【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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28_お仕事が早ぁい!

「飲み会どうすんの?」

 

「んー……小野田君がいるなら辞めようかなあ」

 

「聞いてみれば?」

 

「そうしまーふ」

 

 ピポパと友達に確認を取っている最中のアリサの横顔は最初こそ険しかったものの、通話相手と小野田何某の悪口を言ううちに和らいでいった。

 

「そうなの! それで人の荷物グチャグチャにしてさ! マジあり得なくない!?」

 

『──』

 

 あり得ないと思う。

 

「しかもご飯もガシャーンだからね!」

 

『────!』

 

 されたわ、ご飯。

 

「それでよく女の子に見てもらえると思ってるよね。だから呆れちゃったよ」

 

『────?』

 

「あ、うん。じゃあ講義全部終わったら待ち合わせね〜、バイバーイ」

 

『──』

 

「アイツ来ないって連絡来たらしいです」

 

 アイツ呼びになっちゃった。

 

「まあ、あんなことになった後だからな。気まずいんだろ」

 

「楽しみ〜!」

 

 商工会に行くのは無しにしたけど親御さんには連絡が行くようにしたし、既に個人的な報告は済ませてある。大学が金持ち様のための学校なのはその通りだけど、このあと報復に来るにしても流石に探索者に真正面から喧嘩売ってきたりはしないだろ。あと、してきたら商工会から調べも入る。なんもねえべ。

 

 ──そう思っていた時期が俺にもありました。

 

 講義後アリサと別れた俺は、当然家に帰ることにした。ミツキは広瀬さんと一緒に(実家)に遊びに行くらしいから、そこに無理に首を突っ込むわけにもいかない。

 友達との時間は大事だ。

 特に若い子にとっては。

 

「………」

 

 大学を出てすぐ、なんだか嫌な予感がした。

 ジットリした空気というか……父さんと一緒にいる時の、常に何かに襲われそうな感覚を覚えた。一応何もないことを確認するために裏路地に入ったら──

 

「まあ、その…………恨みはないけどこれも仕事だからね。運が悪かったと思って諦めてくれる?」

 

 これですよ。

 俺単体を狙っての暗殺者とか初めて見たわ。

 正直言って恐ろしい。そこまでしてメンツを保ちたいか?

 

「そんなコテコテのセリフ言うやついるもんなんだな……ちなみにレベルは?」

 

「悪いね、39なの」

 

 探索者崩れが、駅へ向かう俺の進路を塞いだんですよねえ。流石に50以上の崩れはなかなかいないか。そもそも50まで行ったら辞める理由あんま無いしな。金に困ってんだったら闇の深いところじゃなくて物理的に深いところで稼げば良いだけだし。おそらく深い事情というやつがあるのだろう。

 

「俺のレベルは50くらいなんだけど、大丈夫そ?」

 

「……は? ……いや、嘘だね。大学生ごときがそんなレベルまで到達できるわけがない」

 

「あり得るんだなこれが。魔素溜まりって言えばわかるか?」

 

「…………」

 

 しかし、人目のない場所だからか構えたナイフを離すつもりは無いらしい。というか、探索者崩れのくせに仕事早いな。昼のアレで夕方にはもうやってくるのか。

 

「マジでやる感じ?」

 

「金はたくさんもらってるし、キミを殺せばもっと貰えるの」

 

「あー……」

 

 確かに、それなら相手の言葉よりは金をアテにしたほうがいいか。

 いや、いいかあ?人殺して手に入れた金で食う飯とか絶対美味しくないよ。

 

「じゃあ、やりますか」

 

 それはそれとして、ナイフをリュックから取り出した。もちろん魔剣です。

 

「──! …………まさか、大学にまで武器を持ち込んでいるなんてね」

 

「治安云々以前に、武器がなかったら街中でモンスターが出た時に素手で対処しなきゃいけないからな」

 

 俺が無差別に人間を殺すような輩だとは思わないでほしい。

 

「──悪いけど、キミがどれほど強かろうが関係ない」

 

 女は手を翳した。

 異能の類かと思って身構えると、すぐに女は手を翳すのをやめて歩き出す。

 落ち着いた歩き方、足音が聞こえないぐらいには慎重だ。

 

「……」

 

 もしかしたら手を翳してから時間差で発動するタイプかもしれないので、やや斜めに後退しながら二つの攻撃に対応するイメージを持つ。

 

 いわゆる属性攻撃と呼ばれる火球や電撃、氷柱などであれば避けるか砕くなどをしつつ、女の二手目を警戒する必要がある。単純な火力だけを見ると、その探索者のレベルと乖離した威力を持っていることが多く、レベル10程度の差でもひっくり返しうる鬼札として機能することもしばしば。

 ただ、こちらは当たらなければどうということはない類だ。同格以上でなければ、ブラフにブラフを重ねてようやく当たるものが多い。

 雷撃は無理。

 

 直接攻撃でない場合──つまり、精神系の攻撃の場合はもう少し厄介だ。

 

 具体的には幻覚や幻聴が最もわかりやすい。そこにあるはずのないものが見えたり、とんでもないところから声が聞こえてきたらと、こちらが敵を敵と認識するのを阻害する。

 探索者とて、家族を全力で攻撃することなどできない。それが家族ではないと明確に分かっているならともかく、精神攻撃を受けている最中は明瞭な意識レベルでない場合も多い。

 

 こちらは防ぐ術が極端に少なくなる。進化を続けた防具や魔除け? みたいなアイテムであれば退けられると言う話は聞いたことがあるけど、市販のもので防げたとは聞いた試しがない。アルミホイル巻いたら行けるかもな。

 

 ちなみに俺の場合はコマちゃんの声を聞くと正常な状態に戻ることができるので、今のところ困ったことはなかった。

 今、困ってるけど。

 

「さて、どっちかな?」

 

「…………?」

 

 ピタリと女が足を止めた。

 視界の両端にギリギリ入る位置で止まってくれるのは大変ありがたいが、反応が妙だった。骨のお面被ってるから表情は読み取れないけど、何故か一歩も動かない。

 ……もしかして、もう食らってる? 

 

「どっち……?」

 

「…………」

 

「何、どっちって」

 

 果たして、その質問がそもそもこの女から発されたものなのかが怪しい。

 

「見えてる? …………いや、見えてる筈ない」

 

「……」

 

 それとも何かがあそこにあるのか。

 あの、一見何もないように見える空間に。空気に紛れた攻撃──風の刃のようなものが隠れているのかもしれない。

 

「──っと」

 

 女が妙ちくりんな雰囲気を纏っている間に少し距離をとった。何故動かないのか分からないけど……やっぱりもうヤられてるって考えたほうがいいか? 

 この状態だともしかしたらコマちゃんも呼べないかもしれない。

 

「さっさと殺しとくべきだったか……!」

 

 基本的に、ダンジョンで襲われた際は相手に主導権を渡してはいけない。善人だとか悪人だとか関係なく、卑劣かつ狡猾にあるべきなんだ。

 地上にいて、ミツキやアリサとフワフワした時間を過ごしていた直後だったから完全に気が抜けていた。

 

「──キミ、私のこと見えてる?」

 

「…………」

 

 どういう質問かが分からん。

 見えてるけど、見えてるってことはつまり異能の術中にハマってるってことなのか? それとも、ハマってないってことなのか? 

 やっぱあの何もない空間にいるのか? 

 

 答えると情報が相手に渡ってしまう以上は、口を開く意味はなかった。考えるだけなら声なんて必要ないからな。

 

「…………!」

 

 まずは、あの空間に何かがあるのかを確認することにした。

 

「はぁっ!」

 

 全力で地面を踏み砕いて加速し、魔剣を盾に突っ込む。仮にそこにいるなら、勢いだけで轢き殺すつもりだった。トラップが仕掛けてあるなら、左腕を犠牲に破壊するつもりだった。後々嫌なタイミングで誘導されるくらいなら、自分から突っ込んだほうが幾分かマシだからな。

 だけど、身体に何かが当たった感触はない。五感すら誤魔化されるような高度な異能でもない限り、何もないことは確定させた。

 

「は、はや……!」

 

 女は硬直している。

 やっぱりこいつ、本物か? 

 

「…………っ!」

 

 女は、画面から覗く目を厳しく狭めると俺のことを睨んでいるようだった。

 

「……」

 

 空間のどこから攻撃が飛んできてもいいように、神経を研ぎ澄ませる。まず犠牲にするのは左腕、そう決めていた。利き腕さえ残ってれば格下は殺せる。人間同士で違う時は覚悟の差がモノを言うんだ。

 

「──見えてるんでしょ!」

 

 何が見えてるのか言ってくれないと、俺も答えたくないんだよな。常に情報戦の中にあるって考えると、本当は一歩も動きたくない。だけどそうすると、相手の動きに身を委ねるってことになる。

 本当に精神系の攻撃ってのは厄介だ。

 まあ精神系って言ってるけど、実際のところは脳への攻撃? だと思う。

 

「!」

 

 女を常に視界の端に入れながら辺りを見回す。増援らしき人影はなく、女の姿が二つに増えているってこともない。

 

「──っ!」

 

「……」

 

 女は、真っ直ぐに突っ込んできた。勢いそのまま首を掻っ切ろうとしたナイフに魔剣を合わせると、しっかりと受け止めることができて一安心だ。

 

「やっぱり見えてるんだな!」

 

「…………」

 

「……ナイフが…………レベルの話は本当だったんだね」

 

 女のナイフは欠けている。魔剣が神器であるというのは知らないだろうが、少なくとも自分が持っている武器より格上のものだということは認識したらしい。

 

「俺の目の前にいるお前が本物であるなら……俺はお前を見ていることになるな」

 

「…………なんで掛からないの」

 

「知らない」

 

「そう簡単に話してくれるわけもない──かっ!」

 

 また、女は勢いよく走り出した。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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