【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「いやー、相変わらず冷暖房が効いてねえや」
「加賀美さんのお家はむしろいつも効いてますよね」
「だって温度に生活左右されるの好きじゃないもん」
「あははっ、我儘なんですね」
「おっ、言うじゃん」
何気なく団欒を行なっているアキヒロを、ソフィアはこれまた何気なく観察した。
「どこもおかしくないよね……」
「そもそも俺たちの一族じゃなきゃ見えないぞ」
穢れや祈りを目視出来るのは、役割を与えられた彼らの特別だった。故に、ソフィアがいくら目を凝らそうがそれが見えるわけもない。
「そ、そうだよね……ちなみに今はどんな?」
「…………ん?」
言われて、最初は気まずそうに顔を逸らしていたロイスは彼の姿を目に収めた。しかし、様子がおかしい。
「あれ……なんか……」
ソフィアの目の前で、頻りに目を擦り始めた。
「ロイス君?」
「おかしいな……俺、目疲れてるのかも」
「どしたの?」
「……なんも見えない」
「なんで?」
「いや、わかんねえ。俺の勘違いだったのかな……」
「……それなら良いんだけどね」
こんな堂々と秘匿情報を話していて良いのかというところはあるが──リビングだけでハシュアー、ヒナタ、ロイス、レイト、シエル、アキヒロ、ソフィアの7人がいるものだから、少しくらいヒソヒソ話していても目立たない。
「おいハシュアー、お前ちゃんと飯食ってんのかよ」
「食ってるから! いい加減身長のこと言うのやめてよ! こういうものなんだって言ってんだろ!」
「え〜?」
「そこは信じてよ!」
「まあ、ちゃんと食べてんならいいんだろうけどよ……こっちの方はどうなんだ?」
ブンブンと無手の素振りを行う。
「ちゃんと先生に教えてもらってるよ」
「ふーん……」
「な、なんだよ」
「お前アレだよな、真面目ちゃん」
「ちゃん付けすんな!」
普段はこうして集まらないので、好き勝手話していた。
「ねえ会長」
「お? ……あ、ちょっとごめんな」
「はい! ──シエルちゃん、何でお金数えてるの?」
ソフィアはまどろっこしくなり、直接聞くことに。ソフィアからしてみれば、これから結婚する相手家族が複雑な問題を残したままというのはやめて欲しかった。
それに、
聞かない理由はない。
「最近、どこか調子悪かったりしますか?」
「え? 調子? …………」
無言。
だんだんと上がっていく視線はやがて天井にまで届き、最終的に顎に手をやって目を瞑った。ウンウンと唸って何かないか捻り出そうとしているようだ。
「ないなら良いんですけど……」
「いや! 待て! なんかあるはず!」
「絞り出さなくて良いですからね? あればって話ですから!」
「ソフィアが言うってことは多分なんかあるんだろ」
「無いなら良いんですって!」
「……うーん……やっぱ思いつかねえ……なんで?」
「えーと……ロイス君が会長から変な気を感じるって」
「変な気? ……あっ! そうだそうだ! 忘れてた!」
そう言って、慌てて部屋から持ってきたものは──
「うわああ! 目が潰れるうう!」
「ロイス!?」
「ロイス君!?」
「それダメ! 見れない!」
途端に目を両手で覆ってソファーに突っ伏した。
「ああ……!」
「ロイス君、大丈夫!?」
「ロイス!」
アキヒロはお守りをポケットに仕舞い込み、突然発狂寸前に陥ったロイスの介抱を手伝おうとしたが、ソフィアがそれを拒絶した。
「会長は触っちゃダメです!」
「っ!」
「それ、近付けないでください!」
「…………お守り?」
「お守りなのかよくわかりませんけど、とりあえずお願いします」
「お、おお」
回復したロイスは、アキヒロを見て頷いた。
「うん、穢れてる」
「酷いなお前」
「先輩じゃないです。さっきのアレが、とてつもなく穢れを溜めているんです」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「よく近くにいて平気ですね……いや、そうか。先輩がそれを常に……」
「なんだなんだ」
「それを綺麗にするってのが今回の依頼なんですよね?」
「依頼……まあそうだけど、もしかして大仰な感じになる?」
「他のみんなに見えてないってことは……ちょっと待っててくださいね! 上山さーん!」
「慌ただしいな」
ロイスはドタバタと人を呼びに行った。
その間、何があったのかとレイト達の疑問が飛び込んでくる。
「これ、そんなにまずいものなんですか?」
「わっかんねえ……別に持ってても何もないけどな」
「私も触ったけど何もなかったぞ」
「…………」
シエルは部屋の隅っこに寄っていた。
絶対に近づくなという強い視線を感じ、逆に面白くなったアキヒロが距離を詰めていく。
「…………」
「常々思ってたんだ。何で俺たちの距離が縮まらないんだろうって」
「……来ないで」
「俺たちの間にはコミュニケーションが足りない──というかシエル、お前が拒否してる感が否めない。そうしたら俺の方から詰めてくしかないよな」
「わ、分かったから」
「分かった? 何が分かったんだ?」
「これからはちゃんと話すから、こっち来ないで」
「それって結局対話を拒否してるような……まあいいか」
ロイスは上山を連れて戻ってきた。
『せんぱーい! さっきのお守りはちゃんとしまってますよね!』
「……しまったよ!」
まるでゴキブリが部屋の中にいるかのような慎重さ。
返事を確認してから2人は入ってきた。
「むおっ、すっごお」
「凄いっしょ?」
「ええ。それで、儀式を?」
「うん、多分先輩もああいう染み付いたのはどうにも出来ないだろうから……というか、出来るならとっくにしてるだろうし」
「ですが、我々がやらずとも彼のそばには……」
「そういう問題じゃないでしょ」
「……仰る通りですね。浅慮でした」
「良いって良いって! 気持ちは俺もわかるからさ! だけど、だからこそ俺たちがやらなきゃいけないじゃん?」
アキヒロそっちのけで話が進んでいく。
当の本人は──
「お守り綺麗になりそうでよかった〜」
と呑気なものだ。
「なんか大変そうだけど、大丈夫なのか?」
「いやあ、みんな慣れてるから大丈夫でしょ」
「…………お前、やってもらう立場でよくそんな偉そうなこと言えるな」
「ギブアンドテイクってやつだ」
「お前が何をギブしてるんだよ」
「え? ……コマちゃん人形?」
「はぁ……」
「お前舐めてるな? コマちゃん人形作るの結構大変なんだからな? 特別モデルも作らなきゃいけないし、湿気が多いと作ってる最中に形が崩れたりするしで気遣ってるんだから」
「知らねえよ」
「今度作るところ見せてやるよ」
「…………じゃあ見せてもらうけど」
「──製作工程を!?」
「加賀美様!」
「は、はい」
「何でそんな酷いことを言うんですか!」
「なにがですか」
「コマちゃん人形を作るところ、私も見たいですよ!」
「そ、そうですか……」
「それなのに……それなのに、なんで──くぅっ!」
かろうじて何かを飲み込んだ。
日向をチラ見して言っているあたり、若干失礼なことだったのかもしれない。
「あ、そういえば上山さんにも渡しとかないとな」
「それは、はい。もらいます」
そこには全く、上っ面のやりとりが介在しなかった。
『いやあ、悪いですよ』
『私もいただけるんですか?』
そういう類の婉曲的な催促は無く、あくまで一直線に受け取りに行くという気合の入った反応。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ来た時はいつもお世話になってますから」
「加賀美様……浅学で恐縮なのですが、そのお守りは一体何があってそこまで穢れてしまったのですか?」
「何があってって言われると……多分ヒナタの家に行った時のことだと思うんだよなあ」
「ヒナタ様は確か、山田家の方ですよね」
「まあでも、俺もいつからこいつが汚れてたかって言われると正確なところはわからないんで。当てずっぽうなところはありますけどね」
「……あり得ない話ではないと思われます」
「そこら辺はプロの方が詳しいでしょうから、お任せします。ちなみに……浄化のやつって炎でバーニングする感じでしたっけ?」
「そうですね」
「秋川さんがやる感じですか?」
「……いえ、申し訳ないのですが一矢さまは不在でして」
「そうなんだ。じゃあロイスが?」
「ロイス様もまだ未経験なので……美花さまが主に執り行って、私が補佐を務めさせていただきます」
ロイスの母親、
しかし、上山は首を横に振った。
「むしろ、もっと頼ってくださるとお二人は喜ばれると思いますよ」
「それは良かった」
やることが決まれば、あとはもう暇。
「みなさま、神社の様子は見られましたか?」
「俺はちょっとだけ見た!」
「なるほど。シエル様とレイト様、ヒナタ様はまだということですね?」
「僕は、はい」
「せっかくなので、秋川一族が誇る街を見て行きませんか? まずは神社から」
「あ、見てみたいです」
せっかく来たのだから、見て周るのもまた一興ということだ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない