【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
不貞腐れた頬。
面白くなさそうな口元。
やや寂しげな眉。
裾を握る小さな手。
どれもがマイナスの感情を表していた。
「早苗ちゃん、だからな……」
「聞きたくない」
「………」
「……アキヒロくんなんて知らない」
アキヒロが彼女にお留守番を頼んだら相当頭に来たようだ。それもそのはず、妹と示し合わせて自分を除け者にしようというのだから。
「ほら、この前は日向に許してもらったじゃん……その代わりというか……」
「――アキヒロ、姉ちゃんにいつまでも構ってんなよ」
準備を終えた日向が、冷たく姉を切り捨てる。
「もう姉ちゃんだって大人なんだから、自分の感情くらい自分で整理させろ」
「………」
アキヒロは手を引かれるがまま、早苗から離れた。
部屋を出ると、デコピンが1発。
「お前が甘やかすといつまで経ってもあのまんまだぞ」
「そうか……そうだな」
内心では分かっていても、なかなか飲み込みきれないことがある。大事な人であるならば、尚更冷たくあしらうのは違う気がした。
「というか……どちらかって言うと、お前が悪いんだからな!」
「………」
「前日だからそんなに言わないけど、いつまでもハッキリしないからそうやって面倒な女ばっか引き寄せるんだ」
そう言われても、という感情はある。しかし突き詰めると日向の言う通りでしかないので、反論の余地はなかった。
「いいか?ダメって言ってるんじゃなくてハッキリしろって言ってんだよ!ったく……高校の時はズバズバ切ってたくせに」
「………」
「お前アレなんだな。距離が近くなると誰にでも甘さが出るんだな」
グゥの音も出ずに黙り込む。
「姉ちゃんだって本当にお前のことが嫌いになったわけじゃねえんだから、そんなこといちいち気にすんなよ」
「ふぅ……中々、難しいな」
「お前が難しくしてるんだっつーの!」
――――――
「――いらっしゃい!待ってましたよ!……おっ、君がレイトかな?」
「よろしくお願いします!」
「ああ!よろしく!」
「君は……シエル!」
「そう」
「なんかその感じ、すっげえ見覚えがあるなあ!そんで…………ハシュアー?」
「どうもです」
秋川家。
信仰の寄る辺。
周辺に住まう人々が商工会などよりもよほど信頼するその地へやってきた一行。駅に到着した彼らの前には赤髪のイケメンが待っていた。前回はハッピーハッピーハッピーな感じだったが、今日は心無しかちんまりしているような。
「なんかテンション低いな」
「寒いんですよ」
駅から家までは当然徒歩。
シエルとレイトは、例の神様の発祥の地がどのような町かということが気になっていた。街の作り自体は、他の街とそこまで大差ないような気も――しかし、違うこともある。
「探索者が……少ないような?」
「昼だからでしょ」
「いいや!気のせいじゃねえぜ!」
「「!」」
元気に答えたのは先頭を歩くロイス。
振り向いた顔に浮かぶ人懐っこい笑みの青年は今、レイトの疑問を肯定した。
「神様がこの土地を守ってくれてるからな。他の地域に比べるとモンスターの脅威はだいぶ薄いはずだ」
胸を張って、それは自分たちの信仰対象が成し遂げている偉業だと誇っていた。そこには引けやハッタリなど微塵も感じられない。
「………」
「山田先輩もそうでしょ?」
「あー……まあ、そうだな」
微妙な顔をしていた日向に対して、ロイスは共感を求める質問を投げた。同じく神への奉仕者として、自然と身を投げ出したくなるほどの恩寵を賜っていると信じてのものだ。
「ん?山田先輩のところにもいましたよね神様」
「ああ、まあ……」
言えない。恩寵どころか呪いをもたらす邪神でしたなんて。
言えない。お前のところの神様に消滅させられて神社ごと乗っ取られましたなんて。
もちろんコマちゃんには感謝しているが、改めて文字にすると酷すぎた。これが善の属性に寄っている神でなかったら抗議の一つでもしていたところだ。
「なんかあったんすか?」
「……いや、なんもないけど」
「ふーん?」
本人がそう言うならば、と首を傾げつつも納得してレイトに視線を戻す。
「とにかく、神様のおかげで俺たちのセクターはめちゃくちゃ安全なんだぜ!駅にも俺んちの名前ついてるしな!」
「確かに名前ついてましたもんね」
駅の名前は秋川駅だった。
神社の祭司の家系の名前が載るという普通ではないことも、普通ではないものが上にいるのであれば――と納得がいった。
「2人は今何歳なんだ?」
「えっと、今は17歳です」
「15」
「へー……じゃあレイトは俺の一個下か」
「18歳なんですか?」
「うん、今年卒業したばっか」
「大学には行かないんですか?」
ぱっと見で身なりが綺麗というのが明らか。
それに、これまでの話を総合してもこの街における地主みたいな立ち位置だと理解できた。そんな彼の一家がお金持ちでないわけがない。そうなると普通は大学に行くのではなかろうか。
しかし、ロイスは苦笑する。
「おれが大学行ってもやりたいことなんてないからな。そもそも神社の跡取りっていう大事な仕事が待ってるし、やりたくないわけでもないから」
「でも、加賀美さんは大学って金持ち達がパイプ?を繋ぐところだって言ってましたよ」
「あのね……あの人の言うこと真面目に聞いちゃダメだから」
「ええっ」
「いやまあ、普段はいいよ?普段はいいけど、気持ちよさそうに語り始めたら大抵ぶっ飛んだ結論に行き着くから。あるでしょ?そういうの」
「……まあ、はい。あ、でも大学に関してはミツキさんもそんな感じって」
「あ、そうなんだ。それは失礼」
アキヒロは空を見ていた。
「見ろあの顔。今の話聞いてるくせにマジでなんとも思ってないからな?あの人、俺たちの言葉を聞いてはいるけど結局自分のやりたいことやってるだけだからあんな顔できるんだぞ」
アキヒロはガーン、と表情を作る。
「ショック受けたみたいな顔してるけど、それで振り回されてたの俺たちなんですからね?これくらい言わせてくださいよ」
「後輩がひどい」
「うわ、被害者ムーブとかタチ悪……レイトは先輩とどこで会ったんだ?」
「えっと……ダンジョンで」
「助けてもらった感じ?」
「あ、はい………えっと、ロイスさんもそうなんですか?」
「そっ。実家で助けてもらった」
「?」
「意味わかんないだろうけど、実際そうだから」
その実家に到着した。
「うわあ……神社ってどこもこんな感じなんだ……」
感想として適切なのかどうかよくわからないが、レイトの目にはひたすら大きい土地を持っているということしか写らなかった。なにせ、今も地元民らしき参拝者が階段を登っていっているそこが実家だというのだから。
ついでに、ロイスも一つの事実に気づいた。
「………あっ、もしかして山田先輩ん家に行ったことあるのか!?」
「そ、そうです。この前……2ヶ月くらい前?に行きました」
「うわマジかー、先にうち来てもらいたかったわ〜」
「なんでですか?」
「だって先に山田先輩のところ行ってるんだったら二番煎じにしかならないじゃん……」
絶対うちの方がすごいのに……とややガッカリした様子のロイスにヒナタも反論を聞かせる。
「バカ言え。お前ん家よりもウチの方が広かったわ」
「いやいや、そこは負けらんないですね」
――!
「あ、おい」
謎の実家プライドがぶつかろうかというタイミングで、いい加減入り口で待っているのに飽きたハシュアーが駆け出した。
「元気だなあ……」
「――客人をいつまでこんな寒い外で待たせる気だ?私んところはこんな冷たい扱いはしねーぞ」
「おっと、そうだったそうだった!じゃあ行きますか!」
階段を上りきると、アキヒロは割と見慣れた光景が広がる。
「はい、俺が一番乗りね!」
「うわー!負けちまったな!」
「ロイスん家はどこ!?」
「こっちこっち」
急かすハシュアーを追い抜かしてロイスの向かう先。
本道から脇へ逸れて木立の奥へ石畳が続いている。
木立の手前では老婆が箒で地面をかいていたが、足音で気付いたのか顔を上げた。
そしてロイスがいるということに気付くと軽く頭を下げ、レイト達に話しかける。
「おやおや、大勢でおいでなさるって話でしたけど……本当に多いですねえ。こんなにたくさん友達が来るなんて小学校の時以来ですか」
「マキさん、お久しぶりです」
「――ああ、加賀美さま!先日はありがとうございました」
「ああいや、帰省は俺絡んでないんで」
一瞬ではあるが、コマちゃんが帰省していた。
「そういえば、これ」
「――!」
コマちゃん人形を袋から取り出した。
「前回は渡せなかったんで、お渡しさせていただきますね。少しの間ですが、よろしくお願いします」
「おおほお!」
「マキさん!?」
女中のマキは奇声をあげ、老婆とは思えぬ勢いで階段を駆け降りていった。目の前で老人が妖怪変化をしたアキヒロは硬直しても仕方あるまい。
「せーんぱいっ」
「………はい」
ロイスの手の上にも人形が渡る。
「おお〜!いつにも増してクオリティ高えー!先輩暇なんすね!」
「みんな見たかー、これが先輩に対する後輩の態度だぞー」
「ありがとうございます!」
「みんな、後輩っていいよな」
先輩と後輩のイチャイチャもいいが、ここはまだ参拝者の目につくところ。何だあの変な奴ら……とジロジロ見られている。
「お前ら男同士気持ち悪いな!ロイス!いい加減案内しろ!」
「へーい」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない