

 

「それに、お父さんたちのお金やそれに伴う周囲からの態度がキミ自身の力だと思っているのなら、それは大きな間違いだ。もう少し常識というものを勉強してきなさい」

 

「──!」

 

「少なくとも……アリサが俺のモノだということは、キミが何者であっても変わりない事実だ。そこにキミが入り込む余地はない。申し訳ないが、昼食の時間を邪魔しないで──」

 

 昼食が跳ね飛ばされた。

 

「てめえ……大人しく聞いてりゃよお……」

 

 俺の食事がああああ! 

 

「ま、まあ落ち着こうか? ほら、ここは大学だ。力で解決じゃなくて金と腕力で……」

 

「ヒロさん、それ同じです」

 

「くっ……!」

 

 とりあえず荷物を漁る事にした。

 

「大丈夫だよな……あっ」

 

「えっ、ま、まさか……」

 

「く、くだけとる……」

 

「あ〜……」

 

 あーって目で見るしかなかった。

 

「──は? 弁償? いや意味わかんねえけど」

 

「うん、だからね。キミが動かした時に俺がモンスターから取ってきた魔石が砕けちゃって……多分、椅子の脚の下敷きにした時にそうなったのかなあって……うん、だからこれは流石にねえ、うん……うん……」

 

「いや、知らねえよ。勝手に砕けたんだろ」

 

「っすー……いや、あー……悪いんだけどコレはねえ。流石に無理だ」

 

 周囲から段々と人がいなくなって、数人が近付いてくるのを感じる。

 俺も大学生だし、あんまり暴力沙汰とか起こしたくないからすんごい大人しくしてたんだけど……流石にね? 

 

「だから知らねえって──」

 

「おい」

 

「っ!?」

 

「いつまでパパの力で助けてもらえると思ってんだ?」

 

「は、なせよっ……!」

 

 当然離すつもりはない。

 顔面を鷲掴みで持ち上げるという男子ならば憧れるアイアンクローのお披露目だ。

 

「人のものを壊しておいて、謝罪もなければ金も出さない。罷り通ると思ってんのか?」

 

「いでででで! だから知らねえって──」

 

「挙げ句の果てにはアリサと飯が食いたいだあ? もう少しマシな脳みそ持ってから話しかけてこい」

 

「っ……」

 

 とにかく、さっさと問題は解決するに限る。

 

「アリサ、悪いんだけど昼飯はミツキか友達と一緒に食べててくれ」

 

「あ、はいっ!」

 

「教務行ってくる」

 

「え、その状態でですか?」

 

「そうだよ」

 

「あ……じゃあ私も行きます」

 

 道中、何度かもがいたり殴ってきたりしたけど、最終的には諦めたのか大人しくなった。

 

「えーっと……小野田くんが魔石を壊して……?」

 

「あと、俺の昼飯もひっくり返しました」

 

「…………それはちょっと、私たちには何とも言えないというか……」

 

「期待はしてないですよ? ただ、弁償しないっていうからこれからコイツを商工会にも連れていくんですよ。だから先に報告しておいただけです。──ところで、名前を教えてもらっても?」

 

「え?」

 

「名前」

 

「あの……」

 

「後で聞いてないなんて言われても困るんで」

 

「いや、そんなことは──」

 

 金持ち学校なので、そこら辺の忖度はありきだろう。なので、逆に脅しとして機能させることにした。

 お前の責任問題でもあるぞ、と。

 

「あの、それよりも小野田くんを離してあげては……」

 

「……そうですね」

 

 手を離しても逃げることはなかった。

 そこにアリサが。

 

「小野田くんあのさ、この人私の彼氏だから。あと私、小野田くんみたいな人のこと嫌いだし、コレ以降は関わってほしくないかな。普通に犯罪だからね? 人のもの壊すのって」

 

「……ればいいんだろ」

 

「?」

 

「弁償すりゃ良いんだろ」

 

「……いや、それだけで済むわけないじゃん」

 

「え」

 

「まず謝ることからじゃないの?」

 

「いや、でも金が──」

 

「もしかして謝ったことない感じ? うわ、まじか……」

 

 アリサは嫌悪感を顔に滲ませてコチラを見た。

 

「早く終わらせません?」

 

 怖い……

 

 

 ──────

 

 

「はぁ…………なんか……はぁぁ……」

 

 話をつけた後も、アリサは大変ご立腹だった。

 よっぽどあの男の子の行動が腹に据えかねたらしい。俺はぶっちゃけ頭に来てるわけではないというか、とりあえず解決したかっただけというか。

 

「なんか……お金持ちでも全員が良い子なわけじゃないんですね」

 

「まあ、人間色々いるから」

 

「いやぁ…………なんか……は〜……」

 

 大層ご立腹ですね……午前中が機嫌良かっただけにギャップですよ。

 

「そりゃあ全員が善人だなんて思ってませんけど、どうやったらあんな人間が育つんですかね」

 

「…………」

 

「い、いや! 私はそりゃお店襲いましたけど、アレはそういう環境だったからで!」

 

「まあ、そういうことだよ」

 

「え?」

 

「どんな環境でも良くない人はいるんだから、うまくやってくしかないんだってばよ」

 

「何ですかその口調……というか! ご飯食べてませんし!」

 

 確かに。

 

「あーもう! 腹立ってきた!」

 

 立ってきたっていうかさっきからずっと怒ってるじゃん。

 

「いったんご飯食べましょ!」

 

 やっぱ早めに対応しといて良かったわ。

 

「んー……大学のご飯って結構美味しいですよね!」

 

「その分、普通より高いけどな」

 

「確かに! ……作ります?」

 

「ええ? 良いよ別に、コレくらい出すよ」

 

 朝起きてご飯作るのって疲れるじゃん。

 

「……作ります!」

 

「あ、はい」

 

「楽しみにしててください」

 

「楽しみにしてます」

 

「ふんむ」

 

 アリサは鼻息荒くそう宣言した。

 

 ──それにしても大学で彼女飯か……最高だな。

 

 昼食後は当然、講義だ。

 一般教養でしかもミツキとアリサどっちとも被ってる。

 

「……あ」

 

「あ」

 

 あって言うのやめろ。

 普通に挨拶しろ。

 

「とりあえずアキは真ん中だね」

 

「そうですね」

 

 まあね……

 

『物理的な解釈として、距離というものは点と点を繋いだときの座標の差として表されます。ですが魔素的な解釈をそこに含めると、空間そのものが質量誤差による歪みによって──』

 

 講義の内容としては地理に関することで、近距離点計測の合計と遠距離点計測がどうして大きくズレることがあるのかについての研究内容だ。

 その中で、今回はそもそも世の中に存在する計測器具にはどのようなものがあるのかという説明だ。めちゃめちゃ基本的なところで、そういえば大学ってこういう普通に面白い講義もあったなって思い出させてくれる内容となっております。

 

「…………むふ〜」

 

「……ちっ」

 

 なっているので、あんまり険悪な空気は良くないよ2人とも……講義に集中しよう? 

 

 アリサが、いきなりミツキの匂いを嗅いだかと思うと猫みたいに目を細めだしたのだ。それに対してミツキも余裕の笑み? を見せるものだから、もう冷戦です。

 

「……」

 

 ギチギチと音を鳴らして耐える俺の服。

 何に耐えているかというと、尻尾の渾身の締め付けだ。

 やめて……! それ以上やったら圧力で切れちゃうかも……! 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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