【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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34_神社の役割と、破綻

「はーい、いらっしゃーい」

 

 この、家風と比べてだいぶ軽い感じの女性はロイスの母親だ。前回来た時は入院中だった。なぜかというと──

 

「ほら、この人がアキヒロ君でちゅよー」

 

「あだあ! だっ……ばっ!」

 

「よしよーし」

 

 妊娠中だから念の為ってことだったと聞いている。まあね、大切な一族の娘だから流産なんてあっちゃいけないよね。

 おかげなのか知らんけど、5体満足で健康な子が生まれてきたって聞いてはいた。

 

「お兄ちゃんだぞ〜!」

 

「あっ! だっ! だっ!」

 

 ロイスは妹にベタ惚れだ。

 

「少し妬いてしまうくらいです」

 

 早く作りなよ──という圧倒的セクハラを口に出したくなる。言わないけど。

 2人ともまだ若いから色々とやりたいもんな。変な意味じゃなくて。変な意味もあるけど。

 

「うわー可愛い!」

 

「ふふ、そうでしょ?」

 

「赤ちゃんだあ……」

 

「だっだっ! あー!」

 

「猿みたい」

 

「し、シエルちゃん!」

 

「いいのよ。そうね、赤ちゃんって猿みたいよね。気持ち悪い?」

 

「ううん、猿みたい」

 

「触る?」

 

「…………」

 

 恐る恐ると赤子に指を近付けると、反射的に掴まれる。

 

「……」

 

「…………ふふ」

 

「し、シエルちゃんが笑った……!」

 

 え、三船君の前でもシエルって笑わないの? 俺はほぼ初めて見たような気がするけど、マジでそんな感じなの? 

 

「あ、いや普通に笑いますけど」

 

 それはなんか違うじゃん? 何で俺の前だと全然笑わないの?

 あと、笑うなら失礼じゃね?

 

「母さん、まだ俺たち玄関なんだけど」

 

「あら、そうね! みんな、こっちへいらっしゃーい!」

 

「ごめんなみんな、ウチの母さんこんな感じだから」

 

 お前もしっかりその血は受け継いでるんだよなあ。

 

「ロイスは母親似なんだな」

 

「な」

 

「でも、良い人そうだな」

 

 ヒナタはいい母ちゃんに弱いからな。

 

「さてさて、部屋割りはどんな風にすればいいかしら?」

 

 赤ちゃんを抱きながら、ヒナタ達に向けてや建物案内をしてくれた。

 

「ヒナタちゃんは……むふふ……」

 

「な、なんですか」

 

「アキヒロ君と一緒でいいのかなー?」

 

「!」

 

「あー! 赤くなったー! 隠そうとしたでしょー、私そういうのわかっちゃうんだからねー?」

 

「う……」

 

 ……日向が恥ずかしそうにしてると俺まで妙に恥ずかしくなってくるな。

 

「というか、ヒナタちゃんと会うのってアレよね! 生徒会のなんか……あの……あ、そう! 親参加の打ち上げ! あったわよね、あれ以来じゃない!?」

 

「そ、うかも……?」

 

「いやー、大人になったわね〜」

 

 俺にはわかる。

 そう言ってる時は何も覚えてない時だ。

 

「ヒナタちゃんって昔結構ヤンチャだったもんね!」

 

「あ、いや……」

 

 というか、あのヒナタが借りてきた猫みたいに大人しくなってる。これも友達の親パワーというやつか。

 

「それで3人は別々?」

 

「あ、ええと……僕とハシュアーが一緒で、シエルちゃんは──」

 

「…………」

 

「うん?」

 

「……あはは、じゃあ3人で話して決めてもらってもいーい?」

 

「は、はい!」

 

 ハシュアーは、1人でいい! みたいなジェスチャーをしている。それに対して三船君は。

 

「でもさ、探索の時とかは一緒に寝るんだしこういうのにも普段から慣れてた方が──」

 

『いやいや! それこそダンジョンで普通に寝られてるよ俺! 今更レイトさんと2人きりは…………あ、イヤだってわけじゃないですから』

 

「そ、そっか……」

 

「決まりね! そしたらハシュアー君は1人だからちょっと狭めの部屋にしようかしら?」

 

『お願いします!』

 

「お行儀良いわね! こっちこっち!」

 

『おっとっとっと……』

 

 ハシュアーの背中を押して行ってしまった。

 

「──とりあえず荷物置くか」

 

「お、おう……」

 

 室内にはホッカホカのお布団が既に敷かれている。何故決まった段階で既に布団が二つあるんですか?

 というかフカフカじゃない、ホカホカだ。

 何これ、どうなったらこんなことになるの? 

 雷降ってんのに天日干しなんかできるわけないし、布団乾燥機でもあるわけ? 

 

「っしょと」

 

 とりあえず荷物を広げる。

 

「ヒナタ」

 

「は、はいっ」

 

「え」

 

「あ……」

 

「……とりあえず荷物置こうか、いつまで持っててもあれだぞ」

 

「…………」

 

 無言の室内。

 第一期と違って、持ち込むものなんて金と衣服がほとんど。荷物の整理は必要ない。しかしヒナタは首まで赤くして動かない。

 

「風邪引いたわけじゃないよな?」

 

「ち、ちがう。別にそういうのじゃない」

 

「ヒナタ……これ別にあの、変な意味はないぞ? 変な意味はないけど一応な? …………エッチなことはしないからな?」

 

「っ……べ、別に何も言ってねえだろ!」

 

「ごめん」

 

 それからもモジモジしているので、本当にトイレに行きたいのかもしれないと思って一応聞いてみたけど……

 

「違う……」

 

 俺は無力だ。

 

 

 ──────

 

 

 客人達が部屋で少しのんびりするための時間を設け、ロイスは母親と共に書斎で話した。ここならば、彼らが準備を終えて彷徨いても中に来ることはない。何せ、扉には書斎と記名したプレートが飾ってあるのだから。

 それに、中の声も漏れない。

 

「ロイス、説明してちょうだい」

 

 大事な話だっていくらでもできる。

 

「いやあ〜……俺にも何が何だかわかんねえよ。むしろ俺が聞きたいもん。母さん達の方がこういうの詳しいだろ?」

 

「……こんなの、あり得るのかしら」

 

「父さんがいればなあ」

 

 現当主であるロイスの父親は第一セクターにちょうど出張していた。あらかじめ分かっていれば延期もできただろうが、直接会わずに何かが分かるわけもない。

 

「あの穢れの量……何があったのかしら」

 

「先輩……」

 

「力にはなれないけど、せめて話だけでも聞いてあげたいわね」

 

 祈りを受けるにつれて集まる信仰。

 人々は祈る。

 信仰心とは別にして、居もしない形而上の存在に向けて願いを捧げる。自分のために、あるいは誰かのために祈る。

 大なり小なり、目玉焼きが綺麗に焼けますようにという身近で矮小な祈りから、モンスターの口に収まるという絶望の中からの脱出という奇跡まで。

 

 どうか──と純粋に祈るだけであれば、何もないだろう。

 

 しかし、人の祈りとは絶対的に純粋ではない。

 そもそも、純粋ではないからこそ願い、何かを望むのだ。真に純粋なのであれば──欲のない人間であれば、願いなどそもそも生まれない。

 人が祈る限り、それがどれだけ尊いものであっても人の思いという不純物が混じる。

 

「ロイス君……?」

 

「…………ソフィア」

 

 ちょうど、出かけていたソフィアが戻ってきた。

 

「何かあったの?」

 

 祈りに混じって吸い寄せられた穢れは、一つ一つだけを見れば無視できるものだ。そもそもが邪悪な祈りでない限り、そこに含まれる穢れは微々たるもの。それに大いなる器()は人と一々交換でどうにかなるほどやわではない。

 だが、それはあくまで一人一人だけを見ればという話で、祈りが集まれば穢れもまた集まる。

 

「俺たちは役目を押し付けて…………そのくせ先輩が困っていたら何も力になれないんだ」

 

 彼ら(秋川神社)の役割はそこにあった。

 

「……きっと、今からでも話せば分かってくれるよ」

 

「そうじゃないんだ……」

 

 神が受け取った祈り。そこに混じった穢れを浄化し、正常に戻す。どういった法則が働いて浄化が行われるのかはわからないが、彼らの一族はその役目と力を賜ったのだ。

 崇敬と佩服しかあり得ない、この地の真の支配者より。

 

 だが、人が増えればまた祈りも増える。

 破壊的な世界の変容から時間が経つごとに、安定した地域状況になるほどに、産めよ増やせよで人口は加速していく。

 そうすればどうなる? 

 

「俺たちじゃ……力が足りないんだ」

 

「そうなの?」

 

「昔よりも明らかに穢れの質と量が上がっているって……父さんもマキさんも、みんな言ってる」

 

「…………」

 

「何もできないわけじゃない……だけど……この役割を子供に引き継いでも、何も解決しないんだ……」

 

「会長にどの部分を押し付けてるんだっけ?」

 

「……先輩は、俺たちみたいに複雑な儀式を行う必要がない。すべてのプロセスを無視して浄化できるんだ」

 

「えっ……なんか、会長っていつもそういうの無視してる気がする」

 

「…………そうだな」

 

「でも、そっか。だから会長はたまにロイス君の家に遊びに行ってたんだ」

 

「そういうこと」

 

「とりあえず……会長がどんな様子なのか私もちゃんと見たいかも」

 

「…………そろそろリビングに戻ってるかもな」

 

 戻っていた。

 

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